エヌエフホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エヌエフホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エヌエフホールディングスは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、計測制御デバイス、電源パワー制御、環境エネルギー関連機器の開発・製造・販売を展開しています。直近の業績は、大電力変換技術を活かした産業用蓄電システム等の強化が奏功して売上高が微増し、各段階利益も前年同期比で大幅な増益を達成しました。


※本記事は、株式会社エヌエフホールディングスの有価証券報告書(第73期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. エヌエフホールディングスってどんな会社?


独自の計測・制御技術を核に、電子デバイスから産業用蓄電システムまで幅広く機器開発と製造を行うメーカーです。

(1) 会社概要


1963年、東京都大田区でエヌエフ回路設計ブロックとして設立されました。1990年に株式を店頭登録し、2004年にジャスダック上場を果たします。国内外に営業や生産の拠点を拡大し、2020年に持株会社体制へ移行してエヌエフホールディングスへ商号変更しました。2022年にスタンダード市場へ移行しています。

従業員数は連結で283名、単体で31名体制です。筆頭株主はエヌエフHD取引先持株会で、第2位は投資育成機関である東京中小企業投資育成、第3位は代表取締役会長の高橋常夫氏です。

氏名 持株比率
エヌエフHD取引先持株会 11.11%
東京中小企業投資育成 4.23%
高橋常夫 2.82%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は吉沢直樹氏が務めています。社外取締役比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
高橋常夫 代表取締役会長 1992年本田技術研究所入社。2002年同社取締役、2004年代表取締役社長を経て、2018年より現職。
吉沢直樹 代表取締役社長 2016年みずほ銀行入社。2018年同社事業管理本部本部長付、執行役員等を経て、2024年より現職。
大滝正彦 取締役 2004年東京三菱銀行入社。2006年同社入社。執行役員社長、業務管理本部長等を経て、2019年より現職。
長谷川和宏 取締役 2009年日本ビクター入社。2012年エヌエフエンジニアリング取締役、同社執行役員等を経て、2018年より現職。
木村学 取締役 2019年三菱UFJ銀行入社。2021年同社入社。事業企画室長、執行役員専務等を経て、2025年より現職。


社外取締役は、釜道紀浩(東京電機大学教授)、豊玉英樹(元国立研究開発法人科学技術振興機構開発主監)です。

2. 事業内容


同社グループは、「計測制御デバイス」「電源パワー制御」「環境エネルギー」「校正・修理」の各分野で事業を展開しています。

計測制御デバイス

産官学の研究開発機関、半導体製造装置、宇宙航空や鉄道インフラ用電子装置などを対象に、信号発生器、微小信号測定器、各種機能モジュールといった標準品や特注品の開発・製造・販売を提供しています。

収益源は顧客からの機器の販売代金です。同事業の運営は、主にエヌエフ回路設計ブロック、NFテクノコマース、NFデバイステクノロジー、NFエンジニアリングが担当しています。

電源パワー制御

重電機器、家電機器、電子部品などの生産ライン向けに、交流電源や直流電源、産業用カスタム電源といった多様な電源システム機器の開発・製造・販売を行っています。

各種電源機器や産業用カスタム電源の販売代金が主な収益源となります。運営主体は、エヌエフ回路設計ブロックを中心に、NFテクノコマース、NFデバイステクノロジー、NFエンジニアリングの各社が担っています。

環境エネルギー

電力事業者や環境関連分野向けに、産業用蓄電システムや保護リレー試験器などの開発・製造・販売を展開しています。大電力変換技術を活かした産業用向けへの選択と集中を進めています。

蓄電システムや関連機器の販売、および開発受託に係る技術移転を通じた収益を主な柱としています。事業は、エヌエフ回路設計ブロックやNFブロッサムテクノロジーズ(清算手続き中)などが運営しています。

校正・修理

同社グループが販売した計測制御機器、電源システム機器、応用システム機器等のメンテナンスサービスとして、校正・修理サービスや設備診断などを提供しています。

販売した製品の継続的なメンテナンスによるサービス対価を顧客から受け取ります。運営はエヌエフ回路設計ブロックやNFカストマサービスなどが中心となって行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、売上高は一時減少傾向にありましたが、当期は微増に転じました。経常利益も原材料価格上昇や価格競争の影響を受けながらも、製品価格の改定や収益体質強化の取り組みにより、当期は大幅な増益を達成し、利益率も10%台に回復しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 101億円 96億円 94億円 91億円 91億円
経常利益 11億円 6億円 5億円 6億円 10億円
利益率(%) 10.4% 6.5% 5.2% 6.5% 10.7%
当期利益 4億円 4億円 4億円 8億円 6億円

