大井電気 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

大井電気 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

大井電気は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、情報通信機器の製造販売およびネットワーク工事保守を主力事業として展開しています。最新の業績では、社会インフラ向けの通信機器需要の増加やスマートメーター関連事業の好調を背景に、売上高および各利益項目において増収増益を達成し、堅調な成長を続けています。


※本記事は、大井電気の有価証券報告書(第102期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 大井電気ってどんな会社?


情報通信技術を駆使し、社会インフラ向け機器の提供からネットワーク工事までを一貫して手掛ける企業です。

(1) 会社概要


1950年に搬送装置を中心とする通信機器の製造販売を目的として設立されました。1963年には機器のメンテナンスを行う日本フィールド・エンジニアリングを設立し、1986年にソフトウェア業務を行うオオイテクノを設立しました。1995年に株式を店頭登録し、現在は東証スタンダード市場に上場しています。

従業員数はグループ全体で944名、単体で407名体制で事業を推進しています。筆頭株主は事業会社の三菱電機で、第2位は個人株主の石田甲氏、第3位は金融機関のSBI証券となっています。三菱電機とは資本提携や製品の販売および仕入れ等で密接な取引関係を維持しています。

氏名 持株比率
三菱電機 18.48%
石田 甲 6.17%
SBI証券 3.85%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は石田甲氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
石田 甲 取締役社長代表取締役 1987年三和銀行入行。1997年同社入社。2007年第三営業本部長、2012年管理統轄副統轄などを経て、2014年より現職。
岡本 和久 常務取締役 1987年同社入社。2014年SE本部長、2015年水沢製作所長などを経て、2022年取締役、2025年より現職。
仁井 克己 取締役 1985年東京電力入社。2013年同社江東支店長などを経て、2017年同社第一営業本部長付。2020年取締役などを経て、2026年より現職。
佐藤 啓之 取締役 1987年三菱電機入社。2016年同社関西支社通信システム部長などを経て、2020年同社出向。2024年営業統括兼第二営業本部長となり、同年より現職。
千葉 浩勝 取締役 1984年大井電子入社。2013年同社水沢製作所製造部長、2024年生産本部長などを経て、2025年取締役水沢製作所長となり、同年より現職。
芹田 圭司 取締役(監査等委員) 1989年同社入社。2016年品質保証推進部マネージャーなどを経て、2025年監査部、同年より現職。


社外取締役は、安井宏樹(元三菱UFJ信託銀行監査室長)、本村健(元最高裁判所司法研修所教官・弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「情報通信機器製造販売」「ネットワーク工事保守」および「その他」事業を展開しています。

情報通信機器製造販売


光伝送システム、セキュリティ・監視システム、リモート計測・センシングシステム、無線応用システムの関連機器等の情報通信機器の製造・販売を手掛けています。電力、鉄道、官公庁、通信キャリアなどの社会インフラを支える顧客に向けた通信機器やソフトウェアを提供しています。

製品の販売やソフトウェアの製造受託による対価が主な収益源です。当セグメントの事業運営は、同社が関連機器の製造販売を行うとともに、子会社のオオイテクノがソフトウェアの製造販売および同社製品に用いるソフトウェアの製造受託を行っています。

ネットワーク工事保守


社会インフラである通信ネットワークの安定稼働を支える事業です。具体的には、防災・減災に必要な通信設備、光ネットワーク、CATV等の敷設・整備といった各種通信インフラの据付工事および保守サービスを提供しています。

通信設備の品質調査、設計から施工、保守までを一気通貫で実施することによる工事および保守業務の受託料が主な収益源です。事業の運営は、主に日本フィールド・エンジニアリングおよび日本テクニカル・サービスが行っており、一部の業務をエヌ・エフ・サービスに委託しています。

その他


同社グループの事業活動を後方から支援するサービス業務を展開しています。本社および製作所の清掃、食堂業務、ビル管理といった会社施設周りの管理業務や、従業員に対する福利厚生業務の一部を提供しています。

グループ会社からの各種サービス業務の受託および管理料を収益源としています。このセグメントの運営は、クリエイト・オオイが担っており、グループ全体の業務効率化と働きやすい環境づくりに貢献しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、前半は経常損失を計上していましたが、直近3期間で力強い回復と成長を遂げています。特に最新期は、スマートメーター向け通信機器を中心としたIoT関連装置事業が牽引し、売上高が327億円へと拡大しました。これに伴い利益面も大幅な黒字を確保し、利益率も着実に改善しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 247.4億円 229.3億円 281.2億円 290.5億円 327.1億円
経常利益 -7.9億円 -4.4億円 8.4億円 14.3億円 16.3億円
利益率(%) -3.2% -1.9% 3.0% 4.9% 5.0%
当期利益(親会社所有者帰属) -11.3億円 -8.6億円 6.6億円 8.3億円 12.3億円

