※本記事は、シライ電子工業株式会社の有価証券報告書(第57期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. シライ電子工業ってどんな会社?
同社はプリント配線板の設計から製造、販売までを一気通貫で手掛けるトータルメーカーです。
■(1) 会社概要
1970年にプリント配線板事業の拡大を目的にシライ電子工業を設立し、1985年には多層プリント配線板事業へ参入しました。2002年には外観検査機事業を開始して事業領域を広げ、2006年に株式上場を果たしました。直近の2025年にはインドに販売子会社を設立し、海外展開をさらに推進しています。
従業員数は連結で1,211名、単体で359名です。筆頭株主は白井商事で、第2位は金融機関のりそな銀行、第3位は白井治夫氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 白井商事 | 13.51% |
| りそな銀行 | 2.72% |
| 白井治夫 | 2.52% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は13.0%です。代表取締役社長は五藤学氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 五藤学 | 代表取締役社長 | 2008年新日本有限責任監査法人入所。2018年同社入社。2022年取締役CFOを経て、2024年より現職。 |
| 宮崎信 | 常務取締役 | 1990年同社入社。生産本部長、常務取締役国内PCB事業担当などを経て、2025年より現職。 |
| 竹中一弘 | 取締役 | 1986年同社入社。生産本部長、グローバル品質保証統括部長などを経て、2024年より現職。 |
| 石角哲也 | 取締役 | 1991年同社入社。白井電子商貿(深セン)有限公司出向、執行役員営業担当などを経て、2024年より現職。 |
社外取締役は、和氣大輔氏(和氣公認会計士事務所所長)、清水久美子氏(清水法律事務所代表弁護士)、内野晃彦氏(ランテーナ合同会社代表社員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「プリント配線板事業」「検査機・ソリューション事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) プリント配線板事業
自動車、家電、産業機器等に使用される両面・多層プリント配線板の設計・試作・量産・実装までを一気通貫で提供しています。高放熱、大電流、高信頼性に対応した高付加価値製品や、インク使用量などを削減する環境対応型基板の提供にも注力しています。
顧客に合意された仕様の製品を納入することで収益を得ています。事業の運営は同社のほか、白井電子科技(香港)有限公司やオーミハイテクなどの国内外の関連会社が行っています。
■(2) 検査機・ソリューション事業
プリント配線板製造における目視検査の負担を緩和する外観検査機「VISPER」シリーズや、少量多品種検査に対応する新世代機「VIZERA」などの開発・販売を行っています。また、各種ソリューション商品の提供も行っています。
プリント配線板メーカー等の顧客に検査機やソリューション商品を販売し、製品が検収された時点で収益を得ています。当事業の運営は主に同社が行っています。
■(3) その他
プリント配線板等の物流管理を担う運送業や、配送・運搬・掃除ロボットの販売等を行っています。
物流サービスやロボット販売等の提供により収益を得ています。運営は同社やシライ物流サービスが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、売上高が290億円から330億円程度で推移しています。利益面では原材料価格の高騰などの影響を受けつつも、経常利益は毎期15億円以上を確保しており、安定した収益基盤を維持しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 294億円 | 329億円 | 288億円 | 293億円 | 291億円 |
| 経常利益 | 15億円 | 25億円 | 22億円 | 26億円 | 18億円 |
| 利益率(%) | 5.0% | 7.6% | 7.5% | 8.8% | 6.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 10億円 | 9億円 | 5億円 | 12億円 | 10億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期から微減となりましたが、原材料やエネルギー費の高騰が影響し、売上総利益および営業利益は減少しました。それに伴い利益率も低下傾向にあります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 293億円 | 291億円 |
| 売上総利益 | 59億円 | 54億円 |
| 売上総利益率(%) | 20.3% | 18.6% |
| 営業利益 | 26億円 | 20億円 |
| 営業利益率(%) | 8.8% | 7.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が12億円(構成比34%)、運賃及び荷造費が4億円(同12%)を占めています。
■(3) セグメント収益
プリント配線板事業はホームアプライアンスの受注が好調に推移したものの、カーエレクトロニクスの回復遅れが影響し微減となりました。検査機・ソリューション事業も受注が伸び悩み、減収となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| プリント配線板事業 | 287億円 | 285億円 |
| 検査機・ソリューション事業 | 5.5億円 | 4.7億円 |
| その他 | 0.9億円 | 1.0億円 |
| 連結(合計) | 293億円 | 291億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業(健全型)のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 26億円 | 20億円 |
| 投資CF | -1.6億円 | -6.4億円 |
| 財務CF | -32億円 | -15億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は57.1%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「一人ひとりが志をもって努力することで自らを高め、その力を結集して、はるかな未来を拓き、社会とお客様に貢献し、会社の繁栄と個々の生活の向上を目指そう。」を経営理念として掲げています。
■(2) 企業文化
経営の原点を「人」におき、社会から信頼されるバランスのとれた経営活動の実践を重視しています。全てのステークホルダーとの強固な信頼関係を構築し、多様な人材の個性を尊重する文化が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
中期的な経営目標として、最終年度(2027年3月期)において以下の数値を掲げています。
・売上高:330億円
・営業利益:26億円
■(4) 成長戦略と重点施策
ASEANやインドなど市場拡大が期待される成長市場への積極的なアプローチやサプライチェーンの多様化を進めています。また、生産体制の効率化や省人化、新規アライアンスの模索を通じ、不確実性の高い経営環境への対応力強化に注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
従業員の働きがいや成功体験を積み重ね、自発的に行動できる環境の構築を重視しています。また、世代や性別、国籍を問わず多様な人材を確保し、新しいアイデアを生み出すダイバーシティ経営を推進するとともに、将来を担う若年層人材への重点的な投資を行っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 46.6歳 | 20.5年 | 5,373,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.3% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 78.1% |
| 男女賃金差異(正規) | 74.3% |
| 男女賃金差異(非正規) | 92.3% |
※同社は公表義務の対象ではないため、有報には男性労働者の育児休業取得率の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 主要顧客の業界動向等による影響
プリント配線板の販売は最終製品(自動車、家電等)の生産動向に強く影響されます。顧客の戦略や景気後退により最終製品の需要が変動した場合、同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 海外での事業展開による影響
東アジアを中心に製造・販売拠点を展開していますが、予期せぬ法規制の変更、政治・経済の不安定化、人件費の高騰や為替レートの変動などが事業に悪影響を与えるリスクがあります。
■(3) 原材料の値上がり等の影響
主力製品の原材料である銅張積層板は、世界的な銅相場や原油価格の動向によって価格が高騰する場合があり、同社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。



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