ワイエイシイホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ワイエイシイホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ワイエイシイホールディングスは東証プライム市場に上場し、半導体・メカトロニクス関連、医療・ヘルスケア関連、環境・社会インフラ関連製品の開発・製造・販売を展開しています。直近の業績は、半導体関連やFPD関連事業等の好調により売上高・経常利益ともに増加し、増収増益のトレンドを維持して事業を拡大しています。


※本記事は、ワイエイシイホールディングス株式会社の有価証券報告書(第54期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ワイエイシイホールディングスってどんな会社?


同社は半導体製造装置や人工透析装置、環境インフラ機器の開発・製造を手がける持株会社です。

(1) 会社概要


1973年に包装機の設計・製造を目的として設立されました。1977年に半導体業界、1990年には液晶ディスプレイ業界へ参入し事業領域を拡大しています。2004年にジャスダック上場、2007年には東証一部(現在はプライム市場)へ指定されました。2017年に持株会社体制へ移行し、現在の社名に変更しています。

従業員数は連結で868名、単体で18名です。筆頭株主はモモタケで、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行です。第3位には創業者の百瀬武文氏が名を連ねています。

氏名 持株比率
モモタケ 13.74%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.90%
百瀬武文 3.76%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表取締役会長兼社長を百瀬武文氏が務めており、社外取締役の比率は27%(3/11)です。

氏名 役職 主な経歴
百瀬武文 代表取締役会長 兼 社長経営戦略本部長事業統括本部長 1973年5月の同社設立と同時に代表取締役社長に就任。ワイエイシイエレックス代表取締役会長等を経て、2023年4月より現職。
大倉章裕 取締役専務執行役員事業統括副本部長 1995年に大倉電気へ入社。同社代表取締役社長、ワイエイシイデンコー代表取締役会長等を経て、2023年5月より現職。
畠山督 取締役常務執行役員管理統括本部長 1977年に日本興業銀行へ入行。興銀リース常務取締役等を経て2017年に同社入社。財務統括本部長等を経て2022年6月より現職。
西坂昌伯 取締役執行役員管理統括副本部長 1986年に協和銀行へ入行。2016年に同社へ出向し人事総務部長に就任。大倉電気監査役等を経て、2024年10月より現職。
小林英明 取締役執行役員 1995年に同社入社。ワイエイシイメカトロニクスのMD事業部長や代表取締役社長等を経て、2026年6月より現職。


社外取締役は、木船常康(元イーライフ代表取締役社長)、森林育代(シーズプレイス代表取締役社長)、奥村和仁(奥村和仁中小企業診断士事務所開設)です。

2. 事業内容


同社グループは、「半導体・メカトロニクス関連事業」「医療・ヘルスケア関連事業」「環境・社会インフラ関連事業」を展開しています。

(1) 半導体・メカトロニクス関連事業


同セグメントでは、ハードディスク関連装置、半導体製造関連装置、LED製造関連装置、精密切断装置、キャリアテープ等の開発・設計・製造・販売・保守サービスを行っています。主に半導体メーカーなどを顧客としています。

収益は、顧客であるメーカーに対する装置やシステムの販売および保守サービスから得ています。事業の運営は主にワイエイシイメカトロニクス、ワイエイシイガーター、ワイエイシイビーム、ワイエイシイダステックが行っています。

(2) 医療・ヘルスケア関連事業


同セグメントでは、人工透析装置、全自動高感度デジタル免疫測定システム、全自動毛髪スライサー等の開発・設計・製造・販売・保守サービスを提供しています。医療機関や検査機関を主な顧客としています。

収益は、医療機関等の顧客に対する医療用機器や測定装置の販売および保守サービス等によって構成されています。事業の運営はワイエイシイエレックスやワイエイシイバイオ、YAC Systems Singapore Pte Ltd.が行っています。

(3) 環境・社会インフラ関連事業


同セグメントでは、工業計器、制御通信装置、医療リネン関連装置、シャツ用・ウール用プレス機、自動包装機、光計測器、電気計測器などの開発・設計・製造・販売・保守サービスを行っています。

