※本記事は、NITTOKU株式会社 の有価証券報告書(第53期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. NITTOKUってどんな会社?
トータル精密FAメーカーとして、コイル・モータ用自動巻線機を中心に、FA設備やICタグ等を展開しています。
■(1) 会社概要
1972年に自動巻線機の製造販売を目的に設立されました。1990年には米国NECOA, INC.を子会社化してグローバル展開を加速し、2004年にジャスダック証券取引所へ上場しました。2019年に現在の商号へ変更し、2024年4月にはFA設備のアステクノスや独ソフトウェア企業を完全子会社化しています。
連結従業員数は1,229名、単体では511名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位も同様に信託銀行です。第3位は空圧機器メーカーのSMCとなっており、事業上の取引関係等を有する法人や創業関係者などが大株主に名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本カストディ銀行(信託口) | 8.10% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 5.20% |
| SMC | 5.00% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性3名の計9名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役 社長執行役員は笹澤純人氏です。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 笹澤 純 人 | 代表取締役社長執行役員営業本部長 | 2001年同社入社。コアテックアプリケーション事業部長、核心技術応用事業本部長、グローバル営業本部長等を歴任。2024年より社長、2025年4月より現職。 |
| 藤 田 由実子 | 取締役常務執行役員管理本部長 | 1983年同社入社。営業本部営業業務部長、管理本部管理部長、総務人事部長、国際業務部長等を歴任。2025年4月より現職。 |
| 鹿 目 守 夫 | 取締役常務執行役員FA事業本部長 | 2000年同社入社。製造部長、精密FA事業部長、FA事業本部長等を歴任。アステクノス社長を経て、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、加藤敏純(元ヤマハ発動機取締役常務執行役員)、本田穣慈(元日立ハイテク代表取締役副社長執行役員)、西江佐千由(タムラ製作所シニアバイスプレジデント)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ワインディングシステム&メカトロニクス事業」および「非接触ICタグ・カード事業」事業を展開しています。
■(1) ワインディングシステム&メカトロニクス事業
電子部品、自動車、家電等に使用されるコイル巻線機や巻線システム、周辺機器、組立ライン等を製造・販売しています。近年では、半導体業界向け高精度ダイボンダーや電池業界向け捲回機など、巻線技術を応用したメカトロニクス領域へも展開しており、グループの主力事業となっています。
収益は、顧客である製造業者等からの製品販売代金および保守サービス料等から得ています。運営は、NITTOKUを中心に、日特機械工程(蘇州)などの海外製造・販売子会社、および2024年に子会社化したアステクノスなどのグループ各社が行っています。
■(2) 非接触ICタグ・カード事業
独自の要素技術を活用し、埋込方式アンテナ巻線技術等を用いた非接触ICカードやICタグ、およびそれらの周辺機器やシステムの製造・販売を行っています。生産ライン管理用のFAタグや電池タグなど、産業用途も含めた多様な製品を展開しています。
収益は、顧客からの製品販売代金等から得ています。運営は、主にNITTOKUが販売を担い、製造に関しては連結子会社の日特コーセイが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年3月期から2024年3月期にかけて売上高は増加傾向にありましたが、利益面では2025年3月期に大きく減少しました。当期は増収ながらも、開発案件のコスト増などが影響し、利益率が低下しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 220億円 | 281億円 | 295億円 | 308億円 | 333億円 |
| 経常利益 | 13億円 | 30億円 | 31億円 | 43億円 | 12億円 |
| 利益率(%) | 6.1% | 10.8% | 10.6% | 13.9% | 3.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 12億円 | 23億円 | 22億円 | 27億円 | 13億円 |
■(2) 損益計算書
前期と比較して売上高は増加しましたが、売上原価の増加率が売上高の増加率を上回り、売上総利益は減少しました。販売費及び一般管理費も増加した結果、営業利益は大幅に減少しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 308億円 | 333億円 |
| 売上総利益 | 99億円 | 80億円 |
| 売上総利益率(%) | 32.2% | 24.1% |
| 営業利益 | 42億円 | 11億円 |
| 営業利益率(%) | 13.5% | 3.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当・賞与が22億円(構成比31%)、支払手数料が9億円(同12%)を占めています。売上原価の増加要因としては、開発案件比率の増加等が挙げられます。
■(3) セグメント収益
