ニッポン高度紙工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ニッポン高度紙工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ニッポン高度紙工業はスタンダード市場に上場し、アルミ電解コンデンサ用セパレータや電池用機能材の製造・販売を主力とする企業です。当期は車載や産業機器向け需要が好調で、売上高は181億円、経常利益は42億円と増収増益を達成しました。世界的なシェアを持つニッチトップ企業として、高付加価値製品の拡販を進めています。


※本記事は、ニッポン高度紙工業株式会社 の有価証券報告書(第92期、自 2021年4月1日 至 2022年3月31日、2022年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ニッポン高度紙工業ってどんな会社?


ニッポン高度紙工業は、電子部品に不可欠なセパレータ(絶縁紙)の製造で世界的なシェアを持つ企業です。

(1) 会社概要


1941年に設立された同社は、1943年に電解コンデンサ用セパレータの生産を開始しました。その後、2002年にマレーシアへ現地法人を設立するなどグローバル展開を進め、2004年にはジャスダック証券取引所へ株式を上場しました。2012年には鳥取県に米子工場を稼働させ、生産体制を強化しています。

現在、同社グループは連結従業員数443名、単体384名の体制で事業を展開しています。大株主の構成を見ると、筆頭株主は同社製品の販売に関連する東京産業洋紙で、第2位は紙パルプ専門商社の日本紙パルプ商事、第3位はメインバンクである四国銀行となっています。事業パートナーや金融機関が安定的に株式を保有しています。

氏名 持株比率
東京産業洋紙 9.29%
日本紙パルプ商事 4.82%
四国銀行 4.70%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は近森俊二氏が務めています。社外取締役比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
山岡 俊則 取締役会長 1991年入社。NIPPON KODOSHI KOGYO(MALAYSIA)SDN.BHD. DIRECTOR、常務執行役員、代表取締役社長などを歴任し、2021年6月より現職。
近森 俊二 取締役社長(代表取締役)社長執行役員 1981年入社。蘇州萬旭光電通信有限公司総経理、管理本部長、常務執行役員などを経て、2021年6月より現職。
矢田部 達志 取締役執行役員営業部門統括 1996年入社。営業部長代理、営業部長を経て、2020年6月取締役就任。2021年6月よりコンプライアンス担当執行役員を兼務し現職。
高橋 寿明 取締役執行役員管理部門統括 1986年入社。管理部長を経て2021年6月取締役就任。2022年6月より執行役員管理部門統括およびコンプライアンス担当執行役員として現職。


社外取締役は、岩城孝章(元高知県副知事)、岡崎明(元四国電力執行役員経理部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「セパレータ事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) アルミ電解コンデンサ用セパレータ


アルミ電解コンデンサの構成部材であるセパレータを製造・販売しています。この製品は、テレビやエアコンなどの白物家電、自動車の電装品、産業用ロボットや工作機械などの産業機器、通信基地局など、幅広いエレクトロニクス製品に不可欠な部材として使用されています。

収益は、製品の販売代金として顧客であるコンデンサメーカー等から受け取ります。同社は世界的なシェアを有しており、顧客ニーズに応じた多様な製品ラインナップを展開しています。運営は主にニッポン高度紙工業が行い、マレーシアの子会社が裁断加工等を担っています。

(2) 機能材


電気二重層キャパシタやリチウムイオン電池、導電性高分子固体コンデンサなどに使用される各種セパレータを製造・販売しています。これらは、スマートメーターや再生可能エネルギー関連の蓄電装置、電気自動車(xEV)などの成長分野で使用される重要な部材です。

収益は、各電池メーカーや電子部品メーカーへの製品販売によって得られます。脱炭素社会の実現に向けた環境関連市場の拡大に伴い、需要が増加しています。運営はニッポン高度紙工業が主体となり、一部工程を子会社が分担する体制をとっています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は131億円から181億円へと拡大傾向にあります。特に直近2期は利益面での成長が著しく、経常利益は10億円前後から42億円へと大きく伸長しました。利益率も大幅に向上しており、増収効果に加え、生産効率の改善などが寄与していることが伺えます。

項目 2018年3月期 2019年3月期 2020年3月期 2021年3月期 2022年3月期
売上高 171億円 144億円 131億円 159億円 181億円
経常利益 16億円 13億円 10億円 28億円 42億円
利益率(%) 9.1% 9.1% 7.4% 17.6% 23.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 4億円 15億円 6億円 18億円 29億円

(2) 損益計算書


売上高は前期の159億円から181億円へ増加し、売上総利益も46億円から62億円へと拡大しました。売上総利益率は28.9%から34.0%へ改善しています。営業利益も28億円から41億円へと大幅に増加し、営業利益率は22.5%に達しています。収益性の高い体質へと強化が進んでいます。

