※本記事は、リオン株式会社の有価証券報告書(第105期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. リオンってどんな会社?
微粒子計測器、医療機器、環境機器の開発・製造・販売を展開するメーカーです。
■(1) 会社概要
同社は1944年に小林理研製作所として設立され、1948年に国内初の量産型補聴器を開発しました。1960年にリオンへ商号変更し、2000年に東京証券取引所市場第二部へ上場を果たしています。近年では、2022年にノルウェーのNorsonic ASを子会社化し、グローバル展開を推進しています。
同社グループは連結で1,003名、単体で499名の従業員を擁しています。筆頭株主は同社の設立母体であり共同研究先でもある小林理学研究所で、第2位および第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 小林理学研究所 | 25.39% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 9.66% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 8.26% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性3名の計11名で構成され、女性役員比率は27.3%です。代表取締役社長は加藤公規氏が務めています。社外取締役は4名であり、取締役全体における割合は約36.4%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 加藤公規 | 代表取締役社長 | 1997年入社。企画・経理部長、海外推進部長、経営企画本部長などを経て、2025年4月より現職。 |
| 岩橋清勝 | 代表取締役副社長環境機器事業部長 | 1979年入社。環境機器事業部長、技術開発センター長、代表取締役社長などを経て、2025年4月より現職。 |
| 清水健一 | 取締役会長 | 1978年入社。管理統括部長、事業支援本部長、代表取締役社長などを経て、2022年4月より現職。 |
| 篠﨑利之 | 取締役微粒子計測器事業部長 | 1989年入社。医療機器事業部長、リオンテクノ代表取締役社長などを経て、2024年4月より現職。 |
社外取締役は、濱田喜久子(元ジョンソン・エンド・ジョンソンバイスプレジデント)、上田麻理(神奈川工科大学准教授)、高橋和伸(元双葉電子工業代表取締役社長)、江島真也(鴻池運輸メディカル本部専任部長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「微粒子計測器事業」、「医療機器事業」および「環境機器事業」の3つの報告セグメントで事業を展開しています。
■(1) 微粒子計測器事業
半導体関連市場などで使用される液中微粒子計、気中微粒子計等の微粒子計測器を開発・製造・販売しています。半導体製造工場の新設や増強に伴う設備投資需要に応え、最先端機種のニーズに対応しています。
主に製造業等の顧客から製品の販売代金やサービス料を受け取る収益モデルです。製品の開発・製造・販売は同社が行い、販売は九州リオンが、製造はリオンテクノが、保守サービスはリオンサービスセンターが担当しています。
■(2) 医療機器事業
補聴器や難聴者訓練用機器等のほか、オージオメータや聴力検査室などの医用検査機器を開発・製造・販売しています。高齢化社会における個人消費者のほか、大学病院などの医療機関に向けて製品を提供しています。
個人消費者や医療機関から製品の販売代金や保守サービス料を収益として得ています。開発・製造・販売を同社が担うほか、販売を九州リオン、東日本リオン、東海リオンが、保守サービスをリオンサービスセンター等が担当しています。
■(3) 環境機器事業
騒音計、振動計、地震計、周波数分析器等の音響・振動計測器を開発・製造・販売しています。インフラ関連の設備投資需要や環境騒音監視、設備診断などのニーズに対応し、国内外の市場に製品を提供しています。
インフラ関連企業や官公庁等から製品の販売代金やサービス料を受け取る収益モデルです。同社が開発・製造・販売を行うほか、海外ではNorsonic ASが事業を展開し、販売や保守を九州リオン等が支援しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の売上高は右肩上がりで成長を続けており、285億円に達しています。経常利益も売上拡大に伴い増加基調にあり、利益率は12〜15%台と安定して高い水準を維持しています。当期利益についても30億円を超える規模へと拡大しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 226億円 | 239億円 | 257億円 | 279億円 | 285億円 |
| 経常利益 | 32億円 | 30億円 | 36億円 | 41億円 | 44億円 |
| 利益率(%) | 14.2% | 12.6% | 13.8% | 14.7% | 15.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 21億円 | 16億円 | 34億円 | 33億円 | 32億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益は安定して141億円規模を確保しています。営業利益も前年度から増加し、営業利益率は15%台へと改善を見せており、収益性の向上が確認できます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 279億円 | 285億円 |
| 売上総利益 | 141億円 | 141億円 |
| 売上総利益率(%) | 50.4% | 49.3% |
