大井電気 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

大井電気 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場し、情報通信機器の製造販売およびネットワーク工事保守を主力事業としています。直近の業績は、IoT関連装置事業の好調やコスト削減等の進捗により、売上高290億円への増収に加え、営業利益は15億円と前期比61.5%増の大幅な増益を達成しました。


※本記事は、大井電気株式会社 の有価証券報告書(第101期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 大井電気ってどんな会社?


三菱電機を持分法適用関連会社等には持ちませんが筆頭株主とし、社会インフラ向け通信機器と工事保守を一貫して提供する企業です。

(1) 会社概要


1950年に通信機器の製造販売を目的として設立され、1961年に三菱電機が株式を取得しました。その後、1963年に保守業務を行う日本フィールド・エンジニアリングを設立し、事業領域を拡大しています。2004年にジャスダック証券取引所へ上場し、2022年の市場区分見直しに伴い、現在は東証スタンダード市場に上場しています。

同社グループは連結従業員948名、単体411名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は総合電機メーカーの三菱電機で、第2位は同社代表取締役社長の石田甲氏、第3位はインターネット証券会社の楽天証券です。

氏名 持株比率
三菱電機 18.80%
石田 甲 6.11%
楽天証券 4.02%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は石田甲氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
石田 甲 取締役社長代表取締役 1987年三和銀行入行。1997年同社入社。経営管理本部長付、取締役、常務取締役等を経て、2014年4月より現職。
岡本 和久 常務取締役 1987年同社入社。SE本部長、水沢製作所長、執行役員等を歴任。2025年6月より現職。
仁井 克己 取締役経営管理本部長 1985年東京電力入社。電子通信部長代理、同社営業統括副統括等を経て、2020年4月より現職。
菅野 新智 取締役 1984年大井電子入社。同社水沢製作所長、執行役員等を経て、2025年4月より現職。
佐藤 啓之 取締役 1987年三菱電機入社。同社通信システム部長を経て同社へ出向。第二営業本部長等を経て、2024年6月より現職。
藤井 正人 取締役(監査等委員) 1984年同社入社。水沢製作所品質保証部長、監査室長等を歴任。2021年6月より現職。


社外取締役は、安井宏樹(元三菱UFJ信託銀行監査室長)、本村健(岩田合同法律事務所弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「情報通信機器製造販売」、「ネットワーク工事保守」および「その他」事業を展開しています。

(1) 情報通信機器製造販売


光伝送システム、セキュリティ・監視システム、リモート計測・センシングシステム、無線応用システムなどの関連機器を製造販売しています。主な顧客は電力会社、鉄道会社、官公庁、通信キャリアなどの社会インフラ事業者です。

主な収益源は、顧客への製品販売による代金です。また、これらに関連するソフトウェアの製造販売も行っています。運営は主に大井電気およびオオイテクノが行っています。

(2) ネットワーク工事保守


通信設備、光ネットワーク、CATV等の工事および保守を行っています。5G基地局設置や防災・減災に必要な通信インフラの敷設・整備など、公共工事を中心とした事業を展開しています。

収益源は、通信インフラ等の工事および保守業務の対価です。運営は主に日本フィールド・エンジニアリング、日本テクニカル・サービスが行っており、一部業務についてはエヌ・エフ・サービスに委託しています。

(3) その他


同社の本社および製作所の清掃、食堂業務など、会社施設周りのサービス業務や従業員に対する福利厚生業務を行っています。

収益源は、食堂運営やビル管理などのサービス提供による対価です。運営は主にクリエイト・オオイが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は一時的な減少があったものの回復傾向にあり、直近では290億円規模に達しています。経常利益も回復基調にあり、直近の2025年3月期には14億円を超え、利益率は約4.9%まで改善しました。当期純利益も赤字期を脱し、黒字幅を拡大させています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 294億円 247億円 229億円 281億円 290億円
経常利益 4億円 -8億円 -4億円 8億円 14億円
利益率(%) 1.3% -3.2% -1.9% 3.0% 4.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 3億円 -11億円 -9億円 8億円 10億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益が増加しています。一方で、売上総利益率は約19.1%から19.9%へと改善しました。営業利益率は3.3%から5.1%へと上昇しており、収益性が向上しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 281億円 290億円
売上総利益 54億円 58億円
売上総利益率(%) 19.1% 19.9%
営業利益 9億円 15億円
営業利益率(%) 3.3% 5.1%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当・賞与が13億円(構成比30%)、研究開発費が9億円(同22%)を占めています。売上原価においては、材料費や労務費などが主要な構成要素となっています。