(2) 損益計算書


増収に伴い売上総利益も着実に増加しています。また、継続的な原価改善活動や生産性向上、価格見直しの効果により、営業利益も拡大しました。売上総利益率は安定的に推移しており、収益力の向上が営業利益率の改善につながっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 290.5億円 327.1億円
売上総利益 57.7億円 64.8億円
売上総利益率(%) 19.9% 19.8%
営業利益 14.8億円 17.7億円
営業利益率(%) 5.1% 5.4%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当・賞与が17億円(構成比36%)、研究開発費が12億円(同25%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力である情報通信機器製造販売は、通信トラフィック増加を背景とした光多重伝送装置事業やスマートメーター向け通信機器の導入が進み、大幅な増収増益を達成しました。一方、ネットワーク工事保守は通信機器工事が底堅く推移したものの、一部案件の減少やコスト増の影響を受け、減益となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
情報通信機器製造販売 168.1億円 207.3億円 8.6億円 13.7億円 6.6%
ネットワーク工事保守 122.4億円 119.8億円 6.0億円 3.9億円 3.3%
連結(合計) 290.5億円 327.1億円 14.8億円 17.7億円 5.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 27.8億円 16.8億円
投資CF -4.9億円 -10.3億円
財務CF -12.8億円 -1.5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は17.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は31.8%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「豊かな自然環境の保護・存続を使命とし、技術革新に努め、生産活動を通じて、広く社会に貢献する。」という経営理念を掲げています。社会インフラ向けの情報通信機器および関連サービスを提供する企業として、社会の安定と発展に貢献し、企業価値の向上を目指すことで、持続的な成長を遂げていくことを使命としています。

(2) 企業文化


各グループ会社の自立経営を基本としつつ、会社間のシナジーを最大限に発揮する文化を持っています。創業理念である「和と協調の精神、採算意識の徹底、目標達成に対する強い責任感」を継承し、従業員一人ひとりが主体的に考え、自己成長していくプロフェッショナルな組織集団を目指す価値観が根付いています。

(3) 経営計画・目標


2026年度から2028年度までの「中期経営計画<2026-2028>」において、収益性改善と成長投資の実行により、2035年度に向けた持続的成長の基盤を固めることを基本方針としています。資本効率を意識し、以下のような具体的な数値目標を掲げています。

* 売上高:404億円
* 営業利益:21億円
* ROE:10%以上の継続的な達成

(4) 成長戦略と重点施策


既存事業の収益力強化、成長領域への投資、人材育成の強化により中長期的な利益成長を目指します。情報通信機器分野では、スマートメーター関連事業のシェア拡大やガス・水道向けへの参入を進めるとともに、光波長多重伝送装置の高度化を図ります。また、原価改善や生産性の向上、調達レジリエンスの強化により収益規模の変動に柔軟に対応できる経営体質を構築します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人材の確保」「人材育成」「社内環境整備」を中核とし、一人ひとりが能力を発揮できる体制の構築を目指しています。即戦力となる技術者の確保に努めるとともに、OJTプログラムの体系化や資格取得支援により現場力を強化します。また、多様な人材が心身ともに健康で安心して働けるよう、柔軟な人事制度の整備を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 47.1歳 20.8年 7,252,701円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.2%
男性育児休業取得率 80.0%
男女賃金差異(全労働者) 71.2%
男女賃金差異(正規雇用) 73.5%
男女賃金差異(非正規雇用) 44.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、正規雇用労働者の経験者採用率(43.0%)、定年退職者雇用率(77.8%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定顧客の設備投資動向への依存


電力会社や通信キャリアなど一部の顧客への依存度が高くなっています。大規模自然災害の発生や重大な社会情勢の変化に伴い、これらの顧客が設備投資計画を見直した場合、同社グループの業績や財政状態に多大な悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 急激な技術進歩と製品の陳腐化リスク


情報通信機器市場は技術の進歩が激しく、開発中に新技術や規格変更が出現し、市場投入前から製品が陳腐化する可能性があります。また、多数の企業が参入しており、競合他社に対する製品の差別化が想定通りに進まない場合、計画通りの収益を確保できないリスクがあります。

(3) 部材調達と為替相場の変動リスク


半導体を含む多くの部材を外部から調達しており、一部は輸入に依存しています。サプライチェーンの乱れや原材料価格の高騰による調達支障のリスクに加え、急激な為替相場の変動による調達コストの上昇は、同社の経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) ネットワーク工事等における損失発生リスク


手持ちの受注工事において、当初予想しえなかった見積もりを超える追加原価の発生等により損失が見込まれる場合があります。この際、損失見積もり額を工事損失引当金として計上する必要が生じ、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。