フォスター電機 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フォスター電機 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場する音響機器のスペシャリストです。主要事業は車載用スピーカやヘッドホン等の製造・販売で、世界中の自動車メーカーや電機メーカーに製品を供給しています。2025年3月期の連結業績は、売上高1,376億円、営業利益68億円となり、前期比で増収増益を達成しました。


※本記事は、フォスター電機株式会社 の有価証券報告書(第91期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. フォスター電機ってどんな会社?


音響機器の専業メーカーとして、車載用スピーカやモバイルオーディオ製品をグローバルに展開する企業です。

(1) 会社概要


1949年に信濃音響研究所として創業し、スピーカの製造販売を開始しました。1959年に現社名へ改称し、1962年に東証二部へ上場、1999年には東証一部へ指定替えとなりました。早くから海外展開を進め、1965年の香港を皮切りにアジア・欧米へ拠点を拡大しています。2022年の市場区分見直しにより、現在は東証プライム市場に上場しています。

連結従業員数は15,606名、単体では440名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位も同様に日本カストディ銀行です。第3位には、同社の取引銀行であるみずほ銀行が名を連ねており、機関投資家や金融機関が主要株主となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 16.15%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 10.65%
株式会社みずほ銀行 4.54%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性4名の計12名で構成され、女性役員比率は33.0%です。代表取締役社長CEOは岸 和宏氏が務めています。取締役12名のうち、独立性のある社外取締役は3名で、比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
岸 和宏 代表取締役社長CEO 1986年同社入社。IT機器本部営業部長、モバイルオーディオ事業本部長、営業本部長、常務取締役などを歴任。2023年6月より現職。
望月 昭人 取締役副社長CFOグローバルコーポレートサポート本部長 1988年富士銀行(現みずほ銀行)入行。みずほFG常務執行役員などを経て2021年同社入社。常務取締役CFO等を経て2024年4月より現職。
三浦 広貴 専務取締役技術本部長/フェロー 1985年同社入社。技術本部長、ベトナム法人会長兼社長、SP事業本部副本部長などを歴任。2024年4月より現職。
高原 泰秀 常務取締役営業本部長 兼 アジア統括 1985年同社入社。CAR機器本部営業部長、SP事業本部副本部長、営業本部車載ビジネス統括などを経て2024年6月より現職。
金井 直樹 取締役製造本部長 1986年同社入社。ベトナム法人会長兼社長、製造本部副本部長、製造本部長などを歴任。2024年6月より現職。


社外取締役は、松本 実(公認会計士)、中条 薫(元富士通AIサービス事業本部長)、江連 淑人(元ソニー物流本部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「スピーカ事業」、「モバイルオーディオ事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) スピーカ事業


自動車メーカーや車載機器メーカー向けに、車載用スピーカやスピーカシステム等を製造・販売しています。また、テレビ用スピーカなども手掛けており、音響ソリューションを提供しています。

主な収益は製品の販売による対価です。運営は同社のほか、フォスター電子、広州豊達電機有限公司、豊達音響(河源)有限公司、フォスターエレクトリック(ティラワ)Co.,Ltd.、ESTecコーポレーション等の連結子会社が行っています。

(2) モバイルオーディオ事業


大手電機メーカー等向けに、ヘッドホン、ヘッドセット、イヤホンドライバおよび振動アクチュエータ等を製造・販売しています。スマートフォン付属品や高機能ヘッドホンなどの音響デバイスが主力です。

主な収益は製品の販売による対価です。運営は同社のほか、フォスター電子、フォスターエレクトリック(ベトナム)Co.,Ltd.、フォスターエレクトリック(バクニン)Co.,Ltd.等の連結子会社が行っています。

(3) その他事業


接近通報音用スピーカ、車両緊急通報システム用スピーカなどのほか、「フォステクス」ブランドでの製品販売を行っています。また、物流サービスや人材派遣などの事業も含まれます。

主な収益は製品販売およびサービス提供による対価です。運営は同社のほか、フォスタービジネスサービス等の連結子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は増加傾向にあり、特に直近2期で大きく伸長しています。利益面では、2022年3月期に赤字を計上しましたが、その後は回復基調にあり、2025年3月期には経常利益率が5%台後半まで改善しました。当期利益もV字回復を果たし、増益傾向が続いています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 852億円 911億円 1,213億円 1,224億円 1,376億円
経常利益 2億円 -75億円 23億円 43億円 77億円
利益率(%) 0.3% -8.2% 1.9% 3.5% 5.6%
当期利益(親会社所有者帰属) -34億円 -22億円 -10億円 5億円 11億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益も拡大しています。売上総利益率は15.4%から17.5%へと改善しました。営業利益率も向上しており、収益性が高まっています。全体として増収増益の堅調な決算となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,224億円 1,376億円
売上総利益 188億円 241億円
売上総利益率(%) 15.4% 17.5%
営業利益 44億円 68億円
営業利益率(%) 3.6% 4.9%


