サン電子 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

サン電子 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

サン電子は東京証券取引所スタンダード市場に上場しています。主にデジタルデータ解析機器や遊技機部品、IoT関連機器の開発・販売を展開しています。直近の業績では、エンターテインメント関連等の出荷減少により減収となったものの、持分法による投資利益の計上により経常利益は大幅な増益を達成しています。


※本記事は、サン電子株式会社の有価証券報告書(第55期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. サン電子ってどんな会社?


デジタルデータ解析ソリューションと遊技機部品、M2M通信機器等の開発・販売を手がけるIT機器メーカーです。

(1) 会社概要


1971年4月に愛知県江南市で電子機器の製造販売を目的に設立されました。1974年にパチンコホール用コンピュータ、1980年に遊技機制御基板を発売し事業を拡大。2004年にジャスダック証券取引所へ上場し、2007年にはイスラエルのCellebrite社に資本参加して情報通信分野の基盤を築きました。

従業員数は連結で307名、単体で215名です。筆頭株主は資産管理会社の東海エンジニアリングで、第2位はHebara Holdco II, L.P.、第3位はOASIS INVESTMENTS II MASTER FUND LTD.となっています。なお、第7位の藤商事はエンターテインメント分野での提携先です。

氏名 持株比率
東海エンジニアリング 19.80%
Hebara Holdco II, L.P. 19.70%
OASIS INVESTMENTS II MASTER FUND LTD. 9.40%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は内海龍輔氏が務めています。社外取締役比率は55.6%です。

氏名 役職 主な経歴
内海 龍輔 代表取締役社長 中部経営情報化協会等を経て2012年同社入社。内部監査室長等を経て2021年6月より現職。
木村 好己 取締役 監査法人や事業会社の役員等を経て2018年同社コンサルタント。社長等を経て2026年6月より現職。
ヤコブ・ズリッカ 取締役 法律事務所や事業開発コンサルタント等を経て2020年4月同社社外取締役。同年7月より現職。
武藤 靖司 取締役(監査等委員) 1992年同社入社。プロダクト統括部長や内部監査室長等を経て2020年6月より現職。


社外取締役は、リサ・ハミット(元セールスフォース・ドットコム バイスプレジデント)、真鍋理人(元三井物産・ベイン・アンド・カンパニー等)、トーマス・ヘッゲ(元アドベント・インターナショナル投資家)、新開智之(監査法人コスモス代表社員)、松井隆(松井法律事務所代表社員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「グローバルデータインテリジェンス事業」、「エンターテインメント関連事業」、「IT関連事業」、「ウェルネス事業」の4つの報告セグメントを展開しています。

グローバルデータインテリジェンス事業


犯罪捜査機関等の法執行機関向けに、モバイルデータトランスファー機器やデジタルインテリジェンスソリューションの開発・製造・販売を行っています。PCやモバイル端末からデータを抽出・解析するツールを提供し、サイバー犯罪の捜査を支援しています。

収益は、機器の販売代金やソフトウェアライセンス料、継続的な保守・アップデートのサービス利用料として顧客から受け取ります。事業の運営は、主に持分法適用関連会社のCellebrite社とそのグループ会社が行っています。

エンターテインメント関連事業


パチンコ・パチスロ等の遊技機メーカー向けに、制御基板や樹脂成形品などの遊技機部品の開発・製造・販売を行っています。また、自社ブランドのゲームコンテンツ開発や配信サービスも提供し、レトロゲームの復刻等も手がけています。

収益は、遊技機メーカーからの部品販売代金や、ゲームユーザーからのソフト購入代金として受け取ります。事業の運営は、同社および子会社のイードリームが担当しています。

IT関連事業


M2M通信機器やIoTソリューション、B2B向けの業務支援システムの開発・製造・販売を行っています。遠隔監視・制御を可能にするルータ・ゲートウェイ製品等を提供し、企業の業務改善や効率化を支援しています。

収益は、通信機器の販売代金や、システム導入後の保守・運用・監視にかかる継続的なサービス利用料として顧客から受け取ります。事業の運営は、同社および子会社のEKTechグループ各社が行っています。

ウェルネス事業


デジタルヘルス分野において、主に睡眠の質を改善するスリープテック関連の商品・サービスの開発・販売を行っています。健康課題の解決に向けた新たなソリューションを提供しています。

収益は、ウェルネス関連機器の販売代金やサービス利用料として顧客から受け取ります。事業の運営は、子会社のサンデジタルヘルスが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は前4期・前3期の370億円規模から、Cellebrite社の持分法適用関連会社化等に伴い前2期以降は100億円前後で推移しています。経常利益と当期利益は持分法投資損益や持分変動損益の計上により、年度によって大きく変動する傾向が見られます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 372億円 374億円 100億円 108億円 99億円
経常利益 97億円 142億円 -41億円 7億円 51億円
利益率(%) 26.0% 37.9% -41.0% 6.6% 51.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 240億円 32億円 4億円 -8億円 1億円

