カヤバ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

カヤバ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の油圧機器メーカー。自動車や二輪車用のショックアブソーバ、建設機械用の油圧機器、特装車両などを展開しています。2025年3月期は、自動車関連の需要が底堅く推移したものの、建設機械市場の低迷を受け減収となりました。一方、生産性改善やコスト低減が進み、営業利益ベースでは増益を確保しています。


※本記事は、カヤバ株式会社 の有価証券報告書(第103期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. カヤバってどんな会社?


自動車や二輪車の振動を制御するショックアブソーバや、建設機械等のパワーを制御する油圧機器を製造・販売するグローバル企業です。

(1) 会社概要


1919年に創業者が発明研究所を立ち上げ、1935年に株式会社萱場製作所を創立しました。1959年に東京証券取引所へ上場し、2006年には株式会社タカコを完全子会社化するなど事業基盤を強化しています。2015年に商号をKYBへ、さらに2023年には現在のカヤバへ変更しました。近年はインドでの合弁解消や国内子会社の再編など、事業ポートフォリオの最適化を進めています。

同社グループの従業員数は連結12,951名、単体4,473名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は主要顧客でもある自動車メーカーです。第3位も信託銀行となっており、機関投資家や取引先が主な株主となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行 (信託口) 10.66%
トヨタ自動車 6.13%
日本カストディ銀行 (信託口) 4.65%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性3名(社外取締役3名を含む)の計12名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役会長は大野 雅生氏です。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
川瀬 正裕 代表取締役社長執行役員 兼 CEO 1985年入社。オートモーティブコンポーネンツ事業本部の技術・商品企画部門を経て、同事業本部長や技術本部長を歴任。2023年より社長執行役員、2024年より現職。
大野 雅生 代表取締役会長 1979年入社。調達本部長、経営企画本部長などを経て、2019年に代表取締役社長執行役員に就任。2022年よりCEOを務め、2024年より現職。
齋藤 考 取締役副社長執行役員 兼 CFO 1984年富士銀行(現みずほ銀行)入行。みずほフィナンシャルグループ常務などを経て2018年に同社常勤監査役就任。欧州統轄や経理本部長を歴任し2024年より現職。


社外取締役は、塩澤 修平(慶應義塾大学名誉教授)、坂田 政一(元富士ゼロックスアドバンストテクノロジー社長)、須永 明美(公認会計士)、鶴田 千寿子(弁護士・元検事)です。

2. 事業内容


同社グループは、「AC事業」「HC事業」「航空機器事業」および「特装車両事業及びその他」事業を展開しています。

(1) AC(オートモーティブコンポーネンツ)事業


四輪車用および二輪車用の油圧緩衝器(ショックアブソーバ)や油圧機器等を製造し、自動車・二輪車メーカーおよび市販市場へ販売しています。

収益は、製品の販売対価として自動車メーカー等から受け取ります。運営は、国内では同社、カヤバモーターサイクルサスペンションなどが担当し、海外ではKYB Americas CorporationやKYB Europe GmbHなどの現地法人が製造・販売を行っています。

(2) HC(ハイドロリックコンポーネンツ)事業


建設機械メーカー等に向けて、産業用油圧機器(シリンダ、バルブ、ポンプ、モータ等)を製造・販売しています。

収益は、製品の販売対価として建設機械メーカー等から受け取ります。運営は、国内では同社および株式会社タカコなどが担当し、海外では凱迩必機械工業(鎮江)有限公司などの現地法人が製造・販売を行っています。

(3) 航空機器事業


航空機用の離着陸装置、操舵装置、制御装置および緊急装置等を製造・販売しています。

収益は、製品の販売対価として航空機メーカーや官公庁等から受け取ります。運営は主に同社が行っています。なお、同事業については2022年に撤退を表明しており、段階的に縮小を進めています。

(4) 特装車両事業及びその他


コンクリートミキサ車や粉粒体運搬車などの特装車両を製造し、特約販売会社等へ販売しています。

収益は、製品の販売対価として販売会社等から受け取ります。運営は主に同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの5期間を見ると、売上高は3,000億円台前半から4,000億円台半ばまで拡大しましたが、直近では微減となっています。利益面では、2023年3月期に税引前利益が300億円を超えましたが、その後は200億円台で推移しています。当期利益は変動が見られ、直近は前期比で減少しました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 3,280億円 3,884億円 4,312億円 4,428億円 4,383億円
税引前利益 163億円 288億円 318億円 214億円 220億円
利益率(%) 5.0% 7.4% 7.4% 4.8% 5.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 171億円 225億円 272億円 158億円 149億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高は微減となりましたが、売上原価の減少により売上総利益は増加しました。営業利益も微増しており、利益率はほぼ横ばいで推移しています。コストコントロールが進んでいる様子がうかがえます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 4,428億円 4,383億円
売上総利益 813億円 826億円
売上総利益率(%) 18.4% 18.9%
営業利益 224億円 227億円
営業利益率(%) 5.1% 5.2%


