フォスター電機 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フォスター電機 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フォスター電機は東京証券取引所プライム市場に上場する音響機器メーカーです。車載・テレビ用スピーカ事業やヘッドホン等のモバイルオーディオ事業をグローバルに展開しています。直近の連結業績は、一部向けの販売減で減収となったものの、高付加価値製品の販売増や事業の構造改革の効果により増益を達成しました。


※本記事は、フォスター電機の有価証券報告書(第92期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. フォスター電機ってどんな会社?


車載用スピーカやヘッドホンなどの音響機器の製造・販売をグローバルに展開するメーカーです。

(1) 会社概要


同社は1949年に信濃音響研究所として創立し、スピーカの製造販売を開始しました。1959年にフォスター電機へ改称し、1962年に東京証券取引所市場第2部へ上場、1999年に同第1部に指定されました。2014年には他社から小型音響部品事業を譲り受けるなど、音響機器専業として着実に事業を拡大しています。

現在は連結で16,260名、単体で454名の従業員を抱える規模へと成長しています。株主構成を見ると、筆頭株主はBRIDGESTREAM LIMITED(AXC STRATEGIC OPPORTUNITIESの受託者)であり、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行となっています。

氏名 持株比率
BRIDGESTREAM LIMITED 15.17%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.19%
BRIDGESTREAM LIMITED 9.81%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性4名の計12名で構成され、女性役員比率は33.0%です。代表取締役社長CEOは岸和宏氏が務めています。社外取締役の比率は33%(取締役12名中4名、監査等委員会設置会社移行後を想定した記載に準拠し、有報提出時点の体制から構成)です。

氏名 役職 主な経歴
岸和宏 代表取締役社長CEO 1986年同社入社。IT機器本部営業部長、モバイルオーディオ事業本部長などを経て2020年常務取締役営業本部長。2023年より現職。
望月昭人 取締役副社長CFOグローバルコーポレートサポート本部長 1988年富士銀行(現みずほ銀行)入行。みずほフィナンシャルグループ企画管理部長等を経て2021年同社顧問。2024年より現職。
三浦広貴 専務取締役技術本部長/フェロー 1985年同社入社。SP本部第2技術部長、ベトナム現地法人の会長兼社長等を歴任し、2019年技術本部長。2024年より現職。
高原泰秀 常務取締役営業本部長 兼 アジア統括 1985年同社入社。CAR機器本部営業部長、香港現地法人取締役、SP生産管理部長等を歴任し、2023年営業本部長。2024年より現職。
金井直樹 取締役製造本部長 1986年同社入社。香港現地法人営業部長、ベトナム現地法人工場長や会長等を歴任。2018年製造本部長となり、2024年より現職。


社外取締役は、松本実(公認会計士)、中条薫(SoW Insight代表取締役社長)、江連淑人(元ソニーエナジーデバイス社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「スピーカ事業」「モバイルオーディオ事業」および「その他事業」を展開しています。

スピーカ事業


主に自動車関連メーカー等に向けて車載用スピーカやスピーカシステムを製造・販売するほか、テレビ用スピーカも提供しています。高品質な車載向け音響技術を活用し、次世代モビリティに向けた車内音響空間の構築や車内外の警告音といったソリューションをグローバルに展開しています。

収益源は自動車メーカー等の顧客からの製品販売代金です。同社が中心となり、中国の広州豊達電機、ベトナムの各拠点、ミャンマー、ハンガリーなどの海外製造拠点や、ESTecなどの関係会社と連携して、製造から販売までグローバルな供給ネットワークを構築して事業を運営しています。

モバイルオーディオ事業


電機メーカーなどの顧客に対して、携帯電話用のヘッドセット、高音質ヘッドホン、イヤホンドライバ、振動アクチュエータといったモバイルオーディオ製品を製造・販売しています。ウェアラブルデバイスの進化に対応し、ノイズキャンセル機能や生体情報取得機能を備えたデバイスの開発にも取り組んでいます。

収益源は電機メーカーをはじめとする顧客への製品販売による代金です。事業の運営は同社を中心に、ベトナムのフォスターエレクトリック(ベトナム、ダナン、バクニン)や中国の広州豊達電機などの海外連結子会社において製造ならびに販売を行う体制で行われています。

その他事業


主力の2事業に含まれない分野として、電気自動車等の接近通報音用スピーカや車両緊急通報システム(eCall)用スピーカ、自社ブランド「フォステクス」のオーディオ製品の製造および販売を行っています。また、マイクロホンや小型音響変換器などの小型音響部品の開発・販売も手掛けています。

収益源はこれら音響関連製品の法人および一般消費者向け販売代金です。製品の製造および販売は、同社ならびに香港やベトナム等の海外子会社を通じて行われています。さらに、同社向けの物流サービスや人材派遣事業を担うフォスタービジネスサービスによる事業活動も本セグメントに含まれています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は一時1,300億円規模まで拡大したのち、当期は微減となりました。一方、利益面では早期に黒字転換を果たして以降、経常利益・当期利益ともに順調に拡大を続けています。高付加価値製品の販売増や構造改革の成果が利益率の継続的な改善に結びついています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 911億円 1,213億円 1,224億円 1,376億円 1,349億円
経常利益 -75億円 23億円 43億円 77億円 80億円
利益率(%) -8.2% 1.9% 3.5% 5.6% 5.9%
当期利益(親会社所有者帰属) -22億円 -10億円 5億円 11億円 25億円

