ワイエイシイホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ワイエイシイホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ワイエイシイホールディングスは、東京証券取引所 プライム市場に上場しており、半導体・メカトロニクス、医療・ヘルスケア、環境・社会インフラ関連製品の開発・製造・販売等を主要事業としています。直近の業績は、売上高230億円(前期比14.1%減)、経常利益11億円(同45.8%減)の減収減益となりました。


※本記事は、ワイエイシイホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第53期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ワイエイシイホールディングスってどんな会社?


同社は、半導体製造装置や医療機器、社会インフラ設備など多岐にわたる製品を開発・製造する持株会社です。

(1) 会社概要


1973年に包装機等の製造販売を目的として設立され、クリーニング業界や半導体業界へ参入しました。2004年にジャスダックへ上場後、2006年に東証二部、2007年に東証一部(現プライム)へ銘柄指定されています。2017年には持株会社体制へ移行し、現社名へ変更しました。近年では、大倉電気やトプコンテクノハウス(現テクノオプティス)を子会社化するなど、M&Aによる事業拡大を積極的に進めています。

同グループは連結従業員数832名、単体17名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は創業者の資産管理会社と思われる株式会社モモタケで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は創業メンバーであり代表取締役会長兼社長の百瀬武文氏です。

氏名 持株比率
モモタケ 13.25%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.34%
百瀬 武文 3.59%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表者は代表取締役会長 兼 社長の百瀬武文氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
百瀬 武文 代表取締役会長 兼 社長事業統括本部長経営戦略本部長 1973年5月同社設立と同時に代表取締役社長に就任。2023年4月より代表取締役会長兼社長。
伊藤 利彦 取締役副社長事業統括副本部長 1986年12月同社入社。メモリーディスク事業部長等を経て、2023年4月より現職。
大倉 章裕 取締役専務執行役員 1995年12月大倉電気入社。2015年6月同社社長。2023年5月より現職。
畠山 督 取締役常務執行役員管理統括本部長 1977年4月日本興業銀行入行。興銀リース常務等を経て、2022年6月より現職。
西坂 昌伯 取締役執行役員管理統括副本部長 1986年4月協和銀行入社。人事総務部長等を経て、2024年10月より現職。


社外取締役は、木船常康(元ジャパンプリント社長)、森林育代(シーズプレイス社長)、奥村和仁(奥村和仁中小企業診断士事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「半導体・メカトロニクス関連事業」「医療・ヘルスケア関連事業」および「環境・社会インフラ関連事業」を展開しています。

半導体・メカトロニクス関連事業


ハードディスク関連装置、クリーン搬送装置、半導体製造関連装置、太陽電池製造装置、レーザプロセス装置などの開発・製造・販売を行っています。また、電子部品搬送用キャリアテープや光計測器なども取り扱っており、主な顧客は半導体メーカーや電子部品メーカー等です。

収益は、製品の販売および保守サービス料から得ています。運営は、ワイエイシイメカトロニクス、ワイエイシイガーター、ワイエイシイビーム、ワイエイシイダステック、JEインターナショナル、テクノオプティス等が主に行っています。

医療・ヘルスケア関連事業


人工透析装置、全自動高感度デジタル免疫測定システム、全自動毛髪スライサー等の医療・理化学機器の開発・製造・販売を行っています。主な顧客は医療機関や検査機関等です。

収益は、医療用機器等の製品販売から得ています。運営は、主にワイエイシイエレックスおよびワイエイシイバイオが行っています。

環境・社会インフラ関連事業


工業計器、制御通信装置、半導体製造装置、医療リネン関連装置、自動包装機、精密熱処理装置などの開発・製造・販売を行っています。社会インフラを支える多様な製品群を有し、幅広い産業分野を顧客としています。

