ヒロセ電機 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヒロセ電機 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場のコネクタ専業メーカー。主力の多極コネクタや同軸コネクタ等を製造・販売し、スマートフォンや自動車向けに展開する。当期の業績は、売上収益が1894億円で前期比増収、親会社の所有者に帰属する当期利益は330億円で増益となった。


※本記事は、ヒロセ電機株式会社 の有価証券報告書(第78期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. ヒロセ電機ってどんな会社?


コネクタ専業メーカーとして多極・同軸コネクタを軸にグローバル展開し、高収益体質を維持する企業です。

(1) 会社概要


同社は1937年に広瀬商会として創業し、1948年に株式会社へ改組しました。1963年に現在の社名へ変更し、1984年には東京証券取引所市場第一部に上場を果たしています。コネクタの専業メーカーとして成長を続け、2024年には岩手県に東北アドバンスト・テクノロジーセンターを設立するなど、技術開発体制を強化しています。

2025年3月31日現在、連結従業員数は4,878名、単体では1,012名です。大株主構成を見ると、筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は公益財団法人です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 13.79%
公益財団法人 ヒロセ財団 9.27%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 8.48%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性2名の計15名で構成され、女性役員比率は13.0%です。代表取締役社長は鎌形 伸氏が務めています。社外取締役比率は46.7%です。

氏名 役職 主な経歴
鎌形 伸 代表取締役社長 1990年NTTデータ入社。2002年同社入社。経営企画部長、IT統括部長、管理本部長等を経て、2025年6月より現職。
石井 和徳 取締役会長 1982年同社入社。技術本部副本部長、営業本部副本部長、経営革新推進室長等を歴任。2012年代表取締役社長に就任し、2025年6月より現職。
小原 秀 取締役技術本部長 1989年同社入社。産機事業部事業部長、自動車事業部事業部長等を歴任。2022年技術本部副本部長を経て、2023年6月より現職。
佐藤 博志 取締役営業本部長 1993年三井物産入社。キーエンスを経て2017年同社入社。海外事業部長等を歴任し、2020年4月より現職。
郡司 吉広 取締役製作本部長 1982年郡山ヒロセ電機入社。宮古工場長、製作本部副本部長等を歴任し、2024年6月より現職。
松永 光生 取締役管理本部長 1994年サンエス入社。1999年同社入社。米国現地法人Sr. Vice President、グローバルSCM部長等を歴任し、2025年6月より現職。
李 相燁 取締役 1984年韓国火薬入社。1989年ヒロセコリア入社。同社社長等を務め、2018年6月より現職。
森 敬 取締役(監査等委員) 1986年同社入社。経営革新推進室長、社長室長を経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、元永 徹司(イクティス代表取締役)、西松 正記(元野村土地建物社長)、坂田 誠二(元リコーCTO)、各務 洋子(駒澤大学学長)、三浦 健太郎(ティー・ピー・エス研究所監査役)、髙嶋 健司(公認会計士)、石田 晴美(文教大学教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「多極コネクタ」「同軸コネクタ」および「その他」事業を展開しています。

(1) 多極コネクタ事業

丸形コネクタ、角形コネクタ、プリント配線板用コネクタなどを製造・販売しています。主な顧客はスマートフォン、通信機器、自動車、産業機器メーカーなどで、幅広い分野で使用されています。

収益は顧客への製品販売により得ています。運営は主に同社が行い、製造は東北ヒロセ電機や海外子会社等が担当し、販売は同社および米国・欧州・アジアの販売子会社が行っています。

(2) 同軸コネクタ事業

高周波信号を接続する同軸コネクタや光コネクタを製造・販売しています。無線LAN、Bluetooth通信、自動車のGPSアンテナ接続、無線通信インフラなどで使用されています。

収益は製品の販売対価として得ています。運営は同社が中心となり、製造は一関ヒロセ電機や海外製造子会社、販売は各国の販売拠点が担っています。

(3) その他事業

上記セグメントに含まれないマイクロスイッチやコネクタ用治工具類などを取り扱っています。

収益は製品や治工具の販売から得ています。運営は同社およびヒロセコリア等が担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上収益は1300億円台から1800億円台の間で推移しており、直近の2025年3月期には過去5年間で最高となる1894億円を記録しました。税引前利益も400億円前後で推移し、利益率は20%を超える高い水準を維持しています。当期利益も300億円台を回復し、堅調な業績を示しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 1,335億円 1,637億円 1,832億円 1,655億円 1,894億円
税引前利益 283億円 431億円 486億円 388億円 462億円
利益率(%) 21.2% 26.3% 26.5% 23.4% 24.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 199億円 314億円 346億円 265億円 330億円

