タチエス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

タチエス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

タチエスはプライム市場に上場し、独立系の自動車用シートシステムクリエーターとして国内外の自動車メーカーに製品を提供しています。直近の業績では、売上高は減少したものの、収益構造の改善により営業利益・経常利益ともに増加し、増益を達成しました。グローバル展開と次世代シートの開発に注力しています。


※本記事は、株式会社タチエスの有価証券報告書(第74期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. タチエスってどんな会社?


自動車用座席および座席部品の開発から製造・販売までをグローバルに展開する独立系部品メーカーです。

(1) 会社概要


1954年に立川スプリングとして設立され、自動車座席部品の製造を開始しました。1986年にタチエスへと商号を変更し、東京証券取引所市場第二部へ上場しました。その後、米国やメキシコ、中国などに拠点を設立してグローバル展開を加速し、2022年には東証プライム市場へ移行しました。

同社グループは連結で8,790名、単体で1,264名の従業員を擁しています。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位も同様に信託業務を行う日本カストディ銀行です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 14.49%
日本カストディ銀行(信託口) 4.22%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001(常任代理人 みずほ銀行決済営業部) 3.14%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.3%です。代表取締役社長最高経営責任者最高執行責任者は山本雄一郎氏が務めています。

氏名 役職 主な経歴
山本雄一郎 代表取締役社長最高経営責任者最高執行責任者 1997年入社。米国法人の社長や中国事業担当などを歴任し、2019年より現職。
小松篤司 代表取締役執行役員最高財務責任者 日産自動車での海外事業や経理・戦略部門を経て2017年入社。2023年より現職。
伊藤孝男 取締役執行役員 1984年入社。工場長や中国事業の生産担当などを経て、2023年より現職。
村上聡謙 取締役執行役員 日産自動車での製品開発を経て2016年入社。先進開発技術などを担い2023年より現職。
比留間雅人 取締役執行役員 1996年入社。プログラムマネジメント部門などを経て、2025年より現職。


社外取締役は、三原秀哲(弁護士)、木下俊男(公認会計士)、永尾慶昭(元やまびこ社長)、筒井さち子(元日立製作所担当本部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「北米」「中南米」「中国」「東南アジア」の各事業を展開しています。

日本


同社は、自動車用座席および座席部品を製造し、主に国内の自動車メーカーなどの得意先に納入しています。また、同社は商業施設の賃貸事業も行っています。
運営は主に同社および関係会社のTF-METALなどが行っており、自動車メーカーへの製品販売を通じた売上が主な収益源となっています。

北米


北米事業では、自動車座席ならびに座席部品を製造し、主に米国内の自動車メーカーに対して製品を納入しています。
当事業の統括はTACHI-S Engineering U.S.A., Inc.が担い、同社の子会社であるTACHI-S Automotive Seating U.S.A., LLCなどが製品販売による収益を得ています。

中南米


中南米地域における自動車座席ならびに座席部品の製造・販売事業であり、メキシコやブラジルなどの現地自動車メーカーに製品を納入しています。
開発拠点であるTACHI-S Engineering Latin America, S.A. de C.V.が管理統括を担い、Industria de Asiento Superior, S.A. de C.V.などが製品を販売し収益を上げています。

中国


中国事業では、自動車座席ならびに座席部品を製造し、中国国内の自動車メーカーなどの得意先に対して製品を納入しています。
泰極愛思(中国)投資有限公司が営業・開発拠点の統括を行い、泰極愛思(鄭州)汽車座椅研発有限公司などが開発を担い、製品販売によって収益を獲得しています。

東南アジア


東南アジア事業では、主に自動車座席ならびに座席部品を製造し、東南アジア圏内の得意先に対して製品を納入しています。
運営は主にTACHI-S Automotive Seating (Thailand) Co., Ltd.などの子会社および関連会社が行い、製品の販売を通じて収益を上げています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は2,000億円から2,900億円台の間で推移しています。経常利益は一時赤字を計上したものの、その後は着実に回復し、直近では138億円の黒字を達成するなど、収益性の改善が進んでいます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2064億円 2434億円 2929億円 2854億円 2690億円
経常利益 -35億円 20億円 88億円 108億円 138億円
利益率(%) -1.7% 0.8% 3.0% 3.8% 5.1%
当期利益(親会社所有者帰属) -29億円 87億円 59億円 108億円 133億円

