ニッポン高度紙工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ニッポン高度紙工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ニッポン高度紙工業は、東京証券取引所スタンダード市場に上場し、アルミ電解コンデンサ用セパレータおよび電池用等の機能材の製造・販売を主力としています。生成AIの普及に伴う関連需要の拡大などを背景に主力製品の販売が好調に推移し、直近の業績は大幅な増収増益を達成し、再び成長軌道に乗っています。


※本記事は、ニッポン高度紙工業株式会社の有価証券報告書(第96期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ニッポン高度紙工業ってどんな会社?


アルミ電解コンデンサ用セパレータおよび電池用等の機能材の製造・販売を主力とするメーカーです。

(1) 会社概要


1941年に高知市で設立され、1943年より電解コンデンサ用セパレータの生産を開始しました。1996年に店頭登録、2004年にジャスダック上場を果たし、2009年にはリチウムイオン電池用セパレータ市場に本格参入しました。2022年に東証スタンダード市場へ移行し、事業基盤の強化を続けています。

同社グループの従業員数は連結で462名、単体で336名です。筆頭株主は東京産業洋紙で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は事業上の取引関係がある日本紙パルプ商事となっています。

氏名 持株比率
東京産業洋紙 9.48%
日本カストディ銀行(信託口) 5.70%
日本紙パルプ商事 4.91%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は近森俊二氏が務めています。社外取締役は3名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
近森俊二 取締役社長(代表取締役)社長執行役員 1981年同社入社。管理本部長、取締役を経て2019年営業本部長。2021年代表取締役社長、2023年より社長執行役員およびNKKソリューションズ代表取締役社長。
山岡俊則 取締役会長 1991年同社入社。管理本部長を経て2005年取締役。営業本部長、代表取締役社長を歴任し、2021年より現職。
矢田部達志 取締役常務執行役員営業部門統括セパレータ開発部門統括 1996年同社入社。営業部長を経て2020年取締役。営業部門統括などを歴任し、2025年より常務執行役員およびセパレータ開発部門統括。
高橋寿明 取締役常務執行役員管理部門統括 1986年同社入社。管理部長を経て2021年取締役。管理部門統括などを歴任し、2025年より常務執行役員。


社外取締役は、岡崎明氏(元四電工専務取締役)、井上浩之氏(元高知県副知事)、奥村陽子氏(税理士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「セパレータ事業」の単一セグメントとして事業を展開しています。

(1) セパレータ事業


エレクトロニクス産業に不可欠な部材であるアルミ電解コンデンサ用セパレータおよび、電池のセパレータ等として使用される機能材の製造・販売を行っています。国内外のコンデンサメーカーや電池メーカーを主要な顧客とし、高品質で高信頼性のある製品を安定供給しています。

収益は、顧客である電子部品メーカー等への製品販売から得ています。アルミ電解コンデンサ用セパレータは同社が製造し、継続的売買契約を結ぶ王子エフテックスを通じて全量を同社商標で販売する体制を取っています。また、製品の裁断加工等は子会社のNKKソリューションズやマレーシアの現地法人が担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、一時的な需要の調整局面により一時減収減益となった時期もありましたが、足元では生成AI関連の投資拡大等を背景に需要が回復しています。当期は売上高、利益ともに大幅な伸長を記録し、高い収益性を確保しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 181億円 176億円 148億円 160億円 186億円
経常利益 42億円 35億円 20億円 24億円 37億円
利益率(%) 23.4% 20.1% 13.6% 15.2% 19.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 29億円 25億円 14億円 17億円 26億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に加えて、原材料およびエネルギー価格上昇への対応として実施した製品の価格改定などが寄与し、売上総利益率が改善しました。その結果、営業利益も前年を大きく上回る伸びを示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 160億円 186億円
売上総利益 45億円 57億円
売上総利益率(%) 27.8% 30.6%
営業利益 25億円 35億円
営業利益率(%) 15.3% 19.0%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当及び賞与が5億円(構成比25.0%)、荷造及び発送費が4億円(同17.7%)を占めています。

(3) セグメント収益


AIサーバー需要の拡大を背景に、主力のアルミ電解コンデンサ用セパレータの販売が好調に推移しました。また機能材においても、電力安定化用途等の電気二重層キャパシタ用セパレータの需要が増加し、両分野とも増収となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
アルミ電解コンデンサ用セパレータ 122億円 140億円
機能材 38億円 46億円
連結(合計) 160億円 186億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.5%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は73.6%であり、いずれも市場平均を上回っています。本業で稼いだ営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「エレクトロニクス産業に不可欠な部材であるアルミ電解コンデンサ用セパレータおよび機能材を安定供給することにより顧客満足度を高め、エレクトロニクス産業の発展に寄与し、世界に役立つ仕事をしている集団であることを目指す」という企業理念を掲げて事業活動を展開しています。

(2) 企業文化


同社は、「思い思われ、育ち育てる」というスローガンのもと、個人、組織、社会から信頼されるヒトづくりを行うことを重視しています。社員一人一人が能力向上と自己革新に取り組みながら、多様化・複雑化する顧客のニーズに応え、強固な信頼関係を構築していく企業文化が醸成されています。

(3) 経営計画・目標


第100期(2030年3月期)に向けた長期目標の達成を目指し、3ヵ年中期事業計画を推進しています。資本効率を高めるための収益性向上を重視しており、最終年度(2027年3月期)の経営数値目標として以下を掲げています。

* 連結売上高:200億円(うち機能材売上高50億円)
* 連結営業利益:36億円
* 自己資本利益率(ROE):10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


事業内容の選択と集中を基本に、新規事業創出による事業ポートフォリオの転換を目指しています。セパレータ製造で培ったコア技術を基に電子材料等の用途展開を追求するほか、成長分野(車載、通信、環境)での新製品開発を強化します。また、米子工場の設備増強や自動倉庫の拡充により、安定供給体制を構築します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「思い思われ、育ち育てる」という人事基本理念に基づき、自立した人間としての自己実現と、それを支援する魅力ある職場づくりに努めています。安全衛生と従業員の心身の健康を最優先する「健康経営」を推進し、多様な人材の活躍と働きがい向上に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.0歳 21.2年 7,727,000円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.4%
男性育児休業取得率 87.5%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 63.4%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) 75.4%
労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用労働者) 106.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、教育研修受講率(100%)、年次有給休暇取得率(100%)、正社員に占める女性の割合(7.8%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定品目への依存リスク


主力製品であるアルミ電解コンデンサ用セパレータは高い市場シェアを有しているため、世界の需要動向が業績に影響を与える可能性があります。同社は需要拡大が見込まれる機能材の拡販や新たな事業の創出を図ることで、特定品目への依存影響を極小化し、業績の安定化に努めています。

(2) 価格競争の激化による影響


アルミ電解コンデンサ市場においては、メーカー間でのグローバルな競争が激しくなっており、将来的にセパレータ販売価格への下落圧力が強まる可能性があります。同社は顧客ニーズに応える研究開発を推進し、他社と差別化できる高品質・高信頼性製品の拡販を進めることで対応しています。

(3) 為替レート・原材料価格の変動


製品販売の一部や、主要原材料であるパルプの輸入において外貨建て取引を行っており、為替相場の変動リスクに晒されています。また、気候変動や政情不安による原材料の供給不足や価格高騰が生じた場合、調達コストの上昇等を通じて同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。