(2) 損益計算書


売上収益は前期の1655億円から1894億円へ増加しました。売上総利益も増加し、営業利益率は20.6%から22.5%へ改善しています。コストコントロールと増収効果により、収益性が向上していることが読み取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 1,655億円 1,894億円
売上総利益 725億円 854億円
売上総利益率(%) 43.8% 45.1%
営業利益 340億円 427億円
営業利益率(%) 20.6% 22.5%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が87億円(構成比20%)、給与及び賞与手当が46億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の多極コネクタ事業は売上が増加し、利益も大幅に伸長して利益率23.1%を記録しました。同軸コネクタ事業も増収増益となり、高い利益率を維持しています。その他事業は減収となり、営業損失を計上しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
多極コネクタ 1,485億円 1,708億円 300億円 394億円 23.1%
同軸コネクタ 117億円 137億円 33億円 34億円 24.7%
その他 53億円 49億円 7億円 -1億円 -2.0%
連結(合計) 1,655億円 1,894億円 340億円 427億円 22.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、コネクタ製品を中心に、マイクロスイッチ類やコネクタ用治工具類も手掛けています。

営業活動によるキャッシュ・フローは大幅に増加し、事業活動から潤沢な資金を生み出しました。一方、投資活動によるキャッシュ・フローは大きく減少しており、これは将来の成長に向けた設備投資や資産取得が進められたことを示唆しています。財務活動によるキャッシュ・フローも減少し、主に株主への配当金支払いが要因となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 410億円 557億円
投資CF -139億円 -429億円
財務CF -282億円 -167億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「英知をつなげる小さな会社」という企業理念を掲げ、コネクタ専業メーカーとして技術革新を推進し、エレクトロニクス業界の発展に寄与することを使命としています。お客様の信頼を得られるメーカーとしての責任を果たし、強固な財務体質を維持しながら成長し続けることを基本方針としています。

(2) 企業文化


同グループは「サステナビリティ基本方針」に基づき、製品を通じて環境負荷軽減や社会貢献を目指す姿勢を持っています。また、法令遵守や企業倫理に基づいた誠実な行動、環境保護への配慮を重視しています。「人の成長・活性化」を掲げ、従業員が活き活きと働ける環境作りやチャレンジ精神を尊重する文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、中期経営計画「G-WING」において、高収益体制の維持と中長期的な売上伸長を目指しています。経営指標としては、IFRSベースの営業利益率およびROE(自己資本利益率)を重視しています。

* 2028年度までにROE10%の安定的達成
* 中期的にDOE(株主資本配当率)5%

(4) 成長戦略と重点施策


今後の競争激化を見据え、自動車、産業用機器、通信用機器、スマートフォン・高度情報端末分野を重点市場として開拓を進めています。また、市場ニーズに対応した高付加価値新製品の開発力強化、生産効率化、グローバル化の推進、リスク分散化による製品安定供給を図り、企業価値の増大に取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人の成長・活性化」を会社の継続成長の鍵と位置づけ、「ヒロセ人としてのベースマインドの醸成」「自律型人財の育成」「リーダー人財の育成」「専門人財の育成」に取り組んでいます。また、人権尊重と安全な職場環境の確保に加え、従業員が心身ともに健康で活き活きと働ける社内環境の整備を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.8歳 13.6年 8,084,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 1.8%
男性労働者の育児休業取得率 63.2%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 50.9%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 52.8%
労働者の男女の賃金の差異(非正規) 28.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性の平均勤続年数(9.4年)、新規入社者における女性の割合(24.1%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) スマートフォン市場への依存

同社グループの電子部品事業はスマートフォン市場への依存度が比較的高く、同市場の需要動向や技術変化によって業績が大きく変動する可能性があります。市場ニーズの変化に対応できない場合、販売機会の喪失につながる恐れがあります。

(2) 海外展開に伴うリスク

海外売上比率が高く生産拠点も海外に展開しているため、各国の政治・経済情勢、為替変動、法規制の変更、地政学的リスクなどの影響を受ける可能性があります。予期せぬ事象が発生した場合、事業活動に支障をきたす恐れがあります。

(3) グループ外の組立外注及び供給網リスク

生産の一部を外部協力会社に委託しており、委託先での生産トラブルや部品・材料メーカーからの供給遅延が発生した場合、生産計画の未達やコスト増加、顧客への納期遅延が生じる可能性があります。

(4) 人財確保に関するリスク

急激な環境変化に対応するためには専門性やリーダーシップを持つ人材の確保が不可欠ですが、人材獲得競争の激化により必要な人材を十分に確保できない場合や、人材流出が生じた場合、グループの競争力低下や事業運営に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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