エヌエフホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エヌエフホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場。計測制御デバイスや電源システム、環境エネルギー関連機器の開発・製造・販売を行う。直近の業績は、家庭用蓄電システム事業の再構成等の影響で減収となったものの、収益体質強化への取り組みが奏功し、経常利益は増益で着地している。


※本記事は、株式会社エヌエフホールディングス の有価証券報告書(第72期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. エヌエフホールディングスってどんな会社?


独自の「計測・制御」技術を核に、電子計測器や電源システム、蓄電システム等を展開する技術開発型企業です。

(1) 会社概要


1959年に前身となる有限会社が設立され、1963年に株式会社エヌエフ回路設計ブロックへ改組されました。1990年に店頭登録を行い、2004年にジャスダック証券取引所へ上場しています。2020年には持株会社体制へ移行し、現在の商号に変更しました。2025年4月には子会社間の吸収合併を実施するなど、組織再編を進めています。

連結従業員数は293名、単体では41名です。筆頭株主はエヌエフHD取引先持株会、第2位は東京中小企業投資育成、第3位は代表取締役会長の高橋常夫氏であり、取引先や関連団体、経営陣が上位を占める安定的な株主構成となっています。

氏名 持株比率
エヌエフHD取引先持株会 10.91%
東京中小企業投資育成 4.23%
高橋 常夫 2.77%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は吉沢直樹氏が務めています。社外取締役比率は22.2%です。

氏名 役職 主な経歴
高橋 常夫 代表取締役会長 本田技術研究所エグゼクティブ・チーフエンジニア等を経て、2004年同社社長就任。2018年より現職。
吉沢 直樹 代表取締役社長 みずほ銀行を経て同社に入社。経営管理本部長、CFO等を歴任し2024年5月より現職。
大滝 正彦 取締役 東京三菱銀行を経て同社に入社。総務法規部長、社長等を歴任。現在は業務管理本部長を兼務。
長谷川 和宏 取締役 日本ビクターを経て同社グループ入社。生産・調達部門を統括し、NFエンジニアリング社長を兼務。
木村 学 取締役 三菱UFJ銀行、ローソン銀行出向を経て同社に入社。経営管理本部長として執行役員専務を経て現職。


社外取締役は、釜道紀浩(東京電機大学未来科学部教授)、豊玉英樹(元スタンレー電気取締役研究開発本部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「計測制御デバイス関連分野」「電源パワー制御関連分野」「環境エネルギー関連分野」および「校正・修理分野」事業を展開しています。

(1) 計測制御デバイス関連分野


信号発生器、周波数特性分析器、微小信号測定器などの電子計測器や、各種機能モジュールを開発・提供しています。主な顧客は産官学の研究開発機関や半導体製造装置メーカー、宇宙航空・鉄道インフラ関連企業などです。

収益は、これらの機器・モジュールの販売代金として顧客から受領します。運営は主に株式会社エヌエフ回路設計ブロック、株式会社NFテクノコマース、株式会社NFデバイステクノロジー、株式会社NFエンジニアリングが行っています。

(2) 電源パワー制御関連分野


交流電源、直流電源、バイポーラ電源などの各種電源装置や、自動車・家電・社会インフラ関連のカスタム電源システムを提供しています。重電機器、家電機器、電子部品などの生産ラインや試験設備で利用されています。

収益は、電源機器およびシステムの販売代金として顧客から受領します。運営は株式会社エヌエフ回路設計ブロック、株式会社NF千代田エレクトロニクス、株式会社NFテクノコマース等が担っています。

(3) 環境エネルギー関連分野


家庭用および産業用の蓄電システムや、保護リレー試験器などを提供しています。一般消費者向けのほか、電力事業者や再生可能エネルギー関連企業を顧客としています。

収益は、蓄電システムや試験器の製品販売代金として顧客から受領します。運営は株式会社エヌエフ回路設計ブロック、株式会社NFブロッサムテクノロジーズ等が連携して行っています。

