日本電子 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本電子 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本電子は東京証券取引所プライム市場に上場し、電子顕微鏡などの理科学・計測機器、産業機器の製造販売を主力とするグローバル企業です。直近の業績は、米国政府の科学技術関連予算削減や産業機器の需要回復遅れ等の影響により減収減益となったものの、投資有価証券評価損の減少に伴い最終増益を確保しています。


※本記事は、日本電子株式会社 の有価証券報告書(第79期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本電子ってどんな会社?


電子顕微鏡などの最先端機器の開発・製造・販売を手がけ、科学技術の発展に貢献するグローバル企業です。

(1) 会社概要


1949年に設立され電子顕微鏡の製造販売を開始しました。1962年に東証二部、1966年に東証一部へ上場しています。1960年代から米国、欧州、豪州などへ現地法人を設立しグローバル展開を推進してきました。近年では2025年にジャパンスーパーコンダクタテクノロジーを完全子会社化するなど事業基盤を強化しています。

従業員数は連結3,731名、単体2,313名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位も同様に信託銀行となっています。また、事業会社として理科学計測機器の重要顧客であるトクヤマや、事業連携先である島津製作所なども同社株式を保有しています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 14.31%
日本カストディ銀行(信託口) 5.18%
MLI FOR CLIENT GENERAL OMNI NON COLLATERAL NON TREATY-PB 3.47%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.4%です。代表取締役社長兼CEOは大井泉氏が務めています。社外取締役比率は30.8%です。

氏名 役職 主な経歴
大井泉 代表取締役社長兼CEO 1986年入社。経営戦略室長などを経て、2019年代表取締役社長兼COOに就任。2022年より現職。
矢口勝基 取締役兼専務執行役員 1982年入社。財務本部長、米国支配人等を経て、2021年財務・IT担当。2024年より現職。
金山俊克 取締役兼専務執行役員 1987年入社。EM事業ユニット担当等を経て、2025年より統括開発技術本部等担当。2026年より現職。
小林彰宏 取締役兼常務執行役員 1984年入社。欧州支配人等を経て、2022年営業・業務統括センター担当。2025年より現職。
金山俊彦 取締役兼執行役員 1990年入社。財務本部長、欧州支配人等を経て、2023年経営戦略室長。2024年より現職。


社外取締役は、菅野隆二(元ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ社長)、寺島薫(元富士フイルム執行役員)、四方ゆかり(元グラクソ・スミスクライン取締役)、中尾彰宏(元みさき投資執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「理科学・計測機器事業」、「産業機器事業」、「医用機器事業」を展開しています。

理科学・計測機器事業


透過電子顕微鏡や走査電子顕微鏡、核磁気共鳴装置、質量分析計などの開発・製造・販売および保守・サービスを行っています。主な顧客は国内外の官公庁、大学などの研究機関、ならびに民間企業の開発部門です。

製品の販売代金や、納入後の保守・サービス提供による利用料を収益源としています。事業の運営は同社および日本電子山形、日本電子インスツルメンツのほか、海外の販売子会社などが担っています。

産業機器事業


半導体製造等に用いられる電子ビーム描画装置や、プラズマ発生用高周波電源、電子ビーム金属3Dプリンターなどの製造販売および保守を行っています。最先端テクノロジーに挑戦する半導体メーカーなどが主な顧客です。

装置の販売代金や保守・サービスによる手数料を収益源としています。運営は同社や日本電子インスツルメンツに加え、米国や欧州、アジアの現地法人が連携して事業を展開しています。

医用機器事業


病院や検査機関向けに自動分析装置や臨床検査情報処理システム、全自動アミノ酸分析機などの製造販売および保守サービスを提供しています。

医療機関等に対する機器の販売代金や保守サービス料から収益を得ています。なお、同事業は2026年4月にシスメックスへ譲渡されています。事業運営は同社や日本電子山形のほか、欧州の子会社が行っていました。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の連結業績を見ると、売上高は2025年3月期まで右肩上がりで成長を続けましたが、2026年3月期は需要減少等の影響により減収となりました。経常利益も2025年3月期をピークに減益に転じていますが、当期利益は投資有価証券評価損の減少により過去最高水準を確保しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,384億円 1,627億円 1,743億円 1,967億円 1,794億円
経常利益 163億円 235億円 300億円 344億円 286億円
利益率(%) 11.8% 14.4% 17.2% 17.5% 16.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 123億円 178億円 217億円 187億円 221億円

