ニッキ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ニッキ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場し、ガス機器、汎用機器、自動車機器、産業機器の製造販売および不動産賃貸事業を展開する企業です。直近の決算では、主力である北米市場の需要落ち込み等の影響を受け、売上高は84億円、経常利益は6億円となり、前期比で減収減益となっています。


※本記事は、株式会社ニッキ の有価証券報告書(第134期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ニッキってどんな会社?


ガス機器や自動車機器等の燃料供給システム関連製品を主力とするメーカーです。

(1) 会社概要


1932年に日本気化器製作所として創立し、日本初の気化器専門工場として発足しました。1961年に東証二部に上場し、その後、中国、米国、インド、タイなどに現地法人を設立してグローバル展開を加速させています。2001年に現在の社名へ変更し、2022年には東証の市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行しました。

連結従業員数は502名、単体では181名体制で事業を展開しています。筆頭株主は投資運用会社のいちごトラスト・ピーティーイー・リミテッドで、第2位、第3位も投資関連企業および証券会社が名を連ねています。

氏名 持株比率
いちごトラスト・ピーティーイー・リミテッド 23.33%
WESTERRN GATE GROUP LTD 5.32%
INTERACTIVE BROKERS LLC 5.02%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は17.0%です。代表取締役社長は和田孝氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
和田孝 取締役社長(代表取締役) 横浜銀行より入社し、営業部海外担当部長等を経て2007年より現職。
田中宣夫 常務取締役総務部部長経営企画室室長関係会社室室長 横浜銀行より入社し、経営企画室副室長等を経て2017年より現職。
守屋元治 取締役営業部部長 1984年入社。品質保証部部長、技術開発部部長等を経て2024年より現職。
尾見雅明 取締役品質保証部部長購買部部長統合マネジメントシステム室室長 1985年入社。設計部部長、営業部部長等を経て2024年より現職。
遠藤健一 取締役製造部部長生産管理部部長NPS推進室室長 1985年入社。製造部部長、生産管理部管掌等を経て2022年より現職。
福岡智昭 取締役技術開発部部長 1994年入社。設計部副部長、NIKKI KOREA代表理事等を経て2023年より現職。


社外取締役は、松村隆(公認会計士・税理士)、篠田憲明(弁護士・学習院大学法科大学院教授)、生山龍子(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ガス機器事業」、「汎用機器事業」、「自動車機器事業」、「産業機器事業」および「不動産賃貸事業」を展開しています。

(1) ガス機器事業


ECU(電子制御装置)、インジェクターおよび噴射システム、ミキサ、ベーパーライザ、レギュレータなどのガス燃料供給システム関連製品を製造・販売しています。顧客は主にガスエンジン搭載機器メーカー等です。

収益は、製品の販売代金として顧客から受領します。運営は、同社および海外子会社の瀋陽日新気化器有限公司、NIKKI (THAILAND) CO.,LTD.が製造を担い、販売・開発は同社、株式会社ニッキ ソルテック サービスなどが担当しています。

(2) 汎用機器事業


農業用・産業用などの汎用気化器(キャブレター)、船舶用気化器、二輪車用燃料噴射システムなどを製造・販売しています。世界的な排出ガス規制に対応した製品を展開し、幅広い産業分野に製品を供給しています。

収益は、製品の販売代金として顧客から受領します。運営は、同社、瀋陽日新気化器有限公司、NIKKI INDIA FUEL SYSTEMS PRIVATE LIMITEDが製造を行い、販売は同社およびNIKKI AMERICA,INC.などが担っています。

(3) 自動車機器事業


スロットルボディ、気化器、アクセルワイヤユニット、アクチュエータなどの自動車用燃料制御部品を製造・販売しています。環境対応技術や電子制御技術を活かした製品を提供しています。

収益は、自動車メーカーや部品メーカー等の顧客からの製品販売代金となります。運営は、同社、ニッキ・テクノ株式会社、NIKKI INDIA FUEL SYSTEMS PRIVATE LIMITEDが製造し、販売は同社および株式会社ニッキ ソルテック サービスなどが行っています。

