※本記事は、日本ギア工業株式会社 の有価証券報告書(第123期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日本ギア工業ってどんな会社?
同社は、バルブ・アクチュエータやジャッキ、各種歯車装置の製造販売およびメンテナンスを主力事業とする企業です。
■(1) 会社概要
同社は1938年に晴山自動車工業として設立され、1954年に現社名へ変更しました。1961年に東京・大阪証券取引所市場第二部に上場し、1963年には米国フィラデルフィア・ギア社と技術提携を結び製品の多様化を推進しました。2019年には東証一部銘柄に指定され、2022年の市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行しています。
同社(単体)の従業員数は264名です。主要株主には、歯車装置事業等を行う成和(筆頭株主)、建材等の販売を行う三田商店、機械専門商社である守谷商会の持株会社GM INVESTMENTSなど、事業上の関係が深い企業が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 成和 | 39.57% |
| 三田商店 | 7.22% |
| GM INVESTMENTS | 2.11% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は寺田治夫氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 寺田 治夫 | 代表取締役社長 | 成和代表取締役社長を経て、2015年同社代表取締役COOに就任。同年6月より現職。 |
| 林 秀樹 | 取締役管理部長 | 税理士として独立開業後、キュビズム代表取締役を務める。2015年同社取締役CFO兼管理部長に就任し、同年6月より現職。 |
| 植垣 淳哉 | 取締役技術部長 | 安川電機、理学電機工業(現リガク)、日本電産サンキョー(現ニデックインスツルメンツ)を経て、2021年同入社。2022年より現職。 |
| 鶴見 肇 | 取締役経営企画推進室長 | 東芝にて火力事業部情報制御システム設計部部長等を歴任。2019年同社入社。2023年より現職。 |
社外取締役は、香川明久(香川法律事務所代表弁護士)、沖田芳樹(元警視総監)、西村至(元三井物産執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「歯車及び歯車装置事業」および「工事事業」を展開しています。
■(1) 歯車及び歯車装置事業
バルブ・アクチュエータ、ジャッキ、ミキサー、その他増減速機、自動車用歯車、建設機械用歯車などの製造販売を行っています。インフラ設備や産業機械、自動車など幅広い分野の顧客に製品を提供しています。
収益は、顧客への製品販売による対価が主な源泉です。運営は同社が行っています。
■(2) 工事事業
バルブ・アクチュエータ、ジャッキ、ミキサー、その他増減速機の点検、修理などのメンテナンス業務を行っています。特に発電所などの重要インフラ設備における定期点検工事等を請け負っています。
収益は、メンテナンスサービスの提供や工事請負による対価が主な源泉です。運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は2024年3月期に大きく伸長して90億円台に乗せ、2025年3月期もその水準を維持しています。特筆すべきは利益面で、2024年3月期以降、経常利益率が20%を超える高い収益性を実現しており、安定した高収益体質へと転換していることがうかがえます。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 77.2億円 | 75.7億円 | 75.2億円 | 96.2億円 | 95.6億円 |
| 経常利益 | 4.2億円 | 1.2億円 | 10.0億円 | 21.5億円 | 21.5億円 |
| 利益率(%) | 5.5% | 1.6% | 13.3% | 22.4% | 22.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3.1億円 | 3.0億円 | 6.9億円 | 15.4億円 | 15.5億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比でわずかに減少しましたが、依然として高い水準を維持しています。売上総利益率は40%台後半、営業利益率は22%前後で推移しており、製品競争力の高さやコストコントロールが機能していることが読み取れます。利益率は前期とほぼ同等の高水準をキープしています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 96.2億円 | 95.6億円 |
| 売上総利益 | 44.5億円 | 42.7億円 |
| 売上総利益率(%) | 46.3% | 44.6% |
| 営業利益 | 21.3億円 | 21.1億円 |
