ローム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ローム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場。主要事業はLSI、半導体素子等の電子部品製造・販売です。当連結会計年度の業績は、産業機器市場や自動車市場の低迷を受け、売上高は4,485億円と減収、営業損益や当期損益は赤字となり減益でした。


※本記事は、ローム株式会社 の有価証券報告書(第67期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ロームってどんな会社?


LSIや半導体素子、モジュールなどをグローバルに展開する電子部品の総合メーカーです。

(1) 会社概要


1954年に創業者が東洋電具製作所として創業し、抵抗器の開発・販売を開始。1958年に法人改組しました。1969年にはICの開発・販売を開始し、1989年に東京証券取引所市場第一部に上場しました。2009年にはドイツのSiCrystal社を買収し、SiCウエハ製造体制を強化しています。

2025年3月31日現在の従業員数は連結22,608人、単体4,426人です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は音楽文化の普及と振興を行う公益財団法人ロームミュージックファンデーションです。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 14.51%
公益財団法人ロームミュージックファンデーション 10.76%
日本カストディ銀行(信託口) 5.97%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.1%です。代表取締役社長は東 克己氏です。社外取締役比率は54.5%です。

氏名 役職 主な経歴
東 克己 取締役社長(代表取締役)社長執行役員 1989年同社入社。専務取締役事業・戦略担当、取締役専務執行役員LSI事業統括、同COOなどを経て2025年4月より現職。
伊野 和英 取締役常務執行役員パワーデバイス事業担当 1999年同社入社。執行役員パワーデバイス事業本部長、取締役上席執行役員CSO、取締役常務執行役員CFOなどを経て2024年4月より現職。
立石 哲夫 取締役上席執行役員LSI事業、IT担当 2014年同社入社。取締役LSI開発本部長、取締役上席執行役員CTO兼LSI事業統括などを経て2025年4月より現職。
Peter Kenevan 取締役上席執行役員財務担当 マッキンゼー・アンド・カンパニー東京オフィスシニアパートナー、PayPal Pte. Ltd.日本事業統括責任者などを経て2025年6月より現職。
山本 浩史 取締役(常勤監査等委員) 1985年同社入社。執行役員LSI生産本部長、取締役上席執行役員SCM本部長・管理本部長、同CSOなどを経て2025年6月より現職。


社外取締役は、南雲 忠信(元横浜ゴム代表取締役会長)、井上 福子(同志社大学大学院ビジネス研究科教授)、小崎 亜依子(株式会社stream-i代表取締役)、中川 恵太(元りそなカード常務取締役)、小野 友之(小野公認会計士事務所所長)、織田 貴昭(弁護士法人三宅法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「LSI」「半導体素子」「モジュール」および「その他」事業を展開しています。

(1) LSI


アナログ、ロジック、メモリなどの集積回路を開発・製造・販売しています。民生機器、コンピュータ&ストレージ、自動車、産業機器など幅広い市場に向けて製品を提供しています。特に省エネ性能エアコン向けモータドライバや、自動車向けのADAS(先進運転支援システム)用製品などに注力しています。

収益は、顧客である電子機器メーカー等への製品販売から得ています。運営は、同社およびラピスセミコンダクタ、ローム・エレクトロニクス・フィリピンズ・インクなどの国内外のグループ会社が行っています。

(2) 半導体素子


トランジスタ、ダイオード、パワーデバイス、発光ダイオード、半導体レーザーなどを取り扱っています。自動車市場向けのSiC(シリコンカーバイド)デバイスや、産業機器向けのパワーデバイスなどを主力製品としています。

収益は、国内外の顧客への製品販売によるものです。運営は、同社をはじめ、ローム浜松、ローム・ワコー、ローム・アポロ、および中国やマレーシアなどの海外製造子会社が担当しています。

(3) モジュール


プリントヘッド、オプティカル・モジュールなどを提供しています。事務機や決済端末向けのプリントヘッド、スマートフォン向けのセンサモジュールなどを展開しています。

収益は、顧客へのモジュール製品の販売から得ています。運営は、同社およびローム・エレクトロニクス・フィリピンズ・インク、ローム・エレクトロニクス・ダイレン・カンパニー・リミテッドなどのグループ会社が行っています。

(4) その他


主に抵抗器の製造・販売を行っています。産業機器市場や民生機器市場向けの高電力抵抗・シャント抵抗などの高信頼品や、自動車市場向けの汎用抵抗器などを扱っています。

収益は、製品の販売対価として顧客から得ています。運営は、同社およびローム・メカテック・フィリピンズ・インクなどのグループ会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は2023年3月期まで増加傾向にありましたが、直近2期は減少に転じています。経常利益も同様に推移し、2025年3月期は赤字となりました。利益率も低下傾向にあり、当期はマイナスとなっています。当期利益についても、2025年3月期は損失を計上しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 3,599億円 4,521億円 5,079億円 4,678億円 4,485億円
経常利益 407億円 826億円 1,095億円 692億円 -297億円
利益率(%) 11.3% 18.3% 21.6% 14.8% -6.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 419億円 532億円 530億円 113億円 -97億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で減少し、売上総利益率は大きく低下しました。営業利益は赤字に転落しており、収益性が悪化しています。これは市場環境の悪化や構造改革に伴う費用の発生などが影響しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 4,678億円 4,485億円
売上総利益 1,457億円 743億円
売上総利益率(%) 31.1% 16.6%
営業利益 433億円 -401億円
営業利益率(%) 9.3% -8.9%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が572億円(構成比50%)、給与・賞与が219億円(同19%)を占めています。