| 営業利益 | 40億円 | 44億円 |
| 営業利益率(%) | 14.5% | 15.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給料が13億円(構成比13%)、研究開発費が8億円(同9%)を占めています。
■(3) セグメント収益
すべてのセグメントで増収を達成しています。特に環境機器事業は業務効率の改善により大幅な増益を記録しました。微粒子計測器事業は設備増強や研究開発費の増加により減益となりましたが、依然として高い利益率を誇っています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 微粒子計測器事業 | 95億円 | 97億円 | 28億円 | 24億円 | 24.6% |
| 医療機器事業 | 125億円 | 128億円 | 11億円 | 12億円 | 9.7% |
| 環境機器事業 | 58億円 | 60億円 | 2億円 | 7億円 | 12.1% |
| 連結(合計) | 279億円 | 285億円 | 40億円 | 44億円 | 15.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 34億円 | 42億円 |
| 投資CF | -17億円 | -8億円 |
| 財務CF | -7億円 | -10億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.1%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は83.3%であり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「すべての行動を通して 人へ 社会へ 世界へ貢献する」という企業理念を掲げています。人々の健康や福祉に貢献し、質の高い充実した生活の実現に寄与することを社会的使命と位置づけ、福祉の充実や環境保全などの課題に正面から取り組む研究開発型企業を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は技術力を基盤とする「技術立社」としての価値観を重視しています。基礎科学の高揚と応用科学の実践を推進することで、他社が手がけていない独自の事業を切り開き、多くの先進的な製品を市場に投入し続ける文化が根付いています。また、社会貢献を企業活動の根幹として位置づけています。
■(3) 経営計画・目標
既存事業の成長とともに経営資源を有効活用し、イノベーションによる新たなビジネスモデルを創出することを中期の経営方針としています。2031年3月期までに以下の指標の達成を目指しています。
* 売上高350億円以上
* 売上高営業利益率15%以上
* 自己資本当期純利益率(ROE)10%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
日本型ビジネスモデルを輸出するべく、相手国の状況に合わせた取り組みにより海外での販路拡大を推進します。また、製品の基本性能の向上や付加機能の拡充を図り、顧客満足度を高めることで持続的な発展を目指します。微粒子計測器事業では最先端機種への対応、医療機器事業では新製品の投入や医療機関との連携強化、環境機器事業ではインフラ更新需要の確実な捕捉に注力します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「技術立社」であり続けるため、従業員が安心してチャレンジできる職場環境の構築を重視しています。性別や年齢、国籍等を問わず多様な人材が最大限の力を発揮できる組織を目指し、一人ひとりの主体的なキャリア形成を支援しています。個人の能力と貢献を重視した評価制度や、ライフイベントに応じた充実した福利厚生を提供し、持続的な成長を支える人材育成を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.3歳 | 16.8年 | 8,096,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.7% |
| 男性育児休業取得率 | 81.8% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 80.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 80.1% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 81.5% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 他社との競合リスク
補聴器業界における海外大手メーカーの参入や、微粒子計測器、音響・振動計測器などの国内外市場における販売競争が激化しています。価格下落による売上高の減少や利益率の低下が生じた場合、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 海外展開におけるリスク
同社は海外市場の開拓を進めており、売上高における海外比率は約27%を占めています。輸出先には政治・経済的に不安定な地域も含まれるため、為替変動や社会的混乱が発生した場合、事業活動が阻害され業績に影響を及ぼすリスクがあります。
■(3) 新製品の研究開発リスク
急激な技術革新が進行する中、市場のニーズに沿った新製品を継続的に供給するためには多岐にわたる研究開発が不可欠です。市場ニーズの変化により既存製品の市場価値が低下し、メーカーとしての優位性が損なわれた場合、同社の競争力に影響を及ぼす可能性があります。



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