山一電機 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

山一電機 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の機構部品メーカーです。半導体検査用ソケットを主力とするテストソリューション事業や、電子機器向けコネクタ事業を展開しています。2025年3月期は半導体市場の回復や高付加価値製品の好調により、売上高453億円、経常利益77億円と前期比で大幅な増収増益を達成しました。


※本記事は、山一電機の有価証券報告書(第70期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 山一電機ってどんな会社?


半導体検査用ソケットで世界トップクラスのシェアを誇る、研究開発主導型の機構部品メーカーです。

(1) 会社概要


1956年に真空管用ソケットの製造販売を開始し、1988年に店頭公開しました。2001年に東京証券取引所市場第一部へ上場し、2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しました。現在では、半導体検査工程で不可欠なICソケットや、通信・車載機器向けコネクタを主力製品としてグローバルに展開しています。

連結従業員数は2,061名、単体では390名体制です。大株主には、資産管理業務を行う信託銀行や、外資系金融機関が名を連ねています。筆頭株主は信託銀行であり、特定のオーナー企業ではなく、機関投資家による保有比率が高い構成となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行 12.45%
日本カストディ銀行 9.28%
BNP PARIBAS LUXEMBOURG/2S/JASDEC/FIM/LUXEMBOURG FUNDS/UCITS ASSETS 2.80%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は亀谷淳一氏が務めています。社外取締役比率は45.5%です。

氏名 役職 主な経歴
亀谷淳一 代表取締役社長 1987年入社。山一電子(深圳)有限公司董事総経理、生産本部長、コネクタソリューション事業部長などを歴任し、2021年6月より現職。
太田佳孝 取締役会長光関連事業担当 2002年入社。生産統括本部長、経営企画部長等を歴任し、2013年に社長就任。2022年6月より現職。
土屋武 取締役常務執行役員、生産本部長、生産技術部長 1984年入社。山一電子(深圳)有限公司董事総経理、テストソリューション事業部長を経て、2020年生産本部長就任。2025年4月より現職。
松田一弘 取締役常務執行役員、管理本部長、経営管理部長 1988年入社。米国現地法人社長、事業統括本部海外営業部長等を歴任。2017年取締役就任。2024年6月より現職。
岸村伸洋 取締役上席執行役員、テストソリューション事業部長、技術管理部担当 1988年入社。テストソリューション営業部長等を歴任し、2019年よりテストソリューション事業部長。2018年より現職。
栁澤光一郎 取締役(常勤監査等委員) パイオニア出身。2010年に入社し経営管理部長、執行役員管理本部長代理を経て、2022年6月より現職。


社外取締役は、村田朋博(フロンティア・マネジメント マネージング・ディレクター)、佐久間陽一郎(元日東電工取締役常務執行役員)、依田稔久(元新光電気工業取締役専務執行役員)、岡本忍(税理士・元熊本国税局長)、村瀨孝子(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「テストソリューション事業」「コネクタソリューション事業」「光関連事業」の3つの報告セグメントを展開しています。

(1) テストソリューション事業

半導体の製造工程における検査(テスト)で使用されるICソケット製品を提供しています。主な製品は、高温環境下での信頼性試験に用いるバーンインソケットや、機能検査用のテストソケットです。主要顧客は半導体メーカーや検査受託会社です。

収益は、顧客への製品販売から得ています。また、半導体テストに関連するサービスやメンテナンス事業も行っています。同社が製造販売を行うほか、フィリピンや韓国の現地法人が製造を担い、世界各国の販売子会社を通じてグローバルに製品を供給しています。

(2) コネクタソリューション事業

電子・電気機器内部の接続に使用される各種コネクタ製品を提供しています。主な製品は、高速伝送用コネクタ、カードコネクタ、車載用インターフェースコネクタ、および高速伝送用ケーブル「YFLEX」などです。通信インフラ、自動車、産業機器メーカー等が主な顧客です。

収益は、製品の販売代金から得ています。同社およびドイツ等の海外子会社が開発・製造を行い、各国の販売拠点が営業活動を展開しています。通信市場向けの高速伝送技術や、車載市場向けの信頼性の高い接続技術を強みとしています。

(3) 光関連事業

光学フィルタ製品や半導体レーザ光源などを提供しています。主な製品には、RGBフィルタ、UV/IRカットフィルタ、医療機器向けの高付加価値フィルタなどがあります。医療機器や産業用光学機器などの特定用途向け市場が顧客です。

