カヤバ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

カヤバ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

カヤバはプライム市場に上場し、自動車や建設機械向けの油圧緩衝器および油圧機器を展開するメーカーです。直近の業績は、主力事業である自動車向けOEM製品の需要増や子会社化の寄与などにより、売上高が堅調に推移し、営業利益も大幅な増益を達成しました。コスト改善や事業の最適化が収益力向上に繋がっています。


※本記事は、カヤバ株式会社の有価証券報告書(第104期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. カヤバってどんな会社?


自動車や建設機械向けの油圧緩衝器および油圧機器をグローバルに展開する独立系総合部品メーカーです。

(1) 会社概要


1935年に萱場製作所として創立し、航空機用油圧緩衝脚などの製作から事業を開始しました。1959年には東京証券取引所へ株式上場を果たしています。その後、1985年にカヤバ工業、2015年にKYBへ社名を変更し、2023年に再びカヤバへと社名を変更しました。2025年には知多鋼業を完全子会社化するなど事業基盤を強化しています。

現在の従業員数は連結で13,418名、単体で4,414名となっています。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は主要顧客である事業会社、第3位は協力会社の持株会です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行 (信託口) 11.01%
トヨタ自動車 6.81%
カヤバ協力会社持株会 4.86%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性3名の計11名で構成され、女性役員比率は27%です。代表取締役社長執行役員 兼 CEOは川瀬正裕氏が務めています。社外取締役の比率は約57%です。

氏名 役職 主な経歴
川瀬 正裕 代表取締役社長執行役員 兼 CEO 1985年同社入社。オートモーティブコンポーネンツ事業本部の各職歴等を経て、2024年6月より現職。
齋藤 考 代表取締役副社長執行役員 兼 CFO 1984年富士銀行入行。みずほ銀行常務執行役員等を経て、2018年同社入社。2026年4月より現職。
高岡 知樹 取締役専務執行役員 兼 CLO 1986年同社入社。調達本部長、経営企画本部長等を経て、2026年4月より現職。


社外取締役は、坂田政一(元富士ゼロックスアドバンストテクノロジー社長)、須永明美(須永公認会計士事務所所長)、鶴田千寿子(鶴田六郎法律事務所弁護士)、真田幸光(愛知淑徳大学教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「AC(オートモーティブコンポーネンツ)事業」、「HC(ハイドロリックコンポーネンツ)事業」、「航空機器事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) AC(オートモーティブコンポーネンツ)事業


四輪車用および二輪車用の油圧緩衝器、油圧機器などを提供しています。主な顧客は、国内外の自動車メーカーや二輪車メーカー、および市販・サービス市場です。

これらの製品・部品の販売等を通じて収益を得ています。事業の運営は、同社および知多鋼業、カヤバモーターサイクルサスペンション、KYB Americas Corporationなどのグループ各社が製造・販売・統括を分担して行っています。

(2) HC(ハイドロリックコンポーネンツ)事業


産業用油圧機器やシステム製品、舞台機構、免制振装置などを提供しています。主な顧客は、国内外の建設機械メーカーなどです。

建設機械向けを主とする油圧機器の販売を通じて収益を得ています。事業の運営は、同社およびタカコ、凱迩必機械工業(鎮江)有限公司などが製造・販売を担っています。

(3) 航空機器事業


航空機用の離着陸装置、操舵装置、制御装置および緊急装置などを提供しています。なお、同事業については事業撤退を決定しており、段階的に活動を終了させる方針です。

航空機向け油圧機器などの製造および販売を通じて収益を得ています。事業の運営は、同社が主体となって行っています。

(4) その他事業


コンクリートミキサ車や粉粒体運搬車などの特装車両を提供しています。主な顧客は特約販売会社などです。

特装車両などの製造・販売を通じて収益を得ています。事業の運営は同社が主体となって行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は一時的な増減はありつつも全体として成長傾向にあり、堅調に推移しています。一方、利益面では期によって変動が見られますが、最新期では売上の拡大とともに税引前利益および当期利益が大幅に改善し、利益率も回復しています。継続的な事業の最適化やコスト改善の取り組みが奏功し、収益力の強化が進んでいることがうかがえます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 3884億円 4312億円 4428億円 4383億円 4815億円
税引前利益 288億円 318億円 214億円 220億円 349億円
利益率(%) 7.4% 7.4% 4.8% 5.0% 7.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 225億円 272億円 158億円 149億円 290億円

