NITTOKU 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

NITTOKU 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

NITTOKUは東京証券取引所スタンダード市場に上場するトータル精密FAメーカーです。コイルやモータ用の自動巻線機や各種FA設備の開発・製造を主力としています。直近の業績は、海外向けの設備需要が好調に推移し、増収ならびに大幅な増益を達成しており、過去最高の売上・利益を記録しています。


※本記事は、NITTOKU株式会社の有価証券報告書(第54期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. NITTOKUってどんな会社?


同社は、コイル・モータ用自動巻線機を中心に、さまざまな精密FA設備の開発、製造、販売を展開する企業です。

(1) 会社概要


同社は1972年に千葉県八千代市で自動巻線機の製造販売を目的として設立されました。1989年に店頭売買銘柄として登録後、2004年にジャスダック証券取引所へ株式を上場しました。その後、アジアや欧米を中心に海外現地法人を次々と設立し、グローバルな販売・製造体制を構築しています。近年はFA設備の設計・製造を手掛ける企業のM&Aも積極的に進めています。

同社グループの従業員数は連結で1,235名、単体で536名です。筆頭株主は事業会社の東京ウエルズで、第2位も事業会社のSMC、第3位も事業会社の田中電子工業となっています。

氏名 持株比率
東京ウエルズ 5.30%
SMC 5.00%
田中電子工業 4.70%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性3名の計9名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役社長執行役員CEOは笹澤純人氏が務めています。取締役6名のうち3名が社外取締役であり、社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
笹澤純人 代表取締役社長執行役員 CEO営業本部長 2001年同社入社。営業本部コアテックアプリケーション統括部長等を経て、2021年取締役就任。台湾法人董事長などを務め、2025年4月より現職。
藤田由実子 取締役常務執行役員管理本部長 1983年同社入社。管理本部管理部長、国際業務統括部長等を歴任し、2024年取締役就任。2025年4月より現職。
鹿目守夫 取締役常務執行役員FA事業本部長コイル事業本部長 2000年同社入社。製造部長、精密FA事業部長等を歴任。2024年アステクノス代表取締役社長に就任し、2026年4月より現職。


社外取締役は、加藤敏純(元ヤマハ発動機取締役常務執行役員)、本田穣慈(元日立ハイテク代表取締役兼副社長執行役員)、西江佐千由(タムラ製作所シニアバイスプレジデント)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ワインディングシステム&メカトロニクス事業」および「非接触ICタグ・カード事業」の2つを報告セグメントとして展開しています。

ワインディングシステム&メカトロニクス事業


電子部品、自動車、通信機器等の多様な業界向けに、コイル巻線機、巻線システムおよびその周辺機器、各種フィルムやワイヤの巻取り・搬送設備、組立ラインの製造・販売・保守サービスを行っています。同社グループの主力事業です。

収益は、これらの設備やシステムの販売および保守サービスから得ています。事業の運営は、NITTOKUのほか、中国、東南アジア、欧米などに展開する複数の製造・販売子会社(日特機械工程(蘇州)有限公司、NITTOKU EUROPE GmbH.など)が共同で行っています。

非接触ICタグ・カード事業


蓄積された要素技術を活用し、埋込方式アンテナ巻線およびICチップモジュール継線によるICカード、ICタグ、さらにこれらの周辺機器やシステムの製造ならびに販売を行っています。

