ローム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ローム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ロームは、東京証券取引所プライム市場に上場する電子部品の総合メーカーです。主にLSIや半導体素子、モジュールなどの開発、製造、販売をグローバルに展開しています。直近の業績は、自動車や民生機器市場等での増収により売上高が伸びたものの、多額の減損損失を計上したことで最終減益の純損失となりました。


※本記事は、ローム株式会社の有価証券報告書(第68期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ロームってどんな会社?


LSIや半導体素子を中心とする電子部品の総合メーカーとしてグローバルに事業を展開しています。

(1) 会社概要


1954年に個人企業として創業し、1958年に東洋電具製作所として設立されました。1969年にICの開発を開始し、1981年にロームへ社名変更しました。1989年の東証一部上場を経て、2008年には沖電気工業から半導体事業部門を買収し、2009年にはドイツのサイクリスタル社を買収しています。

現在の従業員数は連結で21,756名、単体で4,199名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は音楽文化の普及と発展を支援するロームミュージックファンデーション、第3位も資産管理業務を行う日本カストディ銀行となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 17.83%
公益財団法人ロームミュージックファンデーション 10.76%
日本カストディ銀行(信託口) 6.84%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は東克己氏が務めています。社外取締役比率は60.0%です。

氏名 役職 主な経歴
東克己 代表取締役社長 1989年同社入社。ディスクリート生産本部長などを経て、2020年にCOO就任。2025年4月より現職。
伊野和英 取締役常務執行役員 1999年同社入社。パワーデバイス生産本部長、CFOなどを歴任し、2026年4月より現職。
立石哲夫 取締役上席執行役員 2014年同社入社。LSI開発本部長、CTOなどを歴任し、2026年4月より現職。
Peter Kenevan 取締役上席執行役員 1995年マッキンゼー入社。PayPal日本事業統括責任者等を経て、2022年同社取締役就任。2025年8月より現職。


社外取締役は、南雲忠信(元横浜ゴム社長)、井上福子(同志社大学大学院ビジネス研究科教授)、小崎亜依子(stream-i代表取締役)、中川恵太(元関西みらい銀行執行役員)、小野友之(元有限責任あずさ監査法人社員会議長)、織田貴昭(弁護士法人三宅法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「LSI」「半導体素子」「モジュール」および「その他」事業を展開しています。

LSI


アナログ、ロジック、メモリなどのLSI製品を開発・製造し、主に自動車、産業機器、民生機器市場などの顧客に向けて提供しています。

顧客へ製品を販売することで収益を得ています。運営は同社や、ラピスセミコンダクタなどの国内外の製造子会社および販売子会社が行っています。

半導体素子


トランジスタ、ダイオード、パワーデバイス、発光ダイオード、半導体レーザーなどを製造し、自動車や産業機器、IT機器市場などに提供しています。

顧客への製品販売が主な収益源です。運営は同社に加え、ローム浜松やローム・ワコーなど国内外の製造・販売子会社が担っています。

モジュール


プリントヘッドやオプティカル・モジュールなどの製品を開発・製造し、事務機や車載機器市場などの顧客に向けて提供しています。

製品の販売を通じて収益を得ています。同社やローム・メカテック、海外の製造子会社などが運営を行っています。

その他


自動車や産業機器、民生機器市場向けに、シャント抵抗や汎用抵抗器などの電子部品を製造し、顧客に提供しています。

これらの製品の販売により収益を得ています。運営は同社や国内外の関係会社が共同で行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は直近5期間で4,400億円から5,000億円台で推移し、底堅い需要に支えられています。一方、利益面では経常利益が黒字転換を果たしたものの、事業再編や減損損失等の影響で最終利益は赤字幅が拡大しており、収益基盤の立て直しが課題となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 4,521億円 5,079億円 4,678億円 4,485億円 4,811億円
経常利益 826億円 1,095億円 692億円 -297億円 192億円
利益率(%) 18.3% 21.6% 14.8% -6.6% 4.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 532億円 530億円 113億円 -97億円 -1,603億円

