日本シイエムケイ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本シイエムケイ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する日本シイエムケイは、車載向けを中心とするプリント配線板の開発・製造・販売を主力事業として展開しています。直近の業績は、日系主要顧客向けの販売が順調に推移し増収となった一方、タイ新工場の立ち上げ費用や生産最適化に向けた費用の増加などにより営業減益となっています。


※本記事は、日本シイエムケイ株式会社の有価証券報告書(第66期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本シイエムケイってどんな会社?


日本シイエムケイは、車載向けに強みを持つプリント配線板のグローバルメーカーです。

(1) 会社概要


1961年、中央銘板工業として設立しネームプレートの製造販売を開始しました。1963年にプリント配線板の生産を始め、1984年に現在の日本シイエムケイへ商号変更しています。1985年に東証二部へ上場し、1989年に東証一部へ指定替えとなりました。2000年代以降は中国や東南アジアへ進出しています。

従業員数は連結で4,304名、単体で1,129名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位にみずほ銀行、第3位に日本カストディ銀行(信託口)が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 24.76%
みずほ銀行 3.61%
日本カストディ銀行(信託口) 3.59%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長は石坂嘉章氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
大澤功 代表取締役会長 1989年シイエムケイ蒲原電子入社。2014年同社入社後、品質保証部長や国内製造統括本部長を歴任。2016年取締役就任。2018年代表取締役社長、2020年CEOを経て、2024年より現職。
石坂嘉章 代表取締役社長 1988年同社入社。東日本営業本部本部長や新昇電子董事長兼総経理、営業統括本部本部長、CMOを歴任。2021年取締役、2023年COOを経て、2024年より現職。
手戸邦彦 取締役執行役員経理担当情報システム担当 1980年キヤノン入社。キヤノン米国法人のCFOやキヤノンマーケティングジャパンの社外監査役などを歴任。2020年同社入社。2021年取締役執行役員に就任。
山口喜久 取締役執行役員経営企画担当相模原事業所長 1991年同社入社。経営企画部長やタイ法人取締役、電子デバイス事業部担当部長、経理部長を歴任。2021年取締役に就任し、現在は経営企画担当および相模原事業所長。
大野和人 取締役執行役員コーポレート担当(人事総務、内部統制、CSR、法務) 1980年キヤノン入社。人事本部長や取締役企画本部長、常勤監査役を歴任。日本監査役協会専務理事を経て2022年同社入社。同年取締役に就任し、コーポレート担当。
高橋聡 取締役執行役員グローバル生産担当生産技術担当開発技術担当生産本部長 1984年同社入社。希門凱電子董事長や製造統括本部長、タイ法人マネージングディレクターを歴任。2024年取締役に就任し、グローバル生産・生産技術等担当および生産本部長。


社外取締役は、佐藤りか(佐藤&パートナーズ法律事務所代表)、種市正四郎(元東レ参事)、友井洋介(元日本農薬代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「中国」「東南アジア」「欧米」の4つの報告セグメントを展開しています。

日本


同社およびシイエムケイ・プロダクツを通じ、日本国内でプリント配線板の製造・販売事業を展開しています。主力である車載市場向けをはじめ、様々な顧客のニーズに応える高付加価値な製品を開発・製造しています。

収益は、自動車メーカーや関連部品メーカーなどの顧客に対するプリント配線板の販売代金から得ています。事業の運営は、日本シイエムケイとシイエムケイ・プロダクツが担っています。

中国


中国市場において、日系および外資系メーカー向けにプリント配線板の製造・販売事業を展開しています。大型の生産設備や現地における経営の一体化を推し進め、生産性や品質の向上を図っています。

収益は、現地に進出している自動車関連メーカーなどへの製品販売によって得ています。運営は、新昇電子(香港)、希門凱電子(無錫)、旗利得電子(東莞)、新昇電子貿易(深圳)などの現地子会社が行っています。

東南アジア


タイやマレーシア、シンガポールを中心とする東南アジア地域において、プリント配線板の製造および販売、ならびに販売支援事業を展開しています。タイの新工場を中心に、グローバルな供給体制の要として機能しています。

収益は、日系顧客の車載向けや家電向けのプリント配線板の販売によって得ています。運営は、タイ法人のほか、シンガポールやマレーシアの現地子会社が行っています。

欧米


欧州および米国市場において、プリント配線板の販売および販売支援事業を展開しています。現地に密着した営業活動を通じて、グローバル展開する自動車メーカーなどの顧客対応を行っています。

