※本記事は、東洋電機株式会社の有価証券報告書(第87期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 東洋電機ってどんな会社?
同社はFA業界向けの制御機器メーカーとして、配電盤や変圧器などの製造・販売をグローバルに展開しています。
■(1) 会社概要
1947年に兵庫県尼崎市で配電用柱上変圧器の修理を主業として設立されました。1949年に名古屋市に工場を建設し配電盤や制御盤などの製作・販売を開始、1970年に現在の東洋電機へ商号変更しています。1997年に名古屋証券取引所市場第二部へ上場し、2022年にメイン市場へ移行しました。直近の2024年にはアドヴァンコーティングを連結子会社化しています。
従業員数は連結で366名、単体で212名です。筆頭株主は資産管理を行う城西で、第2位は取引先である東洋電機取引先持株会、第3位は金融機関の商工組合中央金庫となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 城西 | 10.15% |
| 東洋電機取引先持株会 | 7.54% |
| 商工組合中央金庫 | 5.48% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員SDGs推進室長は松尾昇光氏です。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 松尾昇光 | 代表取締役社長執行役員SDGs推進室長 | 1998年日東工業入社。2001年同社入社。管理本部経理部長、常務取締役などを経て、2012年代表取締役社長に就任。2020年より現職。 |
| 井澤宏 | 取締役常務執行役員事業部・海外関係会社担当 | 1990年CKD入社。2007年同社入社。機器事業部長、エンジニアリング事業部長などを経て、2026年より現職。 |
| 加賀美孝 | 取締役常務執行役員本社管理部門・国内関係会社担当 | 1988年商工組合中央金庫入庫。2020年同社へ出向し、経営管理本部長、企画部長などを経て、2022年より現職。 |
| 菅幸彦 | 取締役(監査等委員) | 1987年同社入社。市場開拓部長、機器事業部長、R&Dセンター室長などを経て、2025年より現職。 |
社外取締役は、葛谷昌浩(公認会計士)、井上誠(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「国内制御装置関連事業」、「海外制御装置関連事業」、「樹脂関連事業」を展開しています。
■国内制御装置関連事業
同社および国内子会社が、監視制御装置、配電盤、変圧器、センサ、ソリューション向け装置および表示器の製造・販売を行っています。生産設備の稼働支援などを目的に、多様な産業へ向けた幅広い制御機器を提供しています。
収益源はこれら製品の販売代金です。運営は主に同社が行っており、子会社のアドヴァンコーティングが同社の配電盤や変圧器などの筐体塗装の委託を受けています。
■海外制御装置関連事業
海外市場に向けて、配電盤やエレベータセンサなどの製造・販売を展開しています。主に中国やタイ王国における生産設備支援やインフラ関連の需要に対応し、グローバルな事業基盤を構築しています。
収益源は製品の販売代金や製造委託に伴う手数料などです。運営は海外子会社の南京華洋電気有限公司およびThai Toyo Electric Co.,Ltd.が行っています。
■樹脂関連事業
再生樹脂や機能性樹脂ペレットの製造・販売を手掛けています。資源循環型の取り組みとして環境負荷低減に貢献し、主に事務機器関連向けの製品などを提供しています。
収益源は再生・機能性樹脂ペレットの販売代金です。運営は国内子会社の東洋樹脂が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績を見ると、売上高は70億円台から90億円規模へと拡大傾向にあります。利益面では一時期赤字を計上しましたが、その後は収益基盤の再構築や適正価格での価格転嫁が進み、経常利益は安定して黒字を確保しており、収益力の改善が見られます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 77億円 | 76億円 | 88億円 | 93億円 | 89億円 |
| 経常利益 | 1.8億円 | - | 4.3億円 | 3.5億円 | 4.2億円 |
| 利益率(%) | 2.4% | -0.1% | 4.9% | 3.7% | 4.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.5億円 | -1.5億円 | 3.9億円 | 4.7億円 | 3.0億円 |
■(2) 損益計算書
当期の売上高は前期比で減少したものの、生産効率の向上や価格転嫁が進展したことにより、売上総利益および営業利益は増益となっています。収益構造の改善により、各段階の利益率も向上しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 93億円 | 89億円 |
| 売上総利益 | 24億円 | 25億円 |
| 売上総利益率(%) | 25.7% | 28.5% |
| 営業利益 | 2.9億円 | 3.5億円 |
| 営業利益率(%) | 3.1% | 3.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が6.9億円(構成比32%)と最も大きく、次いで福利厚生費が2.1億円(同10%)、運賃及び荷造費が1.7億円(同8%)を占めています。売上原価(63.5億円)は売上高に対する構成比で72%となっています。
■(3) セグメント収益
