フジオーゼックス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フジオーゼックス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フジオーゼックスは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、主にエンジンバルブ等の自動車部品製造事業を展開する企業です。直近の業績では、国内外での販売増加や為替差益の計上などにより増収増益を達成しており、堅調な推移を見せています。新規事業領域の拡大にも注力し、さらなる成長を目指しています。


※本記事は、フジオーゼックスの有価証券報告書(第98期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. フジオーゼックスってどんな会社?


フジオーゼックスは、エンジンバルブ等を中心とした自動車部品の製造・販売をグローバルに展開する企業です。

(1) 会社概要


同社は1951年に園池バルブとして設立され、1992年にフジオーゼックスへ商号変更しました。1994年に東京証券取引所市場第二部へ上場を果たしています。近年は、2023年にマルヨシ製作所、2024年にピーアンドエムをM&Aにより連結子会社化するなど、新規事業領域の拡大を積極的に進めています。

現在の従業員数はグループ全体で1,261名、単体で544名となっています。筆頭株主は特殊鋼の製造販売を手掛ける親会社の大同特殊鋼で、第2位は同じく親会社グループである大同興業です。親会社グループとの強固な連携のもと、安定した事業基盤を構築しています。

氏名 持株比率
大同特殊鋼 47.90%
大同興業 5.51%
ジェイアンドエス保険サービス 3.33%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.0%です。代表取締役社長執行役員は杉江郁夫氏が務めています。社外取締役は4名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
杉江郁夫 代表取締役社長執行役員 1988年大同特殊鋼入社。同社常務執行役員機能製品事業部長等を経て、2025年6月より現職。
浜田章宏 取締役執行役員 1984年同社入社。取締役製造部長、インドネシア子会社社長等を経て、2020年1月より現職。
海野信一 取締役執行役員 1990年同社入社。メキシコ子会社取締役工場長、静岡工場長等を経て、2025年6月より現職。
岩本順司 取締役執行役員 1991年大同特殊鋼入社。同社人事部長等を経て同社に入社後、2025年6月より現職。
茨木徹 取締役執行役員 1991年同社入社。人事総務部長等を経て、2025年6月より現職。
山下敏明 取締役 1986年大同特殊鋼入社。同社常務執行役員等を経て2020年6月より同社取締役。


社外取締役は、飯塚嘉津美氏(元静岡銀行本店営業部長)、山田剛己氏(公認会計士事務所代表)、川﨑健司氏(元富士電気化学副社長CFO)、東島香織氏(しずぎんハートフル社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「自動車部品製造事業」および「その他」事業を展開しています。

自動車部品製造事業


エンジンバルブ、バルブシート、コッタ、ローテータ、リテーナ、機械等の製造、販売を行っています。国内外の自動車メーカーや関連企業などを主要な顧客としています。

顧客への製品販売や技術供与などから収益を得ています。運営は同社のほか、子会社の富士气門(広東)有限公司、PT. FUJI OOZX INDONESIA、FUJI OOZX MEXICO等が担っています。

その他


ファクトリーオートメーション機器等の精密部品や、リチウムイオン電池等に使用されるセパレータフィルムの製造用金属ロール、シャフト等の金属製品・部品を製造、販売しています。

製造装置メーカー等への製品販売から収益を得ています。主に子会社のマルヨシ製作所およびピーアンドエムが事業の運営を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績を見ると、売上高は一時的な落ち込みがあったものの、その後は右肩上がりで成長を続け、最新期には291億円に達しています。経常利益も売上拡大に伴い増加傾向にあり、堅調な収益性を維持しています。当期純利益は特別要因等の影響で増減がありますが、安定的な黒字を確保しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 223億円 216億円 234億円 255億円 291億円
経常利益 18億円 11億円 19億円 23億円 27億円
利益率(%) 8.0% 4.9% 8.2% 9.2% 9.4%
当期純利益 9億円 7億円 11億円 26億円 20億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し規模の拡大が進んでいますが、売上総利益率はほぼ横ばいで推移しています。一方で、増産対応に向けた費用の増加や労務費、資材価格の高騰などの影響により、営業利益および営業利益率は低下しており、コスト管理が今後の課題となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 255億円 291億円
売上総利益 61億円 68億円
売上総利益率(%) 23.9% 23.5%
営業利益 26億円 25億円
営業利益率(%) 10.2% 8.6%