収益は、製品の販売対価として顧客から得ています。事業の運営は、製品の製造を子会社の日特コーセイが担当し、販売をNITTOKUが担う体制で展開されています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、一時的な減益の期を挟みつつも、全体としては売上高の拡大基調が続いています。特に当期は、海外向けの設備需要が好調であったことやコスト削減の取り組みが奏功し、売上高および各段階利益において過去最高を記録し、利益率も大幅に改善しました。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 281億円 295億円 308億円 333億円 424億円
経常利益 30億円 31億円 43億円 12億円 55億円
利益率(%) 10.8% 10.6% 13.9% 3.7% 12.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 14億円 17億円 27億円 24億円 26億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに大きく伸長しています。開発案件比率の変化等の影響で売上原価率が低下し、売上総利益率および営業利益率が前期間から大きく改善していることが特徴です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 333億円 424億円
売上総利益 80億円 129億円
売上総利益率(%) 24.1% 30.5%
営業利益 11億円 54億円
営業利益率(%) 3.4% 12.8%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当・賞与が22億円(構成比30%)と最も大きく、次いで研究開発費が9億円(同12%)、支払手数料が8億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力事業のワインディングシステム&メカトロニクス事業は、米国をはじめとする海外向け販売が盛況であり、売上・利益ともに大きく伸長しました。非接触ICタグ・カード事業も生産ライン管理用FAタグの需要増により増収増益となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
ワインディングシステム&メカトロニクス事業 315億円 405億円 18億円 61億円 15.1%
非接触ICタグ・カード事業 18億円 19億円 4億円 6億円 31.3%
調整額 - - -11億円 -13億円 -
連結(合計) 333億円 424億円 11億円 54億円 12.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業による収入と固定資産売却などの投資活動による収入を合わせて、借入金の返済などに充てている「改善型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 0.5億円 41億円
投資CF 2億円 8億円
財務CF -3億円 -4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.0%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は64.0%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、経営理念として「世界的な視野に立ち ユーザーの期待を創造し 最高の技術を提供する」を掲げています。グローバルな視点から社会と環境を見つめ、ユーザーの潜在的な価値を具現化し、最高水準の技術を提供することを使命として経営を行っています。

(2) 企業文化


「コンプライアンスの徹底」を前提に、「価値創造による顧客満足度の向上」「機能・能力による収益の向上」を基本方針としています。「小さくともキラリと輝く存在感のある世界No.1の企業へ」を行動指針に掲げ、多様な価値観を尊重しつつ、常に挑戦するプロフェッショナル人材の育成を重視する文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社は、企業価値の向上と株主還元を重視した中期経営計画の定量目標として、2028年3月期に向けて以下の数値を掲げています。

* 売上高:500億円
* EBITDA:68億円
* ROE:9.3%
* ROIC:7.6%

(4) 成長戦略と重点施策


ビジネスパートナーとの協業によるオープンイノベーション(ブラックオーシャン戦術)や、即戦力人材を確保する「サテライト戦略」、シナジー効果を狙うM&A戦略を推進しています。また、AIサーバー市場向けのモータ製造設備や半導体・エナジーデバイス業界向け設備など、新分野での戦略製品の拡充に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


性別や国籍の多様性を確保しつつ、自律的に挑戦と改革を続ける「プロフェッショナル人財」の育成・確保を戦略の柱としています。当事者意識の醸成や公平な評価制度を通じたエンゲージメント向上を図るとともに、ワーク・ライフ・バランスに配慮した働き方支援や労働安全衛生の強化も推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 38.6歳 11.9年 6,576,375円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.9%
男性育児休業取得率 71.4%
男女賃金差異(全労働者) 60.5%
男女賃金差異(正規雇用) 68.5%
男女賃金差異(非正規雇用) 42.0%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 世界の政治・経済・体制から生じるリスク


グローバルに事業を展開しているため、各国のテロや政情不安、政策変更などにより、輸出停止や発注キャンセルが生じる可能性があります。また、中東情勢等によるインフレや各国の通商政策が、世界経済および設備投資動向に悪影響を及ぼすリスクがあります。

(2) 技術革新・技術開発・知的財産権等から生じるリスク


難易度の高い開発案件にも積極的に取り組んでいますが、想定以上の工数や費用が発生した場合、収益性が低下する恐れがあります。また、モータに代わる新たな駆動デバイスの出現など、競合他社による抜本的な技術革新が起きた場合、競争力が低下するリスクがあります。

(3) 戦略的パートナーシップの構築や企業買収等から生じるリスク


技術領域の拡大や新規事業の展開を目的に、投資、出資、M&Aなどを実施していますが、期待したシナジーや成果が得られない場合、投資損失が発生し、同社グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 製品取引から生じるリスク


顧客の要望に応じた専用設備を個別受注生産していますが、不測の事態により製品の欠陥や納期の遅延が発生した場合、顧客の生産活動に支障をきたし、損害賠償請求を受けることで業績に影響が及ぶリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。