山一電機 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

山一電機 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

山一電機は東京証券取引所プライム市場に上場し、半導体検査用ソケットやコネクタなどの製造販売を展開しています。直近の業績では、AIやデータセンター向けの投資拡大を背景に売上高が前期比で増加し、営業利益も大幅な増益を達成しました。健全な財務基盤をもとに、中長期的な事業成長と企業価値の向上を目指しています。


※本記事は、山一電機の有価証券報告書(第71期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 山一電機ってどんな会社?


同社は、半導体検査用ソケットや電子機器向けコネクタ、光関連部品の製造販売をグローバルに展開するメーカーです。

(1) 会社概要


1956年に東京都品川区で設立され、真空管用ソケットの製造販売を開始しました。1985年の米国子会社取得をはじめ、韓国やドイツ、フィリピンなどに拠点を設けグローバル化を推進してきました。2001年に東京証券取引所市場第一部へ上場し、2002年には光伸光学工業の全株式を取得して光関連事業へ参入しています。

同社グループの従業員数は連結で2060名、単体で398名です。大株主の構成を見ると、筆頭株主および第2位は資産管理業務を行う国内の信託銀行であり、第3位には海外の金融機関が名を連ねています。これら機関投資家が高い保有比率を占める安定した株主構成となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行 14.05%
日本カストディ銀行 12.13%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505223 3.44%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長は亀谷淳一氏が務め、社外取締役比率は約45.5%となっています。

氏名 役職 主な経歴
亀谷 淳一 代表取締役社長 1987年同社入社。山一電子(深圳)董事総経理や生産本部長、コネクタソリューション事業部長等を歴任。2013年に取締役となり、常務執行役員を経て2021年より現職。
太田 佳孝 取締役会長光関連事業担当 2002年同社入社。生産統括本部長や経営企画部長を歴任。取締役や常勤監査役を経て2013年に代表取締役社長に就任。2021年に代表取締役会長を務め、2022年より現職。
土屋 武 取締役常務執行役員、生産本部長、生産技術部長 1984年同社入社。山一電子(深圳)董事総経理やテストソリューション事業部長等を歴任。2013年に取締役就任。光関連事業担当等を経て、現在は生産本部長等として現職。
松田 一弘 取締役常務執行役員、管理本部長、未来事業グループ長 1988年同社入社。海外営業部長や米国子会社社長を経て2017年に取締役就任。管理本部長や情報システム部長等を歴任し、現在は常務執行役員および未来事業グループ長として現職。
岸村 伸洋 取締役上席執行役員、テストソリューション事業部長、技術管理部担当 1988年同社入社。各種営業部長を歴任し、2018年に取締役就任。生産本部担当等を経て、現在はテストソリューション事業部長および技術管理部担当として現職。
栁澤 光一郎 取締役(常勤監査等委員) 1981年パイオニア入社。同社国際部経営管理課長等を経て2010年に同社入社。経営企画部長や管理本部長代理を歴任後、2021年に常勤監査役に就任し、2022年より現職。


社外取締役は、佐久間陽一郎(元日東電工常務執行役員)、依田稔久(元新光電気工業専務執行役員)、藤森涼惠(YCP Japanディレクター)、岡本忍(岡本忍税理士事務所代表)、村瀨孝子(鳥飼総合法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「テストソリューション事業」「コネクタソリューション事業」「光関連事業」を展開しています。

(1) テストソリューション事業


同事業は、半導体の検査工程で使用されるバーンインソケットやテストソケットの製造・販売、および関連するテストサービスなどを提供しています。主にスマートフォン、PC、車載、ウェアラブル機器などの半導体メーカーが顧客です。

収益は、半導体メーカーや検査会社に対する製品の販売代金から得ています。製品の製造は同社およびフィリピン、韓国の海外子会社が行い、販売は米国や欧州、アジア圏の各海外子会社を通じてグローバルに展開しています。

(2) コネクタソリューション事業


同事業は、高速伝送用コネクタやカードコネクタ、インターフェースコネクタ、高速伝送用ケーブル(YFLEX)などの機構部品を提供しています。通信機器やデータセンター、自動車、産業機器などのメーカーが主な顧客となります。

収益は、これら顧客企業へのコネクタ製品や実装基板の販売から得ています。事業の運営は同社が主体となりつつ、製造はフィリピンやドイツの海外子会社が担い、グローバルな販売網を活用して収益を確保しています。

(3) 光関連事業


同事業は、RGBフィルタやUV/IRカットフィルタ、ダイクロイックフィルタ、半導体レーザ光源などの高機能光学部材を製造・販売しています。スマートフォン、通信機器、医療用分析機器などを手掛けるメーカー向けに製品を展開しています。

