※本記事は、株式会社ユニバンス の有価証券報告書(第92期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年06月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ユニバンスってどんな会社?
自動車の駆動系ユニットや部品を主力とするメーカーで、独立系ながら日産やスズキ等と強固な関係を持ちます。
■(1) 会社概要
1937年に富士鐵工所として創業し、1963年に株式上場を果たしました。その後、海外展開を積極的に進め、1996年に米国とインドネシア、2011年にタイへ子会社を設立しています。2005年にはアイエス精機と合併し、現在の商号であるユニバンスへ変更しました。近年は電動車向け駆動装置(e-Axle)の生産を開始するなど、次世代自動車技術への対応を進めています。
同社グループは連結従業員1,518名、単体822名の体制で運営されています。筆頭株主は創業家出身の鈴木一和雄氏で、第2位は主要取引先でもあるスズキ、第3位は大同特殊鋼となっており、創業家と事業パートナーが上位を占める安定した株主構成です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 鈴木 一和雄 | 10.64% |
| スズキ株式会社 | 9.30% |
| 大同特殊鋼株式会社 | 9.12% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は髙尾紀彦氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 髙尾 紀彦 | 取締役社長(代表取締役)内部監査室 担当 | 1992年入社。生産統括室長などを経てPT.ユニバンスインドネシア社長・会長を歴任。2024年6月より現職。 |
| 鈴木 一和雄 | 取締役会長(代表取締役) | 1969年入社。1999年社長就任。2011年会長、2020年会長兼社長を経て、2024年6月より現職。 |
| 谷 典幸 | 取締役副会長 | 1998年アイエス精機入社。同社社長を経て2022年6月より現職。 |
| 三好 通生 | 取締役(常勤監査等委員) | 日産自動車、マーレエレクトリックドライブズ副社長などを経て、2021年6月より現職。 |
社外取締役は、石川伸一郎(石川ガスケット代表取締役社長)、森嶋正(公認会計士)、山本あつ美(公認会計士)、松本直樹(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ユニット事業」「部品事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) ユニット事業
四輪駆動装置、トランスミッション、e-Axle(電動車用駆動装置)、産業機械用駆動系コンポーネントなどを製造・販売しています。主な顧客は自動車メーカーや産業機械メーカーであり、北米やアジア市場でも展開しています。
収益は、これらの製品を顧客へ販売することによる代金が中心です。運営は主にユニバンス、ユニバンスINC.(米国)、PT.ユニバンスインドネシア、ユニバンスタイランドCO.,LTD.が行っています。
■(2) 部品事業
自動車用駆動系部品の製造・販売を行っています。トランスファーやトランスミッションに使用される各種ギヤやシャフトなどの構成部品を手掛け、高い加工技術を活かした製品を提供しています。
収益は、製品の販売代金から得ています。運営はユニバンス、株式会社遠州クロム、株式会社富士部品製作所、および海外製造子会社が担っています。
■(3) その他
上記セグメントに含まれない事業として、物流サービスや工場附帯サービスを行っています。
収益は、物流業務や洗浄業務などのサービス対価です。運営は富士協同運輸株式会社や株式会社ウエストレイク(2025年4月に合併し株式会社Kサービスへ変更)などが担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は400億円台後半から500億円台へと緩やかに拡大傾向にあります。利益面では、2021年3月期に赤字を計上した後、黒字回復を果たしています。直近の2025年3月期は増収ながら経常利益は横ばい圏内で推移しました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 462億円 | 491億円 | 486億円 | 528億円 | 539億円 |
| 経常利益 | -3億円 | 33億円 | 11億円 | 45億円 | 44億円 |
| 利益率(%) | -0.5% | 6.7% | 2.3% | 8.6% | 8.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -7億円 | 37億円 | 18億円 | 19億円 | 25億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加しましたが、売上原価も増加しており、売上総利益率は18%台で安定しています。営業利益は減少し、営業利益率は低下しました。販管費の増加などが利益を圧迫した形となっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 528億円 | 539億円 |
| 売上総利益 | 97億円 | 97億円 |
| 売上総利益率(%) | 18.4% | 18.1% |
| 営業利益 | 44億円 | 40億円 |
