カナデビア 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

カナデビア 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場。ごみ焼却発電施設等の環境装置、プレス機械等の機械・インフラ、舶用原動機等の脱炭素化事業を展開しています。2025年3月期は、環境事業における海外子会社の伸長や円安の影響等により、売上高は前期比増収、営業利益および当期純利益も増益となりました。


※本記事は、カナデビア株式会社 の有価証券報告書(第128期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. カナデビアってどんな会社?


1881年創業の造船重機大手から環境・エネルギー企業へと転換。ごみ焼却発電や舶用エンジン等で世界的なシェアを持っています。

(1) 会社概要


1881年にE.H.ハンターが大阪鉄工所として創業し、1943年に日立造船へ改称しました。2002年に造船事業を分離・営業譲渡して以降、環境・機械分野へシフトしました。2010年にごみ焼却発電のInova社を子会社化し、2024年10月に現社名のカナデビアへ商号変更しました。現在は環境、機械・インフラ、脱炭素化を主軸としています。

同グループは連結12,964名、単体3,964名の従業員を擁しています。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第3位には米国系のステート・ストリート銀行が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 17.26%
日本カストディ銀行(信託口) 10.78%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505301 3.93%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性3名の計12名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役取締役社長兼CEOは桑原道氏です。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
桑原道 代表取締役取締役社長兼CEO 1986年入社。経営企画部長、執行役員、常務執行役員、企画管理本部長、常務取締役、環境事業本部長兼調達本部担当などを経て2025年4月より現職。
三野禎男 取締役 1982年入社。環境事業本部長、取締役副社長、取締役社長兼COO、取締役社長兼CEO、取締役会長兼CEOなどを経て2025年4月より現職。
木村悟 取締役 1983年入社。常務執行役員、オーナミ取締役社長、専務執行役員、調達本部長、企画管理本部長兼業務管理本部担当などを経て2024年6月より現職。
橋爪宗信 取締役兼常務執行役員ICT推進本部長 日本電信電話入社。NTTデータグループ等を経て2018年入社。ICT推進本部長、執行役員を経て2022年4月より常務執行役員。2024年6月より現職。


社外取締役は、庄司哲也(元エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ代表取締役社長)、坂田信以(元住化技術情報センター代表取締役社長)、堀口明子(沖ワークウェル代表取締役社長執行役員)、宮崎眞紀(由本・太田・宮崎法律事務所代表弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「環境」「機械・インフラ」「脱炭素化」および「その他」事業を展開しています。

(1) 環境


ごみ焼却発電・リサイクル施設、水・汚泥処理施設、海水淡水化プラント等の設計、建設、運営を行っています。国内外の自治体や公共団体、民間事業者が主な顧客です。

施設の建設請負(EPC)や、運営・保守サービス(O&M)、電力卸売などから収益を得ています。運営はカナデビア、Kanadevia Inova AG.、カナデビア環境サービスなどが担っています。

(2) 機械・インフラ


自動車用プレス機械、ボイラ、プラスチック機械、精密機器、橋梁、水門扉、シールド掘進機などを提供しています。自動車メーカー、電機メーカー、官公庁、建設会社などが主な顧客です。

製品の製造・販売およびアフターサービス、メンテナンスから収益を得ています。運営はカナデビア、エイチアンドエフ、ブイテックス、プロモテックなどが担っています。

(3) 脱炭素化


舶用原動機、脱硝触媒、圧力容器等のプロセス機器、原子力関連設備、水素発生装置、風力発電などを提供しています。造船会社、エネルギー関連企業、プラントエンジニアリング会社などが主な顧客です。

製品の製造・販売およびメンテナンス、使用済核燃料保管・輸送機器の設計等から収益を得ています。運営はカナデビア、日立造船マリンエンジン、NAC International Inc.などが担っています。

(4) その他


上記セグメントに含まれない事業として、寮・社宅等の施設運営管理やファイナンス業務を行っています。

施設の運営管理料やファイナンス業務の手数料などから収益を得ています。運営はカナデビア総合サービス、エーエフシーなどが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、事業規模が拡大しています。利益面では、経常利益率が3〜4%台で推移しており、当期利益も増加基調にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 4,086億円 4,418億円 4,927億円 5,558億円 6,105億円
税引前利益 / 経常利益 / 営業利益 118億円 118億円 178億円 256億円 243億円
利益率(%) 2.9% 2.7% 3.6% 4.6% 4.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 39億円 17億円 81億円 78億円 111億円

