※本記事は、株式会社バッファローの有価証券報告書(第40期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. バッファローってどんな会社?
同社はWi-FiルーターやストレージなどのPC周辺機器を主力とし、法人・個人向けにITソリューションを提供する企業です。
■(1) 会社概要
1978年に音響機器製品の開発・製造を目的として設立され、1996年には東証・名証第一部へ上場しました。2003年に持株会社体制へ移行してバッファローに商号変更した後、2025年4月に親会社のメルコホールディングスがバッファローを吸収合併し、事業会社として新たなスタートを切っています。
同社グループは連結で963名、単体で611名の従業員を擁しています。筆頭株主は資産管理等を行う関係会社のメルコグループで、第2位は創業家出身で代表取締役の牧寛之氏、第3位は公益財団法人の牧誠財団となっており、創業家と関係先が上位を占める安定した資本構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| メルコグループ | 30.57% |
| 牧寛之 | 17.01% |
| 牧誠財団 | 4.22% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性2名の計7名で構成され、女性役員比率は29.0%です。代表取締役社長執行役員CEOは牧寛之氏が務め、監査等委員である社外取締役3名を含め、社外取締役比率は42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 牧寛之 | 代表取締役社長執行役員CEO | 2004年にMelco Asset Management Limited代表取締役に就任し、2011年に同社取締役、2014年より現職。 |
| 中山千里 | 取締役 | 1987年にブラザー工業へ入社後、2008年に同社へ入社。法務部長や監査部長を経て、2023年より現職。 |
| 津坂巌 | 取締役 | 1992年に公認会計士津坂巌事務所を設立。1999年に同社監査役を経て、2004年より現職。 |
| 長瀬吉昌 | 取締役(監査等委員) | 1981年に大和証券へ入社し、同社常務取締役などを歴任。2021年に同社取締役、2025年より現職。 |
社外取締役は、神谷純(元ブラザー販売社長)、宮嶋宏幸(元ビックカメラ社長)、大塚久美子(元大塚家具社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「IT関連事業」の単一セグメントで展開しています。
IT関連事業
主に法人および個人向けに、Wi-Fiやルーターなどのネットワーク機器、HDDやNASなどのメモリ・ストレージ機器、マウスやキーボードといったパソコン周辺機器の開発、製造、販売を行っています。また、データ復旧サービスやネットワーク施工などの関連サービス、PCパーツの卸売等も手掛けています。
収益源は、製品の販売代金や保守・サポート等のサービス利用料から得ています。運営はバッファローを中核とし、PCパーツの開発・販売を行うシー・エフ・デー販売、ストレージ関連製品を手掛けるバイオス、ネットワーク・ストレージソフトウェアを開発するデジオン等の子会社と連携して行われています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間において、売上高は1,400億円台で安定して推移していましたが、直近決算では事業再編に伴う食品事業の連結除外等により減収となっています。一方で、価格改定や原価低減活動の成果により利益率は改善し、直近では経常利益が100億円を突破するなど、収益性の向上が顕著に表れています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1441.4億円 | 1425.8億円 | 1457.5億円 | 1431.1億円 | 1173.1億円 |
| 経常利益 | 130.8億円 | 47.2億円 | 25.8億円 | 90.3億円 | 102.2億円 |
| 利益率(%) | 9.1% | 3.3% | 1.8% | 6.3% | 8.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 52.7億円 | 63.6億円 | -3.8億円 | 60.1億円 | 80.7億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の比較では、売上高が減少したものの、原価低減と適正な価格設定の推進により利益水準は向上しています。売上総利益率はやや低下していますが、販売費及び一般管理費の大幅な削減が進んだ結果、営業利益および営業利益率は前期間を上回る実績を確保しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1431.1億円 | 1173.1億円 |
| 売上総利益 | 393.1億円 | 303.9億円 |
| 売上総利益率(%) | 27.5% | 25.9% |
| 営業利益 | 88.4億円 | 92.3億円 |
| 営業利益率(%) | 6.2% | 7.9% |
販売費及び一般管理費(211.6億円)のうち、給与・賞与が64.9億円(構成比31%)、支払手数料が60.7億円(同29%)を占めています。売上原価は869.3億円です。
■(3) セグメント収益
事業再編により食品事業をスピンオフした結果、同社はIT関連事業の単一セグメントとなっています。前期間に含まれていた他事業の売上が除外されたため全体の売上は減少していますが、主力であるIT関連領域への集中投資と経営資源の最適化が進められています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 連結(合計) | 1431.1億円 | 1173.1億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるキャッシュ創出に加えて、有価証券の売却等により投資活動でも資金を確保し、それらを借入金の返済や自己株式の取得等の財務活動に充てる改善型のキャッシュ・フロー状況となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 147.3億円 | 37.0億円 |
| 投資CF | -13.6億円 | 6.3億円 |
| 財務CF | -71.6億円 | -87.9億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は18.3%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は60.2%であり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、経営コンセプトとして「Original Value Creation(オリジナルな「価値」の創造)」を掲げています。IT関連業界における技術革新の進展を的確に捉えながら、独自の価値創造を継続することで持続的な成長を実現し、その成果をステークホルダーに還元することを目指しています。
■(2) 企業文化
コーポレートスローガンとして「Value Chain Engineering」を掲げており、企画、開発から保守・サポートに至るまでのエンジニアリング活動を通じて課題解決を図る文化が根付いています。また、「Fair and Open」「Logical Thinking」など4つの行動指針に基づき、合理性と透明性を重視する行動様式を確立しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は客観的な経営指標として、以下の目標を掲げて経営を行っています。
* 連結ROE15%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
インフレや労働力不足、経済安全保障への対応といった課題に対し、適正な価格設定による収益性の確保や、保守・設置の効率化を支援する製品サービスの提供を進めています。また、生成AIなどを強力なレバレッジとして活用し、付加価値の最大化と人的資本への投資による企業価値向上を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業戦略の達成に必要な人材像を明確化したうえで、階層別教育研修や実務を通じた能力開発、自己啓発支援等を組み合わせ、従業員の専門性向上を図っています。さらに、リスキリングの機会を提供し、従業員自らが成長を選択できる仕組みの整備を進めるなど、多様な価値観を持つ人材の確保と育成に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 38.5歳 | 12.9年 | 6,265,000円 |
※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.0% |
| 男性育児休業取得率 | 76.9% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 64.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 64.6% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 65.6% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) IT技術革新による市場変化
IT関連業界は技術革新のスピードが極めて速く、市場構造が急激に変化する特徴があります。世界中の競合他社に先駆けた製品開発や新技術の採用が遅れ、業界における主導的立場を失った場合、同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) グローバル競争の激化
パソコン周辺機器などは世界標準規格で製造されるため、世界的企業から専門特化型の小規模企業まで多数の競合が存在します。機能やデザイン、コスト面での競争力を維持できない場合、販売シェアの低下や収益力の悪化を招くリスクがあります。
■(3) 製品・サービスの欠陥
提供する製品やサービスに欠陥が生じた場合、社会的信用の失墜やブランド価値の低下につながります。さらに、製品回収や補償等の対応のために多額の費用負担が発生し、業績や財政状態に重大な影響を与える可能性があります。
■(4) 部材調達と在庫管理の不確実性
世界的な半導体供給不足や調達先の経営状況悪化等により、安定的な部材供給が得られないリスクがあります。また、技術革新による実勢価格の下落に対し、在庫の評価減や販売先への在庫補償費用が発生し、収益を圧迫する懸念があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。