(4) 校正・修理分野


同社グループが販売した計測器や電源機器等の校正・修理サービスを提供しています。納入後の製品の精度維持やメンテナンスを必要とする顧客が対象です。

収益は、校正・修理サービスの対価として顧客から受領します。運営は株式会社エヌエフ回路設計ブロック、株式会社NFカストマサービス等が担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は100億円規模から徐々に減少し、90億円台前半で推移しています。一方、利益面では変動があるものの、最終年度は経常利益・当期利益ともに増加し、利益率は回復傾向にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 107億円 101億円 96億円 94億円 91億円
経常利益 7.4億円 10.6億円 6.2億円 4.8億円 5.9億円
利益率(%) 6.9% 10.4% 6.5% 5.2% 6.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 20.8億円 4.0億円 3.6億円 3.6億円 7.8億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は減少したものの、売上総利益および営業利益は増加しており、収益性が向上しています。特に営業利益率は改善が見られます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 94億円 91億円
売上総利益 31億円 33億円
売上総利益率(%) 32.6% 35.8%
営業利益 4.2億円 5.5億円
営業利益率(%) 4.5% 6.0%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が8.1億円(構成比30%)、研究開発費が3.9億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の売上高を見ると、計測制御デバイスと電源パワー制御、校正・修理分野が増収となった一方、環境エネルギー分野は大幅な減収となりました。これは家庭用蓄電システム事業の再構成等の影響によるものです。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
計測制御デバイス 21億円 24億円
電源パワー制御 36億円 39億円
環境エネルギー 31億円 22億円
校正・修理 5億円 6億円
連結(合計) 94億円 91億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

エヌエフホールディングスは、営業活動で得た資金で投資活動を行い、財務活動で資金を調達・返済する健全な資金繰りを実現しています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益や棚卸資産の減少等により収入となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、定期預金の減少や投資有価証券の売却等により収入となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済や社債の償還、配当金の支払い等により支出となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 5.3億円 3.4億円
投資CF -0.4億円 12.8億円
財務CF -3.5億円 -7.4億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


創業以来のモットーである「ユニーク&オリジナル」と、顧客満足を第一とする行動指針を掲げています。また、「計測・制御の独創技術で未来のテクノロジーを支えます。」というミッションステートメントのもと、エレクトロニクス産業の発展と社会貢献を目指しています。

(2) 企業文化


「人間尊重」「多様性の尊重」を全役員、全社員が共有すべき重要な価値として掲げています。創業以来培ってきた独創技術を核としつつ、多様な人材を受け入れ尊重し、厚みのある人的資本を蓄積することを重視しています。

(3) 経営計画・目標


持続的な売上成長と、安定して以下の経営指標を達成することを目指しています。

* 売上高営業利益率:10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「計測・制御のリーディングカンパニー」を目指し、既存事業の強化と新市場開拓を進めます。計測制御・電源分野では高機能機器を生産設備等へも展開し、宇宙航空、水素、量子コンピュータ、ライフサイエンス等の新領域に注力します。環境エネルギー分野は事業再構成により選択と集中を進め、再生エネルギー用電源システム等への応用を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人財」の多様性を確保し、特に女性採用の強化や外国人登用に注力する方針です。育成面では、従業員の「自律と自立」を重視し、技術発表会や有識者による講演会などを通じて啓発の場を提供しています。また、グループ会社間を含む人材ローテーションにより、専門性の強化・深化と拡大を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 46.3歳 6.3年 7,106,574円


※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は常時雇用する労働者が300人以下等の理由により公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、当社グループ新卒および中途採用応募者に占める女性の割合(17.3%)、育児・介護休業中および復職者の面談実施率(100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済状況の変動


同社グループの製品は研究開発用や製造ライン向けが主体であるため、顧客企業の設備投資動向によって事業、業績および財務状態が影響を受ける可能性があります。

(2) 価格競争


同社グループが属する業界では価格競争が激化しており、継続的なコストダウンに取り組まなければ価格競争力を失い、業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 特定の製品や取引先への依存


家庭用蓄電システムを伊藤忠商事株式会社に販売しており、その売上高は連結売上高の一定の割合を占めています。今後の販売状況や製品市場の動向により、業績が変動する可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。