※本記事は、未来工業株式会社の有価証券報告書(第61期、自 2025年3月21日 至 2026年3月20日、2026年6月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 未来工業ってどんな会社?
未来工業は、電設資材や管材、配線器具などの製造・販売を手がけ、独自のアイデア製品を展開する企業です。
■(1) 会社概要
1965年に電設資材の製造・販売を目的として設立されました。1991年に名古屋証券取引所市場第二部へ上場し、その後組織再編による上場廃止と親会社の吸収合併を経て、2006年に同市場へ再上場しました。2018年には東京証券取引所市場第一部へ上場し、事業を拡大しています。
現在の従業員数は連結で1,295名、単体で845名体制です。筆頭株主は事業会社である未来A.K.Oで、第2位は中小企業の投資育成を行う名古屋中小企業投資育成、第3位は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 未来A.K.O | 13.84% |
| 名古屋中小企業投資育成 | 8.68% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(株式付与ESOP信託口・75647口) | 5.76% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は中島靖氏が務めており、社外取締役の比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 中島靖 | 代表取締役社長 | 1987年同社入社。経営企画部長、取締役、常務取締役などを経て、2024年6月より現職。 |
| 川瀬渉 | 常務取締役兼 経理部長 | 1987年同社入社。経理部長、取締役などを経て、2023年9月より現職。 |
| 山田雅裕 | 取締役相談役 | 1987年同社入社。監査室長などを経て、神保電器の代表取締役社長に就任。2024年6月より現職。 |
| 山内弘治 | 取締役 | 1985年同社入社。未来精工の代表取締役や同社の取締役営業部長などを経て、2026年3月より現職。 |
| 後藤茂之 | 取締役製造部長 | 1987年同社入社。製造部長などを経て、2018年6月より現職。 |
| 吉澤信幸 | 取締役総合企画部長 | 1987年同社入社。知財法務部長、総務部長、総合企画部長などを経て、2024年6月より現職。 |
社外取締役は、磯部隆英(元名古屋中小企業投資育成取締役業務第一部長)、竹内裕美(弁護士法人鬼頭・竹内法律事務所パートナー)、増成邦彦(税理士法人おおがき会計社員税理士)、弓削幸恵(ミッドランド監査法人パートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「電材及び管材事業」「配線器具事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 電材及び管材事業
電線管類やその附属品、配線ボックス類、給水給湯用の樹脂管類などの製造および販売を行っています。建築工事現場における作業の省力化や施工性に優れた多様な製品を市場に提供し、幅広いニーズに対応しています。
同社が製品の製造・販売を担うとともに、未来精工から樹脂成形用の金型等を、未来化成から樹脂原料等を購入しています。また、製品等の輸送の一部を未来運輸に委託し、工場等建築物の設計監理などは未来技研が行っています。
■(2) 配線器具事業
住宅や建築物向けのスイッチ、コンセントといった配線器具の製造および販売を行っています。デザイン性を高めた製品群や、安全性、効率性、使い勝手を重視した次世代向けの製品を開発し、市場へ提供しています。
事業の運営は、主に子会社である神保電器が担っており、同社が製品の製造から販売までを一貫して手がけて収益を確保しています。
■(3) その他
報告セグメントに含まれない事業として、省力化機械や樹脂成形用金型の製造販売、運送業、建設業、樹脂原料等の販売、電気通信事業、およびケーブルテレビ事業などを幅広く展開しています。
事業の運営は複数の子会社が分担しており、未来精工が機械・金型を、未来運輸が運送を、未来技研が建設を、未来化成が原料販売を、ミライコミュニケーションネットワークが電気通信を、アミックスコムがケーブルテレビをそれぞれ担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5期間の業績推移を見ると、売上高は369億円から457億円へと持続的な成長を遂げています。一方、経常利益や当期利益は一時大幅な伸びを見せたものの、直近では原材料単価の上昇等によるコスト増加の影響を受け、利益率は低下傾向にあり、減益となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 369億円 | 396億円 | 441億円 | 451億円 | 457億円 |
| 経常利益 | 40億円 | 42億円 | 75億円 | 71億円 | 69億円 |
| 利益率(%) | 10.7% | 10.5% | 17.0% | 15.7% | 15.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 19億円 | 21億円 | 44億円 | 40億円 | 37億円 |
■(2) 損益計算書
売上高が増加した一方で、売上総利益および営業利益は前年を下回っています。原材料価格の高騰などが影響し、売上総利益率と営業利益率の双方がわずかに低下する結果となりました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 451億円 | 457億円 |