販売費及び一般管理費のうち、給与・諸手当が803億円(構成比19.2%)、荷造運賃が143億円(同3.4%)を占めています。売上原価では、給与・諸手当等が主要な構成要素となっています。

(3) セグメント収益


セグメント別に見ると、AC事業は欧州やインド等での販売増により増収増益となりました。一方、HC事業は建設機械の需要減少、特に中国市場の影響を受け大幅な減収減益となりました。航空機器事業は減収ながら黒字転換しています。その他(特装車両等)は減収増益でした。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
AC事業 2,930億円 3,076億円 165億円 172億円 5.6%
HC事業 1,344億円 1,162億円 54億円 17億円 1.5%
航空機器事業 39億円 37億円 -20億円 -4億円 -10.7%
その他 114億円 108億円 11億円 13億円 12.3%
調整額 -億円 -億円 0億円 0億円 -%
連結(合計) 4,428億円 4,383億円 210億円 198億円 4.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は「健全型」です。本業で稼いだキャッシュ(営業CFプラス)で借入金の返済(財務CFマイナス)を行いつつ、投資(投資CFマイナス)も自己資金の範囲内で実施している、財務的に安定した状態と言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 399億円 438億円
投資CF -235億円 -341億円
財務CF -150億円 -91億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.7%で市場平均をやや下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は48.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「人々の暮らしを安全・快適にする技術や製品を提供し、社会に貢献するカヤバグループ」を経営理念として掲げています。この理念に基づき、持続的な成長と企業価値向上を実現し、ステークホルダーの期待に応えるとともに、社会的責任を果たすことを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、経営理念の実践のために重視する行動指針として、「規範を遵守するとともに、何事にも真摯に向き合います」「高い目標に挑戦し、より活気あふれる企業風土を築きます」「優しさと誠実さを保ち、自然を愛し環境を大切にします」「常に独創性を追い求め、お客様・株主様・お取引先様・社会の発展に貢献します」の4つを定めています。

(3) 経営計画・目標


同社は2023中期経営計画(2024年3月期〜2026年3月期)を策定しており、最終年度の目標として以下を掲げています。

* 売上高:4,700億円
* セグメント利益:380億円
* セグメント利益率:8.0%以上
* 自己資本比率:45.0%以上
* ROE:12.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


収益性の改善に向け、HC事業ではグローバル生産体制の最適化を進め、コスト競争力のある拠点への移管や固定費削減を図ります。また、子会社化した知多鋼業とのシナジーによりAC事業の市販市場強化や原価低減を推進します。成長戦略としては、インドにショックアブソーバ生産拠点を設立し、OEMビジネス獲得を目指します。

* 2026年3月期売上高見通し:4,400億円
* 2026年3月期セグメント利益見通し:150億円

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人材を「人財」と捉え、多様な価値観や文化を尊重し、働きがいのある職場創出と風通しの良い企業風土構築を目指しています。具体的には、女性管理職の登用推進や外部からの採用、D&I研修を実施しています。また、障がい者雇用の促進や、適材適所の人員配置による組織活性化、TQM(総合的品質管理)教育を通じた人財育成にも注力しています。健康経営やワークライフバランスの推進により、従業員が最大限のパフォーマンスを発揮できる環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.6歳 17.1年 6,783,514円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.8%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 79.1%
男女賃金差異(正規雇用) 79.8%
男女賃金差異(非正規雇用) 65.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率(3.8%)、障がい者雇用率(2.66%)、有給休暇取得率(80.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 品質不正リスク


品質記録の改ざん等の不正が発生した場合、法令違反や顧客との契約違反となり、損害賠償請求や是正費用等により財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は全拠点に対し品質体制と再発防止活動の監査を実施し、リスク低減を図っています。

(2) 大規模災害リスク


地震、火災、風水害等により生産設備の損傷やサプライチェーン寸断が発生し、操業停止に至るリスクがあります。特に国内地震やサイバーインシデントへの備えとしてBCP訓練を実施し、被害の最小化と早期復旧体制の構築に取り組んでいます。

(3) 人権問題リスク


職場でハラスメントが発生した場合、職場環境の悪化による生産性低下や人材流出、労務訴訟等のリスクがあります。同社はハラスメント防止教育の実施や相談体制の整備を進め、多様な価値観を尊重する職場づくりを通じてリスク低減に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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