マクセル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

マクセル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

マクセルは東京証券取引所プライム市場に上場し、電池や光学部品、機能性部材料の製造・販売を主力とします。直近の業績は、産業用一次電池などが好調なものの、一部事業の販売減や原材料高騰が影響し、売上高1,294億円、経常利益86億円と減収減益ですが、子会社持分譲渡等により最終利益は大幅な増益です。


※本記事は、マクセル株式会社の有価証券報告書(第80期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. マクセルってどんな会社?


電池やテープ、光学部品などの製造販売を手がけ、アナログコア技術を強みとするメーカーです。

(1) 会社概要


1960年に設立され、1977年に東京・大阪証券取引所第二部に上場し、1980年に第一部へ指定替えとなりました。2010年に日立製作所の完全子会社となり一度上場廃止しましたが、2014年に東証一部へ再上場を果たしました。近年は持株会社体制への移行と解消を経て、現在の体制となっています。

同社グループの従業員数は連結で3,765名、単体で1,286名です。筆頭株主ならびに第3位株主は資産管理業務などを行う信託銀行で、第2位株主は外国法人の信託銀行となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行 15.63%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001 10.66%
日本カストディ銀行 6.87%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役 取締役社長は中村啓次氏が務めています。社外取締役の比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
中村啓次 代表取締役取締役社長 1990年同社入社。エナジー事業本部副事業本部長などを経て、2020年代表取締役取締役社長に就任。2024年より現職。
増田憲俊 取締役 1987年同社入社。財務部長や執行役員財務部長を歴任。2019年取締役財務部長に就任し、2024年より現職。
高尾伸一郎 取締役 1991年同社入社。エナジー事業本部長などを経て、2023年取締役に就任。2026年より現職。
鈴木啓之 取締役(常勤監査等委員) 1983年同社入社。経理本部副本部長や執行役員を経て、2020年取締役(常勤監査等委員)に就任し現職。


社外取締役は、村瀬幸子(弁護士)、相神一裕(元JVCケンウッド社長)、秦和義(元コニカミノルタ常務執行役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「エネルギー」「機能性部材料」「光学・システム」「価値共創事業」の4つの事業を展開しています。

エネルギー


耐熱コイン形リチウム電池などの一次電池や、全固体電池などの二次電池を提供し、主に医療機器やインフラ、車載関連の顧客を対象としています。
販売や製造はマクセルサクラや海外子会社が運営しており、製品の販売対価を収益源としています。

機能性部材料


建築・建材用や半導体製造工程用の粘着テープ、塗布型セパレータなどの産業用部材を提供しています。
運営はマクセルクレハや宇部マクセル京都などが担当し、企業顧客からの製品販売対価が主な収益源です。

光学・システム


車載カメラレンズユニットなどの車載光学部品や、半導体DMSなどの半導体関連製品を提供しています。
運営はマクセルフロンティアや海外子会社が行い、顧客からの製品販売対価やライセンス収入を収益としています。

価値共創事業


健康・理美容製品や電設工具などの小型電気機器を提供し、主に一般消費者や法人顧客を対象としています。
マクセルイズミなどが製造・販売を担当し、製品の販売対価が主な収益源です。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は1,300億円前後で推移しており、経常利益は60億円から90億円台の範囲で安定的な黒字を確保しています。当期利益は4期前に赤字を計上しましたが、以降は回復し、直近では子会社持分譲渡などの特別利益も寄与して83億円と大きく伸長しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,382億円 1,328億円 1,291億円 1,298億円 1,294億円
経常利益 99億円 67億円 98億円 98億円 86億円
利益率(%) 7.2% 5.1% 7.6% 7.5% 6.6%
当期利益(親会社所有者帰属) -37億円 52億円 75億円 41億円 83億円

