※本記事は、サン電子株式会社 の有価証券報告書(第54期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. サン電子ってどんな会社?
犯罪捜査機関向けのデータソリューション、遊技機部品、産業用通信機器、ウェルネス事業などを多角的に展開する企業です。
■(1) 会社概要
1971年に設立され、1974年にパチンコホール用コンピュータ、1980年に遊技機制御基板の販売を開始しました。2004年にJASDAQ市場へ上場し、2007年には現在の主力事業の一角であるCellebrite社の株式を取得しました。同社は2021年に米国NASDAQへ上場し、2023年には事業名称をグローバルデータインテリジェンス事業へ変更しました。
2025年3月31日時点で、連結従業員数は304名、単体従業員数は220名です。筆頭株主は資産管理会社の東海エンジニアリングで、第2位は投資事業組合であるHebara Holdco II, L.P.、第3位は投資ファンドのOASIS INVESTMENTS II MASTER FUND LTD.となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 東海エンジニアリング株式会社 | 19.20% |
| Hebara Holdco II, L.P.(常任代理人 三田証券株式会社) | 19.00% |
| OASIS INVESTMENTS II MASTER FUND LTD.(常任代理人 シティバンク、エヌ・エイ東京支店) | 9.10% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は内海 龍輔氏が務めています。社外取締役比率は44.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 内海 龍輔 | 代表取締役社長 | 2012年6月同社入社。内部統制室長、内部監査室長等を経て、2021年6月より現職。Cellebrite DI Ltd. Director等を兼務。 |
| 木村 好己 | 代表取締役専務 | 会計事務所、監査法人を経て、株式会社グッドマン常務取締役等を歴任。2019年6月同社代表取締役社長を経て、2021年6月より現職。 |
| ヨナタン・ドミニツ | 取締役 | 英国や香港でフォレンジック会計士として活動後、Oasis Management Company Ltd.ディレクター・戦略アナリスト。2020年4月より現職。 |
| ヤコブ・ズリッカ | 取締役 | イスラエルで弁護士として活動後、インクレディビルドジャパン株式会社代表取締役等を歴任。2020年7月より現職。 |
| 武藤 靖司 | 取締役(監査等委員) | 1992年11月同社入社。プロダクト統括部部長、執行役員、内部監査室長等を経て、2020年6月より現職。 |
社外取締役は、岩 田 彰(国立大学法人名古屋工業大学名誉教授)、リサ・ハミット(Intelsat 取締役会長)、新開 智之(監査法人コスモス 統括代表社員)、松井 隆(弁護士法人御園総合法律事務所 代表社員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「グローバルデータインテリジェンス事業」、「エンターテインメント関連事業」、「新規IT関連事業」および「ウェルネス事業」を展開しています。
■グローバルデータインテリジェンス事業
犯罪捜査機関等の法執行機関に向けたモバイルデータトランスファー機器や、デジタルインテリジェンスソリューションの開発・販売を行っています。また、近年はデジタル証拠の保全だけでなく、インシデントを未然に防ぐためのアクティブサイバーディフェンスや脅威インテリジェンス関連の商材も取り扱っています。
収益は、機器の販売代金のほか、ソフトウェアのライセンス料、サブスクリプション契約に基づく利用料、保守サービス料などから得ています。運営は、同社および持分法適用関連会社であるCellebrite DI Ltd.(イスラエル)やその各国の現地法人が行っています。
■エンターテインメント関連事業
パチンコ・パチスロ業界の遊技機メーカーに対し、遊技機制御基板や樹脂成形品などの遊技機部品を開発・製造・販売しています。また、独自のゲームコンテンツや配信サービスの開発・販売も行っています。
収益は、遊技機メーカーへの製品販売や、コンテンツ配信サービスの利用料から得ています。運営は主に同社が行っており、樹脂成形品や金型の製造などは連結子会社のイードリーム株式会社が担当しています。
■新規IT関連事業
M2M(Machine to Machine)通信機器やIoTソリューションの開発・製造・販売を行っています。また、B2B向けの業務支援システムの開発・販売も手がけており、遠隔監視・制御ソリューションなどを提供しています。
収益は、通信機器やシステムの販売代金、および保守サービス料などから得ています。運営は同社のほか、マレーシアの連結子会社であるEKTech Holdings Sdn. Bhd.とそのグループ会社が行っています。
■ウェルネス事業
デジタルヘルス分野において、ウェルネス関連の商品やサービスの開発・販売を行っています。具体的にはスリープテックを活用した睡眠改善機器などの取り扱いを進めています。
収益は、ウェルネス関連商品やサービスの販売から得ています。運営は、2025年1月に社名変更した連結子会社のサンデジタルヘルス株式会社(旧AceReal株式会社)を中心に行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年3月期から2025年3月期までの業績を見ると、売上高は第51期、52期に370億円台で推移しましたが、第53期に約100億円へと大きく減少しました。これは主要事業であったCellebrite社が連結子会社から持分法適用関連会社へ移行した影響によるものです。第54期は前期比で増収となり、利益面では経常利益および当期純利益が黒字転換しました。特に当期純利益は持分変動利益等の計上により過去最高水準となっています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 267億円 | 372億円 | 374億円 | 100億円 | 108億円 |
| 経常利益 | 9億円 | 97億円 | 142億円 | -41億円 | 7億円 |
| 利益率(%) | 3.3% | 26.0% | 37.9% | -41.0% | 6.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.5億円 | 28億円 | 69億円 | -38億円 | 172億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加しましたが、原材料価格の高騰などにより売上総利益は減少しました。販売費及び一般管理費は、営業基盤やコーポレート機能の強化に伴う経費増により増加しました。その結果、営業利益は前期の3億円から当期は0億円(100万円)へと大きく減少しました。一方で、持分法適用関連会社に関連する利益等が計上されたため、経常利益以降は大幅な黒字となっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 100億円 | 108億円 |