収益は、産業インフラ分野の顧客等に対する各種装置・システムの販売および保守サービスから得ています。事業の運営は大倉電気、ワイエイシイデンコー、ワイエイシイマシナリー、テクノオプティス、三和電気計器などが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の売上高は220億円から260億円台の範囲で推移しており、底堅い事業成長を続けています。経常利益率はおおむね4%から7%台で推移し、一時的な純損失を計上した期もありましたが、近年は安定して利益を生み出す体質を維持しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 228億円 241億円 268億円 230億円 265億円
経常利益 15億円 15億円 21億円 11億円 12億円
利益率(%) 6.5% 6.4% 7.7% 4.9% 4.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 6億円 -4億円 10億円 9億円 7億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、売上総利益も順調に拡大していますが、インフレ進行に伴う原材料費の高騰や人件費上昇などの影響を受け、営業利益は横ばいから微減の推移となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 230億円 265億円
売上総利益 66億円 70億円
売上総利益率(%) 28.5% 26.5%
営業利益 14億円 13億円
営業利益率(%) 5.9% 5.0%


販売費及び一般管理費のうち、役員報酬及び給与手当が22億円(構成比39%)、研究開発費が4億円(同7%)を占めています。売上原価は195億円で、売上高に対する構成比は74%です。

(3) セグメント収益


半導体・メカトロニクス関連事業は、半導体関連のクリーンコンベアや前工程向け装置が堅調に推移して増収となりました。環境・社会インフラ関連事業は、FPD関連や光計測装置関連事業が好調に推移したことに加え、電力関連事業も寄与して売上高が大きく伸びています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
半導体・メカトロニクス関連事業 98億円 105億円
医療・ヘルスケア関連事業 52億円 55億円
環境・社会インフラ関連事業 80億円 105億円
連結(合計) 230億円 265億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは「積極型」の傾向にあります。営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 27億円 30億円
投資CF -11億円 -22億円
財務CF -21億円 5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.8%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も38.7%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


経営理念として「より多く社会に貢献する」を掲げています。また、2020年には新たな企業理念として「究極の理念」を定め、社員への経済的・精神的な豊かさの供与、納税額の拡大、全員経営・連携と競争、SDGs経営の推進の拡大に取り組むことを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、グループ会社間の連携と健全な競争を通じて企業体質の強化を図る文化を重視しています。「全員経営」の理念のもと、半期に1回グループ全役員および幹部社員が出席する社長会を開催し、経営情報の把握や共有を徹底することで、グループ全体の活力を引き出しています。

(3) 経営計画・目標


同社は「2030年売上高1,000億円」という野心的な中期目標を掲げて経営を行っています。この持続的な成長を実現するため、各連結子会社の経営状況を詳細に分析し、成長可能性が高い分野への経営資源の重点配分や不採算事業の再構築に積極的に取り組んでいます。

* 2030年売上高1,000億円

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、持続可能な成長に向けて、次世代パワー半導体や医療・検査分野など将来成長が見込まれる領域の研究開発を拡充しています。また、M&Aを積極的に実施して新たな成長分野へ進出し、シナジー効果を最大限に引き出すことで一層の企業価値の向上を図る方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「2030年売上高1,000億円」の実現に向け、持続的な成長を牽引する人材の確保と育成を最優先事項としています。戦略と連動した役割を定義して自律的成長を支援するとともに、イノベーションを担う人材やM&A統合後のシナジーを最大化するリーダーを計画的に育成する方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 47.2歳 8.1年 7,077,482円

※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 25.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) -
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) -
労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) -

※同社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」等の規定による公表義務の対象ではないため、一部項目の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員一人あたりの年間教育投資額(14,457.6円)、離職率(6.4%)、女性管理職比率(4.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 技術革新に係るリスク


同社を取り巻く市場環境は技術の進歩が急速であり、常に最先端の製品開発が求められます。万が一、開発の遅れや顧客ニーズの変化への対応が遅れた場合、同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 海外依存と為替変動リスク


同社グループは中国およびアジア地域への売上が全体の約22%を占めています。そのため、これら地域における政治・経済・社会情勢の変化や各種規制の変更、為替レートの変動等が業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 原材料・部品の価格変動リスク


原材料や部品の価格が上昇する局面において、取引先からの価格引き上げ要請が強まる可能性があります。調達価格の低減交渉に努めているものの、想定以上の価格高騰が生じた場合は収益性が低下する恐れがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。