※本記事は、株式会社大真空 の有価証券報告書(第62期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 大真空ってどんな会社?
水晶デバイス専業メーカーとして、人工水晶の育成から製品までを一貫生産し、世界的なシェアを持っています。
■(1) 会社概要
1963年に兵庫県神戸市で設立され、水晶振動子部品の生産を開始しました。1983年に大阪証券取引所市場第二部へ上場し、1991年には同市場第一部へ指定されました。その後、2013年に東京証券取引所市場第一部へ上場し、2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しました。1993年の中国天津での製造子会社設立など、早期からグローバル展開を進めています。
同社グループの従業員数は連結3,243名、単体656名です。大株主については、筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は創業家関連と見られる一般財団法人長谷川福祉会、第3位も信託銀行となっています。特定の事業会社による支配色は薄く、機関投資家や創業家関連が上位を占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 10.91% |
| 一般財団法人長谷川福祉会 | 7.55% |
| 株式会社日本カストディ銀行(信託口) | 3.43% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は飯塚 実氏が務めています。社外取締役比率は44.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 飯塚 実 | 代表取締役社長事業統括兼生産本部長 | 1985年入社。生産本部長、プロダクト本部長などを経て2021年より現職。 |
| 川﨑 正志 | 常務取締役素材本部長 | 1978年入社。生産技術部長、徳島事業所長、素材本部長などを経て2021年より現職。 |
| 長谷川 晋平 | 常務取締役副事業統括 | 2006年入社。営業戦略部長、社長室長、営業本部長などを経て2024年より現職。 |
| 長谷川 幸平 | 取締役管理統括兼アライアンス推進室長 | 2003年入社。新事業推進本部長などを経て2024年より現職。 |
| 広嶋 敏郎 | 取締役(常勤監査等委員) | 1984年入社。生産本部長などを経て2024年より現職。 |
社外取締役は、小寺利明(小寺会計事務所代表)、飯島敬子(弁護士)、牛島慶太(牛島慶太税理士事務所代表)、花﨑敏明(花﨑税理士事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「北米」「欧州」「中国」「台湾」「アジア」の報告セグメントで事業を展開しています。
■(1) 日本
水晶応用電子部品の製造および販売を行っています。主な顧客は国内の電子機器メーカーや自動車関連メーカー等です。マザー工場としての機能や研究開発拠点も有しており、高付加価値製品の開発・製造を担っています。
収益は、顧客への製品販売による対価を得ています。運営は主に同社が行っており、製造の一部を連結子会社の九州大真空に委託しています。
■(2) 北米
北米地域における水晶応用電子部品の販売を行っています。自動車市場や通信インフラ市場などが主なターゲットであり、現地の電子機器メーカーや日系企業の現地法人などが顧客となります。
収益は、製品販売による対価を得ています。運営は、米国の販売子会社であるDAISHINKU(AMERICA)CORP.が行っています。
■(3) 欧州
欧州地域における水晶応用電子部品の販売を行っています。自動車産業が盛んな地域であり、車載向け製品の販売が主要な事業活動の一つとなっています。
収益は、製品販売による対価を得ています。運営は、ドイツの販売子会社であるDAISHINKU(DEUTSCHLAND)GmbHが行っています。
■(4) 中国
中国地域における水晶応用電子部品の製造および販売を行っています。スマートフォンやPCなどの民生機器の生産拠点が多く集積しており、同社グループにとっても重要な市場かつ生産拠点です。
収益は、製品販売による対価を得ています。運営は、天津大真空有限公司などの製造子会社や、上海大真空国際貿易有限公司などの販売子会社が行っています。
■(5) 台湾
台湾における水晶応用電子部品の製造および販売を行っています。PC関連や半導体関連の企業が多く、重要な市場の一つです。また、有力な製造拠点も有しています。
収益は、製品販売による対価を得ています。運営は、加高電子股份有限公司およびその子会社が行っています。同社は台湾証券取引所に上場している連結子会社です。
■(6) アジア
ASEAN地域などにおける水晶応用電子部品の製造および販売を行っています。日系企業の生産拠点も多く進出しており、通信、民生、車載など幅広い用途向けの製品を供給しています。
収益は、製品販売による対価を得ています。運営は、インドネシアの製造子会社PT.KDS INDONESIAや、シンガポール、タイの販売子会社などが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、2022年3月期に売上高413億円、経常利益65億円とピークを記録しましたが、その後は減収減益傾向にあります。特に直近の2025年3月期は、経常利益が4億円まで縮小し、当期利益も低水準となっています。利益率の低下が顕著であり、収益性の回復が急務です。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 332億円 | 413億円 | 384億円 | 393億円 | 386億円 |
| 経常利益 | 25億円 | 65億円 | 51億円 | 32億円 | 4億円 |
| 利益率(%) | 7.6% | 15.9% | 13.3% | 8.1% | 1.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 9億円 | 32億円 | 31億円 | 9億円 | 2億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上高は微減ですが、利益面での落ち込みが目立ちます。売上総利益率は約24%台を維持していますが、販管費の増加等により営業利益率は5.4%から2.4%へと半減しました。コストコントロールと付加価値の高い製品へのシフトが課題となっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 393億円 | 386億円 |
| 売上総利益 | 98億円 | 93億円 |