(3) セグメント収益


LSI事業は減収となり、赤字に転落しました。半導体素子事業も減収で、多額の損失を計上しています。一方、モジュール事業は微減収ながら増益を確保しました。その他事業は減収増益となりました。全体として、主力事業の不振が業績悪化の主要因となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
LSI 2,072億円 2,038億円 213億円 -8億円 -0.4%
半導体素子 2,019億円 1,871億円 130億円 -459億円 -24.5%
モジュール 329億円 326億円 20億円 27億円 8.3%
その他 257億円 250億円 22億円 25億円 10.1%
調整額 -61億円 -63億円 49億円 14億円 -
連結(合計) 4,678億円 4,485億円 433億円 -401億円 -8.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

ロームは、営業活動によるキャッシュ・フローが棚卸資産の減少や減損損失の増加等により増加しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券及び投資有価証券の取得による支出の減少により、支出が減少しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、社債及び長期借入れによる収入の増加等により、プラスとなりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 829億円 840億円
投資CF -4,320億円 -1,157億円
財務CF 2,651億円 391億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「われわれは、つねに品質を第一とする。いかなる困難があろうとも、良い商品を国の内外へ永続かつ大量に供給し、文化の進歩向上に貢献することを目的とする。」という企業目的を掲げています。この目的のもと、エレクトロニクスの技術で社会課題を解決し、人々の豊かな暮らしと社会の発展を支え続ける会社を目指しています。

(2) 企業文化


「経営基本方針」として、品質保証活動の徹底による適正利潤の確保、世界をリードする商品づくりのための固有技術の向上、健全な生活確保と知性の研鑽による社会貢献、有能な人材の育成を掲げています。創業時からの目的・方針に基づき、永続的かつ総合的な企業価値の創造と向上を目指した経営を実践する文化があります。

(3) 経営計画・目標


2021年度から2025年度までの中期経営計画“MOVING FORWARD to 2025”を策定し、「自動車」「海外」での成長実現に取り組んでいます。当初の計画から市場環境が悪化したことを受け、2025年度から2027年度を構造改革期間と位置づけています。

* 2025年度売上高目標:4,400億円

(4) 成長戦略と重点施策


「いかなる市場環境でも利益を創出できる企業体質への立て直し」を最重要課題とし、収益性改善策に取り組んでいます。具体的には、材料事業(Siウエハ事業)からの撤退や人員削減などの構造改革を進めるとともに、設備投資の抑制や在庫圧縮を実施しています。また、新たな中期経営計画の策定や、資本コスト・株価を意識した経営の実現に取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「広く有能なる人材を求め、育成し、企業の恒久的な繁栄の礎とする」という基本方針のもと、人的資本経営を推進しています。従業員個々の成長を企業に取り込み、利益を個人に再投資する循環を目指しています。「従業員エンゲージメントの強化」「ダイバーシティの推進」「従業員の健康と安全の確保」を重点課題とし、自律的なキャリア形成支援、次世代リーダー育成、スペシャリスト職認定、社内公募制度などを通じて、多様な人材が活躍できる環境を整備しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.2歳 13.7年 8,102,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.9%
男性育児休業取得率 81.8%
男女賃金差異(全労働者) 64.0%
男女賃金差異(正規雇用) 63.5%
男女賃金差異(非正規雇用) 61.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(82.3%)、労働者一人当たりの一月当たりの平均残業時間(20.6時間)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業戦略・市場変動に関するリスク


自動車関連や産業機器関連などの重点市場において、グローバルな競争激化や市場成長の鈍化が起こる可能性があります。特に電気自動車(EV)市場の停滞は、パワーデバイスを製造する同社にとってリスクとなり得ます。これに対し、マーケティング機能の強化や、民生市場への注力などにより、特定の市場への依存度を下げる対策を講じています。

(2) 地政学リスク


国際情勢の不安定化や通商規制の拡大は、サプライチェーン全体に影響を及ぼす可能性があります。特に半導体は経済安全保障上の重要物資とされており、適切な対応ができなければ事業活動に悪影響が出る恐れがあります。同社は「経済安全保障専門部会」を設置し、情報収集やリスク対策を行うとともに、輸出管理専門部会による適正な安全保障輸出管理を実施しています。

(3) 人財確保に関するリスク


少子高齢化による労働力人口の減少や、人々のキャリア志向の多様化により、専門性の高い人財の確保が困難になる懸念があります。人財獲得競争の激化や、社内の世代間ギャップなどが課題となっています。同社は、スペシャリスト職制度やジョブポスティング制度によるキャリア支援、リスキリング支援などを通じて、エンゲージメントの向上と人財の定着に取り組んでいます。

(4) 情報セキュリティに関するリスク


サイバー攻撃や内部不正による情報漏えい、システムダウンなどのリスクがあります。生成AIなどの新技術導入に伴うリスクも高まっています。これらの事象が発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償などにより業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は情報管理委員会を中心に、組織的・人的・技術的・物理的な対策を講じ、ISO27001やTISAX認証の取得などを通じて管理体制を強化しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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