(2) 損益計算書


売上高は減少したものの、売上総利益と営業利益は増加しており、収益性の改善が確認できます。営業利益率も向上しており、より効率的な事業運営へと転換しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2854億円 2690億円
売上総利益 298億円 318億円
売上総利益率(%) 10.4% 11.8%
営業利益 96億円 116億円
営業利益率(%) 3.4% 4.3%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が61億円(構成比30%)、発送運賃が27億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


日本の売上高が減少していますが、東南アジアで大幅な増収増益を達成しています。また、北米や中国の事業において営業損益が黒字転換しており、海外セグメントの収益性が全体的に向上しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
日本 1155億円 1086億円 68億円 62億円 5.7%
北米 438億円 414億円 -0.7億円 5億円 1.2%
中南米 1037億円 1037億円 30億円 23億円 2.3%
欧州 0.1億円 - -0.6億円 - -
中国 182億円 90億円 -6億円 16億円 18.0%
東南アジア 41億円 63億円 6億円 10億円 16.5%
連結(合計) 2854億円 2690億円 96億円 116億円 4.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のパターンを示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 98億円 136億円
投資CF 40億円 -36億円
財務CF -93億円 -124億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は61.6%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「人と社会と共生し快適で豊かな生活空間を創造し続けることで人々を笑顔にする」をコーポレートビジョンとして掲げています。このビジョンの実現を通じてステークホルダーの要請に応え、持続可能な社会の実現に貢献することを目的に日々の活動に取り組んでいます。

(2) 企業文化


同社には、創業以来脈々と受け継がれている基本的な価値観として、社是である「互譲協調」があります。「人と人との和」を大切にし、思いやりや助け合いの精神の下、使命感と自責心をもって課題解決に取り組み、そこから得られる信頼をベースに選ばれ続ける企業となることを目指しています。

(3) 経営計画・目標


2025年度から2027年度までの中期経営計画「TVE Wave2 2027」において、営業利益のさらなる引き上げと資本効率の向上を基本方針として掲げています。

* 営業利益率:4.5~5%レベル
* ROIC:8%
* ROE:10%
* 1株あたりの下限配当額:103.8円

(4) 成長戦略と重点施策


自動車業界の電動化・知能化に向けた構造転換が進む中、同社は3つの「シンカ」を推進しています。現事業である自動車シート事業を深く「深化」させて収益力を高め、その収益を進む「進化」や新しい「新化」へ投資することで、事業ポートフォリオの拡大と成長を目指しています。社会課題の対応を通じたサステナブル社会の実現も活動の基盤に置いています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、従業員一人ひとりの自主自立の思想・行動を尊重するとともに、仕事を通じて成長の場を提供することが社会的責任であると考えています。従業員の人格・個性と多様性を尊重し、安全で働きやすい環境を確保することで、企業と従業員がともに成長できる、活力と働きがいのある職場づくりを進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 38.9歳 14.6年 6,217,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.5%
男性育児休業取得率 64.2%
男女賃金差異(全労働者) 71.6%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 73.6%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 95.2%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用における女性比率(38.6%)、学卒採用における外国人比率(26.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 業績変動リスク


特定の自動車メーカーの系列に属さず複数のメーカーと取引を行っていますが、自動車メーカー各社の市場での評価や新型車種の投入時期、発注方針の変更、生産調整等により、同社の業績が影響を受ける可能性があります。

(2) 新製品開発力のリスク


技術力とコスト競争力に裏打ちされた地位の確立を目指し研究開発を行っていますが、顧客のニーズ変化を十分に予測できず、魅力ある新製品をタイムリーに提供できない場合、将来の成長や収益性が低下する可能性があります。

(3) グローバル展開に伴うリスク


自動車メーカーのグローバル展開に追従し、各地域に生産拠点を設けていますが、予期しない法規や税制の変更、地政学リスクの高まり等により、サプライチェーンや物流の混乱が生じ、事業遂行に支障をきたす可能性があります。

(4) 品質問題のリスク


予防体制や危機管理体制を構築し、市場クレームの分析や対策を行っていますが、万一同社製品の欠陥により事故等が発生したり、製品の回収が行われたりした場合には、同社グループの社会的信用や業績に影響が及ぶ可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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