タチエス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

タチエス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場する独立系自動車シートメーカーです。自動車用座席および座席部品の製造販売をグローバルに展開しています。直近の業績は、売上高が前期比2.6%減の2,854億円となる一方、営業利益は同33.6%増の96億円、親会社株主に帰属する当期純利益は同108.6%増の113億円と、減収増益でした。


※本記事は、株式会社タチエスの有価証券報告書(第73期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. タチエスってどんな会社?


独立系自動車シートメーカーとして、グローバルに自動車座席システムを提供する企業です。

(1) 会社概要


1954年に立川スプリング製作所の事業拡張に伴い設立され、1986年にタチエスへ商号変更すると同時に東証二部に上場しました。同年、米国に現地法人を設立しグローバル展開を本格化させます。その後、中南米、中国、東南アジアへ拠点を拡大し、2017年にはシート機構部品メーカーのTF-METALを完全子会社化しました。

現在の従業員数は連結10,560名、単体1,226名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位も同様に信託銀行、第3位は外国法人等となっています。特定の親会社を持たない独立系企業として、複数の自動車メーカーと取引を行っています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 14.38%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 4.46%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001 2.99%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.3%です。代表取締役社長兼最高経営責任者は山本雄一郎氏が務めています。社外取締役比率は46.2%です。

氏名 役職 主な経歴
山本 雄一郎 代表取締役社長最高経営責任者最高執行責任者 1997年同社入社。米国現法社長、中国事業担当などを経て2019年社長兼COO就任。2022年より現職。
小 松 篤 司 代表取締役執行役員最高財務責任者 元日産自動車関係会社管理部長。2017年同社入社。経営統括部門長等を経て2022年代表取締役兼執行役員就任。2023年より現職。
伊 藤 孝 男 取締役執行役員 1984年同社入社。武蔵工場長、中国生産担当、日本事業本社社長等を経て2022年取締役兼執行役員就任。2023年より現職。
村 上 聡 謙 取締役執行役員 元日産自動車主管。2016年同社入社。生産・技術部門担当VP等を経て2023年取締役兼執行役員就任。
比 留 間 雅 人 取締役執行役員 1996年同社入社。北米事業本社社長等を経て2025年6月より現職。


社外取締役は、木下俊男(元プライスウォーターハウスクーパースパートナー)、三原秀哲(元長島・大野・常松法律事務所パートナー)、永尾慶昭(元やまびこ代表取締役会長)、筒井さち子(元日立製作所経営戦略統括本部担当本部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」、「北米」、「中南米」、「欧州」、「中国」、「東南アジア」の6つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 日本


同社および国内関係会社において、自動車座席および座席部品の製造を行い、主に国内の自動車メーカーに納入しています。また、同社は商業施設の賃貸も行っています。

自動車メーカーへの製品納入による売上が主な収益源です。運営は主にタチエスが行い、部品製造等は株式会社TF-METAL等の国内関係会社が担当しています。

(2) 北米


北米地域において、自動車座席および座席部品の製造を行い、主に米国内の自動車メーカーに納入しています。営業・開発拠点が地域を統括管理しています。

自動車メーカーへの製品納入による売上が主な収益源です。運営はTACHI-S Engineering U.S.A., Inc.が統括し、同社子会社および関連会社が行っています。

(3) 中南米


中南米地域において、自動車座席および座席部品の製造を行い、主に中南米の自動車メーカーに納入しています。メキシコやブラジル等に拠点を有しています。

自動車メーカーへの製品納入による売上が主な収益源です。運営はTACHI-S Engineering Latin America, S.A. de C.V.が統括し、Industria de Asiento Superior, S.A. de C.V.等の子会社が行っています。

