※本記事は、スカパーJSATの有価証券報告書(第19期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. スカパーJSATってどんな会社?
同社は、衛星通信インフラを支える宇宙事業と、有料多チャンネル放送を軸とするメディア事業を展開する企業です。
■(1) 会社概要
2006年にスカイパーフェクト・コミュニケーションズとジェイサットが経営統合に合意し、2007年に共同で設立・上場しました。2008年に宇宙通信を子会社化し事業基盤を強化しました。直近の2026年には中核子会社であるスカパーJSATを吸収合併し、現在の体制へ移行しています。
従業員数は連結で769名、単体で33名です。筆頭株主は事業会社の伊藤忠・フジ・パートナーズで、第2位はNTTドコモビジネス、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 伊藤忠・フジ・パートナーズ | 27.01% |
| NTTドコモビジネス | 9.19% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 7.98% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.0%です。代表取締役執行役員社長は米倉英一氏が務めています。社外取締役比率は38.4%(13名中5名)です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 米倉英一 | 代表取締役執行役員社長 | 1981年伊藤忠商事入社。同社金属カンパニープレジデント、専務執行役員等を経て、2018年同社代表取締役副社長に就任。2019年より現職。 |
| 福岡徹 | 代表取締役執行役員会長 | 1980年郵政省(現総務省)入省。同省総合通信基盤局長、総務審議官等を経て、2019年同社取締役副社長に就任。2024年より現職。 |
| 中川大介 | 取締役執行役員常務 | 1990年住友商事入社。2015年スカパーJSAT入社。同社メディア事業部門FTTH事業本部長等を経て、2026年より現職。 |
| 山下照夫 | 取締役執行役員常務 | 1996年トーメン(現豊田通商)入社。2001年同社入社。JSAT International Inc.のCEO等を経て、2026年より現職。 |
社外取締役は、大賀公子(元NTT東日本東京支店副支店長)、於保浩之(元HJホールディングス社長)、青木節子(慶應義塾大学大学院教授)、豊田硬(元防衛事務次官)、堀内真人(伊藤忠・フジ・パートナーズ社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「宇宙事業」および「メディア事業」を展開しています。
■宇宙事業
政府機関、公共団体、国内外企業、移動体向けに通信衛星を利用した通信サービスを提供しています。また、低軌道衛星からの画像や位置情報等のデータを解析・活用し、社会課題の解決や産業高度化に資するソリューションを提供するスペースインテリジェンス事業も展開しています。
収益源は、通信回線の販売や周辺サービスの提供、放送事業者に対する衛星回線の提供などです。運営は主に同社および子会社のJSAT International Inc.やJSAT MOBILE Communicationsなどが行っています。
■メディア事業
「スカパー!」や「スカパー!プレミアムサービス」を通じた多チャンネル放送サービスの提供や、顧客管理業務等のプラットフォームサービスを展開しています。加えて、光ファイバー網を利用した地上波やBS放送の再送信サービス等も提供しています。
収益源は、加入者からの視聴料収入や基本料収入、放送事業者からの業務手数料収入、FTTH収入などです。運営は主に同社および子会社のスカパー・エンターテイメントやスカパー・ピクチャーズなどが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績推移を見ると、経常利益は203億円から354億円へと順調に拡大を続けています。一方で当期利益については、直近の2026年3月期において減損損失の計上などの特別要因があったことから、2億円へと減少しています。持続的な収益向上に向けた取り組みが続いています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益(または売上高) | - | - | - | - | - |
| 経常利益 | 203億円 | 232億円 | 271億円 | 273億円 | 354億円 |
| 利益率(%) | - | - | - | - | - |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 84億円 | 56億円 | 84億円 | 140億円 | 2億円 |
■(2) 損益計算書
営業利益は275億円から353億円へと増加し、本業の収益力が大きく向上していることが確認できます。売上高および売上総利益のデータは本表では省略していますが、コストコントロールの成果が着実に利益の増加に結びついていることが窺えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | - | - |
| 売上総利益 | - | - |
| 売上総利益率(%) | - | - |
| 営業利益 | 275億円 | 353億円 |
| 営業利益率(%) | - | - |
■(3) セグメント収益