(2) 損益計算書


直近2年間の損益状況を見ると、売上高は横ばいながらも、仕入価格高騰に対する価格改定などの効果で売上総利益が増加しました。販売費及び一般管理費が減少したことも加わり、営業利益は前期から大幅に増加し、収益性の改善が顕著に表れています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 91億円 91億円
売上総利益 33億円 35億円
売上総利益率(%) 35.8% 38.3%
営業利益 5億円 9億円
営業利益率(%) 6.0% 10.3%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が7億円(構成比29%)、福利厚生費が2億円(同6%)を占めています。

(3) セグメント収益


単一セグメントですが、製品関連分野別に見ると、計測制御デバイスと電源パワー制御は堅調に推移し前年並みを維持しています。一方で、家庭用蓄電システムの整理を進めた環境エネルギー分野は減少しましたが、校正・修理分野はメンテナンスサービスの強化により増収となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
計測制御デバイス 24億円 24億円
電源パワー制御 39億円 40億円
環境エネルギー 22億円 21億円
校正・修理 6億円 7億円
連結(合計) 91億円 91億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の資金の動きを示すキャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローがともにプラスで、財務活動によるキャッシュ・フローがマイナスとなる「改善型」です。営業利益と資産売却等によって得た資金で借入金の返済を進める局面にあることを示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 3億円 15億円
投資CF 13億円 4億円
財務CF -7億円 -13億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は78.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「独創的な製品開発を通じて社会に貢献し、信頼される企業となること」を創業理念としています。その在りたい姿であるVISIONには、「人々に共感を持たれる新しい価値を創造し提供することにより、社会からその存在を認められ期待される“計測・制御のリーディングカンパニー”」を掲げています。特色ある製品を提供し、エレクトロニクス産業の発展を通じた社会への貢献を目標に経営に取り組んでいます。

(2) 企業文化


同社は、創業以来培ってきたネガティブフィードバック制御をコアとする技術力を活かし、特色のある製品を提供することによって科学技術や産業発展に貢献することを目指しています。また、経営理念や行動規範において「人間尊重」と「多様性の尊重」を全役員、全従業員が共有すべき重要な価値として掲げており、性別や国籍の隔てなく人材を登用し、活躍が促進される柔軟な組織風土を有しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、技術開発力の向上、営業力の強化、コスト競争力の強化に取り組むことで、持続的な売上成長と安定した利益水準の確保を目指しています。経営環境の変化に強靭で中長期的に安定した企業成長を実現するため、定量的な目標を掲げて事業を推進しています。

・売上高営業利益率:10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、既存の計測制御デバイス、電源パワー制御、環境エネルギーの3事業を柱とし、独創技術を核とした競争力の高い製品の提供による安定的なビジネスモデルの構築を目指しています。今後の事業成長に向けた重点施策として、既存分野の強靭化に加え、新事業の育成を加速させます。
開発面では、水素関連事業や再生エネルギー活用市場への展開に注力するとともに、得意とする大電力変換技術を活かした産業用蓄電システムにおいて確固たる基盤を構築します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、多様な人材の確保、自律・自立型人材の育成、働きやすい環境整備を人材戦略の基盤としています。女性や外国籍人材の採用・登用を推進し、多様な価値観を持つ人材が活躍できる組織づくりを進める方針です。また、創造性の高い研究開発力の醸成を重視し、技術発表会や外部有識者の講演会などを通じて従業員の成長を支援し、技術継承や次世代リーダーの育成による持続的な競争力向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.9歳 6.6年 6,846,355円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒及び中途採用応募者に占める女性の割合(18.5%)、育児・介護休業中及び復職者の面談実施率(100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済状況と設備投資の変動
同社グループが開発・製造する製品は研究開発用や製造ライン向けが主体であるため、顧客の設備投資動向によって事業や業績、財務状況が影響を受ける可能性があります。

(2) 価格競争と技術領域における競争
業界内での価格競争が激化しており、継続的なコストダウンが求められます。また、技術力が重要な競争要因となるため、新製品の開発や技術力を継続的に維持発展させられなかった場合、競争力を失い業績に影響が及ぶ可能性があります。

(3) 有能な人材確保における競争
同社の将来の発展は、開発、生産、販売、マネジメント分野などにおける優秀な人材の確保に大きく依存しています。優秀な人材の獲得に向けた競争は激しく、この競争に劣後した場合は事業展開や業績に悪影響を及ぼすおそれがあります。

(4) 情報セキュリティのリスク
事業全般でコンピュータシステムやITネットワークを活用して情報資産を管理しています。外部からの不正アクセスやウイルス侵入による情報漏洩や改竄、災害や事故によるシステム停止が発生し、復旧に時間を要した場合は、事業活動に支障をきたす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。