日本シイエムケイ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本シイエムケイ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するプリント配線板の総合メーカーです。主力の車載向け製品が堅調に推移し、2025年3月期の連結売上高は955億円(前期比5.4%増)、経常利益は55億円(同15.4%増)と増収増益を達成しました。タイ新工場の建設など、グローバル展開を加速させています。


※本記事は、日本シイエムケイ株式会社 の有価証券報告書(第65期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本シイエムケイってどんな会社?


車載用プリント配線板で世界トップクラスのシェアを持つメーカーです。グローバルな生産体制が特徴です。

(1) 会社概要


1961年に中央銘板工業として設立され、1963年にプリント配線板の生産を開始しました。1984年に現在の日本シイエムケイへ商号変更し、1989年に東京証券取引所市場第一部(現プライム市場)へ指定替えを行っています。海外展開も早くから進め、1980年代からシンガポールや欧米に拠点を設立し、近年ではタイや中国での生産能力増強を進めています。

2025年3月31日時点の従業員数は連結で4,483名、単体で1,143名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第3位には主要取引銀行であるみずほ銀行が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 14.87%
日本カストディ銀行(信託口) 6.71%
みずほ銀行 3.62%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長は石坂 嘉章氏です。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
大澤 功 代表取締役会長 1989年シイエムケイ蒲原電子入社。品質保証部長、製造担当等を経て2018年社長就任。2020年CEO。2024年より現職。
石坂 嘉章 代表取締役社長 1988年入社。営業統括本部長、CMO、COO等を経て2024年より現職。
手戸 邦彦 取締役執行役員 キヤノン出身。Canon USA CFO等を経て2020年入社。社長室長等を歴任し、2024年より経理担当。
山口 喜久 取締役執行役員 1991年入社。経営企画部長、経理担当、シイエムケイ・プロダクツ担当等を歴任。2024年より経営企画担当。
大野 和人 取締役執行役員 キヤノン出身。人事本部長等を経て2022年入社。法務担当等を経て2025年よりコーポレート担当。
高橋 聡 取締役執行役員 1984年入社。生産本部長、タイ法人会長等を歴任。2025年より生産技術担当。


社外取締役は、佐藤 りか(佐藤&パートナーズ法律事務所代表)、種市 正四郎(元東レ常任理事)、友井 洋介(元日本農薬会長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「中国」「東南アジア」「欧米」の4つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 日本


プリント配線板の製造および販売を行っています。車載用を中心に、通信機器用や産業機器用など幅広い分野に向けた製品を提供しています。

収益は、顧客への製品販売による対価が主な収益源です。運営は主に同社およびシイエムケイ・プロダクツが行っています。

(2) 中国


中国市場および海外市場向けのプリント配線板の製造販売を行っています。現地での生産体制を確立し、コスト競争力のある製品を供給しています。

収益は、製品販売による対価が主な収益源です。運営は新昇電子(香港)有限公司、希門凱電子(無錫)有限公司、旗利得電子(東莞)有限公司などが行っています。

(3) 東南アジア


タイを中心とした生産拠点でプリント配線板の製造販売を行っています。地政学リスク回避の観点からも重要性が高まっており、生産能力の増強が進められています。

収益は、製品販売による対価が主な収益源です。運営はCMK CORPORATION(THAILAND)CO.,LTD.やCMK ASIA(PTE.)LTD.などが行っています。

(4) 欧米


欧州および米国市場におけるプリント配線板の販売および販売支援を行っています。現地の自動車メーカーや部品メーカーへの営業活動を展開しています。

収益は、製品販売および販売支援による対価が主な収益源です。運営はCMK EUROPE N.V.、CMK AMERICA CORPORATIONなどが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に増加傾向にあります。2021年3月期には赤字を計上しましたが、その後は回復し、特に2024年3月期以降は利益面でも安定感が増しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 700億円 815億円 838億円 906億円 955億円
経常利益 -15.1億円 33.1億円 26.2億円 48.0億円 55.3億円
利益率(%) -2.2% 4.1% 3.1% 5.3% 5.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 12億円 10億円 -6億円 23億円 32億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに増加しています。売上総利益率は16%台で安定的に推移しており、増収効果が利益増に直結しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 906億円 955億円
売上総利益 144億円 156億円
売上総利益率(%) 15.9% 16.3%
営業利益 35億円 38億円
営業利益率(%) 3.9% 4.0%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が45億円(構成比38%)、荷造運賃が11億円(同10%)を占めています。売上原価については、製造コストが中心となっています。

