マクセル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

マクセル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場。独自のアナログコア技術を核に、電池などのエネルギー事業、粘着テープなどの機能性部材料、光学部品、理美容機器などの製造販売を行います。直近決算では、一次電池や理美容製品が好調で増収、営業増益となりましたが、構造改革費用等の計上により最終利益は減益となりました。


※本記事は、マクセル株式会社 の有価証券報告書(第79期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. マクセルってどんな会社?


電池や粘着テープ、光学部品、理美容機器など、独自のアナログコア技術を活用した製品を展開する企業です。

(1) 会社概要


同社は1960年9月にマクセル電気工業として設立されました。2010年4月に日立製作所の完全子会社となり上場廃止となりましたが、2014年3月に東証一部へ再上場を果たしました。その後、2017年10月に持株会社体制へ移行しましたが、2021年10月に再びマクセルへと商号変更し、持株会社体制を解消しています。

同社グループの従業員数は連結3,797名、単体1,296名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位はカストディ業務を行う米国銀行のステート・ストリート・バンク・アンド・トラスト・カンパニーです。上位株主は主に国内外の金融機関や信託銀行等の機関投資家が占めています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(注)1 14.95%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001 9.02%
日本カストディ銀行(注)1 7.77%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役取締役社長は中村 啓次氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
中村 啓次 代表取締役取締役社長 1990年同社入社。エナジー事業本部副事業本部長、執行役員などを経て、2018年マクセル代表取締役取締役社長に就任。2020年6月より現職。
太田 博之 取締役 1983年同社入社。技術統轄本部生産技術本部長、光学・システム事業本部長、モノづくり本部長兼QA本部長などを歴任。2024年4月取締役常務執行役員モノづくり本部長。2025年4月より現職。
高尾 伸一郎 取締役 1991年同社入社。米国販売会社マネージャー、台湾およびアジア現地法人社長、エナジー事業本部長などを歴任。2024年4月取締役執行役員営業統括本部長より現職。
増田 憲俊 取締役 1987年同社入社。財務部長、マクセル取締役経理部長、同社執行役員財務部長などを歴任。2024年4月取締役常務執行役員より現職。
鈴木 啓之 取締役(常勤監査等委員) 1983年同社入社。経理本部副本部長、執行役員、マクセル取締役、同社監査役などを経て、2020年6月より現職。


社外取締役は、村瀬 幸子(弁護士)、相神 一裕(元JVCケンウッド代表取締役)、秦 和義(元コニカミノルタ常務執行役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「エネルギー」「機能性部材料」「光学・システム」「ライフソリューション」の4つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) エネルギー


民生用および産業用リチウムイオン電池、リチウムイオン電池用電極、コイン形リチウム二次電池、リチウム一次電池、ボタン電池、充電器・組電池、電極応用製品などの製造販売を行っています。また、太陽光発電による売電事業も手掛けています。

主な収益源は、各種電池製品の販売代金です。運営は主に同社および中国の製造子会社Wuxi Maxell Energy Co., Ltd.、各国の販売子会社などが行っています。

(2) 機能性部材料


粘着テープ、機能性材料、塗布型セパレータ、工業用ゴム製品などの製造販売を行っています。半導体製造工程用テープや建築・建材用テープ、車載用リチウムイオン電池の材料などが含まれます。

主な収益源は、テープや部材等の製品販売代金です。運営は同社、インドネシアのPT. SLIONTEC EKADHARMA INDONESIA、マクセルクレハ、宇部マクセル京都などが行っています。

(3) 光学・システム


車載カメラ用レンズユニット、LEDヘッドランプレンズなどの光学部品、電鋳・精密部品、半導体関連組込みシステム、金型・合成樹脂成形品、RFIDシステム、ICカード、映像機器などの製造販売を行っています。

主な収益源は、光学部品やシステム製品の販売代金およびライセンス収入です。運営は同社、マレーシアのMaxell Tohshin (Malaysia) Sdn. Bhd.、マクセルフロンティアなどが行っています。

(4) ライフソリューション


シェーバーやドライヤーなどの健康・理美容機器、小型電気機器、音響機器、光ディスク、充電機器、アクセサリー、乾電池、電設工具などの製造販売を行っています。

主な収益源は、コンシューマー向け製品等の販売代金です。運営は主にマクセルイズミや中国のGANGQUAN PRECISION (SHENZHEN) CO., LTD.などが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は1,300億円前後で推移しており、直近の2025年3月期は前期比で微増となりました。利益面では、経常利益は高水準を維持していますが、当期純利益に関しては構造改革に伴う費用の計上などにより、前期から減少しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,391億円 1,382億円 1,328億円 1,291億円 1,298億円
経常利益 38億円 99億円 67億円 98億円 98億円
利益率(%) 2.8% 7.2% 5.1% 7.6% 7.5%
当期利益(親会社所有者帰属) -2億円 -239億円 81億円 64億円 83億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上高は横ばいながら、売上原価の低減により売上総利益および利益率が改善しました。営業利益も増加し、本業の収益性は向上しています。一方で、販売費及び一般管理費は増加傾向にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,291億円 1,298億円
売上総利益 305億円 332億円
売上総利益率(%) 23.6% 25.6%
営業利益 81億円 93億円
営業利益率(%) 6.3% 7.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が98億円(構成比41%)、支払手数料が25億円(同11%)、荷造及び発送費が23億円(同10%)を占めています。売上原価率は74.4%です。

