シライ電子工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

シライ電子工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場するプリント配線板メーカー。主力のリジッドプリント配線板(両面・多層)の設計・製造・販売に加え、外観検査機の開発も手掛けます。直近の業績は、売上高293億円(前期比1.7%増)、経常利益26億円(同20.0%増)、当期純利益21億円(同39.6%増)と増収増益を達成しました。


※本記事は、シライ電子工業株式会社 の有価証券報告書(第56期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. シライ電子工業ってどんな会社?


プリント配線板のトータルメーカーとして、設計から製造、外観検査機の開発まで幅広く展開する企業です。

(1) 会社概要


1970年に京都市で設立され、1985年に多層プリント配線板事業へ参入しました。2002年にはプリント配線板外観検査機の事業を開始し、メーカーとしての知見を活かした装置開発に着手。2006年にジャスダック証券取引所へ上場を果たしました。海外展開も積極的に進め、2007年には中国に製造拠点となる白井電子科技(珠海)有限公司を設立するなど、グローバルな生産体制を構築しています。

連結従業員数は1,226名、単体では369名体制です。筆頭株主は創業者の資産管理会社である白井商事株式会社で13.43%を保有しており、第2位は資産管理業務を行う株式会社りそな銀行(2.70%)、第3位は創業者で名誉会長の白井治夫氏(2.51%)と続きます。創業家および関連会社が一定の持株比率を有しています。

氏名 持株比率
白井商事 13.43%
りそな銀行 2.70%
白井治夫 2.51%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.0%です。代表取締役社長は五藤学氏です。社外取締役比率は22.2%です。

氏名 役職 主な経歴
五藤学 代表取締役社長 公認会計士として監査法人勤務を経て、2018年に入社。執行役員、取締役CFOを経て、2024年3月より現職。
宮崎信 常務取締役 1990年入社。工場長、生産本部長などを歴任し、国内および海外拠点の生産管理に従事。2024年6月よりPCB製造担当。
大塚昌彦 取締役 1993年入社。検査機・ソリューション部長、代表取締役社長、会長を歴任。現在はPDS・ソリューション担当。
竹中一宏 取締役 1986年入社。品質保証本部長、生産本部長などを歴任。現在は品質・技術担当。
石角哲也 取締役 1991年入社。中国販売子会社のトップを務めるなど海外営業に精通。現在は営業担当。
白井治夫 取締役 1966年に白井製作所を創業し、1970年に同社を設立。代表取締役社長、会長を経て、2021年より名誉会長。


社外取締役は、和氣大輔(公認会計士事務所所長・他社社外役員)、清水久美子(法律事務所代表弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「プリント配線板事業」、「検査機・ソリューション事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) プリント配線板事業


リジッドプリント配線板の両面・多層プリント配線板を中心に、設計・製造・販売を行っています。自動車の衝突防止センサーやエンジンコントロールユニット等のカーエレクトロニクス関連、エアコンや冷蔵庫などの家電製品、産業機器など幅広い分野に製品を提供しています。放熱特性に優れたアルミベース基板や透明フィルム基板なども手掛けています。

収益は、国内外の電機メーカーや自動車部品メーカーなどの顧客へ製品を販売することで得ています。運営は、国内ではシライ電子工業および子会社のオーミハイテクが、海外では中国の白井電子科技(珠海)有限公司をはじめ、香港、上海、深セン、タイ、インドの各拠点が担当し、製造および販売を行っています。

(2) 検査機・ソリューション事業


プリント配線板の最終外観検査機「VISPER」シリーズの開発・販売を行っています。様々な種類やサイズのプリント配線板を高速かつ高精度で検査できる装置として、国内外の基板メーカーに提供しています。また、プリント配線板メーカーの生産性向上につながる各種ソリューションビジネス商品の開発も行っています。

収益は、検査機本体や関連ソリューション商品の販売および保守サービス等の対価として、プリント配線板メーカー等から受領します。運営は主にシライ電子工業が担当しており、自社のプリント配線板製造のノウハウを活かした製品開発を強みとしています。

(3) その他


報告セグメントに含まれない事業として、運送業などを営んでいます。同社グループ間のメール便や定期便のほか、近畿地区を中心に中部・北陸地区での運輸・運送、軽貨物便サービスを提供しています。

収益は、運送サービスの提供対価として顧客から受領します。運営は、子会社のシライ物流サービスが主に行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は300億円前後で推移しており、直近では293億円となりました。利益面では、経常利益が20億円台を維持しており、当期純利益も安定して黒字を確保しています。特に直近の当期純利益は前期比で大きく伸長し、21億円となりました。利益率も改善傾向にあり、収益性の向上が見られます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 224億円 294億円 329億円 288億円 293億円
経常利益 0.1億円 15億円 25億円 22億円 26億円
利益率(%) 0.0% 5.0% 7.6% 7.5% 8.8%
当期利益(親会社所有者帰属) -1.5億円 10億円 9億円 5億円 12億円