(4) 欧州


欧州における営業拠点を通じて事業を行っていましたが、統括会社は2024年12月に清算が結了しています。

当期における売上は限定的です。運営はTACHI-S Engineering Europe S.A.R.L.が行っていましたが、清算されました。

(5) 中国


中国において、自動車座席および座席部品の製造を行い、主に中国内の自動車メーカーに納入しています。営業・開発拠点が統括し、開発専門の会社も有しています。

自動車メーカーへの製品納入による売上が主な収益源です。運営は泰極愛思(中国)投資有限公司が統括し、浙江泰極信汽車部件有限公司等の子会社が行っています。

(6) 東南アジア


東南アジア地域において、主に自動車座席および座席部品の製造を行い、主に同地域内の自動車メーカーに納入しています。

自動車メーカーへの製品納入による売上が主な収益源です。運営はTACHI-S (Thailand) Co., Ltd.が統括し、その他の子会社および関連会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の業績を見ると、売上高は第72期まで増加傾向にありましたが、直近の第73期では微減となりました。一方、利益面では第69期、第70期に損失を計上していましたが、第71期以降は黒字化し、経常利益および当期利益ともに回復傾向にあります。特に直近では利益率が改善しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,985億円 2,064億円 2,434億円 2,929億円 2,854億円
経常利益 -73億円 -35億円 20億円 88億円 108億円
利益率(%) -3.7% -1.7% 0.8% 3.0% 3.8%
当期利益(親会社所有者帰属) -76億円 -29億円 87億円 59億円 108億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高は減少したものの、売上原価の減少により売上総利益は増加し、利益率が改善しています。販売費及び一般管理費も減少し、営業利益および営業利益率は前期間と比較して向上しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2,929億円 2,854億円
売上総利益 284億円 298億円
売上総利益率(%) 9.7% 10.4%
営業利益 72億円 96億円
営業利益率(%) 2.5% 3.4%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が65億円(構成比32%)、発送運賃が29億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の業績を見ると、日本セグメントは減収ながら大幅な増益を達成しています。中南米セグメントは増収となりましたが減益でした。北米および中国セグメントは営業損失を計上しています。東南アジアセグメントは増収増益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
日本 1,251億円 1,155億円 34億円 68億円 5.9%
北米 546億円 438億円 -10億円 -1億円 -0.1%
中南米 912億円 1,037億円 40億円 30億円 2.9%
欧州 0億円 0億円 2億円 -1億円 -435.7%
中国 191億円 182億円 6億円 -6億円 -3.3%
東南アジア 30億円 41億円 0.4億円 6億円 14.1%
調整額 -221億円 -214億円 -0.2億円 -0.4億円 -
連結(合計) 2,929億円 2,854億円 72億円 96億円 3.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 184億円 98億円
投資CF -21億円 40億円
財務CF -134億円 -93億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は56.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「人と社会と共生し快適で豊かな生活空間を創造し続けることで人々を笑顔にする」をコーポレートビジョンとして掲げています。このビジョンの実現を通じてステークホルダーの期待に応え、持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社には創業以来受け継がれている社是「互譲協調」があります。これは「人と人との和」を大切にし、思いやり・助け合いの精神の下、使命感と自責心をもって高い目標を達成することで社会や社業に貢献する姿勢を意味しています。この精神に基づき、「選ばれ続ける企業」となることを目指しています。

(3) 経営計画・目標


2027年度を最終年度とする「新中期経営計画TVE Wave2 2027」において、営業利益の更なる引き上げと資本効率の向上に取り組んでいます。2027年度の財務目標は以下の通りです。

* 営業利益率:4.5~5%レベル
* ROIC:8%
* ROE:10%

(4) 成長戦略と重点施策


2025年度から2030年度を飛躍の期間と位置づけ、継続的な収益改善と共に「深化」「進化」「新化」の3つのシンカによる成長を図ります。また、2030年ビジョンとして、イノベーションによる提供価値の変革や社会課題への対応を通じたサステイナブル社会への貢献を掲げています。

* イノベーションと事業を通じた社会課題への対応
* サステイナブル社会の実現への貢献と信頼に基づく事業運営
* 価値創造に向け自律的に行動できる人財と風土の醸成

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


従業員一人ひとりの自主自立を尊重し、成長の場を提供することを社会的責任と考えています。多様な個性や能力を生かせる組織づくりを目指し、女性活躍推進やグローバル人財の採用に取り組んでいます。また、全社教育、階層別教育、部門別教育の三本柱による教育体系を整備し、次世代リーダーや海外キーパーソンの育成を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 39.0歳 14.5年 6,081,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 3.9%
男性労働者の育児休業取得率 58.3%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 73.2%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) 73.5%
労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) 102.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用における女性比率(22.7%)、学卒採用における外国人比率(35.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 業績変動


同社グループは特定の自動車メーカー系列に属さず複数のメーカーと取引していますが、各社の評価や採用車種の販売動向、新車投入時期により業績が影響を受ける可能性があります。また、メーカーの発注方針変更や生産調整、工場再編なども業績に影響します。さらにグローバル展開に伴う為替変動リスクもあります。

(2) 新製品開発力


グローバル・シート・システム・クリエーターとしての地位確立に向け、長期的視野で研究開発を行っています。しかし、ユーザーやメーカーの変化を予測できず、魅力ある新製品をタイムリーに開発・提供できない場合、将来の成長や収益性が低下し、投下資金負担が業績や財務に影響を及ぼす可能性があります。

(3) グローバル展開


自動車メーカー各社のグローバル展開に追従する必要性がありますが、生産拠点設置にあたっては、予期しない法規や税制の変更、テロ、戦争、その他の要因による社会的混乱等により、事業遂行に問題が生じる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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