(2) 損益計算書


売上高は前年比で減少したものの、原価低減や利益率の高い製品の構成比上昇により売上総利益率は改善しました。また、販売費及び一般管理費を抑制した結果、営業利益率も上昇し、減収ながらも本業の収益力強化を示す結果となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,376億円 1,349億円
売上総利益 241億円 236億円
売上総利益率(%) 17.5% 17.5%
営業利益 68億円 77億円
営業利益率(%) 4.9% 5.7%


販売費及び一般管理費(160億円)のうち、給与諸手当が71億円(構成比44%)、荷造発送費が26億円(同16%)、業務委託費が17億円(同11%)を占めています。一方、売上原価は1,113億円で売上高の82%を占めており、材料費等の製造コストが主な内訳となっています。

(3) セグメント収益


スピーカ事業は一部顧客向けの販売減等で減収となりましたが、利益率の高い製品の増加により増益を確保しました。モバイルオーディオ事業はイヤホン等の販売が好調で増益となり、その他事業は接近通報音用スピーカ等の堅調な販売と構造改革により黒字転換を果たしました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
スピーカ事業 1,145億円 1,119億円 64億円 65億円 5.8%
モバイルオーディオ事業 129億円 125億円 6億円 7億円 5.4%
その他事業 102億円 106億円 -2億円 5億円 4.5%
連結(合計) 1,376億円 1,349億円 68億円 77億円 5.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CF・財務CFがマイナスであり、本業で稼いだ資金で設備投資や配当等の株主還元、借入金の返済を賄っている健全型のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 148億円 69億円
投資CF -8億円 -58億円
財務CF -99億円 -23億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は60.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社はミッションとして「未来社会に音で貢献する」を掲げ、ビジョンには「音に関わる製品やソリューションを通して世界中に豊かで快適な空間・楽しさ・喜び・安心安全を提供する」ことを定めています。長期的に「世界一の『音響』ソリューションパートナー」を目指し、持続的な成長を実現する体制づくりを推進しています。

(2) 企業文化


同社は創業以来の社是として「誠実」を掲げており、すべての企業活動の原点として社員のウェルビーイングの向上を重視しています。「Foster Rhythm Project」という取り組みをグローバルに展開し、社員が自ら行動基準や大切にする価値観を言語化するなど、多様な人材が連携して価値共創を行う企業風土が醸成されています。

(3) 経営計画・目標


同社は「2025〜2027年度 中期事業計画」において、資本コストや株価を意識した経営を掲げており、2027年度に向けて以下の財務目標を定めています。

* 売上高1,500億円
* 営業利益90億円
* 営業利益率6.0%
* ROE8.0%

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「モビリティ関連ビジネス」と「コンシューマ関連ビジネス」の2つを成長の柱として戦略を推進しています。車載向けでは次世代モビリティに向けた高付加価値な音響ソリューションを提案し、コンシューマ向けではライフスタイル等の分野で新規事業の創出に取り組みます。

* 成長戦略の具現化と積極的ビジネス拡大
* 新製品・新技術への取り組み強化
* 車載業務品質の徹底
* コスト構造改革の推進

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は経営戦略の実行に不可欠なグローバル人材の育成に注力しています。社員の自律的なキャリア開発を支える「キャリアコース制度」を軸に、次世代経営人材を育成するプログラムや海外実務経験を積む制度を展開し、多様な人材が能力を最大限発揮できる「働きやすい」環境づくりを進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.3歳 14.2年 7,438,263円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでいます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 14.0%
男性育児休業取得率 42.9%
男女賃金差異(全労働者) 83.2%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 84.6%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 72.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(3.0%)、定期健康診断受診率(100%)、介護離職者比率(0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 自動車関連市場等の景況悪化


同社はグローバルに事業を展開しており、特に注力する自動車関連市場における急激な需要低下や、各国の政治・経済的変動、為替やインフレ等の影響により、受注減や過剰在庫が発生し、業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) ODM・OEM先への高い取引依存


同社は特定の取引先企業への販売依存度が高いため、当該得意先企業の業績不振や経営合理化、予期せぬ契約の変更や調達方針の転換、あるいは強い値下げ要求などがあった場合、取引が減少して収益性が低下するリスクがあります。

(3) 資源価格の高騰と部材の調達制約


同社の製品製造には鉄、レアアース、原油、銅などの原材料が必要であり、地政学リスクや市場相場の変動によりこれらの調達価格が急激に上昇した場合や供給不足が発生した場合、コスト増による利益圧迫が生じる可能性があります。

(4) 自動車向け製品の重大な品質欠陥


同社は車載関連ビジネスを中心に事業変革を進めており、高い品質要求を満たすことが不可欠です。万が一、大規模な製品クレームやリコール、あるいは製造物責任に繋がるような重大な欠陥が発生した場合、多額のコスト負担や社会的信用の失墜を招くリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。