| 売上総利益率(%) | 24.9% | 24.1% |
| 営業利益 | 21億円 | 9億円 |
| 営業利益率(%) | 5.4% | 2.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当及び福利厚生費が27億円(構成比32%)、研究開発費が22億円(同26%)を占めています。研究開発への投資を継続していることがわかります。
■(3) セグメント収益
セグメント別の状況を見ると、日本セグメントは赤字が拡大しており厳しい状況です。一方、台湾セグメントは16億円の利益を上げており、グループ全体の収益を支えています。北米・欧州は黒字を維持していますが、規模は限定的です。アジア地域での収益力強化も課題となっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | 78億円 | 70億円 | 1億円 | -8億円 | -12.1% |
| 北米 | 24億円 | 25億円 | 0億円 | 0億円 | 1.6% |
| 欧州 | 38億円 | 39億円 | 0億円 | 0億円 | 0.8% |
| 中国 | 123億円 | 127億円 | -1億円 | 0億円 | 0.1% |
| 台湾 | 103億円 | 98億円 | 11億円 | 16億円 | 15.9% |
| アジア | 27億円 | 29億円 | 5億円 | 1億円 | 3.0% |
| 調整額 | -346億円 | -372億円 | 5億円 | 0億円 | - |
| 連結(合計) | 393億円 | 386億円 | 21億円 | 9億円 | 2.4% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
大真空のキャッシュ・フローの状況についてご説明します。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益などにより減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、主に有形固定資産の取得による支出により使用額が増加しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済による支出により使用額となりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 82億円 | 23億円 |
| 投資CF | -40億円 | -63億円 |
| 財務CF | 11億円 | -17億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは社是である「信頼」を基に、グローバル企業として世界中の人々に信頼される企業グループであり続けることを経営ビジョンとしています。「信頼」を合言葉に、高い技術力と強い企業力によって、顧客に必要とされ続けるリーディング企業を目指しています。
■(2) 経営文化
「人と人のつながり」を大切にする精神を重視し、「社員全員の瞳が輝く企業」を目指す文化を持っています。創業60周年を機に策定された長期経営計画に基づき、競争優位性を高めるための独自技術や製品開発に挑戦する姿勢を大切にしています。また、安定供給と環境対応の両立を重要課題と捉えています。
■(3) 経営計画・目標
10年長期経営計画における「OCEAN+2戦略」を推進しており、現在は第二中期経営計画「基盤確立フェーズ」にあります。2027年3月期には過去最高益(営業利益ベース)の達成を目指しており、資本コストや株価を意識した経営として以下の目標数値を掲げています。
* 2027年3月期 ROE:8%以上
* 2027年3月期 ROIC:4.5%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「OCEAN+2戦略」に基づき、独自製品であるArkhシリーズやモールドタイプ発振器の拡充、人工水晶の大型化、ウエハ大判化などを推進しています。また、中国市場への依存度を下げるためのポートフォリオ見直しや、DXによる間接業務の生産性向上、カーボンニュートラルへの取り組みも強化しています。
* Arkhシリーズを軸とした製品ラインアップ拡充
* 本社工場への次世代フルオート生産パイロットライン導入
* 6インチウエハ用人工水晶の量産化
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「所得向上」「やりがい向上」「余裕捻出」の「3M活動」を軸とした人事戦略を展開し、人的資本の最大化を図っています。社員の能力や志向を可視化し、適材適所と適所適材を組み合わせた配置や、専門職のスキルアップ支援、エンゲージメントサーベイの活用などを通じて、組織力の強化と社員の働きがい向上を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.9歳 | 19.2年 | 6,168,072円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.0% |
| 男性育児休業取得率 | 20.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 76.1% |
| 男女賃金差異(正規) | 77.7% |
| 男女賃金差異(非正規) | 56.9% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経営成績の変動リスク
スマートフォンやデジタル家電、自動車向けなどの市場環境の変化により、製品の価格や需要が変動し、業績に影響を与える可能性があります。特に、海外市場の競合激化や技術革新のスピードが速い業界であるため、市場動向の急激な変化に対応できない場合、収益性が低下するリスクがあります。
■(2) 中国市場への依存リスク
同社グループは中国での売上や生産比率が高く、中国エリアへの偏りが業績変動リスクとなっています。地政学的リスクや中国経済の減速、現地の政策変更などが事業活動に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、市場ポートフォリオの見直しによりリスク分散を図っています。
■(3) 為替変動リスク
海外売上高比率が高く、多くの取引が外貨建てで行われているため、為替相場の変動が業績に影響を与える可能性があります。円高が進行した場合、円換算した売上高や利益が目減りするリスクがあります。為替予約などのヘッジ手段を用いていますが、影響を完全に排除することは困難です。



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