※本記事は、日野自動車株式会社 の有価証券報告書(2025年3月期、2024年4月1日 ~ 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. 企業概要:どんな会社?
日野自動車グループは、トラック・バスの製造販売を主軸とし、トヨタ自動車からの受託生産も手掛けています。製品の開発、設計、その他のサービスも展開しています。
単体従業員数は11,950名、連結従業員数は33,608名です。セグメントは日本、アジア、その他の3つです。
主な国内グループ会社は、北海道日野自動車(自動車の販売)、南関東日野自動車(〃)、日野セールスサポート(販売会社の資産管理)、福島製鋼(鋳造部品の製造)、理研鍛造(鍛造部品、金型の製造)などです。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
日野自動車は、トラック・バス製造を主軸とする企業であり、その事業特性から安定した雇用環境が期待されます。従業員の定着を重視し、長期的なキャリア形成を支援する働き方が特徴として挙げられます。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
同社では、従業員の平均勤続年数が長く、平均年齢も比較的高めであることから、安定して長く働く従業員が多い傾向が見られます。これは、従業員が腰を据えてキャリアを築ける環境が整っていることを示唆しています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 6,554,000円 |
| 平均勤続年数 | 19年4ヶ月 |
| 平均年齢 | 41.8歳 |
| 単体従業員数 | 11,950人 |
| 連結従業員数 | 33,608人 |
| 単体のグループ内比率 | 35.6% |
同社は確定給付型の制度として退職一時金制度および確定給付企業年金制度を有し、確定拠出型の制度として確定拠出企業年金制度を設けています。退職一時金制度があります。ただし支給条件や金額の算定方法は有価証券報告書では確認できないため、就業規則や募集要項で確認する必要があります。
確定給付型の退職給付債務は1,059億円、年金資産は1,026億円となっています。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
日野自動車は、2022年3月4日に公表したエンジン認証に関する不正行為を受けて策定した「3つの改革」を継続的に推進しており、今後の再生と飛躍には人的資本が非常に重要であると考えています。中期事業計画と連動した人材戦略を策定し、人材の確保・育成、モチベーション向上に繋がる施策を行っています。
同社は「自ら考動・新たな価値を創造できる人材」の育成を重視し、人材を重要な会社の財産と位置付けています。人の成長を主眼に適切な資本を投下する「人的資本経営」を経営課題としています。人材の評価・昇格・役職任用は、期待される役割に対する能力発揮や可能性に基づき、公正かつ厳格に判断する方針です。
社員は自身のキャリア形成に対する主体性を持ち、会社は適切な成長機会を提供することで、双方が長期的な視点で計画的に人材を育成するとしています。2023年2月にはCHRO(Chief Human Resources Officer)を設置し、本社人事機能を採用・育成・処遇・配置を司る組織と労務・ペイロールを推進する組織へ2分割しました。キャリアローテーションを活性化し、多くの経験を積む機会を増やすことで、経営者として必要な胆力を持った人材の輩出に努めています。
また、全従業員が守るべき具体的な行動基準として「HINO行動規範」を定めており、コンプライアンス教育の推進や、第三者機関による「HINOコンプライアンス相談窓口」を設置し、リスク管理と意識向上を図っています。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
提出会社単体の法定開示データです。各指標は、女性活躍推進法および育児介護休業法の規定に基づき算出されています。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.8% |
| 男性育児休業取得率 | 68.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 77.8% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 77.3% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | 90.3% |
連結子会社の法定開示
主要事業会社3社の数値のみ掲載します。
▼ 福島製鋼㈱
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.4% |
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
▼ 理研鍛造㈱
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 男性育児休業取得率 | 88.0% |
▼ ㈱ソーシン
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 男性育児休業取得率 | 25.0% |
中核人材の多様性
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職数 | 59名 |
| 女性管理職比率 | 2.8% |
| 外国人管理職比率 | 7.3% |
| キャリア採用者管理職比率 | 40.5% |
その他
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 男性育児休業取得率 | 68.0% |
| 男女間賃金格差 | 77.8% |
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
日野自動車は、トラック・バスの製造販売とトヨタ自動車からの受託生産を主軸とする同社グループです。さらに、事業に関連する製品の開発、設計、その他のサービスも展開しています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
同社グループは、当社、親会社、子会社74社、関連会社20社で構成されています。主力事業はトラック・バスの生産販売であり、トヨタ自動車からの車両受託生産も重要な収益源となっています。収益モデルは、これらの製品販売と受託生産によるものです。
同社グループの事業は、主に地域別のセグメントに分かれて展開されています。国内では当社および国内子会社が、海外では現地子会社が各地域を担当し、市場に適した戦略を立案しています。
日本
日野ブランド事業の国内向けトラック・バス、海外向け、トヨタ向け車両の生産販売を行っています。当連結会計年度においては、主に大型トラックの売上台数増加やトヨタ向け車両の台数増加により、売上高およびセグメント利益ともに増加しました。収益は、トラック・バス、トヨタ向け車両、補給部品、その他の販売から得ています。
