※本記事は、リオン株式会社 の有価証券報告書(第104期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. リオンってどんな会社?
微粒子計測器、医療機器、環境機器の開発・製造・販売を行う精密機器メーカーです。補聴器や騒音計で高いシェアを誇ります。
■(1) 会社概要
1944年に小林理研製作所として設立し、戦後民需へ転換、1948年に日本初の量産型補聴器を発売しました。1960年にリオンへ商号変更し、騒音計、振動計、微粒子計などを相次いで開発。2022年に東証プライム市場へ移行し、同年ノルウェーのNorsonic ASを子会社化しました。
連結従業員数は1,009名、単体従業員数は504名です。大株主は、筆頭株主が設立母体である一般財団法人小林理学研究所(25.41%)、第2位は日本マスタートラスト信託銀行(10.86%)、第3位は日本カストディ銀行(7.63%)となっており、研究機関と信託銀行が上位を占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 一般財団法人小林理学研究所 | 25.41% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 10.86% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 7.63% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性3名の計11名で構成され、女性役員比率は27.3%です。代表取締役社長は加藤公規氏です。社外取締役比率は36.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 加藤 公規 | 代表取締役社長 | 1997年同社入社。事業支援本部企画・経理部長、海外戦略部長、経営企画本部長等を歴任。2019年取締役、2022年常務取締役を経て2025年4月より現職。 |
| 岩橋 清勝 | 代表取締役副社長環境機器事業部長 | 1979年同社入社。環境機器事業部長、技術開発センター長、代表取締役社長等を歴任。2025年4月より代表取締役副社長兼環境機器事業部長兼上海理音科技有限公司董事長より現職。 |
| 清水 健一 | 取締役会長 | 1978年同社入社。経営管理統括部長、管理支援本部長、事業支援本部長等を歴任。2015年代表取締役社長を経て2022年4月より現職。 |
| 篠﨑 利之 | 取締役微粒子計測器事業部長 | 1989年同社入社。医療機器事業部長、リオンテクノ代表取締役社長等を歴任。2024年4月より取締役微粒子計測器事業部長より現職。 |
社外取締役は、濱田喜久子(元ジョンソン・エンド・ジョンソンバイスプレジデント)、上田麻理(神奈川工科大学情報学部准教授)、高橋和伸(元双葉電子工業代表取締役社長)、江島真也(元国際協力機構理事)です。
2. 事業内容
同社グループは、「微粒子計測器事業」、「医療機器事業」、「環境機器事業」を展開しています。
■微粒子計測器事業
半導体製造プロセス等で使用される液中微粒子計や気中微粒子計などを開発・製造・販売しており、主な顧客は半導体メーカーや医薬品メーカー等です。
製品の販売による収益が主となります。開発・製造・販売は同社が行い、製造の一部をリオンテクノ、販売を九州リオン、サービス業務をリオンサービスセンター及びリオンテクノが担っています。
■医療機器事業
補聴器や難聴者訓練用機器、オージオメータ(聴力検査機器)や聴力検査室などの医用検査機器を開発・製造・販売しており、個人顧客や医療機関等が主な顧客です。
製品の販売による収益が主となります。開発・製造・販売は同社が行い、製造・販売を九州リオン、販売を東日本リオン及び東海リオン、サービス業務をリオンサービスセンター及びリオンテクノが担っています。
■環境機器事業
騒音計、振動計、地震計、周波数分析器などの音響・振動計測器を開発・製造・販売しており、官公庁や企業の研究開発部門等が主な顧客です。
製品の販売による収益が主となります。開発・製造・販売は同社が行い、製造をリオンテクノ、販売を九州リオン、サービス業務をリオンサービスセンターが担うほか、ノルウェーのNorsonic ASも開発・製造・販売を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して右肩上がりで推移しており、2025年3月期には約279億円に達しました。利益面でも、経常利益は23億円から41億円へと大きく伸長し、利益率も11%台から14%台後半へと向上傾向にあります。当期純利益も増益基調を維持しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 205億円 | 226億円 | 239億円 | 257億円 | 279億円 |
| 経常利益 | 23億円 | 32億円 | 30億円 | 36億円 | 41億円 |
| 利益率(%) | 11.2% | 14.2% | 12.6% | 13.8% | 14.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 14億円 | 21億円 | 16億円 | 27億円 | 29億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益も増加しています。売上総利益率はほぼ横ばいで50%程度の高い水準を維持しています。営業利益も増収効果により増加し、営業利益率は13.5%から14.5%へと向上しました。コストコントロールが効いた増収増益の構造となっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 257億円 | 279億円 |
| 売上総利益 | 130億円 | 141億円 |
| 売上総利益率(%) | 50.7% | 50.4% |
| 営業利益 | 35億円 | 40億円 |
| 営業利益率(%) | 13.5% | 14.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給料が14億円(構成比45%)、研究開発費が8億円(同25%)を占めています。(単体の内訳データに基づく概算構成比)
