※本記事は、ニッキ の有価証券報告書(第135期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ニッキってどんな会社?
ニッキはガス機器や汎用機器、自動車機器などの製造・販売を手掛ける、東証スタンダード上場企業です。
■(1) 会社概要
1932年に日本気化器製作所として創立し、気化器専門工場として発足。1961年に東証二部に株式を上場しました。その後、ガス自動車用燃料供給システムや電子制御燃料噴射装置などを開発し、海外(中国、米国、韓国、インド、タイ等)にも進出。2001年に現在のニッキへ商号変更しています。
従業員数は連結で509名、単体で174名です。大株主については、筆頭株主がいちごトラスト・ピーティーイー・リミテッドであり、第2位はWESTERRN GATE GROUP LTD、第3位は谷電機工業となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| いちごトラスト・ピーティーイー・リミテッド | 23.23% |
| WESTERRN GATE GROUP LTD | 5.29% |
| 谷電機工業 | 4.30% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は17.0%です。代表取締役社長は和田孝氏が務めており、社外取締役は3名選任されています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 和田孝 | 取締役社長(代表取締役) | 2004年3月同社入社。営業部海外担当部長等を経て2007年6月より現職。指名・報酬委員会委員も務める。 |
| 田中宣夫 | 常務取締役 | 2006年12月同社入社。総務部部長兼経営企画室副室長などを経て、2017年11月より現職。 |
| 遠藤健一 | 取締役 | 1985年11月同社入社。製造部部長・NPS推進室室長などを経て、2025年6月より現職。 |
| 福岡智昭 | 取締役 | 1994年4月同社入社。設計部副部長などを経て、2023年6月より現職。 |
| 野口健太郎 | 取締役 | 1999年4月同社入社。生産管理部副部長などを経て、2025年6月より現職。 |
| 酒見信彦 | 取締役 | 1999年4月同社入社。品質保証部副部長を経て、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、松村隆(松村公認会計士事務所開設)、篠田憲明(三宅坂総合法律事務所入所)、生山龍子(山の手法律事務所開設)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ガス機器事業」、「汎用機器事業」、「自動車機器事業」、「産業機器事業」および「不動産賃貸事業」を展開しています。
■ガス機器事業
主にECU(電子制御装置)、インジェクター、噴射システム、ミキサ、ベーパーライザ、レギュレータなどのガス機器の製造および販売を行っています。
製品の販売により顧客から対価を受け取ります。運営は同社のほか、瀋陽日新気化器有限公司、NIKKI (THAILAND) CO.,LTD.などが製造し、ニッキソルテックサービスなどが販売を行っています。
■汎用機器事業
農業用や産業用の汎用気化器、船舶用気化器、二輪用噴射システムなどの製造および販売を手掛けています。米国市場向け製品などをグローバルに展開しています。
製造した機器の販売により収益を得ています。同社や瀋陽日新気化器有限公司、NIKKI INDIA FUEL SYSTEMS PRIVATE LIMITEDが製造し、NIKKI AMERICA,INC.などが販売を担います。
■自動車機器事業
スロットルボディ、自動車用気化器、アクセルワイヤユニット、アクチュエータなど、自動車向け部品の製造および販売を行っています。
顧客への自動車機器の販売を通じて対価を受け取ります。製造は同社やニッキ・テクノ、インドの関連会社が行い、販売はニッキソルテックサービスなどが担当しています。
■産業機器事業
空圧制御機器部品や建設機械部品等の製造および販売を手掛けています。新規事業として今後の拡大が見込まれる市場で展開しています。
産業向け部品の納入により収益を得ています。同社と神奈川精工、大島機工が製造を担い、神奈川精工および大島機工が販売を行っています。
■不動産賃貸事業
同社が所有する不動産の賃貸を行っています。主に本社工場用地の賃貸倉庫など、安定的な収益基盤として機能しています。
賃貸先から受け取る不動産賃貸料が主な収益源となります。この事業の運営は同社が単独で行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績を見ると、売上高は80億円から90億円台で推移しており、堅調な事業運営がうかがえます。一時は利益水準が低下したものの、直近では米国市場向け製品の販売回復や円安の寄与により、収益性が改善傾向にあります。事業構造の転換を進める中で、安定した利益基盤の維持に努めています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 88億円 | 88億円 | 94億円 | 84億円 | 93億円 |
| 経常利益 | 14億円 | 14億円 | 13億円 | 6億円 | 12億円 |
| 利益率(%) | 15.5% | 16.0% | 13.7% | 7.8% | 12.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 9億円 | 9億円 | 22億円 | 6億円 | 10億円 |
■(2) 損益計算書