アジア
タイを中心としたアジア地域におけるトラック・バスの生産販売を担っています。当連結会計年度は、アジア経済の低迷により売上台数が減少し、売上高およびセグメント利益ともに減少しました。収益は、トラック・バス、補給部品、その他の販売から得ています。
その他の事業セグメント
北米、オセアニア等、報告セグメントに含まれない地域での事業を展開しています。当連結会計年度は、北米を中心とした売上台数の増加により、売上高およびセグメント利益ともに増加しました。収益は、トラック・バス、補給部品、その他の販売から得ています。
同社グループの売上高は、日本が最大の割合を占めていますが、インドネシア、タイ、アメリカなど海外地域からの売上も大きく、為替円安が営業利益に寄与する傾向が見られます。また、トヨタ自動車株式会社への売上高は当連結会計年度で全体の約9.0%を占めており、主要な顧客の一つとなっています。
| セグメント | 売上高(2024年3月期) | 売上高(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 日本 | 7,864億円 | 9,513億円 |
| アジア | 4,515億円 | 4,142億円 |
| その他の事業セグメント | 2,783億円 | 3,318億円 |
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
同社グループの過去5期間の業績を見ると、売上高は変動しつつも当連結会計年度には増加しています。経常利益は大きく変動しており、前期は損失を計上しましたが、当連結会計年度は増益に転じました。親会社株主に帰属する当期純利益は、当連結会計年度に大幅な損失を計上しており、これは北米認証関連損失が特別損失として計上されたことなどが主な要因となっています。営業活動によるキャッシュ・フローは、前期の減少から当連結会計年度は増加に転じています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1兆4,984億円 | 1兆4,597億円 | 1兆5,073億円 | 1兆5,163億円 | 1兆6,972億円 |
| 経常利益 | 123億円 | 380億円 | 158億円 | △92.3億円 | 393億円 |
| 経常利益率 | 0.8% | 2.6% | 1.0% | △0.6% | 2.3% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | △74.9億円 | △847億円 | △1,177億円 | 171億円 | △2,178億円 |
| 1株当たり当期純利益(円) | △13.05 | △147.61 | △204.98 | 29.77 | △379.34 |
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
同社グループの従業員1人あたり売上高(連結)は、前期から当期にかけて増加しています。また、従業員1人あたり営業利益(連結)は、前期の損失から当期は利益に転じました。これらの指標は、同社グループの連結従業員数に対する売上高と営業利益の状況を示しており、生産性の改善傾向が見られます。
| 指標 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 従業員1人あたり売上高(連結) | 44.5百万円 | 50.5百万円 |
| 従業員1人あたり営業利益(連結) | △0.2百万円 | 1.7百万円 |
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
同社グループの財務基盤と資金の流れは、事業活動による資金創出がありつつも、投資活動への資金配分が見られます。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
同社グループの自己資本比率は前期から当期にかけて低下しており、プライム市場の製造業平均と比較すると低い水準にあります。ROE(自己資本利益率)も当期はマイナスとなっています。一方で、現金及び預金は増加しており、手元資金は厚みを増しています。これらの財務状況は、今後の事業展開や雇用・給与の安定性を検討する上で注目すべき点です。
| 指標 | 2024年3月期(前期) | 2025年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 純資産 | 4,634億円 | 2,510億円 |
| 自己資本比率 | 26.8% | 12.1% |
| ROE(自己資本利益率) | 4.5% | △76.3% |
| 現金及び預金 | 770億円 | 1,936億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
同社グループの当期の営業活動によるキャッシュ・フローは11億28百万円の増加となりました。これは、入出金が制限された口座への振替があった一方で、棚卸資産や売上債権の減少があったこと等によるものです。投資活動によるキャッシュ・フローは46億円の減少となり、有形固定資産の取得による支出が収入を上回っています。その結果、フリーキャッシュ・フローは34億72百万円のマイナスとなっています。財務活動によるキャッシュ・フローは297億38百万円の増加となり、主に短期借入金の純増加によるものです。これらの資金の流れは、本業での資金創出が回復傾向にあるものの、投資活動への資金配分が見られ、外部からの資金調達も行われている状況を示しています。
| 項目 | 2024年3月期(前期) | 2025年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | △1,104億円 | 11.3億円 |
| 投資CF | 392億円 | △46億円 |
| 財務CF | 556億円 | 297億円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | △712億円 | △34.7億円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
継続企業の前提に関する特記事項はありません。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社グループは、エンジン認証不正問題により大規模な特別損失を計上しており、今後の経営成績や財政状態に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。また、三菱ふそうトラック・バス株式会社との経営統合の成否や条件によっては、統合が実施に至らないおそれや、特別補償の責任を負う可能性があり、大規模な株式の希薄化も予定されています。
③ 人材・組織に関するリスク
同社グループは、国内外での事業活動において、人材の採用・確保の困難等のリスクが存在すると認識しています。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