販売費及び一般管理費のうち、報酬及び給料手当が13億円(構成比30%)、荷造運搬費が11億円(同25%)を占めています。

(3) セグメント収益


自動車部品製造事業は、北米向けの販売が大幅に増加したことなどに牽引され、前期から順調に売上を伸ばしています。その他セグメントについても、新規M&Aによる連結子会社化の効果が寄与し、大幅な増収を達成しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
自動車部品製造事業 247億円 279億円
その他 8億円 11億円
連結(合計) 255億円 291億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 29億円 50億円
投資CF -27億円 -21億円
財務CF -8億円 -31億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は83.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は経営理念として、「技術を極め、顧客の高い満足と強い信頼を頂く商品を提供する」「地球環境を守り、企業責任を全うし、社業を通じて社会に貢献する」「世界を視野に高い目標に挑戦し、企業の発展と個人の成長を実現する」の3つを掲げています。ものづくりを本業とするメーカーとして、世界最高の体制構築と顧客満足の最大化を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「個人を尊重し、相手の立場で考え、意欲・能力を最大限に発揮することで、世界に飛躍する製品・技術・人を創造することに挑戦する」という価値観を重んじています。また、スローガンとして「自分のためにチャレンジしよう。皆のために助け合おう(個人の成長=会社の成長)」を掲げ、従業員の主体的な成長を支援する文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


2030年のあるべき姿として「The Best Survivor」をスローガンに掲げ、自動車部品事業におけるグローバルシェアを現状の8%から12%に拡大することで生き残りを図り、同時に新規事業で売上高100億円体制を確立することを目標としています。

* グローバルシェア:12%(2030年)
* 新規事業売上高:100億円(2030年)
* 株主への利益還元:総還元性向40%、株主資本配当率1.7%を目安

(4) 成長戦略と重点施策


同社は既存事業の収益力強化と新規事業の拡大を両輪としています。自動車部品事業では、電気自動車の普及鈍化とハイブリッド車の需要再評価を背景に「残存者利益」を獲得し、シェア拡大を図ります。また、カーボンニュートラル対応の新技術確立を推進するほか、M&Aによりシナジーを見込める企業への投資を積極的に検討し、次代を担う新たな収益の柱を育成します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人材を最も重要な経営資本と位置付け、事業戦略と連動した人的資本経営を推進しています。DXや生産技術、品質管理等の専門人材の確保・育成に注力するとともに、多様な人材が能力を最大限発揮できるよう、階層別・専門別教育やリスキリングへの投資を強化しています。柔軟な働き方の推進により、従業員エンゲージメントの向上にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 39.5歳 15.3年 7,034,000円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.1%
男性育児休業取得率 73.7%
男女賃金差異(全労働者) 61.1%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 70.2%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 82.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、正社員女性比率(単体10.7%、連結19.2%)、障がい者雇用定着率(91%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 自動車市場の電動化シフトに伴うリスク


同社の主軸製品であるエンジンバルブは内燃機関向けの部品であるため、電気自動車(EV)等への移行が急速に進展し内燃機関車の生産台数が大幅に減少した場合、主力製品に対する需要が減少し、売上高および収益性が著しく低下するリスクがあります。

(2) 新製品の開発に関するリスク


市場競争力を維持・向上させるため次世代の新製品開発を推進していますが、開発遅れや技術的課題の発生等により他社に対する競争優位性が低下し、顧客要求に応えられないことによる受注機会の喪失等が業績に影響を与えるリスクがあります。

(3) 原材料およびエネルギー価格の変動に関するリスク


主要原材料である鋼材の価格が大幅に高騰した際、販売先への価格転嫁の遅れ等により経営に影響を与えるリスクがあります。また、世界情勢を受けた電力等エネルギー価格の急激な上昇が製造原価を押し上げるリスクが存在します。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。