収益は、顧客に対するプリント配線板の製品販売代金から得ています。事業の運営は、ベルギー、ドイツ、米国の各現地子会社が担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績推移を見ると、売上高は安定して拡大を続けており、毎期着実な成長を遂げています。利益面では一時的な落ち込みが見られた時期もありましたが、その後は回復傾向にあり、継続的な投資や収益性改善の取り組みによる成果が数字に表れています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 815億円 838億円 906億円 955億円 1002億円
経常利益 33億円 26億円 48億円 55億円 41億円
利益率(%) 4.1% 3.1% 5.3% 5.8% 4.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 10億円 -6億円 23億円 32億円 42億円

(2) 損益計算書


売上高は着実な伸びを示していますが、生産体制の再構築や品質管理強化に向けた費用が増加した影響などにより、売上総利益および営業利益は前期を下回る結果となりました。利益率もやや低下傾向にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 955億円 1002億円
売上総利益 156億円 149億円
売上総利益率(%) 16.3% 14.9%
営業利益 38億円 28億円
営業利益率(%) 4.0% 2.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が45億円(構成比37%)、荷造運賃が10億円(同8%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の売上高を見ると、日本や東南アジア市場において車載向けや家電向けの販売が好調に推移し増収に貢献しています。一方で、中国や欧米市場では自動車の販売減や電気自動車などの需要の変化といった影響を受け、減収となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
日本 568億円 617億円
中国 188億円 172億円
東南アジア 156億円 174億円
欧米 43億円 39億円
連結(合計) 955億円 1002億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 91億円 78億円
投資CF -188億円 -69億円
財務CF 47億円 -41億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は55.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、社是『発展と永続』のもと、社員の精神的・物質的幸福を追求するとともに、自覚と責任をもって安全安心な製品を製造販売し、存在価値を高め社会の発展に貢献することを基本理念としています。「新たな社会・価値観に適応した世界最高レベルの安全安心なプリント配線板」の供給を通じた社会貢献を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「公明正大なものづくりを実践する」「環境の変化を先取りし、柔軟に対応できる活力のある職場をつくる」といった経営方針を掲げています。個人の属性にとらわれずお互いを尊重し、一致協力して利益をつくることや、品質向上を日課として歩留まり改善と品質保証体制の強化に努める文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、企業価値の持続的な向上を図るため、資本コストや株価を意識した経営を実践し、財務および非財務の目標を掲げています。

・DOE(連結株主資本配当率)3%
・ROE(自己資本利益率)9%

(4) 成長戦略と重点施策


同社は中長期的な成長に向けて、通信技術の進展や自動運転技術の普及拡大を背景に成長が見込まれる車載領域の強化に注力しています。また、事業ポートフォリオの多角化に向けた取り組みも進めています。

・半導体関連、産業機器、通信インフラ、航空宇宙、医療機器等の新領域の拡販によるトップライン向上
・事業体制強化および生産性向上による原価競争力の引き上げ
・採用体制強化による適正な要員計画の実施

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は持続的な成長と競争力の維持・強化のため、優秀な人材の確保・育成・定着を重要課題に位置づけています。働きやすい環境の整備や多様性の尊重を進めるとともに、階層別・部門別教育や多能工化の推進など体系的な育成を行っています。また、若手のキャリアローテーションや自律的なキャリア形成を支援しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 49.4歳 20.1年 6,578,757円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.3%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 68.7%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 70.9%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 78.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇平均取得日数(12.1日)、障がい者の雇用率(3.4%)、ストレスチェックの受検率(98.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 主要取引先への売上高集中


同社グループの売上高は、特定の主要取引先数社向けの割合が大きく、直近では連結売上高の40%を超えています。そのため、該当する取引先の生産・販売動向や製品戦略、調達方針の変更、競合他社への発注シフト等が行われた場合には、受注量や売上高が大幅に減少し、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原材料等の調達および価格変動


世界的な原油価格や素材価格の変動は、同社グループが調達する原材料の価格に影響を与えます。また、サプライヤーにおける生産不足や不慮の事故等により材料供給の不足が発生した場合、生産遅延や停止を招くおそれがあります。同社は複数購買や価格転嫁の交渉を進めていますが、完全にリスクを回避することは困難です。

(3) 顧客市場および需要構造の変化


主力である車載市場の動向や、原材料費・人件費の高騰により原価競争力が低下した場合、競合他社に受注がシフトするおそれがあります。また、新領域である産業機器や航空宇宙・医療等においても、市場環境の悪化や規制の変化により計画通りに拡販が進まず、期待した収益を確保できない可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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