日本ギア工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本ギア工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本ギア工業は、スタンダード市場に上場する歯車メーカーです。バルブ・アクチュエータやジャッキなどの製造・販売を行う歯車及び歯車装置事業と、それらのメンテナンスを担う工事事業を展開しています。直近の業績は、主力事業の受注増や売上増加により、売上高および経常利益ともに前期を上回る増収増益となっています。


※本記事は、日本ギア工業株式会社の有価証券報告書(第124期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本ギア工業ってどんな会社?


日本ギア工業は、バルブ・アクチュエータなど各種歯車の製造とメンテナンスを一貫して手がける企業です。

(1) 会社概要


同社は1938年に晴山自動車工業として設立され、1954年に現在の日本ギア工業へと商号を変更しました。1961年に東京および大阪証券取引所市場第二部に上場を果たし、その後も米国企業との技術提携や新製品の開発を進めてきました。2019年には東京証券取引所市場第一部銘柄に指定されています。

現在の従業員数は単体で245名体制となっています。筆頭株主は同社製品の販売代理店であり資本関係を持つ成和で、第2位は三田商店です。上位株主には事業上の取引関係がある企業や、信託銀行などの金融機関が名を連ねており、安定した事業基盤を背景とした株主構成となっています。

氏名 持株比率
成和 39.57%
三田商店 7.22%
MSIP CLIENT SECURITIES 3.54%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は寺田治夫氏が務めています。社外取締役比率は60.0%です。

氏名 役職 主な経歴
寺田治夫 代表取締役社長 1980年東京芝浦電気入社。1984年成和入社、1996年同社社長。2015年より現職。
林秀樹 取締役管理部長 1996年税理士登録し開業。2011年キュビズム社長。2015年同社取締役CFOを経て、同年より現職。
植垣淳哉 取締役技術部長 1993年安川電機入社。日本電産サンキョー事業統括部長等を経て、2021年同社入社。2022年より現職。
鶴見肇 取締役経営企画推進室長 1980年東京芝浦電気入社。2013年東芝テクニカルサービスインターナショナル社長を経て、2023年より現職。


社外取締役は、香川明久氏(香川法律事務所代表弁護士)、沖田芳樹氏(元警視総監)、三田義之氏(三田商店社長)、西村至氏(元三井物産執行役員)、森脇仁子氏(税理士法人アイ・タックス代表)、秋山満則氏(守谷商会専務取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、歯車及び歯車装置事業、工事事業を展開しています。

歯車及び歯車装置事業


バルブ・アクチュエータ、ジャッキ、ミキサー、その他各種歯車などを製造・販売しています。主な顧客は火力・原子力発電所や石油・ガスプラント、自動車や産業機械メーカーなど多岐にわたります。

顧客に対する製品の販売を主な収益源としています。事業の運営は同社が行っており、国内外の顧客ニーズに応じた製品展開や新技術の開発を進めています。一部製品の販売については成和などの代理店も活用しています。

工事事業


販売したバルブ・アクチュエータ、ジャッキ、ミキサー、その他増減速機などに付帯するメンテナンスや設置工事を行っています。発電所や各種プラントにおけるインフラ設備の安全稼働を支援しています。

メンテナンスや保守・点検サービス、設置工事の提供に対する対価が主な収益源です。こちらも事業の運営は同社が主体となって担っており、発電所の元請けからの受注を中心に事業を展開しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は、売上高が75億円規模から99億円規模へと拡大傾向にあります。特に経常利益は大幅な改善を見せており、利益率も1%台から25%台へと飛躍的に向上しています。継続的な増収増益により、収益性の高い事業体質への転換が進んでいることが伺えます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 76億円 75億円 96億円 96億円 99億円
経常利益 1億円 10億円 22億円 22億円 25億円
利益率(%) 1.6% 13.3% 22.4% 22.5% 25.4%
当期利益 3億円 7億円 15億円 16億円 18億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に加えて売上原価が減少したことにより、売上総利益および営業利益ともに前期を上回っています。利益率も改善傾向にあり、高付加価値な製品・サービスの提供やコストコントロールが順調に進捗していることが利益増に寄与しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 96億円 99億円
売上総利益 43億円 48億円
売上総利益率(%) 44.6% 48.6%
営業利益 21億円 25億円
営業利益率(%) 22.0% 24.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料が6億円(構成比25%)、賞与引当金繰入額が0.8億円(同3%)を占めています。また、売上原価の内訳としては、材料費が20億円(構成比40%)、労務費が16億円(同31%)となっています。