| 営業利益率(%) | 22.1% | 22.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給料が5.9億円(構成比27%)、賞与引当金繰入額が0.7億円(同3%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の歯車及び歯車装置事業は、バルブ・アクチュエータの受注増などにより増収増益となりました。一方、工事事業は火力・原子力発電所向けの減少により減収減益となりましたが、依然として高い利益率を確保しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 歯車及び歯車装置事業 | 71.2億円 | 72.1億円 | 12.4億円 | 12.9億円 | 17.9% |
| 工事事業 | 25.0億円 | 23.5億円 | 8.9億円 | 8.1億円 | 34.7% |
| 連結(合計) | 96.2億円 | 95.6億円 | 21.3億円 | 21.1億円 | 22.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
日本ギア工業は、堅調な営業活動により資金を生み出し、事業の成長と安定化を図っています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前利益の増加や売上債権の減少が主な要因となり、大幅に増加しました。一方、投資活動では、将来の事業基盤強化に向けた有形・無形固定資産の取得や定期預金の預け入れにより、資金支出が増加しました。財務活動では、長期借入金の返済や配当金の支払いにより、資金が支出されました。これらの活動の結果、当事業年度末の現金及び現金同等物は増加しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 7.5億円 | 12.9億円 |
| 投資CF | -3.3億円 | -8.8億円 |
| 財務CF | -2.5億円 | -3.8億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「人と暮らしをつなぐ歯車となり、豊かな未来を創造する」を企業理念として掲げています。歯車装置メーカーとして培ってきた固有技術をさらに高度化させ、未来への技術革新に挑戦するリーディングカンパニーとして社会に貢献することを基本方針としています。
■(2) 企業文化
同社は、法令遵守と社会倫理に反することなく業務の適正性を保持することを基本としており、「社内倫理綱領」を制定し、コンプライアンスの徹底を図っています。また、メーカーの基本である「品質、コスト、納期、アフターサービス」の競争力を強化し、他社との競争に打ち勝つことで収益拡大を目指す姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、中長期的に安定した配当を可能とする当期純利益の確保に取り組んでいます。2022年度からの3ヵ年計画において「他社との競争に打ち勝ち、着実な成長をする企業を目指す」を基本方針とし、経常利益、当期純利益を重視した経営を行っています。
■(4) 成長戦略と重点施策
歯車及び歯車装置事業では、バルブ・アクチュエータの新製品開発や電子式の販売強化、海外展開を推進するとともに、ジャッキのコストダウンや機能特化型製品の投入を検討しています。歯車については大型高精度歯車顧客の開拓に注力し、工事事業では発電所の元請からの受注拡大を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、競争力の源泉は「人材」であると認識しており、従業員の多様性と人権を尊重し、多様な働き方を提供できる環境整備に取り組んでいます。人材育成・自己啓発制度の整備や、安全かつ健康的な職場環境の維持向上を通じて、イノベーションの創出と企業価値の向上を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.7歳 | 16.9年 | 7,051,715円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 7.4% |
| 男性育児休業取得率 | 33.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 53.8% |
| 男女賃金差異(正規) | 95.9% |
| 男女賃金差異(非正規) | 51.1% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 災害等の影響について
同社は自然災害や火災等のリスクを抱えています。防火委員会等で防止対策に取り組んでいますが、重大な災害等が発生した場合には、生産活動や物流に支障が生じ、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 特定分野への依存
同社の事業は国内市場に大きく依存しており、特に歯車装置及び工事事業では電力関係の設備投資や公共投資の動向が影響します。また、歯車事業では自動車関連や産業機械関連の特定取引先への依存度が高くなった場合、取引先の経営方針や市場動向が業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 原材料の価格変動の影響について
同社製品は鋳物等の鉄製品や銅合金等の非鉄製品を主な原材料としています。市場価格が大幅に高騰した場合、原材料費の上昇を製品価格へ十分に転嫁できない可能性があり、その場合は業績に影響を及ぼす可能性があります。



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