項目 2021年3月期 2022年3月期
売上高 159億円 181億円
売上総利益 46億円 62億円
売上総利益率(%) 28.9% 34.0%
営業利益 28億円 41億円
営業利益率(%) 17.3% 22.5%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当及び賞与が5億円(構成比26%)、荷造及び発送費が4億円(同19%)を占めています。売上原価においては、材料費が46億円(構成比37%)、経費が46億円(同37%)、労務費が34億円(同27%)となっており、バランスの取れた原価構成となっています。

(3) セグメント収益


同社は「セパレータ事業」の単一セグメントですが、製品別の売上状況を見ると、主力のアルミ電解コンデンサ用セパレータが車載や産業機器向けに好調で、前期比で大きく売上を伸ばしました。一方、機能材はリチウムイオン電池用が好調だったものの、一部用途の減少により微減となりました。

区分 売上(2021年3月期) 売上(2022年3月期)
アルミ電解コンデンサ用セパレータ 120億円 142億円
機能材 40億円 39億円
連結(合計) 159億円 181億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

ニッポン高度紙工業のキャッシュ・フローの状況についてご説明します。

同社は、機能材事業の好調や稼働率向上により、営業活動で得られた資金は大幅に増加しました。一方で、設備投資による支出は継続しており、特に蓄電池関連事業への補助金活用も見られます。財務活動では、借入金の増加と配当金の支払い等により、資金の使用が見られました。

項目 2021年3月期 2022年3月期
営業CF 32億円 29億円
投資CF -10億円 -18億円
財務CF 5億円 -13億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「世界で最も優れた商品を造り創る」「世界に安心を売る会社である」「世界の未来の技術のニーズに挑戦する」「世界のために役立つ仕事をしている集団である」という4つの基本方針を定めています。これに基づき、エレクトロニクス産業の発展に寄与し、顧客満足度を高めることを目指しています。

(2) 企業文化


エレクトロニクス産業に不可欠な部材を供給する集団として、社員一人ひとりが能力向上と自己革新に取り組む姿勢を重視しています。「安全・健康はすべてに優先する」という方針のもと、無事故・無災害の職場づくりを進めるとともに、「人と自然にやさしい企業活動」を通じてSDGs達成や脱炭素社会の実現に貢献する文化を育んでいます。

(3) 経営計画・目標


同社は「高機能セパレータの安定供給を通じて、持続可能な社会の実現に貢献する」という長期ビジョンのもと、3ヵ年中期事業計画において以下の数値目標を掲げています。

* 2024年3月期 連結売上高:190億円(うち機能材売上高46億円)
* 2024年3月期 連結営業利益:35億円以上
* 自己資本当期純利益率(ROE):10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


成長分野における重点的取り組みとして、車載、通信関連、環境関連市場で成長が期待される「導電性高分子固体コンデンサ用セパレータ」「リチウムイオン電池用セパレータ」「電気二重層キャパシタ用セパレータ」の3製品の販売拡大を推進しています。また、高付加価値製品の開発体制強化や生産プロセスの自動化・省力化による競争力強化にも注力しています。

* 車載用途など高付加価値セパレータの生産能力増強(米子工場)
* デジタル技術を活用した業務プロセス改革
* クリーンエネルギー設備の導入による省エネ活動推進

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は競争力の維持・向上のため、製品開発や製造に必要な人材の安定確保を重視しています。「安全・健康はすべてに優先する」という方針のもと、働きやすい職場づくりに努めています。また、次世代人材(DX、リーダーシップ等)の育成に向けた教育訓練の充実や、女性の活躍推進、健康経営の推進にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2022年3月期 44.1歳 21.6年 8,339,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定品目への依存


同社の売上の約8割は、主力のアルミ電解コンデンサ用セパレータが占めています。そのため、世界の需要動向の変化が業績に直接的な影響を与える可能性があります。同社は、需要拡大が見込まれる機能材の拡販を進めることで、業績の安定化に努めています。

(2) 原材料調達リスク


製品の主要原材料であるパルプの多くを海外から輸入しています。気候変動や政情不安による供給不足、品質問題、需給悪化などにより調達コストが上昇したり、調達自体が困難になったりした場合、同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。原則2社購買などで安定調達に努めています。

(3) 価格競争の激化


アルミ電解コンデンサ市場ではグローバルな競争が激しく、同社製品への価格下落圧力が強まる可能性があります。また、機能材のリチウムイオン電池市場においても激しい価格競争により部材の低価格化が進んでいます。高品質・高信頼性製品による差別化を図っていますが、競争の影響を受ける可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。