日野自動車は、人流・物流を支える社会インフラとしての役割を果たすことを使命とし、持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。企業理念「HINOウェイ」を基盤に、誠実さ、貢献、共感を大切にする企業風土を醸成しています。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
同社グループは、「人、そして物の移動を支え、豊かで住みよい世界と未来に貢献する」ことを会社の使命としています。この使命を果たすため、「HINO基本理念」、「HINOサステナビリティ方針」、「HINO行動規範」から成る企業理念「HINOウェイ」を定めています。人流・物流の課題解決を通じて、持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。
同社グループの経営ビジョンは「日野の『目指す姿』」として掲げられており、その実現に向けて事業を再建し、お客様や社会からの信頼回復に努めています。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
同社グループは、企業理念「HINOウェイ」のもと、以下の3つを共有の価値観として事業活動に取り組んでいます。「誠実」はコンプライアンスを徹底し誠実に行動すること、「貢献」は安全・環境にこだわり未来の社会を支えること、「共感」は互いを尊重し安全安心な職場をつくることを示しています。
また、一人ひとりの具体的な行動の基準として「HINO行動規範」を定めています。これは「法令・基準を守る」「お客様・社会に貢献する」「健全な職場を作る」の3つに大別され、社員が守るべき行動を明記しています。同社は「HINOウェイや会社ビジョンに共感を持ち、お客様・社会の為に自ら考え・自主的に行動を起こし、新たな価値創造を生み出せる人材」の育成を重視しています。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
同社は、エンジン認証不正問題を受けて策定した「3つの改革」(経営・企業風土・クルマづくりにおける改革)を継続的に推進しています。再発防止策として、社内チェック体制の再構築やコンプライアンスおよびガバナンスの強化、組織風土の抜本的改革等を実施フェーズに移しています。
経営基盤の強化においては、「人材」を重要な資産と位置付け、企業理念の浸透や社内コミュニケーションの活性化、人材育成、職場環境の整備に取り組んでいます。また、持続的成長の実現に向けた戦略資産として人的資本の強化を掲げ、「人の成長」を主眼とした取り組みを進めています。
さらに、トヨタ自動車、ダイムラートラック、三菱ふそうトラック・バスとの4社協業や、日野自動車と三菱ふそうトラック・バスの経営統合を推進しており、2026年4月の新体制発足を目標に準備を進めています。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
日野自動車の取締役会は、社外取締役が過半数を占める構成となっており、監査役会設置会社として経営の透明性と公正性を確保する体制を構築しています。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
同社グループは、筆頭株主であるトヨタ自動車をはじめとする事業会社や、複数の信託銀行によって支えられています。特にトヨタ自動車は過半数に近い株式を保有しており、同社グループの経営に強い影響力を持つ資本構成となっています。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| トヨタ自動車 | 50.14% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 10.30% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 3.27% |
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
同社の役員は11名(男性8名・女性3名)で構成され、女性役員比率は27.2%です。代表取締役社長CEO兼CHROは小木曽聡氏が務めています。社外取締役比率は57.1%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 小木曽 聡 | 取締役社長 代表取締役 経営全般 CEO兼CHRO | 1983年4月トヨタ自動車入社。2013年4月同社常務役員、2018年1月同社専務役員、2019年1月同社執行役員。2021年6月同社取締役社長より現職。 |
| 佐藤 直樹 | 取締役・専務役員 日本事業COO | 1989年4月同社入社。2020年2月同社執行職、2023年2月同社日本事業COO。2023年6月同社取締役・専務役員 日本事業COOより現職。 |
| 長田 准 | 取締役 | 1990年4月トヨタ自動車入社。2018年1月同社常務役員兼国内販売事業本部副本部長、2021年1月同社執行役員 Chief Communication Officer。2024年6月同社取締役より現職。 |
社外取締役は、吉田元一氏(学校法人明星学苑評議員会議長)、武藤光一氏(株式会社商船三井特別顧問)、中島正博氏(株式会社モリタホールディングス取締役会長兼CEO)、君嶋祥子氏(中外製薬株式会社上席執行役員 法務、知的財産統括)です。
同社は監査役制度採用会社であり、取締役会、監査役、監査役会及び会計監査人を設置しています。取締役会は社外取締役4名を含む7名で構成され、経営の監督機能を果たしています。監査役会は社外監査役2名を含む4名で構成され、経営の適正性・適法性を監視しています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
同社の取締役の報酬は、固定報酬としての基本報酬、業績連動報酬としての賞与、及び譲渡制限付株式報酬で構成されています。社外取締役および非業務執行取締役には基本報酬のみが支払われる仕組みです。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 取締役 | 8名 | 1.5億円 | 19.2百万円 |
| うち社外取締役 | 4名 | 48百万円 | 12.0百万円 |
| 監査役 | 4名 | 91百万円 | 22.8百万円 |
| うち社外監査役 | 2名 | 19百万円 | 9.5百万円 |
なお、人数は事業年度中に報酬の支給対象となった人数であり、期中に退任した役員を含みます。また、総額には期中に退任した役員の報酬が含まれます。
※本記事は、有価証券報告書などの公開情報から、転職・就職活動に役立つ情報をまとめたものです。内容の充実に努めていますが、掲載時点の情報であることをご留意ください。気になる点やご指摘があればお気軽にお知らせください。



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