(3) セグメント収益


歯車及び歯車装置事業は、火力発電所や石油・ガス向けバルブ・アクチュエータなどの受注が増加し、増収増益を牽引しました。工事事業についても発電所の元請けからの受注拡大などにより増収を維持しましたが、利益面では微減となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
歯車及び歯車装置 72億円 75億円 13億円 17億円 22.4%
工事 23億円 24億円 8億円 8億円 32.5%
連結(合計) 96億円 99億円 21億円 25億円 24.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラスで、投資・財務CFがマイナスのため、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業を示す健全型です。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.0%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は84.2%となり、いずれも市場平均を上回っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 13億円 24億円
投資CF -9億円 -6億円
財務CF -4億円 -2億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「人と暮らしをつなぐ歯車となり、豊かな未来を創造する」を企業理念として掲げています。歯車装置メーカーとして長年培ってきたもの造りに関する固有技術をさらに高度化させ、未来への技術革新に挑戦するリーディングカンパニーとして社会に貢献することを経営の基本方針としています。

(2) 企業文化


同社はメーカーの基本である「品質、コスト、納期、アフターサービス」を追求し、他社との競争に打ち勝つことを重視しています。社会的責任を重視した内部統制の構築やコンプライアンスの徹底を図り、企業ガバナンスを強化する文化を持っています。また、人材を競争力の源泉と位置づけ、多様性と人権を尊重しています。

(3) 経営計画・目標


同社は中長期的に安定した配当を可能とする当期純利益の確保を目指しており、目標とする経営指標として「経常利益」および「当期純利益」を重視しています。収益性と効率性の両面から企業体質を強化することで、持続的な成長と社会への貢献を両立させる計画です。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は2025年度からの3カ年計画において、「他社との競争に打ち勝ち、着実な成長をする企業を目指す」ことを基本方針としています。営業・技術・製造の経営資源を継承しつつ、責任の明確化とスピードアップを図ります。海外市場への販売強化や新製品・機能特化型製品の投入を進める戦略です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人材」を競争力の源泉と位置づけ、「自ら考え行動する」「最高品質を提供する」「社会的利益を生み出す」という行動指針を核とした人材戦略を推進しています。次世代リーダーの育成や専門性の深化、多能工化などを通じて、変化に対応できる人材を育成・登用し、組織全体のパフォーマンス向上を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.9歳 17.3年 7,467,999円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.7%
男性育児休業取得率 60.0%
男女賃金差異(全労働者) 51.8%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 91.3%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 50.6%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 災害等の影響

同社は自然災害や火災等のリスクに対し、防火委員会などを通じて防止対策に取り組んでいますが、重大な災害等が発生した場合、生産設備の損壊や操業停止などにより、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 国内特定分野への依存

同社の事業は国内市場に大きく依存しており、特に主要取引先である電力関係の設備投資抑制や定期点検工事の延期、公共投資の予算削減などは、業績に影響を及ぼすリスクとなります。また、歯車事業において自動車や産業機械関連の特定取引先への依存度が高まった場合も同様です。

(3) 原材料の価格変動リスク

同社の製品は主として鋳物等の鉄製品や銅合金等の非鉄製品を原材料として使用しています。原材料の市場価格が大幅に高騰し、複数社での相見積もりや価格交渉等の努力でもコスト上昇を吸収できず、販売価格への転嫁が十分に図れない場合、収益性に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) コンプライアンス・リスク

同社は法令遵守の徹底を目的に社内倫理綱領を制定し、役員や従業員への周知徹底を行っています。しかしながら、万一予期せぬ法令違反等が発生した場合、社会的信用の失墜や経済的制裁を受けるリスクがあり、同社の事業活動や業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。