セグメント別の売上推移を見ると、宇宙事業は国内衛星通信分野でのサービス提供開始やスペースインテリジェンス事業の成長により、606億円から660億円へと増収を達成しています。一方、メディア事業は視聴料収入などの減少により、631億円から615億円へとわずかに減収となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 宇宙事業 | 606億円 | 660億円 |
| メディア事業 | 631億円 | 615億円 |
| 連結(合計) | 1,237億円 | 1,276億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CF・財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型の優良企業の状態を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 424億円 | 537億円 |
| 投資CF | -258億円 | -765億円 |
| 財務CF | -167億円 | -323億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は74.4%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「Space for your Smile」をグループミッションに掲げ、「不安が『安心』にかわる社会へ」「不便が『快適』にかわる生活へ」「好きが『大好き』にかわる人生へ」というビジョンを目指しています。日常の小さな幸せから未来の幸せまで、一人ひとりの明日がよりよい日になる世界を創り続けることを使命として事業活動を展開しています。
■(2) 企業文化
このグループミッションを持続可能な社会に向けた「サステナビリティ方針」としても掲げています。社会課題の解決と企業価値の向上を両立させる文化を重視しており、既存ビジネスの延長線上にとどまることなく、新たな領域への挑戦や多様なパートナーとの協業を通じて、事業領域を拡大していく姿勢が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
2030年度の長期目標として、営業収益1,850億円、当期純利益350億円、EBITDA(利払前税引前償却前利益)850億円を掲げています。また、2026年度の短期的な連結業績目標として以下を設定しています。
* 営業収益:1,350億円
* 営業利益:390億円
* 経常利益:390億円
* EBITDA:540億円
■(4) 成長戦略と重点施策
「収益基盤強化」「事業の進化」「新規領域の開拓」の3つを経営戦略の柱としています。宇宙事業では「Multi-Orbit戦略」のもと、スペースインテリジェンス事業を成長ドライバーとして事業領域を拡大します。メディア事業では多様なパートナーとの協業を通じた「Multi-Alliance戦略」を推進し、利益水準の維持・拡大を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業戦略の実行力を高めるため、「人財戦略」と「組織基盤の強化」の2つを柱として人的資本強化に取り組んでいます。環境変化を自らの成長機会と捉え、事業や組織の変革を推進できる「変革起動人財」の採用・育成に注力するとともに、スキルや経験の可視化を活用した早期抜擢や最適配置を通じて個々のパフォーマンス最大化を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 45.5歳 | 4.4年 | 12,132,577円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 11.5% |
| 男性育児休業取得率 | 77.7% |
| 男女の賃金の差異(全従業員) | 86.7% |
| 男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 87.5% |
| 男女の賃金の差異(非正規雇用労働者) | 89.5% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、法定健診受診率(100.0%)、ストレスチェック受検率(92.4%)、エンゲージメント指標(68.6%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 衛星通信市場における競争力低下のリスク
低軌道衛星等を利用した新たな事業者の台頭により、衛星通信市場での競争が激化しています。技術進展や市場環境の急速な変化に対し、同社グループの提供するサービスが競争力を維持できず、収益性に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 通信衛星調達に関するリスク
通信衛星の調達において、製造の遅延や打ち上げの遅延、あるいは失敗といったリスクが存在します。予定されていた運用開始が遅れることで、サービス提供ができない期間が生じ、収益の低下や顧客流出につながる可能性があります。
■(3) 通信衛星の運用に関するリスク
運用中の衛星に製造上の瑕疵や太陽活動等による不具合が生じ、機能不全や運用能力の低下が発生するリスクがあります。バックアップ体制を講じていますが、代替機能が完全に提供できない場合、収益性の低下や追加コストの発生につながるおそれがあります。



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