(3) セグメント収益


エネルギーセグメントは一次電池が好調で増収増益となりました。機能性部材料とライフソリューションも増収となりましたが、光学・システムは車載カメラ用レンズユニット等の減少により減収減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
エネルギー 350億円 366億円 5億円 19億円 5.2%
機能性部材料 301億円 318億円 14億円 12億円 3.7%
光学・システム 414億円 359億円 56億円 44億円 12.3%
ライフソリューション 227億円 255億円 6億円 18億円 7.2%
調整額 -5億円 -4億円 - - -
連結(合計) 1,291億円 1,298億円 81億円 93億円 7.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 142億円 98億円
投資CF -48億円 -80億円
財務CF -95億円 -77億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は55.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する」ことを基本理念とし、「独創技術のイノベーション追求を通じて持続可能な社会に貢献する」ことをミッションに掲げています。また、独自のアナログコア技術を用いて、社員・顧客・社会にとっての「Maximum Excellence(最高の価値)」を創造する価値創出企業となることをビジョンとしています。

(2) 企業文化


同社は創業の精神である「和協一致」「仕事に魂を打ち込み」「社会に奉仕したい」を継承し、「和協一致 仕事に魂を打ち込み 社会に貢献する」を社是(スピリット)としています。また、ステークホルダーに提供すべき価値として「Technological Value(技術価値)」「Customer Value(顧客価値)」「Social Value(社会価値)」の3つのバリューを定めています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画「MEX26」の最終年度である2027年3月期の経営目標として、以下の数値を掲げています。

* 連結売上高:1,500億円
* 連結営業利益:120億円
* 連結営業利益率:8.0%
* ROIC:7.5%
* ROE:10.0%

(4) 成長戦略と重点施策


「モビリティ」「ICT/AI」「人/社会インフラ」を注力3分野と定め、独自のアナログコア技術(混合分散、精密塗布、高精度成形)を活用した製品・サービスの拡大を図ります。具体的には、全固体電池の早期事業化や産業機器への展開、医療機器用一次電池の増産、半導体関連製品の強化などを進めます。また、事業ポートフォリオ改革を加速させ、資本効率の向上と企業価値の最大化を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、人材の育成と活用を経営の最優先事項の一つと位置付けています。多様な人材の獲得、持続的な育成、適正な配置、働きがいのある職場環境の整備などを戦略の柱とし、ダイバーシティ&インクルージョンの深化や従業員エンゲージメントの向上に取り組みます。また、AI分析を活用した若手人材の離職防止や、自律型・グローバル人材の育成にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.8歳 19.4年 7,460,919円


※平均年間給与は第79期事業年度(2024年4月1日~2025年3月31日)において、賞与及び基準外賃金を含んだものを記載しております。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.6%
男性育児休業取得率 83.3%
男女賃金差異(全労働者) 69.8%
男女賃金差異(正規雇用) 73.5%
男女賃金差異(非正規雇用) 64.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性採用比率(技術系27%)、女性採用比率(事務・営業系88%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済動向による影響


日本、欧米、中国や新興国等の経済環境の動向は業績に影響を及ぼす可能性があります。特に景気後退による個人消費や設備投資の減少は、製品需要の減少や価格競争の激化を招く恐れがあります。また、エネルギー、機能性部材料、光学・システム事業は企業の投資動向に、価値共創事業は個人の消費動向に影響を受けやすい特性があります。

(2) 災害、国際情勢等による影響


生産・販売活動をグローバルに展開しているため、自然災害、疫病、戦争、テロ等の発生はリスクとなります。特に中国に多くの製造拠点や協力工場を有しており、同国の政治・経済的要因や社会環境の変化による予測不能な事態が発生した場合、供給体制や業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 為替相場の変動による影響


海外売上高の割合が高く、米ドル等の外貨建ての輸出入取引を行っているため、為替変動リスクにさらされています。為替予約などのヘッジ策を講じていますが、急激な変動があった場合、円換算後の経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

(4) 材料費等の変動による影響


製品の多くは石油化学製品を原材料としており、一部には希少物質を使用するものもあります。原油価格や国際市況の変動により原材料価格が大きく変動した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。調達ルートの見直しや代替材料の開発等の対策を講じていますが、完全に影響を回避できる保証はありません。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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