(2) 損益計算書


売上高の堅調な増加に加え、売上総利益率および営業利益率がともに改善しており、収益性が向上していることが確認できます。コスト管理の徹底や事業ポートフォリオの最適化、さらには子会社取得に伴う利益計上などが、営業利益の大幅な増益に貢献しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 4383億円 4815億円
売上総利益 335億円 369億円
売上総利益率(%) 7.6% 7.7%
営業利益 227億円 349億円
営業利益率(%) 5.2% 7.3%


販売費及び一般管理費のうち、荷造運賃が81億円(構成比12%)、給与・諸手当が69億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力のAC事業は自動車向けOEM製品の需要増や子会社化効果により大幅な増収増益となり、全体の収益を牽引しました。一方、HC事業は売上が増加したものの、構造改革に伴う減損損失等により営業赤字となりました。航空機器事業は増収増益、その他事業は減収減益となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
AC事業 3076億円 3441億円 194億円 344億円 10.0%
HC事業 1162億円 1239億円 17億円 -8億円 -0.7%
航空機器事業 37億円 67億円 1億円 3億円 4.0%
その他 108億円 69億円 14億円 11億円 16.3%
連結(合計) 4383億円 4815億円 227億円 349億円 7.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のキャッシュ・フローの状況となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 438億円 195億円
投資CF -341億円 -6億円
財務CF -91億円 -123億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は46.1%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「人々の暮らしを安全・快適にする技術や製品を提供し、社会に貢献するカヤバグループ」という経営理念を掲げています。規範を遵守して真摯に向き合うこと、高い目標に挑戦して活気あふれる企業風土を築くこと、自然を愛し環境を大切に保つこと、常に独創性を追い求め社会の発展に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


創業者から受け継がれてきた「独創の精神」を大切にしており、新たな価値創造に挑み続ける文化が根付いています。また、全員参加のTQM(Total Quality Management)活動を推進し、個人の成長と組織の活性化を促しています。多様な価値観を受容・尊重し、心理的安全性を確保しながら、主体的に挑戦できる風通しの良い職場風土の構築を重視しています。

(3) 経営計画・目標


2035年の創立100周年に向けた「KYB GROUP VISION 2035」を掲げ、直近の「2026中期経営計画」では構造改革を推し進めています。2029年3月期(最終年度)の目標として、以下の数値を設定しています。

・売上高:5,140億円
・セグメント利益:250億円
・セグメント利益率:4.9%
・ROE:8.1%

(4) 成長戦略と重点施策


成長事業への選択と集中を徹底し、付加価値創出と資本効率向上を目指す「事業ポートフォリオの最適化」を推進します。具体的には、高機能なショックアブソーバの拡販やインド市場等での現地生産拡大を図ります。同時に、コア技術を起点とした新規事業の創出や、デジタル技術を活用したモノづくり革新を進め、持続的成長の基盤を構築していきます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「組織をつくるのは人であり、人は組織の財産」という考えのもと、従業員一人ひとりが心身ともに健康でいきいきと働ける環境づくりを進めています。求める人財像に基づく若手・即戦力の積極採用や、最適な人財配置に向けたローテーションを実施しています。また、健康経営の推進やダイバーシティ&インクルージョンを通じて、働きがいのある職場創出とキャリア自律の支援を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.9歳 17.4年 7,090,969円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.3%
男性育児休業取得率 90.0%
男女賃金差異(全労働者) 80.9%
男女賃金差異(正規雇用) 81.3%
男女賃金差異(パート・有期) 64.8%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(2.88%)、年次有給休暇取得率(84.3%)、睡眠充足率(65.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 品質不良の発生


自動車の操縦安定性や建設機械の主要な機能に関わる重要部品を製造しており、万一品質不良が発生した場合は、損害賠償や是正対応により多額の費用が生じ、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。品質経営を基盤とした管理体制の強化等により、未然防止に努めています。

(2) 需要動向・生産活動停止


主力である自動車や建設機械向けの事業は、世界の車両・機械の生産動向に大きく左右されます。景気悪化による需要減退や、地政学リスクの高まりに伴うサプライチェーンの停滞・生産活動の停止が生じた場合、収益性に重大な影響を与える可能性があります。

(3) 原材料・部品等の調達価格


多くの原材料や構成部品を外部から調達しており、国際商品市況や為替変動の影響を受けます。供給制約や価格上昇分を販売価格に十分に転嫁できない場合、経営成績に悪影響を及ぼすリスクがあります。複数購買の実施等でリスクの軽減を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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