カナデビア 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

カナデビア 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

カナデビアは東証プライム市場に上場し、環境装置や機械インフラ、脱炭素化関連設備の設計から運営までを手掛ける総合エンジニアリング企業です。直近の業績は、海外環境事業の伸長により増収となったものの、一部海外子会社での技術トラブル等の影響もあり減益となり、増収減益のトレンドとなっています。


※本記事は、カナデビアの有価証券報告書(第129期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. カナデビアってどんな会社?


同社は環境装置やインフラ設備の設計・製作・運営を担い、持続可能な社会の実現に貢献する企業です。

(1) 会社概要


1881年に大阪鉄工所として創立し、その後日立造船へ社名変更しました。長年造船事業を主力としてきましたが、2002年に造船事業を譲渡し、環境・インフラ分野へ事業を転換しました。近年は積極的なM&Aによる海外展開を進め、2024年10月にカナデビアへと社名を変更し、現在の体制へと至っています。

現在の従業員数は連結で12,666名、単体で4,088名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位も同様に信託銀行、第3位は外資系の信託機関等の名義となっており、金融機関が上位を占める株主構成となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 17.26%
日本カストディ銀行(信託口) 5.33%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505301 3.30%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性3名の計12名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役取締役社長グループCEOの桑原道氏が経営を牽引しています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
桑原 道 代表取締役取締役社長グループCEO 1986年同社入社。経営企画部長、常務執行役員などを経て、2021年取締役就任。環境事業本部長などを歴任し、2026年4月より現職。
小木 均 取締役専務執行役員営業、営業企画部担当 1983年同社入社。環境事業本部環境営業統括部長、常務執行役員などを経て、2021年専務執行役員に就任。2026年4月より現職。
橋爪 宗信 取締役常務執行役員ICT推進本部長 1988年日本電信電話入社。エヌ・ティ・ティ・データ等を経て、2018年同社入社。ICT推進本部長などを歴任し、2024年6月より現職。
宮﨑 寛 取締役 1986年同社入社。企画管理本部経営企画部長、執行役員、企画管理本部長などを経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、坂田信以(元住友化学執行役員)、庄司哲也(元エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ代表取締役社長)、堀口明子(元沖電気工業執行役員)、宮崎眞紀(由本・太田・宮崎法律事務所代表弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、環境、機械・インフラ、脱炭素化およびその他事業を展開しています。

環境


ごみ焼却発電施設やリサイクル施設、水・汚泥処理施設、海水淡水化プラントなど、幅広い環境装置・プラントの設計、建設、運営を手掛けています。国内外の自治体や民間企業を主要な顧客としています。

プラントの建設工事代金に加えて、完成後の運転管理や保守・保全業務の受託による継続的な手数料が主な収益源です。同社のほか、海外ではKanadevia Inova AG.などの子会社が事業を牽引し、国内では長岡環境テクノロジーなどが運営を担っています。

機械・インフラ


プラスチック機械や精密機器などの機械装置に加え、橋梁や水門扉、海洋土木、シールド掘進機などの社会インフラ設備の製造・販売を展開しています。官公庁や製造業等の幅広い産業分野が顧客です。

インフラ設備の建設工事代金や、機械装置の販売代金およびアフターサービスによる修理・保守費用から収益を得ています。同社が自ら製造・販売を行うほか、アイメックスがボイラ等の製造・販売を行っています。

脱炭素化


脱硝触媒や圧力容器等のプロセス機器、使用済核燃料保管・輸送機器などの原子力関連設備、水電解装置や風力発電設備の製造・販売を行っています。電力会社やエネルギー企業などを対象としています。

各種機器や設備の販売代金に加え、保守サービス等の手数料が主な収益源です。同社が製造・販売を担うほか、海外子会社のNAC International Inc.が使用済核燃料関連機器の設計・輸送などを展開しています。

その他


グループ従業員向けの福利厚生施設である寮や社宅などの施設運営管理業務や、グループ内のファイナンス業務などを手掛けています。

施設利用料やファイナンス業務に伴う手数料等から収益を得ています。カナデビア総合サービスが施設の運営管理業務を、エーエフシーがファイナンス業務をそれぞれ担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は右肩上がりで成長を続けていますが、利益面ではプロジェクトの状況や海外子会社の技術トラブル等の影響もあり、変動が見られます。当期は増収ながら大幅な減益となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 4,418億円 4,927億円 5,558億円 6,105億円 6,452億円
経常利益 118億円 178億円 256億円 243億円 136億円
利益率(%) 2.7% 3.6% 4.6% 4.0% 2.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 79億円 156億円 190億円 221億円 111億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で堅調に推移したものの、売上原価の増加等により売上総利益は減少しました。さらに販売費及び一般管理費が増加したことで、営業利益は前期から半減する結果となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 6,105億円 6,452億円
売上総利益 1,142億円 1,091億円
売上総利益率(%) 18.7% 16.9%
営業利益 269億円 122億円
営業利益率(%) 4.4% 1.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が89億円、試験研究費が77億円を占め、人材や研究開発への継続的な投資が行われていることが伺えます。