(2) 損益計算書


売上高は増加し、売上総利益率も改善傾向にあります。一方で営業利益率は横ばいで推移しており、販管費のコントロールが継続的な課題となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 5,558億円 6,105億円
売上総利益 953億円 1,142億円
売上総利益率(%) 17.1% 18.7%
営業利益 243億円 269億円
営業利益率(%) 4.4% 4.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が351億円(構成比40%)、その他経費が261億円(同30%)を占めています。

(3) セグメント収益


環境事業は海外子会社の伸長等により増収となり、全社売上の大半を占めています。一方、機械・インフラ事業は減収となり、脱炭素化事業は風力発電等の増加により増収となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
環境 4,073億円 4,535億円
機械・インフラ 910億円 830億円
脱炭素化 553億円 702億円
その他 23億円 38億円
調整額 - -
連結(合計) 5,558億円 6,105億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業で資金を稼ぎつつ、将来の成長に向けた投資を借入金等の調達も含めて積極的に行っている「積極型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 5億円 248億円
投資CF -215億円 -566億円
財務CF -26億円 302億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は31.1%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは基本理念「Kanadevia Value」のもと、2050年の目指す姿として「サステナブルビジョン」を掲げています。技術の力で人類と自然の調和に挑み、「環境負荷をゼロにする」「人々の幸福を最大化する」ことを目標に、サステナブルで安全・安心な社会の実現に貢献するソリューションパートナーを目指しています。

(2) 企業文化


「技術の力で、人類と自然の調和に挑む」を使命とし、多様性を尊重する組織風土や、何事にも挑戦できる環境づくりを推進しています。また、「Kanadevia Value」を共有し、高い倫理観を持って誠実に行動することや、コンプライアンスの徹底を企業活動の基盤として重視しています。

(3) 経営計画・目標


2023年度を初年度とする中期経営計画「Forward 25」では、2025年度の数値目標として以下を掲げています。また長期ビジョンでは2030年に営業利益率10%超を目指しています。

* 売上高:6,200億円
* 営業利益:270億円
* ROE:8.2%

(4) 成長戦略と重点施策


既存事業の持続的成長に向け、Waste to X事業を中心とした海外事業の伸長や事業構造改革を推進しています。また、脱炭素化、資源循環、水事業等の重点分野への積極投資により成長事業を創出・拡大し、人的資本強化やDX推進を通じて企業価値の向上を図っています。

* 売上高:1兆円(2030年代早期目標)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人」と「組織」の成長が企業価値向上につながるとの考えのもと、多様な人材の確保と活躍推進に注力しています。タレントマネジメントシステムの活用による適正配置・戦略的育成や、65歳定年制の導入、処遇制度の見直し等を通じて、エンゲージメントを高め、長く働きがいを持って活躍できる環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.6歳 16.0年 7,915,332円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.0%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 80.3%
男女賃金差異(正規雇用) 79.7%
男女賃金差異(非正規雇用) 78.6%


また、同社は「サステナブルビジョン」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性新卒採用率(事務系:50%、技術系:6.9%)、職員エンゲージメント指数(44.0%)、生活習慣病平均有所見率(25.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 個別受注案件のリスク


主力事業であるごみ焼却発電施設のEPCなどは個別受注案件が多く、見積コスト超過や工程遅延、技術トラブル等が発生した場合、追加費用やペナルティにより収益が悪化する可能性があります。受注前の厳格なリスク審査や受注後の継続的なモニタリングにより、リスク管理を徹底しています。

(2) 価格競争の激化


ごみ焼却発電施設や舶用原動機などの主要製品は成熟市場にあり、競合企業との競争により受注価格が下落する傾向にあります。新規案件の減少に伴う競争激化が進めば、さらに価格が下落し業績に悪影響を及ぼす可能性があります。新技術開発やアフターサービス充実による差別化、コスト削減に取り組んでいます。

(3) 素材価格の高騰


製品・工事において鋼材や非鉄金属等を多用するため、これらの素材価格が高騰した場合、コストアップにより収益が悪化する可能性があります。資材調達機能の集中化や共同購買の強化により資材費の圧縮に努めていますが、価格転嫁が困難な場合などは競争優位性に影響を与える可能性があります。

(4) 海外事業・カントリーリスク


海外での事業展開において、予期せぬ政情不安、法制度の変更、米中貿易摩擦などのカントリーリスクが顕在化した場合、円滑な業務運営が妨げられ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。特に主力のごみ焼却発電事業は海外比率が高く、各国の情勢を注視しつつ対応を進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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