(3) セグメント収益


情報通信機器製造販売事業は、IoT関連装置事業の売上増に加え、価格転嫁や原価低減により増収増益となりました。ネットワーク工事保守事業は、通信機器関連の売上が減少したものの、コスト削減等により増益を確保しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
情報通信機器製造販売 155億円 168億円 4億円 9億円 5.1%
ネットワーク工事保守 126億円 122億円 4億円 6億円 4.9%
連結(合計) 281億円 290億円 9億円 15億円 5.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

大井電気は、営業活動によるキャッシュ・フローが大幅に増加し、事業活動から潤沢な資金を生み出しています。一方で、固定資産の購入や短期借入金の返済により、投資活動および財務活動では資金が減少しました。これらの活動の結果、期末の現金及び現金同等物は増加しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 16億円 28億円
投資CF -3億円 -5億円
財務CF -6億円 -13億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「豊かな自然環境の保護・存続を使命とし、技術革新に努め、生産活動を通じて、広く社会に貢献する。」という理念を掲げています。社会インフラ向けの情報通信機器および関連サービスの提供を通じて、社会の安定・発展に貢献し、企業価値の向上と持続的成長を目指しています。

(2) 企業文化


「独自の技術力をもって世の中に貢献する」をビジョンとし、和と協調の精神、採算意識の徹底、目標達成に対する強い責任感という創業理念を継承しています。また、サステナビリティ方針として、最先端の通信技術の追求、環境・社会課題の解決への貢献、ステークホルダーとの対話を重視しています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画<2023-2025>において、社会インフラを支える情報通信分野での成長に向けた経営基盤の確立を目指しています。2025年度に向けて計画を上方修正し、以下の数値目標を掲げています。

* 売上高:321億円
* 営業利益:11億8000万円

(4) 成長戦略と重点施策


情報通信機器製造販売では、2025年度からの第2世代スマートメーター導入に向けた関連事業の拡大や、ガス・水道向けへの参入、ソフトウェア開発事業への挑戦を掲げています。ネットワーク工事保守では、公共工事への参入拡大や、品質調査から保守までを一気通貫に行える体制整備を進めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


創業理念の継承に加え、マインド・スキル研修やOJTを通じたプロ組織集団への成長、自己研鑽やキャリア形成への支援を掲げています。また、ダイバーシティに配慮した雇用制度、ワークライフバランスを前提とした働き方改革、労働安全衛生の確保を通じて、多様な人材が活躍できる職場環境の整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 46.9歳 20.9年 6,233,094円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.2%
男性育児休業取得率 60.0%
男女賃金差異(全労働者) 70.2%
男女賃金差異(正規) 73.0%
男女賃金差異(非正規) 76.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、正規雇用労働者の経験者採用率(79%)、定年退職者雇用率(84.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 一部顧客への依存


同社グループの事業は、電力会社や通信キャリアなど特定の顧客への依存度が高くなっています。顧客の設備投資計画の見直しや社会情勢の変化等により、受注が減少した場合、同社グループの財政状態および業績に影響を与える可能性があります。

(2) 資金調達に関するリスク


事業運営において主に金融機関からの資金調達を行っています。金融機関の方針変更等により十分な資金調達ができない場合、同社グループの財政状態および経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 為替相場の変動リスク


部材の一部を輸入調達しているため、為替相場の変動による価格変動リスクがあります。為替レートをもとにした原価見積もり等の対策を行っていますが、著しい為替変動が生じた場合、業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 工事損失の発生に関するリスク


受注工事において、損失の発生が見込まれ金額を合理的に見積もることができるものには工事損失引当金を計上しています。しかし、当初予期せぬ追加原価等が発生した場合、追加の引当が必要となり、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。