収益は、各種装置・機器の販売および保守サービス料から得ています。運営は、大倉電気、ワイエイシイマシナリー、ワイエイシイデンコー等が主に行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は230億円〜268億円の範囲で推移しています。直近の2025年3月期は、車載用半導体関連の不調や顧客の設備投資先送りなどの影響を受け、売上高、利益ともに減少しました。特に利益面では、原材料費の高騰や人件費の上昇などが響き、利益率が低下傾向にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 242億円 228億円 241億円 268億円 230億円
経常利益 7.4億円 15億円 15億円 21億円 11億円
利益率(%) 3.1% 6.5% 6.4% 7.7% 4.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 2.6億円 6.2億円 -4.0億円 10億円 8.9億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上高の減少に伴い、売上総利益および営業利益が減少しています。売上総利益率は微増しましたが、販管費の負担が相対的に重くなり、営業利益率は低下しました。減収の中で利益率を維持・向上させることが課題となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 268億円 230億円
売上総利益 71億円 66億円
売上総利益率(%) 26.5% 28.5%
営業利益 20億円 14億円
営業利益率(%) 7.5% 5.9%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当などの人件費関連(役員報酬及び給与手当)が20億円(構成比39%)と大きな割合を占めています。また、研究開発費は4.3億円(同8%)となっています。

(3) セグメント収益


半導体・メカトロニクス関連事業は、一部製品の好調により増収増益となりました。一方、環境・社会インフラ関連事業は顧客の投資先送り等の影響で大幅な減収減益となり、医療・ヘルスケア関連事業も減収減益となりました。全体としては環境・社会インフラ関連事業の落ち込みが業績に大きく影響しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
半導体・メカトロニクス関連事業 110億円 114億円 - - -
医療・ヘルスケア関連事業 55億円 50億円 - - -
環境・社会インフラ関連事業 103億円 66億円 - - -
連結(合計) 268億円 230億円 - - -

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 9億円 27億円
投資CF -22億円 -11億円
財務CF 23億円 -21億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は41.1%でプライム市場(製造業平均46.8%)を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「より多く社会に貢献する」という経営理念を掲げています。この理念を実現するため、2020年に「究極の理念」を定め、グループ全体の指針としています。

(2) 企業文化


「全員経営」「連携と競争」を重視する企業文化があります。また、社員・グループの成長とともに、SDGs経営の推進や納税額の拡大に取り組む姿勢を明確にしています。ホールディングスと各事業会社間での健全な競争と連携を通じて、企業価値の向上を目指しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、中期経営計画(2024〜2026年度)を策定し、持続的な成長を目指しています。具体的な取り組みとして、成長可能性の高い分野への重点的な経営資源の配分、不採算事業の再構築による収益力の向上、および財務体質の強化を掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長に向けて、AI関連、パワー半導体関連、医療分野など成長が見込まれる分野を中心に研究開発を拡充します。また、海外進出の継続による収益機会の拡大や、シナジー効果を見込んだM&Aの実施、脱炭素や脱プラスチックに関連する製品開発を通じたSDGsへの貢献を重点施策として推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、持続的発展に欠かせない要素として「人」を重視しており、個々のスキルに応じた研修や自己啓発支援を通じて従業員の成長を支援しています。また、多様な人材が活躍できる環境整備や、従業員満足度の向上、全員参加の安全衛生活動を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 45.1歳 9.5年 6,664,368円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.0%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -


※提出会社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」の規定による公表義務の対象ではないため、賃金差異等の記載を省略しています。また、男性労働者の育児休業取得率は対象者がいなかったため記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職に占める女性の割合(3.7%)、離職率(8.2%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 技術革新に係るリスク


同社グループを取り巻く環境は技術進歩が急速であり、常に最先端の製品開発が求められます。開発の遅れや顧客ニーズの変化への対応が不十分だった場合、競争力を失い、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 金利の変動に係るリスク


事業資金の一部を金融機関からの借入金で調達しており、有利子負債を抱えています。計画的な返済や自己資本の充実に努めていますが、将来的な金利上昇などの金融環境の変化が生じた場合、支払利息の増加などが業績や財務状況に影響を与える可能性があります。

(3) 海外依存に係るリスク


海外、特に中国やアジア地域への売上高が一定割合を占めています。そのため、これらの地域における政治・経済情勢の変化、法規制の変更、為替レートの変動などが生じた場合、事業活動に支障をきたし、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 特定人物への依存リスク


代表取締役会長兼社長である百瀬武文氏は、設立以来の事業推進者として経営方針や戦略決定に重要な役割を果たしています。同氏に過度に依存しない体制構築を進めていますが、何らかの理由で同氏の業務遂行が困難になった場合、経営成績や事業運営に影響が出る可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。