※本記事は、日本光電工業株式会社 の有価証券報告書(第74期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日本光電工業ってどんな会社?
同社は医用電子機器の専門メーカーとして、生体計測機器や生体情報モニタ、治療機器等を世界中に提供しています。
■(1) 会社概要
同社は1951年に医理学機器の研究製造を目的に設立されました。1961年に東証二部へ上場し、1982年に東証一部銘柄に指定されています。1979年の米国拠点設立を皮切りに、欧州、アジア、中南米へ現地法人を展開し、グローバル化を推進してきました。2024年には米国事業強化のため、現地の頭蓋内電極メーカーの親会社株式を取得し子会社化しています。
2025年3月31日現在、連結従業員数は6,114名、単体従業員数は3,893名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は外国法人の常任代理人である銀行、第3位も資産管理業務を行う信託銀行となっており、機関投資家や信託口による保有比率が高い構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 17.20% |
| ステート ストリート バンク アンド トラスト カンパニー 505103 | 6.07% |
| 株式会社日本カストディ銀行(信託口) | 5.40% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性2名、計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長執行役員Chief Executive Officerは荻野博一氏が務めています。取締役会における社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 荻野 博 一 | 代表取締役社長執行役員Chief Executive Officer | 1995年同社入社。日本光電ヨーロッパ有限会社社長、海外事業本部長、日本光電アメリカ株式会社CEO、代表取締役社長兼COOなどを経て、2024年4月より現職。 |
| 田 村 隆 司 | 代表取締役 | 1983年同社入社。日本光電関西株式会社代表取締役社長、海外事業本部長、サービス事業本部長、カスタマーサービス本部長、営業本部長、代表取締役専務執行役員などを経て、2024年4月より現職。 |
| 田 中 栄 一 | 取締役専務執行役員Chief Operating Officer | 1985年同社入社。日本光電アメリカ株式会社社長、用品事業本部長、日本光電富岡株式会社代表取締役社長、米国事業本部長などを経て、2025年4月より現職。 |
| 吉 竹 康 博 | 取締役専務執行役員Chief Strategy OfficerChief Regional Officer - International | 1988年同社入社。日本光電ヨーロッパ有限会社社長、中国統括本部長、海外事業本部長、日本光電アメリカ株式会社社長兼CEOなどを経て、2025年4月より現職。 |
| 長 谷 川 正 | 取締役 | 1983年株式会社埼玉銀行入行。株式会社埼玉りそな銀行取締役兼常務執行役員を経て2014年同社入社。コンプライアンス担当役員、グローバル経営管理本部長などを経て、2024年4月よりChief Administrative Officer。 |
| 平 田 茂 | 取締役(常勤監査等委員) | 1985年同社入社。総務人事部長、執行役員、人事部長、経理部長、上席執行役員、グローバル経営管理本部副本部長などを経て、2021年6月より現職。 |
社外取締役は、川津原茂(元東光株式会社代表取締役会長)、笹谷秀光(元農林水産省退官・株式会社伊藤園常務執行役員)、森田純恵(元株式会社富士通ゼネラル経営執行役)、Danny Risberg(元バクスター株式会社代表取締役社長)、清水一男(公認会計士・税理士)、佐藤郁美(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「北米」「その他の地域」事業を展開しています。
■(1) 日本
同社および子会社が、医用電子機器の研究開発、製造、販売、修理、保守等を行っています。具体的には、脳波計や心電計などの生体計測機器、患者のバイタルサインを監視する生体情報モニタ、AEDや人工呼吸器などの治療機器、および関連消耗品を提供しています。
収益は、医療機関や自治体、民間企業等からの製品販売代金および保守サービス料等から構成されます。運営は、研究開発・製造・販売を行う日本光電工業、製造を担う日本光電富岡、医療情報システム製品を扱うベネフィックス、免疫化学製品を扱う日本バイオテスト研究所などが行っています。
■(2) 北米
米国において医用電子機器の研究開発、製造、販売等を行っています。特に救命救急医療機器や人工呼吸器、頭蓋内電極の開発・製造・販売に加え、医用電子機器やソフトウェアの研究開発、販売促進活動を展開しています。また、現地の統括会社が子会社の経営管理を担っています。
収益は、現地の医療機関等への製品販売およびサービス提供等から得ています。運営は、統括会社の日本光電ノースアメリカ、販売を行う日本光電アメリカ、開発・製造を行うデフィブテック、日本光電オレンジメッド、アドテックなどが担っています。
■(3) その他の地域
欧州、アジア、中南米等の地域において、医用電子機器の開発、製造、販売、販売促進等を行っています。中国やインド、マレーシア、イタリア等に拠点を持ち、各地域の市場特性に合わせた製品展開や試薬の製造・販売なども行っています。
収益は、各地域の医療機関や代理店等への製品販売およびサービス提供等から得ています。運営は、上海光電医用電子儀器(中国)、日本光電ヨーロッパ(ドイツ)、日本光電マレーシア、日本光電ブラジルなど、各国の現地法人が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は増加傾向にあり、直近では2254億円に達しています。利益面では、経常利益は変動が見られるものの、一定の利益水準を維持しています。当期純利益は前期比で減少しました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,997億円 | 2,051億円 | 2,066億円 | 2,220億円 | 2,254億円 |
| 経常利益 | 284億円 | 346億円 | 241億円 | 256億円 | 204億円 |