(4) 産業機器事業


空圧制御機器部品などの産業用機器部品を製造・販売しています。2023年に株式会社神奈川精工を子会社化したことにより新たに追加された事業セグメントです。

収益は、製品の販売代金として顧客から受領します。運営は、同社および株式会社神奈川精工が製造を行い、販売は株式会社神奈川精工が担っています。

(5) 不動産賃貸事業


同社が所有する不動産(土地・建物)の有効活用として、賃貸事業を行っています。東京都内および神奈川県厚木市などに賃貸用不動産を保有しています。

収益は、賃貸先からの不動産賃貸料として受領します。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期分の業績データにおいて、売上高は90億円前後で推移していましたが、直近では84億円へと減少しました。利益面では、経常利益が13〜14億円規模で推移していた時期もありましたが、直近では6億円台へと低下しており、利益率は7.8%となっています。当期純利益も前期の18億円から6億円へと減少しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 59億円 88億円 88億円 94億円 84億円
経常利益 4億円 14億円 14億円 13億円 6億円
利益率(%) 5.9% 15.5% 16.0% 13.7% 7.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 10億円 3億円 18億円 6億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益状況を見ると、売上高は減少したものの、売上総利益は微増しており、売上総利益率は28.7%から32.5%へと改善しています。一方で、営業利益は微減となり、営業利益率は10.6%となっています。売上減少の中でも利益率の改善が見られる一方、営業利益ベースでは横ばいから微減の傾向にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 94億円 84億円
売上総利益 27億円 27億円
売上総利益率(%) 28.7% 32.5%
営業利益 9億円 9億円
営業利益率(%) 9.7% 10.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が5億円(構成比25%)、運賃及び荷造費が1億円(同8%)を占めています。売上原価については、材料費や外注加工費などが主要な構成要素となっています。

(3) セグメント収益


各セグメントの状況を見ると、ガス機器事業と汎用機器事業が主力ですが、いずれも前期比で減収となりました。特に自動車機器事業は減収とともに赤字が続いています。一方、不動産賃貸事業は増収増益となり、産業機器事業も増収となりましたが、のれん償却負担等により赤字となっています。全社的には減収減益の傾向です。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
ガス機器事業 34億円 31億円 3億円 1億円 4.6%
汎用機器事業 41億円 34億円 6億円 6億円 17.9%
自動車機器事業 9億円 8億円 -3億円 -3億円 -34.3%
産業機器事業 3億円 4億円 -0億円 -1億円 -29.6%
不動産賃貸事業 5億円 7億円 4億円 5億円 76.8%
調整額 -億円 -億円 -億円 -億円 -
連結(合計) 94億円 84億円 9億円 9億円 10.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 19億円 -4億円
投資CF -25億円 -3億円
財務CF -4億円 5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は55.8%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「合理性、透明性の高い経営を実践し、企業価値を高め、社会から信頼される会社をめざす」「自然と調和した資源の活用と再生を考え、美しい地球の環境保全に努める」など4つの経営理念を掲げています。これらを踏まえ、時代の変化を捉えてステークホルダーの期待に応える業務変革に挑戦し、企業価値の向上を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、「先端技術の開発に努め、お客様、市場との率直な対話を通じて、付加価値の創造と共有を図り、社会に貢献する」「広く人材を求め、登用の多様性を図る」ことを理念として掲げています。環境保全への配慮や、合理性・透明性を重視する文化を持ち、脱炭素などの外部環境の変化に対して積極的に対応しようとする姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社は、中期経営計画において「持続的な成長の実現」を目指しており、以下の指標を重要な経営指標として位置づけています。具体的な数値目標については記載がありませんが、これらの指標の向上に取り組んでいます。

* 売上高営業利益率
* 売上高経常利益率
* 自己資本比率
* 自己資本利益率(ROE)

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、世界的な脱炭素・カーボンニュートラルの流れに対応するため、事業構造の転換と成長軌道への移行を基本方針としています。既存の自動車関連事業に固執せず、成長事業分野への早期参入やM&Aによる事業領域拡大を進め、将来の主力となる新規事業の創出・育成に注力しています。

* 産業機器事業:市場拡大が見込め、ガス関連技術とのシナジーが期待できるため最優先で対応。
* 水素関連事業:既存技術との親和性が高く、市場拡大が見込まれるため積極的に対応。
* 電動系・メカトロ関連事業:今後の主力市場となるため、収益性を見極めつつ積極的に対応。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、能力や適性など総合的に判断する人事評価制度により、性別・国籍や採用ルートによらず人材を登用する方針をとっています。人材の多様性の確保を重視しており、今後もそのための施策を推進していく考えです。また、「女性活躍推進法」に基づく行動計画として、採用者に占める女性の割合30%以上を目標としています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 45.0歳 19.6年 5,422,043円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.7%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -


※男性育児休業取得率および男女賃金差異については、同社は常時雇用する労働者数が300人超の事業主には該当せず、また公表項目としていないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 海外依存度及び為替変動


同社グループの海外売上高比率は50%を超えており、特に米国への売上高比率が高くなっています。そのため、海外市場の動向や為替相場の変動が業績や財政状態に影響を与える可能性があります。

(2) 国際活動におけるリスク


複数の国で事業を展開しているため、各地域における治安悪化、テロ、戦争等の政治的・経済的混乱が発生した場合、事業活動に支障をきたし、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 環境にかかる法的規制等の影響


製品を使用する国や地域の環境保護規制・法律により、同社製品が規制の対象となった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。特に脱炭素への対応は重要な課題です。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。