直近の損益状況を見ると、増収に伴って売上総利益が増加しています。為替の円安基調や販売の回復が寄与し、営業利益も改善しました。売上総利益率は安定して推移しており、適切なコストコントロールと採算性の見直しが進んでいることが読み取れます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 84億円 | 93億円 |
| 売上総利益 | 27億円 | 30億円 |
| 売上総利益率(%) | 32.5% | 32.0% |
| 営業利益 | 9億円 | 11億円 |
| 営業利益率(%) | 10.6% | 11.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が4億円(構成比24%)、支払手数料が2億円(同10%)を占めています。
■(3) セグメント収益
セグメント別の売上高を見ると、主力の汎用機器事業が米国市場向け製品の販売回復により大きく成長を牽引しています。また、新規に子会社を取得した産業機器事業や、不動産賃貸事業も増収に寄与しました。ガス機器事業や自動車機器事業も底堅く推移しており、全体として増収を達成しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| ガス機器事業 | 31億円 | 31億円 |
| 汎用機器事業 | 34億円 | 39億円 |
| 自動車機器事業 | 8億円 | 8億円 |
| 産業機器事業 | 4億円 | 7億円 |
| 不動産賃貸事業 | 7億円 | 8億円 |
| 連結(合計) | 84億円 | 93億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.1%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は57.3%であり、いずれも市場平均をわずかに下回る水準となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -4億円 | 15億円 |
| 投資CF | -3億円 | -7億円 |
| 財務CF | 5億円 | -3億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「合理性、透明性の高い経営を実践し、企業価値を高め、社会から信頼される会社をめざす」をはじめとする4つの経営理念を掲げています。美しい地球の環境保全に努め、先端技術の開発と顧客との対話を通じた社会貢献、多様な人材の登用を重視しており、時代の変化を捉えた変革に挑戦しています。
■(2) 企業文化
「品質最優先に徹した商品とサービスを提供する」ことを通じて、社員一人ひとりが成長し、ものづくりの達成感・充実感を得ることを大切にしています。「企業行動憲章」や「従業員行動規範」を整備して法令遵守と企業倫理の確立に努めるなど、誠実で透明性の高い事業運営を重視する文化が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、持続的な成長を実現するため、収益性と財務の健全性を重視した経営を行っています。安定的な収益基盤の構築を図る上で、売上高営業利益率やROEなどを具体的な重要経営指標に設定して企業価値の向上に取り組んでいます。
■(4) 成長戦略と重点施策
気候変動対策に伴う脱炭素化などの環境変化に対応するため、既存事業に代わる新たな主力事業の創出・育成に注力しています。産業機器事業や水素関連事業、電動系・メカトロ関連事業を優先領域と位置づけ、非自動車関連やM&Aを通じた成長軌道への転換を進めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
持続的な成長に向け、「グローバル展開に対応できる人材育成」「人材採用強化」「マネジメント力の強化継続」「個人の継続的な能力アップ」の4つを柱としています。海外で主体的に活躍できる人材の育成や、専門的なスキルを持つプロフェッショナル人材の積極採用、性別や国籍によらない多様性の確保を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 44.9歳 | 18.1年 | 5,529,324円 |
※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.9% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
※同社および連結子会社は常時雇用する労働者数が300人以下のため公表義務の対象ではなく、有報には一部項目の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員における女性比率(11.5%)、女性の平均勤続年数(17.5年)、採用者に占める女性の目標割合(30%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 海外市場への依存と為替変動
同社グループは米国をはじめとする海外向けの売上高比率が高く、約6割を占めています。そのため、主要な海外市場における経済動向や需要の変動、および為替相場の急激な変動が、同社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 海外展開に伴う地政学リスク
同社は中国、米国、インド、タイなど複数の国でグローバルに事業を展開しています。そのため、進出先の各地域において治安の悪化、テロ、戦争などの政治的または経済的な混乱が発生した場合、事業継続に支障をきたし、業績に影響を与えるリスクがあります。
■(3) 環境規制強化への対応
自動車や小型エンジン用の気化器、燃料関連デバイスを製造しているため、製品を使用する国や地域における環境保護規制の対象となり得ます。脱炭素化の動きが加速する中で、法的規制への対応が遅れた場合、事業活動が制限される可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。