販売費及び一般管理費のうち、給与諸手当が71億円(構成比41%)、荷造発送費が41億円(同24%)、業務委託費が18億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


スピーカ事業は在庫調整の解消や中国市場での好調により増収増益となりました。モバイルオーディオ事業は売上が減少しましたが、利益率の高い製品販売により増益を確保しました。その他事業は増収となったものの、構造改革の影響等により営業損失が続いています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
スピーカ事業 992億円 1,145億円 42億円 64億円 5.6%
モバイルオーディオ事業 142億円 129億円 6億円 6億円 5.0%
その他事業 91億円 102億円 -4億円 -2億円 -2.0%
調整額 -32億円 -38億円 -億円 -億円 -%
連結(合計) 1,224億円 1,376億円 44億円 68億円 4.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、本業で稼いだ資金(営業CF+)を使って借入金の返済(財務CF-)を行い、投資も手元資金の範囲内で実施(投資CF-)していることから、「健全型」といえます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 154億円 148億円
投資CF -85億円 -8億円
財務CF -44億円 -99億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は57.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


創業以来の社是「誠実」のもと、「未来社会に音で貢献する」をミッション、「音に関わる製品やソリューションを通して世界中に豊かで快適な空間・楽しさ・喜び・安心安全を提供する」をビジョンとしています。「世界一の『音響』ソリューションパートナー」を目指し、グローバル企業として事業充実と企業価値向上を図っています。

(2) 企業文化


企業のサステナビリティを重視し、2022年にはCSR憲章を改定して「サステナビリティ憲章」を制定しました。また、「ESG経営宣言」を行い、環境・社会・ガバナンスを重視した経営に取り組んでいます。企業倫理基準として「企業行動要綱」、社員行動基準として「社員行動規範」を定めています。

(3) 経営計画・目標


2025~2027年度の中期事業計画において、以下の財務目標を掲げています。
* 売上高1,500億円
* 営業利益90億円
* 営業利益率6.0%
* ROE8.0%

(4) 成長戦略と重点施策


「モビリティ関連ビジネス」と「コンシューマ関連ビジネス」を2つの柱として成長を目指します。モビリティでは次世代車室内音響空間やHMI等で付加価値向上と搭載数増加を図ります。コンシューマでは「Beyond2025」プロジェクトを推進し、完成品ビジネス拡大と新事業創出で収益性を向上させます。

* 資本政策:配当性向「40%水準」へ引き上げ、DOE(自己資本配当率)2%下限導入、PBR1倍以上を目指す。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


中長期的な事業戦略と個人の適性を踏まえた人財開発を基本とし、「人事グランドデザイン」に基づき「人づくり」を推進しています。自律的なキャリア開発を促す「キャリアコース制度」、次世代経営人財を育成する「Global Leadership Development Program」、若手・中堅向けの海外研修制度などを通じ、グローバルに活躍できる人財育成に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.3歳 14.3年 7,191,817円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 13.7%
男性労働者の育児休業取得率 125.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 79.4%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) 81.0%
労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) 64.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメント調査のポジティブ回答比率(78.5%)、海外人財比率(11.9%)、障がい者雇用率(3.1%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済環境及び関連市場の景況


グローバル展開しているため、世界経済や自動車関連市場の動向が経営戦略に大きく影響します。特にEV市場の減速、米国関税政策、地政学リスク、為替変動等が複合的に絡み合う状況下で、急激な需要低下が発生した場合は、業績や財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) ODM・OEM得意先企業の景況への依存


特定の得意先企業への取引依存度が高いため、これら企業の販売・業績不振、経営合理化、予期しない契約変更や解除、調達方針の変更等による取引減少がリスクとなります。また、取引依存度の高い企業からの値下げ要求も業績に影響を与える可能性があります。

(3) 新商品の開発


価値ある新製品をタイムリーに市場へ提供することが重要ですが、マーケット・ニーズの予測が外れる、急速な技術変化に乗り遅れる、新技術の製品化が遅延するといったリスクがあります。これらにより市場ニーズにマッチしなくなった場合、競争力を失う可能性があります。

(4) 資材費・部材費の高騰


鉄、レアアース、原油、銅などの市況の影響を受けます。資材・部材の調達価格が急激に上昇した場合、コスト増となり業績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、価格連動制の導入や主要部品の内製化推進などで対応を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。