(3) セグメント収益


全セグメントで黒字を確保しています。日本セグメントは売上・利益ともに最大規模であり、利益率も比較的高水準です。東南アジアセグメントは大幅な増収増益を達成しており、成長ドライバーとなっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
日本 554億円 568億円 16億円 22億円 3.9%
中国 185億円 188億円 19億円 16億円 8.4%
東南アジア 122億円 156億円 8億円 9億円 5.6%
欧米 45億円 43億円 3億円 2億円 5.5%
連結(合計) 906億円 955億円 35億円 38億円 4.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

日本シイエムケイは、事業運営に必要な流動性と資金源泉を安定的に確保することを基本方針としています。

営業活動により得られたキャッシュ・フローと短期借入を運転資金の基本とし、長期的な資金は金融機関からの借入や社債で調達しています。設備投資の一部はリース取引を活用しています。

設備投資は、将来の事業拡大に向けた積極的な投資を行っています。

財務活動では、有利子負債の削減を進めつつ、取引金融機関との当座貸越契約等により、十分な流動性を確保しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 94億円 91億円
投資CF -142億円 -188億円
財務CF 54億円 47億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、社是『発展と永続』のもと、新たな社会・価値観に適応した「世界最高レベルの安全安心なプリント配線板」を供給し続けることにより、安全で快適な社会を実現することを中長期ビジョンに掲げています。社会への貢献、幸福の追求、安全安心な製品の供給を通じて、ステークホルダーからの期待に応えることを目指しています。

(2) 企業文化


「公明正大なものづくりを実践する」「品質向上を日課として歩留まり改善と品質保証体制の強化に努める」といった方針のもと、誠実なものづくりを重視する文化があります。また、「お互いを尊重し、よく考え、よく話し、理解を深め一致協力して利益をつくる」という方針により、拠点や国籍にとらわれないチームワークを大切にしています。

(3) 経営計画・目標


2026年3月期の業績目標として以下の数値を掲げています。

* 連結売上高:960億円
* 営業利益:40億円
* 営業利益率:4.2%

(4) 成長戦略と重点施策


車載市場での競争優位性を活かし、ADAS(先進運転支援システム)やEV化に伴う需要拡大を取り込む戦略を推進しています。特にタイに新工場を建設し、2025年10月からの量産開始を予定しています。また、高放熱基板「DPGA基板」の技術導入など、車載以外の新事業領域の拡大や、2050年のカーボンニュートラルに向けた環境対応も強化しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「[働きやすさ]+[働きがい]会社と社員がともに成長する企業に向けて」を中長期ビジョンとして掲げています。多様性や人権を尊重し、従業員一人ひとりが働きがいを感じられる職場環境の整備を進めています。また、製造部門においては多能工化を推進し、技能向上による人材の底上げと組織力の強化を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 48.7歳 19.6年 6,074,896円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.6%
男性育児休業取得率 75.0%
男女賃金差異(全労働者) 73.0%
男女賃金差異(正規) 73.5%
男女賃金差異(非正規) 77.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、公的資格者取得人数(40人)、有給休暇平均取得日数(12.0日)、障がい者の雇用率(3.36%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 車載市場に関するリスク


同社グループは車載市場を主力としているため、自動車業界の動向による影響を強く受けます。世界的な景気後退、自動車生産に必要な部品の供給不足、各国の通商政策動向などにより自動車生産台数が減少した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 為替相場の変動に関するリスク


日本、中国、東南アジア、欧米で事業展開を行っているため、円、米ドル、ユーロ、人民元、タイバーツ等の為替変動の影響を受けます。為替予約や通貨バランスの調整を行っていますが、急激な変動は業績に影響を与える可能性があります。

(3) 原材料等の調達に関するリスク


原油価格や素材価格の変動は材料価格に影響を与えます。また、サプライヤーでの生産不足や事故等により材料供給が滞った場合、生産遅延や停止を招く恐れがあります。これらは業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。