アオイ電子 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アオイ電子 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東証スタンダードに上場し、集積回路や機能部品などの電子部品製造を主力事業としています。第57期の業績は、売上高が前期比増収の350億円となった一方、当期純損失は1.2億円となり赤字幅は縮小しました。先端パッケージ分野への投資を加速させ、収益基盤の強化を図っています。(138文字)


※本記事は、アオイ電子株式会社 の有価証券報告書(第57期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アオイ電子ってどんな会社?


同社は香川県高松市に本社を置く電子部品メーカーで、集積回路や機能部品の製造・販売を主力としています。

(1) 会社概要


1969年に商号をアオイ電子に変更し電子部品製造を開始しました。2000年に東証二部へ上場し、2013年にハイコンポーネンツ青森、2016年に青梅エレクトロニクスを完全子会社化するなど生産体制を拡大しています。2022年の市場区分見直しに伴い、東証スタンダード市場へ移行しました。

連結従業員数は2,014名、単体では1,547名です。筆頭株主は個人の大西以知郎氏で、第2位は公益財団法人大西・アオイ記念財団、第3位はアオイコーポレーション有限会社となっており、創業家および関連団体が上位を占めています。

氏名 持株比率
大西 以知郎 18.91%
公益財団法人大西・アオイ記念財団 17.86%
アオイコーポレーション有限会社 10.27%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は木下和洋氏が務めています。社外取締役比率は44.4%です。

氏名 役職 主な経歴
木下 和洋 取締役社長(代表取締役) 1980年入社。総務部長、管理本部長、常務取締役等を経て、2022年より現職。
青木 良二 取締役管理本部長 1983年入社。総務部長、執行役員管理本部長等を経て、2022年より現職。
相沢 吉昭 取締役先端パッケージ推進本部長 東芝を経て2020年入社。第1技術本部長等を歴任し、2024年12月より現職。
多田 光德 取締役第2生産本部 管掌兼 先端パッケージ推進副本部長 1992年入社。第2生産本部長等を経て、2025年6月より現職。
中尾 正己 取締役設備開発本部長 1994年入社。第2技術本部長等を経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、古田昭博(元香川県警察本部刑事部長)、北山昇(税理士)、橋本潤子(神戸大学大学院教授)、大平文和(香川大学名誉教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「集積回路」「機能部品」および「その他」事業を展開しています。

(1) 集積回路


IC、光学センサー、ウェハーレベルパッケージ、LED等の製造・販売を行っています。電子機器メーカー等を主な顧客とし、製品の多くはアセンブリ(組立・検査)受託を含みます。

収益は主に製品の販売や製造受託により得ています。運営は同社のほか、連結子会社のハイコンポーネンツ青森、青梅エレクトロニクスが製造を、ハヤマ工業がめっき加工を担当しています。

(2) 機能部品


サーマルプリントヘッドや各種センサー等の製造・販売を行っています。顧客が販売する搭載機器向けに開発・設計したカスタム部品を納入することが特徴です。

収益は製品の販売により得ています。運営は主に同社が行い、持分法適用関連会社のヴィーネックスがセンサー部品の販売先となっています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の推移を見ると、売上高は300億円台後半から400億円台で推移していましたが、直近2期は300億円台半ばとなっています。利益面では、かつて高い利益率を確保していましたが、前期に大幅な赤字を計上しました。当期は赤字幅が縮小したものの、依然として損失を計上しており、収益性の回復が課題となっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 403億円 433億円 372億円 339億円 350億円
経常利益 16億円 41億円 5億円 -13億円 4.2億円
利益率(%) 3.9% 9.5% 1.3% -3.8% 1.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 7.4億円 25億円 1.7億円 -30億円 -1.2億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、売上総利益率も改善しています。前期は営業赤字でしたが、当期は黒字転換を果たしました。コスト構造の見直しや売上増による固定費負担の軽減が寄与したと考えられます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 339億円 350億円
売上総利益 28億円 52億円
売上総利益率(%) 8.1% 14.9%
営業利益 -15億円 4.4億円
営業利益率(%) -4.6% 1.3%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が21億円(構成比45%)、従業員給与手当及び賞与が8億円(同17%)を占めています。

(3) セグメント収益


集積回路は携帯情報端末向け等の受注増により増収となりました。機能部品もサーマルプリントヘッドの在庫調整進展により増収となり、全セグメントで売上が伸長しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
集積回路 300億円 307億円
機能部品 39億円 43億円
その他 0.1億円 0.3億円
連結(合計) 339億円 350億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

アオイ電子は、集積回路や機能部品の販売好調により、営業活動で資金を創出しています。一方で、投資活動では将来に向けた設備投資や預金の積み増しを行い、財務活動では借入と返済、配当金の支払いを行っています。これらの活動の結果、当連結会計年度末の資金は減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 27億円 15億円
投資CF -30億円 -79億円
財務CF -23億円 0.9億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、電子部品の生産を通じて人々の暮らしと深く関わっていることを認識し、「熱意」「誠意」「創意」をキーワードに、信頼性の高い製品を安定的に供給することを使命としています。

(2) 企業文化


「革新と創造」を続け、常に前進する企業グループを目指しています。顧客目線に立った全社的提案型営業や、市場に先んじた品質での信頼獲得、既成概念を打破した原価改善などを重視し、地球・社会に調和した経営に取り組む文化があります。

(3) 経営計画・目標


企業価値の拡大を図るため、収益力の向上と財務体質の充実を目指し、中長期的な経営目標として以下の数値を掲げています。
- ROA(総資本経常利益率):15%以上
- ROE(株主資本当期純利益率):10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


生産性向上やコスト削減を強化するとともに、先端パッケージなどの新事業分野へ積極的に経営資源を投入します。新製品や高付加価値製品の開発により収益基盤を強化し、持続的な成長を目指しています。
- 既存製品の拡充と新製品の創造・上市
- スピード感を持った対処
- 有効性・効率性の追求による適正利益の確保

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人を育て、人が育てる企業」を基本方針とし、社員一人ひとりの成長と自己実現を目指しています。雇用における差別を排除し、教育制度や人事評価・処遇制度を整備しています。特に「稼ぐ人材」の育成を重視し、階層別研修や専門スキル研修、eラーニングなどを通じて自律的な学習を支援しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.7歳 16.7年 4,577,096円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.5%
男性育児休業取得率 66.6%
男女賃金差異(全労働者) 66.1%
男女賃金差異(正規) 69.8%
男女賃金差異(非正規) 38.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、研修プログラム実施件数(112件)、延べ受講者数(5,416名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定顧客・製品への依存


売上の約8割を集積回路部門が占め、その多くがアセンブリ事業です。独立系工場として約50社へ供給していますが、顧客の販売状況により受注が左右される可能性があります。機能部品も顧客の搭載機器向けカスタム部品が主体であり、同様のリスクがあります。

(2) 電子部品業界の市況変動


技術革新による陳腐化が激しく、需給バランスの変動や設備投資サイクルにより市況が大きく変動します。これにより同社グループの経営成績も顕著な影響を受ける可能性があります。

(3) 価格競争および為替変動


国際的な競争激化により販売価格の下落圧力が続いています。また、製品が搭載される最終製品の輸出比率増加に伴い、海外市場の動向や為替相場の変動が業績に影響を与える可能性があります。

(4) 原材料価格の変動と調達


金属類をはじめとする原材料価格の高騰や、地政学的緊張による供給不安のリスクがあります。これによるコスト上昇を販売価格に十分転嫁できない場合、利益率が低下する恐れがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。