(2) 損益計算書


売上高は自動車市場等での増収により回復傾向を示し、売上総利益も改善しています。構造改革による固定費削減効果が寄与し、営業利益は黒字に転換しました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 4,485億円 4,811億円
売上総利益 743億円 1,152億円
売上総利益率(%) 16.6% 23.9%
営業利益 -401億円 109億円
営業利益率(%) -8.9% 2.3%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が466億円(構成比45%)、給与・賞与が235億円(同23%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力事業であるLSIおよび半導体素子が売上の大部分を占めています。LSIは自動車市場での高付加価値商品が伸長し増収増益となりました。半導体素子は増収となったものの、赤字が継続しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
LSI 2,038億円 2,184億円 -8億円 245億円 11.2%
半導体素子 1,871億円 2,053億円 -459億円 -227億円 -11.1%
モジュール 33億円 316億円 27億円 35億円 11.1%
その他 250億円 259億円 25億円 41億円 15.8%
調整額 -億円 -億円 14億円 14億円 -%
連結(合計) 4,485億円 4,811億円 -401億円 109億円 2.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 840億円 894億円
投資CF -1,157億円 1,086億円
財務CF 391億円 -208億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-19.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は59.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「われわれは、つねに品質を第一とする。いかなる困難があろうとも、良い商品を国の内外へ永続かつ大量に供給し、文化の進歩向上に貢献することを目的とする。」という企業目的を掲げています。また、「エレクトロニクスの技術で社会が抱える様々な課題を解決し、未来に向けて、人々の豊かな暮らしと社会の発展を支え続ける会社」を目指しています。

(2) 企業文化


経営基本方針として「社内一体となって、品質保証活動の徹底化を図り、適正な利潤を確保する」「世界をリードする商品をつくるために、あらゆる部門の固有技術を高め、もって企業の発展を期する」などを定めています。豊かな人間性と知性を磨き、広く有能なる人材を育成して恒久的な繁栄の礎とする価値観を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は第2期中期経営計画「MOVING FORWARD to 2028」に基づき、持続的な成長の実現と強固な事業基盤の構築に向けた構造改革に取り組んでおり、以下の財務目標(2028年度)を掲げています。

* 売上高5,000億円以上
* 営業利益20%以上
* ROE9%以上

(4) 成長戦略と重点施策


国際競争の激化や技術革新の加速を背景に、中長期的に競争力を高めるため事業ポートフォリオの見直しや技術開発力の強化を進めています。また、東芝デバイス&ストレージおよび三菱電機との事業・経営統合に関する協議を進め、世界市場で競争し得る事業規模や技術基盤の実現に向けて全力で取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は従業員一人ひとりの成長を事業の成長に取り込み、その成果を人材育成や成長機会に再投資する人的資本経営を推進しています。自律的に成長するプロフェッショナル人材が多様性を尊重しながら能力を発揮できる環境を整備し、専門スキルを追求する動機に直結する報酬制度の構築を通じて、人材の確保と定着を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.4歳 14.0年 8,035,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.5%
男性育児休業取得率 78.1%
男女賃金差異(全労働者) 67.0%
男女賃金差異(正規社員) 67.5%
男女賃金差異(非正規社員) 51.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(84.2%)、労働者に占める女性労働者の割合(19.1%)、採用した労働者に占める女性労働者の割合(16.1%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業戦略・市場変動に関するリスク


自動車や産業民生機器などの重点分野において、コストダウンの限界を超えた価格競争や熾烈な開発競争に巻き込まれる可能性があります。また、電気自動車市場の成長鈍化など、社会ニーズの変化や各国の政策により市場が縮小し、財政状態や業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。

(2) 地政学リスク


中東情勢の悪化や米国の関税政策、米中関係などの地政学的緊張が、サプライチェーン全体に影響をもたらす可能性があります。また、半導体をめぐる各国の経済安全保障上の保護主義的政策や通商規制の拡大に適切に対応できなければ、事業競争力の喪失や業績の悪化につながるおそれがあります。

(3) 情報セキュリティに関するリスク


サイバー攻撃や退職者による機密情報の持ち出しなど、情報セキュリティリスクが高まっています。セキュリティ対策が不十分な場合、情報の漏えいやシステムダウンによる事業停止などが発生し、社会的信用の失墜やブランドイメージの毀損を招き、事業活動に大きな影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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