収益は、顧客企業に対する光学フィルタやレーザデバイスの販売代金から得ています。この事業の運営および製造・販売の主体は、同社の子会社である光伸光学工業が単独で担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績を見ると、売上高は一時的な増減があるものの、直近ではAIやデータセンター向けの需要拡大により大きく成長しています。経常利益も売上成長に伴い拡大しており、高い利益水準を維持しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 396億円 470億円 364億円 453億円 527億円
経常利益 87億円 95億円 29億円 77億円 121億円
利益率(%) 22.1% 20.1% 8.0% 17.0% 23.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 46億円 60億円 34億円 44億円 66億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な成長に伴い、売上総利益も拡大しています。売上総利益率および営業利益率ともに高い水準を維持しており、収益性の向上が伺えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 453億円 527億円
売上総利益 175億円 214億円
売上総利益率(%) 38.6% 40.6%
営業利益 82億円 116億円
営業利益率(%) 18.2% 21.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料が34億円(構成比35%)、福利厚生費が9億円(同9%)、賞与引当金繰入額が6億円(同6%)を占めています。

(3) セグメント収益


テストソリューション事業および光関連事業が順調に推移する中、特にコネクタソリューション事業が通信機器・データセンター向けの需要増を背景に大きく成長し、全社の業績を牽引しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
テストソリューション事業 251億円 264億円
コネクタソリューション事業 189億円 247億円
光関連事業 12億円 15億円
連結(合計) 453億円 527億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 90億円 101億円
投資CF -37億円 -35億円
財務CF -55億円 -27億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は21.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も73.6%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「人の尊重」「企業価値の最大化」「企業品質の向上」「技術立社への挑戦」および「社会的役割の達成」を経営理念に掲げています。また、「もっとしなやかにBetter Connection」をコーポレートスローガンとし、人・企業・社会・地球とのより良い結びつきを創造して持続的な企業価値の向上を目指しています。

(2) 企業文化


創業以来培ってきた柔軟な技術力と発想力を活かし、時代ごとの顧客ニーズに意欲的に応えていく姿勢を大切にしています。また、サステナビリティの追求に枠を広げ、ステークホルダーと共に持続可能な社会を作り上げる未来共創の価値観を重視し、社会の課題を解決する技術提供により社会価値を創出する文化を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2026年度を初年度とする3ヵ年の「第5次中期経営計画」を策定し、2030年および2035年に向けた利益成長の土台を固める期間と位置付けています。持続的な成長基盤を確立するため、事業強化と組織強化を重点施策として推進しています。

* 売上高1,950億円
* 営業利益420億円
* 営業利益率21.5%
* 当期利益295億円

(4) 成長戦略と重点施策


テストソリューション事業では主力の展開領域を車載やウェアラブルへ拡大し、コネクタソリューション事業ではデータセンター向けや次世代高速伝送ソリューションを強化します。また、光関連事業では生産能力の拡充を図ります。さらに、人的資本への投資やサステナビリティ活動などの組織強化を並行して推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「お客様が満足いただける製品・サービスを提供する」ことを根幹とし、人を育て、人を活かし、会社の発展と個人の幸せの共有を目指す方針を掲げています。具体的には「人の採用」「人を育てる」「人を活かす」「人の定着」の4カテゴリーで各種施策を充実させ、事業成長を支える多様な人財の確保と長期的な活躍を支援しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.9歳 17.1年 7,868,126円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.4%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 70.3%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 70.9%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 43.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、グループ全体の女性社員比率(43.4%)、グループ全体の女性管理職比率(16.3%)、提出会社の女性社員比率(21.1%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業環境の激変と価格競争


同社を取り巻くエレクトロニクス業界は、技術革新が速く製品ライフサイクルが短いため、新製品への切り替えや在庫調整が頻繁に起こります。さらに国内外での価格競争の激化や顧客からのコストダウン要求により価格下落が生じる可能性があり、事業環境の急激な変化が業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(2) グローバル展開と為替変動


東南アジアや中国、欧米など海外での事業展開を積極的に行っているため、予測不可能な税制変更、人件費の高騰、地政学的な不安によるサプライチェーンの混乱リスクを抱えています。また、外貨での取引が多く、中長期的な為替レートの変動が調達コストの上昇や収益の減少を招くリスクがあります。

(3) 製品品質と情報セキュリティ


スマートフォンや車載機器向けの機構部品は微細化・高品位化が求められており、万が一の品質問題や大規模なリコールが発生した場合、業績に重大な影響を及ぼす恐れがあります。また、サイバー攻撃によるシステムの障害や機密情報の漏洩が発生した際にも、事業継続に支障をきたすリスクが存在します。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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