(2) 損益計算書


直近2期の売上高は、エンターテインメント関連事業やIT関連事業における出荷数量の減少等により減収となりました。それに伴い売上総利益も減少しており、営業利益は赤字に転じています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 108億円 99億円
売上総利益 28億円 28億円
売上総利益率(%) 26.2% 27.9%
営業利益 - -0.2億円
営業利益率(%) 0.0% -0.2%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が9億円(構成比31%)、給与手当及び賞与が7億円(同25%)を占めています。

(3) セグメント収益


グローバルデータインテリジェンス事業は増収となったものの、一部受注条件の悪化により減益となりました。一方、IT関連事業やエンターテインメント関連事業は減収ながらも、経費削減等により増益を確保しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
グローバルデータインテリジェンス事業 12億円 13億円 2億円 1億円 10.8%
エンターテインメント関連事業 58億円 55億円 7億円 6億円 11.9%
IT関連事業 38億円 32億円 3億円 3億円 10.5%
ウェルネス事業 - - - -0.3億円 -
連結(合計) 108億円 99億円 - -0.2億円 -0.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFと投資CFがプラス、財務CFがマイナスとなっており、営業利益や資産の売却等による収入を用いて借入返済を進める改善局面(改善型)にあります。

企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は20.2%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も89.7%と、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「情報通信&エンターテインメントで人々を幸せにする」を基本理念として掲げています。「具現化(マテリアライズ)」、「挑戦(チャレンジ)」、「完遂(アコンプリッシュ)」をスローガンとし、新たな価値の提供を通じて社会に貢献し、人々の幸福を追求する企業姿勢を示しています。

(2) 企業文化


同社は、「挑戦する精神」を経営方針に据え、ベンチャー精神で自ら行動する文化を重視しています。失敗を恐れず、変化をチャンスと捉えて果敢に取り組む姿勢が根付いており、外部からの視点やノウハウも積極的に活用しながら、ワールドワイドな視点でさらなる成長を目指す組織風土を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社は、継続的かつ安定的に収益を確保し事業規模を拡大するため、売上高および売上総利益の成長と、それを踏まえた営業利益、経常利益、キャッシュ・フローを重要な経営指標と位置付けています。中長期的な目標として、以下の数値を掲げています。

・売上高:500億円
・営業利益率:15%
・2027年3月期目標:売上高192億円、営業利益21億円

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、「情報通信とエンターテインメントへの集中」を掲げ、セキュリティやIoT関連分野での新たな顧客価値の創造、エンターテインメント分野での新規IP創出、グローバル市場でのビジネス拡大を推進しています。また、既存事業の収益力改善と並行し、AIやヘルスケアなどの次世代成長領域における研究開発を強化しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、「人は会社にとって最大の財産」と捉え、多様な人材の確保と育成を推進しています。「人財開発会議」を定期開催し、自己啓発支援や研修制度を充実させることで従業員の自律的なキャリア形成を後押ししています。また、仕事と育児・介護の両立支援や長時間労働の削減など、働きやすい職場環境の構築にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
給与は「成果を出した人が報われる」実力主義の制度を基本としています。一人ひとりの人材力強化と国際競争力向上を見据え、収益に直結する成果を適正に評価し、それを報酬に反映させることで従業員の高いモチベーションを引き出しています。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.3歳 14.3年 5,605,362円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.1%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 74.6%
男女賃金差異(正規雇用) 78.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 24.2%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年間平均残業時間(10.34時間)、特定保健指導対象者率(28.7%)、1人当たり人財開発投資額(63,694円)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) パチンコ・パチスロ市場の規制動向


エンターテインメント関連事業は「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」などの規制を受けています。法改正や業界の自主規制により遊技機メーカーやホールの経営環境が急変した場合、製品需要が大幅に変動し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) グローバルサプライチェーンの乱れ


グローバルデータインテリジェンス事業やIT関連事業において、海外で開発・製造される機器を取り扱っているため、戦争やパンデミック等による物流の大幅な遅延や為替相場の変動が生じた場合、製品の安定供給が滞り、経営成績に影響を与えるリスクがあります。

(3) 情報セキュリティとサイバー攻撃


事業運営において経営・取引先・個人に関する重要な情報を扱っており、情報システムのセキュリティ強化に努めています。しかし、過失や外部からのサイバー攻撃によって情報漏洩やデータ改ざん等のインシデントが発生した場合、損害賠償や社会的信用の低下を招く恐れがあります。

(4) 技術革新とIoT市場の競争激化


IoT通信機器市場では、通信インフラの高速化や他業種からの新規参入により競争が激化しています。新技術への対応が遅れた場合や、予想外の代替技術が普及した際に適切に適応できない場合、競争力や価格優位性が低下し、事業の継続に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。