| 売上総利益 | 30億円 | 28億円 |
| 売上総利益率(%) | 29.5% | 26.2% |
| 営業利益 | 3億円 | 0億円 |
| 営業利益率(%) | 3.1% | 0.0% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が9億円(構成比32%)、給与手当及び賞与が7億円(同24%)を占めています。売上原価においては、製品等の売上原価が大部分を占めています。
■(3) セグメント収益
グローバルデータインテリジェンス事業はサブスクリプションの好調等により増収増益となりました。新規IT関連事業もM2M機器等の販売好調により増収増益です。一方、主力のエンターテインメント関連事業は出荷数量の減少により減収減益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| グローバルデータインテリジェンス事業 | 10億円 | 12億円 | 1億円 | 2億円 | 13.8% |
| エンターテインメント関連事業 | 61億円 | 59億円 | 8億円 | 7億円 | 11.2% |
| 新規IT関連事業 | 30億円 | 38億円 | 2億円 | 3億円 | 6.7% |
| ウェルネス事業 | - | - | - | 0億円 | - |
| 調整額 | -0億円 | -0億円 | -9億円 | -11億円 | - |
| 連結(合計) | 100億円 | 108億円 | 3億円 | 0億円 | 0.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 25億円 | -17億円 |
| 投資CF | -36億円 | 30億円 |
| 財務CF | -4億円 | -8億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は40.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は89.5%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「情報通信&エンターテインメントで人々を幸せにする」を基本理念として掲げています。ハードウェアとソフトウェアの両方の技術を持つエンジニア集団として、信頼される商品・サービスの提供を通じて新たな価値を創造し、収益への貢献と企業価値の向上を目指しています。
■(2) 企業文化
「挑戦する精神」を経営方針とし、「具現化(マテリアライズ)」「挑戦(チャレンジ)」「完遂(アコンプリッシュ)」をスローガンに掲げています。ベンチャー精神で自ら行動し、変化をチャンスと捉え、失敗を恐れずに更なる成長を目指してワールドワイドに取り組む姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2025年3月期を初年度とする3カ年の新中期経営計画を策定しています。最終年度となる2027年3月期の定量目標として以下の数値を掲げ、中長期的には売上高500億円、営業利益率15%を目指しています。
* 売上高:192億円
* 営業利益:21億円
■(4) 成長戦略と重点施策
「既存事業の稼ぐ力の改善」「新たな成長事業の創出」「新事業を支える経営基盤の構築」を戦略テーマとしています。グローバルデータインテリジェンス事業ではストックビジネスの拡大と高付加価値製品の探索、エンターテインメント事業では新規IP開発や海外展開、新規IT事業ではソリューションビジネスへの移行やAI活用を推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材を最大の財産と捉え、「人的資源の育成」「イノベーションを創出する組織づくり」「働きやすい職場環境の構築」「人財の獲得」に取り組んでいます。各分野のノウハウ共有による社員の「人財資本化」を推進し、多様な人材の採用や、育児支援制度の充実、健康経営の推進などを通じて、従業員の能力発揮と生産性向上を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均(598万円)とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 44.0歳 | 14.9年 | 6,120,462円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.8% |
| 男性育児休業取得率 | 0.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 69.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 72.9% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 32.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年間平均残業時間(11.89時間)、育児休業後の復職率(67%)、研修受講者数(225人)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) グローバルデータインテリジェンス事業のリスク
持分法適用関連会社であるCellebrite社製品や海外セキュリティ商材を扱っているため、戦争やパンデミックによる物流遅延、為替変動の影響を受ける可能性があります。また、技術革新やセキュリティ高度化への対応難易度が高まる中、新ソリューションの提供や安定的な収益確保が課題となる可能性があります。
■(2) エンターテインメント関連事業の法的規制
パチンコ・パチスロ業界は風営法等の法的規制を受けており、規則改正や自主規制により経営環境が急変する可能性があります。また、遊技機は型式試験への適合が必須であり、規制変更への対応が必要となるほか、新機種の需要変動が激しいため、ヒットの有無により業績が大きく変動するリスクがあります。
■(3) 新規IT関連事業の競争と規制
IoT通信機器市場は拡大していますが、他業種からの参入による競争激化が進んでいます。技術革新への対応遅れや予期せぬ新技術の普及が業績に影響する可能性があります。また、電気通信事業法に基づく技術基準適合認定が必要であり、関連法令や規格の変更に対応するためのコストや影響が発生する可能性があります。



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