主力の国内制御装置関連事業は、機器部門の受注は前倒しで堅調だったものの、変圧器部門での価格競争や市場ニーズの変化が影響し減収となりました。海外制御装置関連事業は中国内の設備投資低迷により減収となった一方、樹脂関連事業は事務機器関連向けが好調で増収を記録しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 国内制御装置関連事業 | 77億円 | 74億円 |
| 海外制御装置関連事業 | 9.0億円 | 6.5億円 |
| 樹脂関連事業 | 7.4億円 | 8.3億円 |
| 連結(合計) | 93億円 | 89億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業活動で生み出した資金で投資を行い、さらに借入金の返済などの財務活動も手元資金で賄う「健全型」の推移を示しています。堅実な資金創出力を背景に、持続的な成長に向けた基盤が整っている状況と言えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -0.8億円 | 9.0億円 |
| 投資CF | -2.0億円 | -3.7億円 |
| 財務CF | 1.8億円 | -5.2億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は60.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「高い企業倫理に基づき、人間性を尊重し、時代の変化に適切に対応しながら、共存共栄のもとに豊かな社会づくりに貢献する」という経営理念を掲げています。FA業界向けの制御機器メーカーとして、蓄積した総合エレクトロニクス技術を活用し、常に新しい技術や製品、サービスを提供することで社会の発展に寄与することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社の行動指針では、「個性と自主性を重視し、働き甲斐ある職場づくりをめざす」ことや、「正々堂々、公正で自由な事業活動に邁進する」ことを重んじています。法令と社会規範を遵守する真摯な姿勢とともに、環境に配慮した事業革新に挑み、地球規模の環境保全に努める姿勢が日々の事業活動に根付いています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、企業価値を高めることを重要な経営目標とし、第二次中期経営計画を推進しています。適正な利益を安定的に確保するため、売上高や各段階の利益を重要な経営指標と位置づけています。
・売上高:100.8億円(2029年3月期計画)
・営業利益:6.4億円
・営業利益率:6.3%
・経常利益:6.6億円
■(4) 成長戦略と重点施策
従来のコスト吸収型経営から脱却し、付加価値創出型経営への転換を加速させています。省人化・省力化を背景としたDX関連需要の拡大を成長機会と捉え、提案型ビジネスモデルへの転換を一層推進しています。
・環境・エネルギー対応を軸とした成長戦略の推進
・技術力・提案力を背景とした価格決定力の強化と収益構造の高度化
・デジタル活用による生産性の飛躍的向上
・新製品開発・営業の全社横断による総合力強化と価値創出
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は人材の確保を最重要課題の一つと位置づけ、多様な専門性や経験を有する人材の中途採用に注力しています。また、管理職研修の充実や他社との研修交流を通じてマネジメント力の向上を図り、多様な人材が活躍できる組織づくりを進めています。人的投資を成長の源泉とし、組織力の継続的な強化を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 44.3歳 | 16.7年 | 5,897,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.9% |
| 男性育児休業取得率 | 80.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 61.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 77.8% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 48.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、技術継承のための年間教育研修時間(547.7時間)、一人当たりの年間教育研修費用(4.1万円)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 販売価格戦略の複雑化による影響
競争激化や原材料価格高騰が続く中、販売価格の適正化が重要課題となっています。価格戦略が複雑化しており、競争の長期化が同社グループの収益や業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 原材料の価格変動による影響
同社の主要製品に使用される銅や鉄鋼などの原材料価格は国際市況に連動しています。これらの価格変動が業績に影響を与える可能性があるため、原価低減や販売価格への転嫁などの対策を進めています。
■(3) 海外生産における影響
同社グループは中国およびタイ王国に生産拠点を持っています。現地の政治・経済情勢の変動や為替リスクなど、カントリーリスクが事業運営や業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 特定顧客への依存
主要顧客からの製品受託比率が高まり、特定顧客への依存度が増加しています。これら顧客の生産動向や外注方針が大きく変化した場合、業績に影響を及ぼす懸念があるため、新規顧客の開拓に努めています。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。