(2) 損益計算書


売上高は前期とほぼ同水準を維持していますが、一部の原材料費高騰や棚卸資産の評価損などが影響し、売上総利益率および営業利益率はやや低下する結果となりました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,298億円 1,294億円
売上総利益 332億円 318億円
売上総利益率(%) 25.6% 24.6%
営業利益 93億円 79億円
営業利益率(%) 7.2% 6.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が50億円(構成比21%)、支払手数料が19億円(同8%)を占めています。

(3) セグメント収益


機能性部材料や光学・システムが売上高を伸ばしたものの、半導体関連製品の回復遅延や原材料費高騰などが影響し、機能性部材料を除く全セグメントで減益となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
エネルギー 425億円 425億円 24億円 21億円 4.9%
機能性部材料 318億円 326億円 12億円 15億円 4.5%
光学・システム 359億円 364億円 44億円 35億円 9.7%
価値共創事業 196億円 179億円 13億円 8億円 4.6%
連結(合計) 1,298億円 1,294億円 93億円 79億円 6.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 98億円 84億円
投資CF -80億円 -145億円
財務CF -77億円 29億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は48.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


創業の精神である「和協一致 仕事に魂を打ち込み 社会に貢献する」を社是とし、「独創技術のイノベーション追求を通じて持続可能な社会に貢献する」ことをミッションに掲げています。また、「独自のアナログコア技術で、社員・顧客・社会にとってのMaximum Excellence(最高の価値)を創造する」というビジョンを目指しています。

(2) 企業文化


ステークホルダーに対して「Technological Value(技術価値)」「Customer Value(顧客価値)」「Social Value(社会価値)」の3つの価値創出を約束し、持続可能な社会の実現に挑戦する姿勢を重視しています。また、ブランドスローガンとして「Within, the Future -未来の中に、いつもいる-」を掲げています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画「MEX26」において、2027年3月期を最終年度とする経営目標を掲げ、事業ポートフォリオ改革や積極的な設備投資を推進しています。

* 連結売上高 1,500億円
* 連結営業利益 12,000百万円
* 連結営業利益率 8.0%
* ROIC 7.5%
* ROE 10.0%

(4) 成長戦略と重点施策


「アナログコア技術」に立脚し、「モビリティ」「ICT/AI」「人/社会インフラ」の3分野を注力領域と定めています。耐熱コイン形リチウム電池や車載カメラレンズユニット、塗布型セパレータなどの成長事業へ重点的に投資を行うとともに、新規事業である全固体電池の早期業績貢献を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「多様な人財の獲得」「持続的な育成」「適正な配置」「働きがいのある職場環境の整備」「経営参画意識の向上」「挑戦的な風土醸成」の6つを人財戦略の柱としています。自律的・主体的に行動する人財の育成に注力するとともに、成長分野へ人財リソースを重点的にシフトしています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.6歳 18.8年 7,696,374円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.8%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全従業員) 72.4%
男女賃金差異(正規雇用従業員) 76.1%
男女賃金差異(パート・有期雇用者) 63.5%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性採用比率の実績(技術系25%)、女性採用比率の実績(事務・営業系43%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済動向による影響

日本、欧米、中国や新興国等の経済環境の動向は、個人消費や民間設備投資の減少を通じて、同社グループが提供する製品・サービスの需要減少や価格競争の激化をもたらし、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 災害、国際情勢等による影響

地震等の自然災害、疫病、戦争、テロ、暴動などが発生した場合、世界規模で展開する同社の生産・販売活動が停滞し、生産設備への損害やサプライチェーンの寸断によって業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 為替相場の変動による影響

同社グループは海外売上高の割合が高く、米ドルをはじめとする現地通貨建てでの製品輸出や原材料輸入を行っているため、為替相場の急激な変動が円建ての経営成績や財政状態に直接的な影響を与える可能性があります。

(4) 材料費等の変動による影響

同社の製品は石油化学製品や希少物質を原材料とするものが多く、原油価格の変動や国際市況の急激な変化によって原材料価格が高騰した場合、製造コストの増加を通じて同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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