| 利益率(%) | 14.2% | 16.8% | 11.7% | 11.5% | 9.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 114億円 | 213億円 | 199億円 | 188億円 | 168億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は微増し、売上総利益も増加しました。一方で、営業利益率はほぼ横ばいで推移しています。売上原価率や販管費率のコントロールが継続的な課題となっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2,220億円 | 2,254億円 |
| 売上総利益 | 1,113億円 | 1,172億円 |
| 売上総利益率(%) | 50.2% | 52.0% |
| 営業利益 | 196億円 | 207億円 |
| 営業利益率(%) | 8.8% | 9.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が409億円(構成比42%)、法定福利費が85億円(同9%)を占めています。
■(3) セグメント収益
日本セグメントは売上・利益ともに増加し、全体の業績を牽引しました。北米セグメントは増収ながらも営業損失を計上しています。その他の地域セグメントは減収減益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | 1,439億円 | 1,465億円 | 206億円 | 219億円 | 15.0% |
| 北米 | 420億円 | 449億円 | -22億円 | -9億円 | -2.1% |
| その他の地域 | 361億円 | 340億円 | 23億円 | 19億円 | 5.5% |
| 調整額 | - | - | -11億円 | -21億円 | - |
| 連結(合計) | 2,220億円 | 2,254億円 | 196億円 | 207億円 | 9.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
* パターン:**積極型**(営業CF+、投資CF-、財務CF+)
* 企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は69.5%で市場平均を上回っています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 156億円 | 153億円 |
| 投資CF | -52億円 | -251億円 |
| 財務CF | -70億円 | 26億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「病魔の克服と健康増進に先端技術で挑戦することにより世界に貢献すると共に社員の豊かな生活を創造する」ことを経営理念としています。これに基づき、顧客、株主、取引先、社会から認められ、信頼を確立する企業として成長することを基本方針としています。
■(2) 企業文化
同社は、2030年に向けた長期ビジョン「BEACON 2030」を策定し、「グローバルな医療課題の解決で、人と医療のより良い未来を創造する」ことを目指しています。これを実現するために、「グローバルな高付加価値企業」「ソリューション型事業」「オペレーショナルエクセレンスを軸とするグローバル組織」への変革に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社は、3ヵ年中期経営計画「BEACON 2030 Phase II」(2024~2026年度)において、以下の経営目標値を掲げています。
* 2027年3月期 売上高:2,560億円
* 2027年3月期 営業利益:385億円(営業利益率15%)
* 2027年3月期 ROE:12%
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は「成長性」「収益性」「資本効率性」の強化に取り組んでいます。製品競争力の強化として、生体情報モニタや治療機器、デジタルヘルスソリューション等の拡大に注力します。また、北米事業への資源配分、全社収益改革による生産性・サプライチェーンの改善、ROICの導入やキャッシュ・コンバージョン・サイクルの短縮を推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、「グローバル共通価値基準」を体現する人財の育成を推進し、グローバルで整合性のある人財マネジメントシステムの構築を目指しています。働き方改革や人員生産性の向上、ダイバーシティ&インクルージョンの推進に加え、グローバル人財やDX人財の育成などキャリア支援を充実させ、組織風土の醸成に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.5歳 | 15.8年 | 9,256,947円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 8.0% |
| 男性育児休業取得率 | 58.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 70.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 75.2% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 63.8% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、海外子会社のCxO以上ポストの外国人比率(47.1%)、中途採用者管理職比率(46.1%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 医療機器の許認可申請等について
各国・各地域の法令・規制(医薬品医療機器等法、FDA規制、欧州MDR等)の改廃や新規制の導入により、許認可申請の審査体制変更や追加試験が必要となり、新製品発売が遅延する可能性があります。これにより、同社グループの経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 品質問題について
製品の品質確保に努めていますが、万が一品質問題が発生した場合、販売停止やリコール等の措置が必要となる可能性があります。また、医療事故が発生し損害賠償請求や社会的信用の失墜を招いた場合、事実関係の如何に関わらず、同社グループの経営成績および財務状況に影響を与える可能性があります。
■(3) 国内外の市場の動向について
国内の医療制度改革や海外の政治的・経済的混乱、保護主義的政策等の影響を受ける可能性があります。特に新興国における予算執行の遅れや国産品優遇政策、各国の景気後退による需要減少などは、同社グループの経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。



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