(2) 損益計算書


売上高の減少に伴い、売上総利益および営業利益ともに前期比で減少しています。利益率も低下傾向にあり、特に営業利益率は前期の18.0%から14.5%へと低下し、本業の収益性に影響が出ています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,967億円 1,794億円
売上総利益 924億円 830億円
売上総利益率(%) 47.0% 46.3%
営業利益 355億円 260億円
営業利益率(%) 18.0% 14.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が188億円(構成比33%)、研究開発費が114億円(同20%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の理科学・計測機器事業は電子顕微鏡の引き合いは堅調でしたが、米国政府の関連予算削減などの影響で減収となりました。産業機器事業は主要顧客の設備投資遅れが響き、医用機器事業も微減となるなど、全セグメントで減収を記録しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
理科学・計測機器事業 1,248億円 1,163億円
産業機器事業 565億円 481億円
医用機器事業 154億円 149億円
連結(合計) 1,967億円 1,794億円


当期のキャッシュ・フローは営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスの「健全型」です。営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の状態を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 231億円 160億円
投資CF -9億円 -138億円
財務CF -171億円 -2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も59.9%といずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「創造と開発」を基本とし、常に世界最高の技術に挑戦し、製品を通じて科学の進歩と社会の発展に貢献することを経営理念としています。また、長期ビジョン「ビジョン2035」において、「最先端テクノロジーに挑戦するお客様とイノベーションを共創する、グローバルリーダーになる」ことを掲げています。

(2) 企業文化


経営理念である「創造と開発」を体現するため、法令遵守と社会倫理を重視する「JEOLグループ グローバル行動規範」を制定しています。また、企業倫理を浸透させ、良き企業風土を醸成するための「KF活動(より良い企業風土を目指した活動)」を展開し、従業員一人ひとりの意識向上を図る文化が定着しています。

(3) 経営計画・目標


2025年度から2029年度までを対象とする中期経営計画「Evolving Growth 2.0 -A New Horizon-」を策定し、資本効率を重視した経営を推進しています。最終年度である2029年度の達成目標として以下の数値を掲げています。

* 売上高営業利益率:21.5%
* 自己資本当期純利益率(ROE):15%以上
* 投下資本利益率(ROIC):15%以上

(4) 成長戦略と重点施策


従来取り組んできた「YOKOGUSHI」戦略を深化させた「YOKOGUSHI 2.0」を推進し、分野別のソリューション提供基盤を強化します。高い市場成長性が見込まれ、同社のニッチな技術が活かせる半導体・ライフサイエンス分野を重点領域に設定し、課題解決型のソリューションを創出してグローバルリーダーを目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


中期経営計画の実現に向け、半導体・ライフサイエンス分野の専門性を持つ人材の採用を強化しています。戦略ベースの組織設計による機動的な人員配置や、一人ひとりの当事者意識の醸成、高いエンゲージメントを保つウェルビーイング経営の実践を人的資本戦略の中核に据え、成長性と収益性の向上につなげています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.6歳 15.9年 8,575,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.3%
男性育児休業取得率 88.0%
男女賃金差異(全労働者) 83.9%
男女賃金差異(正規労働者) 86.5%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 113.9%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性新卒採用比率(24.2%)、障がい者雇用率(2.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 各セグメントの需要変動リスク


主力である理科学・計測機器事業は官公庁の研究開発予算や民間企業の設備投資動向に、産業機器事業は市況の急激な変動による設備投資動向に大きく影響を受けます。これらの需要が減少した場合、同社グループの業績および財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 為替および金利の変動リスク


同社グループの売上高の約7割を海外が占めるため、為替相場の中長期的な変動が業績に影響を及ぼします。また、有利子負債の調達コスト上昇につながる金利変動リスクも負っており、これらが経営成績および財務状況等に悪影響を与える可能性があります。

(3) 研究開発と人材育成に関するリスク


最先端機器のグローバルでの競争力強化のため、継続的な新製品の市場投入が不可欠であり多額の研究開発投資を行っています。十分な需要が確保できない場合や、製品開発に必要な人材の確保・育成が進まない場合、同社の企業成長および経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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