| 営業利益率(%) | 8.3% | 7.5% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が27億円(構成比47%)、その他経費が19億円(同32%)を占めています。売上原価の構成比は約82%です。
■(3) セグメント収益
ユニット事業は、北米向けの販売増や円安効果により増収増益となりました。一方、部品事業は、日本拠点での需要鈍化や労務費・エネルギーコストの上昇により減収となり、セグメント損失(赤字)を計上しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ユニット事業 | 341億円 | 355億円 | 35億円 | 42億円 | 11.8% |
| 部品事業 | 186億円 | 184億円 | 9億円 | -2億円 | -1.0% |
| その他 | 0.4億円 | 0.3億円 | 0.2億円 | 0.1億円 | 27.9% |
| 調整額 | -3億円 | -3億円 | 0.1億円 | 0.1億円 | - |
| 連結(合計) | 528億円 | 539億円 | 44億円 | 40億円 | 7.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 66億円 | 72億円 |
| 投資CF | -21億円 | -23億円 |
| 財務CF | -30億円 | -21億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は59.3%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「わたくしたちは、人間尊重をもとに、たえまない革新を通じ、人々の幸せづくりに貢献します」という企業理念を掲げています。駆動系製品の専門メーカーとして魅力ある商品を創造し、事業活動を通じて社会課題を解決することで、産業界の発展と国際社会への貢献を目指しています。
■(2) 企業文化
創業の精神である「常に今よりも高きものに」を重視し、常にお客様第一で最適な製品を提供する姿勢を持っています。激化する事業環境において、挑戦と失敗からの学びを通じて成長することや、人間尊重を基盤とした企業活動を行うことを大切にする文化があります。
■(3) 経営計画・目標
Vision2030として「ものつくりを通じたことつくりで社会に貢献する」を掲げ、2030年に向けた中長期的な企業価値向上を目指しています。また、2030年度にはカーボンハーフ(2012年度比CO2排出量50%削減)、2050年度にはカーボンニュートラル達成を目標としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「既存事業領域での競争力向上と事業の拡大」「新規事業の創造」「企業基盤の強化」の3点を重点課題としています。特に、既存資産の有効活用によるものつくり競争力の向上や、市場の困り事を解決する新たな提供価値の事業化、AI活用によるデータドリブン経営の推進などに注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「目的と能力」の適合を基にした人材マネジメントを強化し、個々の能力を最大限発揮できる環境づくりを推進しています。性別やライフステージに関わらない両立支援、多様性を活かした採用・登用、定年後再雇用制度の柔軟化などにより、社員が納得感を持って働ける仕組みの構築に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 44.1歳 | 20.2年 | 6,443,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | - |
| 男性育児休業取得率 | 61.5% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 70.5% |
| 男女賃金差異(正規) | 73.9% |
| 男女賃金差異(非正規) | 95.7% |
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒採用における女性比率(21.1%)、新卒採用における外国人比率(47.4%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 自動車部品業界の構造変化と電動化
気候変動対応として自動車業界で電動化が進み、市場ニーズが多様化しています。これに伴い、既存商品の販売が低迷・縮小する可能性があります。同社は市場動向を捉え、ソリューションとなる商品・技術開発を進めて適応を図っています。
■(2) 経済情勢の変動
製品は北米、日本、アジア等へ展開しており、各国の経済・政治動向や為替変動の影響を受けます。世界的な物価高や中国経済の減速、米国の通商政策などが不透明要因です。生産とサプライチェーンの柔軟性向上やコミットメントライン契約による資金確保で対応しています。
■(3) 製品品質とリコール
品質マネジメントシステムに基づき管理体制を整備していますが、リコールや品質不祥事が発生した場合、多額のコスト発生や社会的信用の失墜により、業績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。品質保持を最優先とし、継続的な改善に取り組んでいます。
■(4) 原材料・部品の調達とサプライチェーン
原材料や部品の多くを外部から調達しているため、世界的な原材料価格高騰や取引先の業績悪化、自然災害等により供給が滞るリスクがあります。取引先との信頼関係構築やサプライチェーンの競争力向上により、調達リスクの軽減を図っています。



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