(3) セグメント収益


主力となる環境事業は海外子会社の伸長などにより増収となりましたが、高採算案件の減少等で減益となりました。機械・インフラ事業や脱炭素化事業は、事業の再編や収益悪化の影響により営業赤字を計上しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
環境 4,535億円 5,052億円 254億円 167億円 3.3%
機械・インフラ 830億円 685億円 10億円 -24億円 -3.5%
脱炭素化 702億円 692億円 1億円 -25億円 -3.6%
その他 38億円 23億円 5億円 4億円 18.0%
連結(合計) 6,105億円 6,452億円 269億円 122億円 1.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う「積極型」のキャッシュ・フローとなっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 248億円 116億円
投資CF -566億円 -480億円
財務CF 302億円 415億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は27.4%で、同じく市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、基本理念「Kanadevia Value」の下、2050年に目指す姿として「サステナブルビジョン」を掲げています。同ビジョンでは「環境負荷をゼロにする」「人々の幸福を最大化する」ことを目標とし、カーボンニュートラルや資源の完全循環など7つの要素を成功の柱として設定し、社会課題の解決を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「技術と誠意で社会に役立つ価値を創造し、豊かな未来に貢献します」という企業理念を掲げ、「安全最優先」「品質の追求」「コンプライアンスの徹底」「社会との共生」を経営姿勢としています。役職員全員が遵守すべき倫理行動指針を定め、不正と決別し、心理的安全性を確保する組織風土の醸成に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


同社は長期ビジョン「2030 Vision」を掲げ、既存事業の持続的成長と成長事業の創出・拡大を目指しています。2026年度は以下の数値目標を設定するとともに、2030年代の早い時期での売上高1兆円の達成を目指しています。

* 売上高:6,400億円
* 営業利益:255億円

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画「Forward 25」に基づき、廃棄物の物質・エネルギー転換事業や水事業を中心に海外展開を伸長させています。また、社会と会社のサステナビリティの観点から事業構造改革を推進し、脱炭素化や資源循環分野への積極的な投資を行うことで、継続的事業の拡大と新設事業の収益改善を図っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は従業員を重要な人的資本と位置付け、人と組織の成長の好循環による企業価値向上を目指しています。多様な価値観を受容する組織風土の醸成や柔軟な働き方の提供を進めるほか、適性に応じた配置やリスキリングを推進し、グローバル人材やDX人材の戦略的な育成と従業員のエンゲージメント向上に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.9歳 15.8年 8,298,285円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.8%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 79.2%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 80.0%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 70.7%


また、同社は「人的資本(人材の多様性を含む。)に関する指標及び目標」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性新卒採用率・事務系(60.6%)、職員エンゲージメント指数(48.0%)、生活習慣病平均有所見率(25.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) プロジェクトリスク


同社の事業は個別受注案件の積み上げによる構造のため、見積りコストを上回る費用の発生や工程遅延、技術・製品トラブルに伴うペナルティが発生した場合、プロジェクトの収益が悪化し、業績に重要な影響を与える可能性があります。

(2) 品質リスク


品質基準を満たさない製品やサービスを納入した結果、重大な事故や環境汚染を引き起こしたり、顧客からの契約解除や行政処分を受けたりするリスクがあります。品質保証機能の強化やコンプライアンスの徹底により再発防止に取り組んでいます。

(3) 重大労働災害リスク


国内外の工事や運転・保全等の現場において、安全措置の不備や過重労働等により重大な労働災害が発生した場合、操業停止や訴訟、レピュテーションの毀損が生じる可能性があります。労働安全衛生リスクマネジメントシステムの再構築等で対策を進めています。

(4) 安定調達リスク


地政学的緊張や需給逼迫等により、主要原材料である鉄鋼製品や燃料のLNG、レアメタル等の供給制限や価格急騰が発生する可能性があります。長納期化品目の先行手配や代替材の確保、調達先の多様化を通じて事業影響の最小化を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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