収益は、製品の販売代金から得ています。この事業は主に国内子会社の光伸光学工業が製造・販売を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2024年3月期は市場調整の影響で一時的に落ち込みましたが、2025年3月期は売上高453億円、経常利益77億円とV字回復を果たしました。特に利益率は17.0%と高い水準に戻り、当期純利益も52億円に達しています。半導体市場の回復を背景に、収益力が大きく改善しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 277億円 396億円 470億円 364億円 453億円
経常利益 31億円 87億円 95億円 29億円 77億円
利益率(%) 11.4% 22.1% 20.1% 8.0% 17.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 26億円 68億円 72億円 21億円 52億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上高の大幅な増加に伴い売上総利益率が30.5%から38.6%へと8.1ポイント改善しました。営業利益率は8.1%から18.2%へと倍以上に伸長しており、増収効果に加えて高付加価値製品の販売増や生産性向上が利益率の向上に寄与した構造が見て取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 364億円 453億円
売上総利益 111億円 175億円
売上総利益率(%) 30.5% 38.6%
営業利益 29億円 82億円
営業利益率(%) 8.1% 18.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料が36億円(構成比39%)、福利厚生費が9億円(同9%)を占めています。売上原価については、製品製造に関わるコストが中心であり、原材料費や製造経費が含まれます。

(3) セグメント収益


テストソリューション事業はスマートフォンやPC向け需要、生成AI関連の投資再開により大幅な増収増益となり、全社利益を牽引しました。コネクタソリューション事業は通信機器向けが好調でしたが、欧州市場の低迷等により減収となりましたが利益は確保しています。光関連事業は在庫調整の影響を受け営業損失となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
テストソリューション事業 158億円 251億円 18億円 71億円 28.3%
コネクタソリューション事業 192億円 189億円 9億円 12億円 6.4%
光関連事業 14億円 12億円 -0.2億円 -0.3億円 -2.0%
調整額 - - 2億円 -1億円 -
連結(合計) 364億円 453億円 29億円 82億円 18.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業で稼いだ資金(営業CFプラス)を使って、将来のための投資(投資CFマイナス)や借入返済・配当支払い(財務CFマイナス)を行っている「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 32億円 90億円
投資CF -42億円 -37億円
財務CF -34億円 -55億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は74.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「人の尊重」「企業価値の最大化」「企業品質の向上」「技術立社への挑戦」および「社会的役割の達成」を経営理念として掲げています。これに基づき、お客様への価値創出に貢献し、持続的な企業価値の向上に努めることを基本方針としています。

(2) 企業文化


「もっとしなやかにBetter Connection」をコーポレートスローガンとして掲げ、人・企業・社会・地球とのより良い結びつきを、柔軟な技術力と発想力をもって意欲的に創造する文化を重視しています。お客様と共にグローバルに連携し、未来につながる製品を創造することを目指しています。

(3) 経営計画・目標


2023年度を初年度とする「第四次山一電機グループ中期経営計画」を推進しており、「未来に向けて夢のある会社になる」ことを経営目標としています。最終年度となる2026年3月期に向けた数値目標として、以下の指標を掲げています。

* 売上高:500億円
* 営業利益:100億円
* ROE:10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画の達成に向け、「成長戦略」として事業強化を、「構造改革」として機能強化を推進しています。テストソリューション事業では成長エンジンとしての深化を図り、コネクタソリューション事業では第2の柱への進化を目指しています。また、資本政策の強化や未来への先行投資も重点施策としています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人の尊重」を第一に掲げ、グローバルに通用する人材育成に注力しています。階層別・職種別の研修を通じて能力向上を図るとともに、中途採用による多様性の確保も推進しています。また、フレックスタイム制度や在宅勤務、育児・介護支援制度など、ライフイベントに対応した柔軟な働き方ができる環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.5歳 17.1年 6,948,444円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.7%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 71.8%
男女賃金差異(正規) 72.4%
男女賃金差異(非正規) 43.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(19.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 為替レートの変動


海外での生産・販売比率が高いため、為替変動が業績に影響を与える可能性があります。生産拠点のあるフィリピン等の通貨上昇はコスト増となり、販売通貨である米ドル等の下落は売上減につながります。為替予約等で対策を行っていますが、中長期的な変動リスクは残ります。

(2) 半導体・電子部品市場の変動


主力製品の需要は、世界の半導体需給や電子機器市場の動向に大きく左右されます。米中貿易摩擦等の地政学的リスク、感染症、技術革新による新製品への切り替え加速などが要因となり、大口顧客の戦略変更や注文解約が発生した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 海外事業展開と地政学的リスク


生産・販売の多くを海外で行っているため、各国の税制・法律の変更、労働争議、インフラの未整備、テロや紛争などのリスクがあります。特に生産拠点はフィリピン等に集中しており、操業が制限される事態が生じた場合の影響が懸念されます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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