※本記事は、東洋電機株式会社 の有価証券報告書(第86期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 東洋電機ってどんな会社?
制御装置や変圧器、センサ等を製造するFA業界向け機器メーカーです。グローバル展開も進めています。
■(1) 会社概要
1947年に配電用柱上変圧器の修理を主業として設立され、1949年に配電盤等の製造を開始しました。1997年に名古屋証券取引所市場第二部に上場し、2004年には中国、2013年にはタイに現地法人を設立して海外展開を加速させました。2024年には子会社2社を吸収合併するなど組織再編を進め、現在は名証メイン市場に上場しています。
同グループの従業員数は連結で382名、単体で208名です。主要株主には、筆頭株主である有限会社城西、第2位の東洋電機取引先持株会、第3位の商工組合中央金庫などが名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 有限会社城西 | 10.23% |
| 東洋電機取引先持株会 | 8.20% |
| 商工組合中央金庫 | 5.52% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員には松尾昇光氏が就任しており、社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 松尾 昇光 | 代表取締役社長執行役員SDGs推進室長 | 1998年日東工業入社。2001年同社入社。管理本部経理部長等を経て2012年より現職。 |
| 井澤 宏 | 取締役常務執行役員事業部・海外関係会社担当変圧器事業部長 | 1990年CKD入社。2007年同社入社。機器事業部長等を経て2025年より現職。 |
| 加賀 美孝 | 取締役常務執行役員本社管理部門・国内関係会社担当 | 1988年商工組合中央金庫入庫。同金庫支店長等を経て2020年同社入社。2022年より現職。 |
| 菅 幸彦 | 取締役(監査等委員) | 1987年同社入社。執行役員市場開拓室長、R&Dセンター室長等を経て2025年より現職。 |
社外取締役は、葛谷昌浩(公認会計士・税理士)、井上誠(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「国内制御装置関連事業」、「海外制御装置関連事業」、「樹脂関連事業」の3つの報告セグメントで事業を展開しています。
■(1) 国内制御装置関連事業
監視制御装置、配電盤、変圧器、センサ、ソリューション向け装置および表示器の製造・販売を行っています。また、子会社を通じて配電盤や変圧器などの筐体塗装も手がけています。主な顧客はFA(ファクトリーオートメーション)関連の設備投資を行う国内企業等です。
収益は、製品の販売代金や塗装などの加工賃から得ています。運営は、主に東洋電機が製品の製造・販売を行い、連結子会社のアドヴァンコーティングが塗装業務を担っています。
■(2) 海外制御装置関連事業
中国およびタイにおいて、配電盤やエレベータセンサ等の製造・販売を行っています。現地の需要に対応するとともに、同社からの製造委託も受けています。
収益は、現地および同社への製品販売から得ています。運営は、中国では南京華洋電気有限公司が配電盤やセンサ等を、タイではThai Toyo Electric Co.,Ltd.がエレベータセンサ等を製造・販売しています。
■(3) 樹脂関連事業
再生樹脂ペレットや機能性樹脂ペレットの製造・販売を行っています。環境配慮型製品としての需要に応える事業です。
収益は、樹脂ペレット製品の販売代金から得ています。運営は、連結子会社の東洋樹脂が担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は直近5期間で増加傾向にあり、特に2024年3月期以降は大きく伸長しています。利益面では2023年3月期に損失を計上しましたが、翌期には黒字回復しました。直近の2025年3月期は増収ながらも利益率は低下し、減益となっています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 78億円 | 77億円 | 76億円 | 88億円 | 93億円 |
| 経常利益 | 2億円 | 2億円 | -0億円 | 4億円 | 3億円 |
| 利益率(%) | 2.7% | 2.4% | -0.1% | 4.9% | 3.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2億円 | 1億円 | -1億円 | 4億円 | 3億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期の88億円から93億円へと増加しましたが、売上原価や販管費の増加により営業利益は減少しました。売上総利益率は若干低下しています。増収効果よりもコスト増の影響が大きく、営業利益率は前期より低下しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 88億円 | 93億円 |
| 売上総利益 | 24億円 | 24億円 |
| 売上総利益率(%) | 27.5% | 25.7% |
| 営業利益 | 4億円 | 3億円 |
| 営業利益率(%) | 4.3% | 3.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が6億円(構成比30%)、その他が7億円(同31%)を占めています。売上原価においては、材料費等の変動費や労務費が含まれ、売上高に対する原価率は74.3%となっています。
■(3) セグメント収益