| 売上総利益 | 178億円 | 177億円 |
| 売上総利益率(%) | 39.5% | 38.7% |
| 営業利益 | 69億円 | 67億円 |
| 営業利益率(%) | 15.3% | 14.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が25億円(構成比23%)、運賃が23億円(同21%)を占めています。
■(3) セグメント収益
電材及び管材事業は、価格改定の効果があったものの、一部製品の販売減少や原材料高が響き、減収となりました。一方、配線器具事業は営業活動の成果や価格改定の浸透により、増収を達成しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 電材及び管材事業 | 348億円 | 347億円 |
| 配線器具事業 | 73億円 | 80億円 |
| その他 | 30億円 | 29億円 |
| 連結(合計) | 451億円 | 457億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 75億円 | 71億円 |
| 投資CF | -35億円 | -41億円 |
| 財務CF | -26億円 | -27億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は80.7%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「常に考える」を社業の企業理念として掲げています。社員一人ひとりが仕事を通じて人間性あふれる社会人へと成長することを実践し、企業価値の最大化を図ることを目的としています。ステークホルダーをはじめ、社会から広く信頼される企業を目指しています。
■(2) 企業文化
「他社と同じモノはつくらない」というポリシーのもと、ユーザーの視点に立って徹底的に使いやすさを追求した製品の開発を重視しています。社員の自主性や創造性を大切にしており、一人ひとりが「常に考える」を実践し、新しい価値を生み出す姿勢が社内に根付いています。
■(3) 経営計画・目標
継続的な収益拡大を目指し、各事業の収益性を的確に表す指標として「売上高営業利益率」を重視しています。特定の事業の利益率に依存せず、いずれの事業においても経営の効率化を図り、この目標の達成に向けた取り組みを進めています。
* 売上高営業利益率:12%
■(4) 成長戦略と重点施策
激しい競争を勝ち抜くため、効率化による経営体質の強化と、独自性の追求に基づいた顧客ニーズの適確な製品化を推進しています。電材及び管材事業では、独創的な新製品の市場投入と既存製品の見直しを行い、配線器具事業では安全性と効率性を重視した次世代の提案を強化して認知度向上と事業拡大を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、「常に考える」という理念のもと、自主性と創造性に富んだ人材の育成を最重要戦略としています。社会の課題を見出して新しい価値を創造する人材、ユーザーの要望に迅速に対応する人材、地域社会や環境負荷軽減に貢献する人材を育成し、社員の私生活の充実とエンゲージメントの向上を図る環境整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 47.3歳 | 23.6年 | 6,577,764円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.4% |
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 85.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 85.4% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | - |
※パート・有期労働者の男女賃金差異について、対象となる労働者がいないため「-」としています。
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率(2.0%)、平均年間休日数(137日)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 新設住宅着工状況への依存リスク
同社の主力である電材及び管材事業や配線器具事業は、住宅建築業界に大きく依存しています。物価高や金利上昇などの影響により、新設住宅着工戸数が減少に転じた場合、同社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。対策として、住宅向け以外の新商品開発や新たな市場開拓を進めています。
■(2) プラスチック原材料の調達・価格変動リスク
主力の製造に不可欠なプラスチック原材料は、国際情勢の悪化などにより安定調達やコスト増加のリスクが高まっています。原材料価格が想定以上に上昇し、販売価格へ転嫁できなかった場合、収益を圧迫する懸念があります。これに対し、ナフサ連動型の採用や市場動向に応じた価格転嫁に努めています。
■(3) 物流費上昇とシステム障害のリスク
製品の即納体制や販売店の増加に伴い、物流費の負担増が課題となっており、共同配送や拠点集約による効率化を図っています。また、受注や生産を管理する基幹システムへのサイバー攻撃や重大な障害が発生した場合、事業活動が停止する恐れがあるため、セキュリティ対策とバックアップ体制を強化しています。



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