■(3) セグメント収益
微粒子計測器事業は、半導体関連市場の需要継続と生産効率向上により大幅な増収増益となりました。環境機器事業も新製品効果等で増収増益を達成しました。一方、医療機器事業は物価高騰による消費の落ち込み等の影響で減収減益となりました。微粒子計測器事業が全体の利益成長を牽引しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 微粒子計測器事業 | 76億円 | 95億円 | 21億円 | 28億円 | 29.1% |
| 医療機器事業 | 127億円 | 125億円 | 13億円 | 11億円 | 8.7% |
| 環境機器事業 | 54億円 | 58億円 | 1億円 | 2億円 | 2.8% |
| 連結(合計) | 257億円 | 279億円 | 35億円 | 40億円 | 14.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
リオン社の2025年3月期決算では、営業活動によるキャッシュ・フローは増加し、事業活動から得られた資金は順調に積み上がりました。投資活動では、主に設備投資等に資金を使用しましたが、その支出額は前期より減少しました。財務活動では、配当金の支払い等により資金が使用されました。これらの活動の結果、同社の現金及び現金同等物は前期末に比べて増加し、期末残高は大幅に増加しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 29億円 | 34億円 |
| 投資CF | -27億円 | -17億円 |
| 財務CF | -6億円 | -7億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「すべての行動を通して 人へ 社会へ 世界へ貢献する」という企業理念を掲げています。人々の健康・福祉に貢献し、質の高い充実した生活の実現に寄与することを社会的使命と位置付け、長年培われた技術力を駆使して、福祉の充実や環境保全の課題に取り組んでいます。
■(2) 企業文化
同社は研究開発型企業として、基礎科学の高揚と応用科学の実践を推進することを重視しています。他社が手がけていない独自の事業を切り開き、先進的な製品を市場に投入し続けることで高いシェアを確保してきました。あらゆるイノベーションによって新たなビジネスモデルを創出することを目指しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は2031年3月期までに達成すべき経営指標として以下の目標を掲げています。
* 売上高:350億円
* 売上高営業利益率:15%
* 自己資本当期純利益率(ROE):10%
■(4) 成長戦略と重点施策
海外における販路拡大を当面の課題とし、日本型ビジネスモデルを輸出する取り組みを進めています。製品競争力の強化のため、基本性能の向上に加え付加機能の拡充にも取り組みます。
微粒子計測器事業では生成AI関連の新規案件獲得や最先端機種への対応、医療機器事業では補聴器の新製品投入や医用検査機器の拡販、環境機器事業では海外市場での販売強化等に注力します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
性別・年齢・国籍等の区別なく個々が力を発揮できる多様性を包摂する組織を目指し、従業員の主体的なキャリア形成を促進しています。新卒採用では「総合職コース」に加え「技術職コース」を設定し、優秀な理科系学生の確保に努めています。評価制度では「職務遂行能力」「姿勢・意欲」「業務成果」を重視し、個人の成長を促す環境を整備しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.5歳 | 16.7年 | 7,927,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.4% |
| 男性育児休業取得率 | 88.2% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 82.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 82.4% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 73.5% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 他社との競合について
補聴器業界では海外大手メーカーとの競争、微粒子計測器等は国内外での激しい販売競争下にあります。海外市場ではリスクが高まりますが、国内では高い知名度や技術力により比較的競争力が高く、安定的に推移すると認識しています。しかし、価格下落等により業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 海外展開について
海外市場の開拓を進めており、海外売上高比率は30%程度となっています。輸出先には政治・経済的に不安定な国も含まれるため、為替変動やテロ、戦争等による社会的混乱が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 研究開発について
技術革新が著しく、継続的な研究開発が不可欠です。研究開発センターを中心に活動していますが、急激な技術革新により市場ニーズが変化し、製品価値が低下した場合、メーカーとしての優位性が損なわれる可能性があります。全社的に市場ニーズの掘り起こしを進め、新たなビジネスモデルを検討しています。
■(4) 知的財産権について
多数の知的財産権を保有し管理していますが、第三者による侵害の可能性があります。また、他社の知的財産権を侵害しないよう努めていますが、訴訟を提起された場合、費用の発生や損害賠償により多額の損失が発生する可能性があります。



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