主力事業であるワインディングシステム&メカトロニクス事業は増収となりましたが、利益は大幅に減少しました。一方、非接触ICタグ・カード事業は減収減益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ワインディングシステム&メカトロニクス事業 | 284億円 | 315億円 | 44億円 | 18億円 | 5.7% |
| 非接触ICタグ・カード事業 | 24億円 | 18億円 | 8億円 | 4億円 | 24.8% |
| 調整額 | - | - | -10億円 | -11億円 | - |
| 連結(合計) | 308億円 | 333億円 | 42億円 | 11億円 | 3.4% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は「改善型」(営業利益+資産売却で借入返済を進める改善局面)です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 5億円 | 0.5億円 |
| 投資CF | 1億円 | 2億円 |
| 財務CF | 12億円 | -3億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は60.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「世界的な視野に立ち(グローバルな視点で社会と環境、市場をみつめ)」「ユーザーの期待を創造し(ユーザーの潜在的価値を顕在化させ)」「最高の技術を提供する(探索・深化の継続によって技術を磨き潜在的価値を具現化する)」という経営理念を掲げています。
■(2) 企業文化
同社は、「小さくともキラリと輝く存在感のある世界No.1の企業へ」を行動指針としています。「価値創造による顧客満足度の向上」「機能・能力による収益の向上」「コンプライアンスの徹底」を基本方針に掲げ、多様性を確保しつつ、持続的成長に資する人材を積極的に採用する方針です。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、巻線および応用技術の追求により技術、生産、収益の基盤増強を図り、高付加価値製品の提供を通じて市場プレゼンスを高めることを目指しています。
* 2028年3月期目標:売上高500億円
* 2028年3月期目標:EBITDA68億円
* 2028年3月期目標:ROE9.3%
* 2028年3月期目標:ROIC7.6%
■(4) 成長戦略
同社は、人材確保のための「サテライト戦略」、シナジー効果による拡大を狙う「M&A戦略」、競争力向上を図る「ブラックオーシャン戦術」を推進しています。特に半導体業界向けダイボンダーや電池業界向け捲回機等のラインナップ拡充に注力しています。また、第一実業との業務提携や半導体事業部の独立化、ベトナムでの拠点開設などを通じ、国内外での事業拡大とニーズへの対応速度向上を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
変化に対応できる人的資本の構築を目指し、「プロフェッショナル人財から成る自律型組織への変革」と「人財多様性の確保」を推進しています。経営参画機会の創出や能動的キャリアパスの形成を通じ、従業員エンゲージメントの向上を図るとともに、性別・国籍等を問わず能力・識見を有する人材を積極的に登用する方針です。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 38.5歳 | 12.7年 | 6,077,462円 |
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | -% |
| 男性育児休業取得率 | 67.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 62.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 71.3% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 37.6% |
※女性管理職比率については、有価証券報告書に記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(78.1%)、労働者に占める女性労働者の割合(18.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 事故・災害・感染症等から生じるリスク
世界的なパンデミックや火災、自然災害が発生した場合、設備投資意欲の減退や規制による受注減少、物流停滞や生産活動低下などが生じ、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は事業継続計画を策定し対応しています。
■(2) 世界の政治・経済・体制から生じるリスク
グローバル展開する取引先の生産拠点がある国々でのテロ、戦争、政情不安などが生じた場合、輸出停止や発注キャンセル等の可能性があります。また、各国の法改正による仕様変更や為替変動による顧客の投資判断への影響等も、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 技術革新・技術開発・知的財産権等から生じるリスク
難易度の高い開発案件において、想定以上のコストや工数が発生し収益性が低下する可能性があります。また、他社の技術領域における大きな技術革新(例:モータ代替技術の登場)があった場合、同社の主力事業に重大な影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 製品取引から生じるリスク
製品の契約不適合や納期遅延により顧客に損害を与えた場合の賠償リスクや、取引先の経営破綻による信用リスクがあります。これらに対し、品質管理の徹底や信用調査等の管理体制を構築しています。



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