国内制御装置関連事業は増収となりましたが、利益は減少しました。樹脂関連事業は増収増益と堅調です。一方、海外制御装置関連事業は中国経済の低迷等の影響を受け、減収減益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 国内制御装置関連事業 | 72億円 | 77億円 | 4億円 | 3億円 | 4.1% |
| 海外制御装置関連事業 | 9億円 | 9億円 | 1億円 | 0億円 | 0.7% |
| 樹脂関連事業 | 7億円 | 7億円 | 0億円 | 0億円 | 3.4% |
| 連結(合計) | 88億円 | 93億円 | 4億円 | 3億円 | 3.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 6億円 | -1億円 |
| 投資CF | -1億円 | -2億円 |
| 財務CF | -4億円 | 2億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.6%で市場平均(スタンダード市場平均7.2%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は57.4%で市場平均(スタンダード市場製造業平均57.5%)とほぼ同水準です。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「高い企業倫理に基づき、人間性を尊重し、時代の変化に適切に対応しながら、共存共栄のもとに豊かな社会づくりに貢献する」という経営理念を掲げています。FA業界向け制御機器メーカーとして、蓄積した総合エレクトロニクス技術を活用し、新しい技術・商品・システム・サービスの提供を通じて社会に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、「会社が常に社会的存在であることを自覚し、継続的かつ適正な利益の創出をもって事業の健全な存続と成長をめざす」ことをはじめ、「法令と社会規範の遵守」「個性と自主性を重視した働き甲斐ある職場づくり」「社会との融和と公正な情報公開」「環境に配慮した事業革新」を行動指針として定めています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、適切な利益を安定的に確保し企業価値を高めることを経営目標としています。第二次中期経営計画の2年目にあたる2025年度以降の数値目標として、以下の指標を掲げています。
* 2026年3月期:売上高92.5億円、営業利益3.2億円
* 2027年3月期:売上高93.9億円、営業利益4.7億円
* 2028年3月期:売上高96.9億円、営業利益5.6億円
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、省人化・省力化に向けたDXソリューションの提案や、SDGs推進による環境配慮型製品の開発、海外・国内成長市場への開拓に注力しています。また、原材料価格高騰への対応として適正価格への転嫁や調達の安定化、生産性向上と働き方改革、技術継承の見える化などを重点施策として推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、従業員一人ひとりがやりがいを持って働ける環境づくりを目指し、年齢・性別・国籍を問わず活躍できる職場環境の整備を進めています。キャリアビジョン制度の導入や意識改革研修、専門性向上のための外部研修などを通じ、環境変化に対応できるプロフェッショナル人材の育成と、技術継承の見える化による次世代技術者の育成に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 44.7歳 | 18.0年 | 6,101,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.1% |
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 55.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 73.0% |
| 男女賃金差異(非正規) | 50.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、技術継承のための年間教育研修時間(432.7時間)、一人当たりの年間教育研修費用(4.3万円)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 販売価格戦略の複雑化による影響
同社が事業を展開する市場は競争が厳しく、製品価格は低下傾向にあります。一方で、原材料価格の高騰に対応するための価格適正化が必要となっており、価格戦略が複雑化しています。競争の激化や長期化が進んだ場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 原材料の価格変動による影響
主要製品に使用される銅や鉄鋼などの原材料価格は国際市況に連動しています。これらの価格が変動した場合、同社グループの業績に影響を与える可能性があります。これに対し、生産性向上による原価低減や販売価格への転嫁、代替材料の検討などで影響の最小化に努めています。
■(3) 海外生産における影響
同社は中国およびタイに連結子会社を有しており、為替変動や現地国の政治・経済情勢の変化などが業績に影響を及ぼす可能性があります。カントリーリスクを十分に検討し、事業運営の安定化を図っています。



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