(2) 損益計算書


売上高は微増ながら、売上総利益および営業利益が増加しており、利益率の改善が見られます。売上原価率は依然として高い水準にありますが、コントロールされています。販管費も一定水準で推移しており、売上高の増加に対して費用増が抑制されたことで、各利益段階での増益に寄与しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 288億円 293億円
売上総利益 56億円 59億円
売上総利益率(%) 19.4% 20.3%
営業利益 23億円 26億円
営業利益率(%) 8.0% 8.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が11億円(構成比34%)、運賃及び荷造費が4億円(同12%)、支払手数料が3億円(同9%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力のプリント配線板事業は、カーエレクトロニクス市場の厳しさや為替の影響を受けつつも増収増益を達成しました。一方、検査機・ソリューション事業は売上が減少しましたが、利益率は改善し黒字転換を果たしています。その他事業は規模が小さく、調整額の影響を除けば全社利益の大部分をプリント配線板事業が稼ぎ出しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
プリント配線板事業 281億円 287億円 23億円 26億円 9.0%
検査機・ソリューション事業 6億円 6億円 -0.2億円 0.1億円 1.6%
その他 1億円 1億円 -0.2億円 -0.3億円 -34.4%
調整額 2億円 2億円 0.1億円 0.0億円 1.6%
連結(合計) 288億円 293億円 23億円 26億円 8.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業の営業活動で資金を稼ぎ出し、それを投資活動や借入金の返済に充てている「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 32億円 26億円
投資CF 0.1億円 -2億円
財務CF -24億円 -32億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は23.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は51.0%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「一人ひとりが志をもって努力することで自らを高め、その力を結集して、はるかな未来を拓き、社会とお客様に貢献し、会社の繁栄と個々の生活の向上を目指そう。」を経営理念として掲げています。この理念のもと、主力事業であるプリント配線板や関連事業を通じて、自社の成長だけでなく業界の発展や社会貢献を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、「原点に回帰し、一枚岩となる事で意思決定の迅速化を図り、お客様等のステークホルダーに価値を提供する」という経営方針のもと、組織の結束力を重視しています。経営の原点を「人」におき、個々の能力を活かしながら相互に連携し、不確実性の高い環境変化に対応できる組織づくりを進めています。また、バランスのとれた経営活動の実践と持続的な成長を目指す文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社は単年度の結果だけでなく、中長期的な視点での経営意思決定を重視しています。中期経営計画において、盤石な経営基盤の構築と安定した利益確保を目指しています。具体的な数値目標として以下を掲げています。

* 2025年3月期実績:売上高293億円、営業利益26億円(目標達成)

(4) 成長戦略と重点施策


新経営陣のリーダーシップのもと、各部門の連携を強化し、組織を一枚岩にすることで「対応力」を高める方針です。海外展開においては、中国での現地調達の強みを活かしつつ、成長市場であるASEANやインドへの進出を加速させています。具体的にはタイに販売子会社を有し、2025年4月にはインドにも販売子会社を設立しました。

製品面では、放熱特性に優れたアルミベース基板や高発熱部品に対応する銅ピン挿入基板、透明フィルム基板など、独自性のある高付加価値製品の提案・販売を強化し、企業競争力の向上を図っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、経営の原点を「人」におき、従業員の働きがいや成功体験を積み重ねることで自発的に行動できる環境構築を目指しています。多様な人材(世代、性別、国籍)を確保し、異なる意見を融合させることでイノベーションを促進する方針です。また、議論のプロセスを透明化し、納得感と相互承認を高めることでエンゲージメントを向上させるとともに、失敗を許容しチャレンジする風土を醸成し、経営感覚を持つ幹部候補の育成にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 45.8歳 20.1年 5,178,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.3%
男性育児休業取得率 -%
男女賃金差異(全労働者) 76.7%
男女賃金差異(正規雇用) 73.9%
男女賃金差異(非正規) 78.4%


※男性育児休業取得率については、有報にて「-」と記載されています。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 主要顧客の業界動向等による影響


プリント配線板は電気製品の部品であるため、販売動向は顧客の最終製品(自動車、家電、事務機器等)の生産台数に強く依存します。顧客の戦略変更や景気後退による需要変動、または最終製品の価格下落に伴う値下げ要請や価格競争が、同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 海外での事業展開による影響


東アジアを中心に製造・販売拠点を展開しており、中国等の外注先への製造委託も行っています。そのため、予期せぬ法規制の変更、政治・経済情勢の悪化、人件費高騰、為替変動、テロや戦争などの社会的混乱といった海外特有のリスクが内在しており、これらが顕在化した場合、業績や財務状況に影響を与える可能性があります。

(3) 技術革新に対する影響


エレクトロニクス業界の技術革新は速く、既存製品よりも先進的な機能を持つ製品が開発される可能性があります。同社グループがこうした技術革新に十分に対応できず、市場の要求を満たす製品を提供できなくなった場合、競争力を失い、業績及び財務状況に悪影響を及ぼす恐れがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。