フジオーゼックス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フジオーゼックス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する自動車部品メーカー。自動車用エンジンバルブの製造・販売を主力とし、国内および海外に拠点を展開しています。2025年3月期は、自動車部品製造事業での販売増加や新規子会社の連結化により増収となり、経常利益も増益となりましたが、税負担等の影響で当期純利益は減益となりました。


※本記事は、フジオーゼックス株式会社 の有価証券報告書(第97期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. フジオーゼックスってどんな会社?


自動車用エンジンバルブの専門メーカーとして、世界的なシェア拡大と新規事業の育成に取り組む企業です。

(1) 会社概要


1951年に園池バルブとして設立し、1953年に大同製鋼(現大同特殊鋼)が資本参加しました。1992年に現社名へ変更し、1994年に株式を上場しました。その後、中国、インドネシア、メキシコに製造・販売拠点を設立してグローバル展開を加速し、2024年にはピーアンドエムを完全子会社化しています。

連結従業員数は1,246名、単体では550名です。筆頭株主は親会社で特殊鋼メーカーの大同特殊鋼であり、第2位は同社の子会社である大同興業です。親会社グループとの連携を強みとしつつ、自動車部品以外の新規事業領域の拡大も進めています。

氏名 持株比率
大同特殊鋼 46.17%
大同興業 5.31%
ジェイアンドエス保険サービス 3.21%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.0%です。代表取締役社長執行役員は辻本 敏氏です。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
辻本 敏 代表取締役社長執行役員 大同特殊鋼入社後、技術企画部長、常務取締役研究開発本部長などを経て2018年6月より現職。
市川 修 常務取締役執行役員 大同特殊鋼入社、タイ現地法人社長、同社特殊鋼事業部営業部長などを経て2018年6月より現職。
藤川 伸二 常務取締役執行役員 同社入社、総務部長、国内事業本部長などを経て2022年6月より現職。
浜田 章宏 取締役執行役員 同社入社、製造部長、インドネシア現地法人社長、技術本部長などを経て2020年1月より現職。
福岡 聡 取締役執行役員 同社入社、中国現地法人総経理、経営企画部長などを経て2024年4月より現職。
山下 敏明 取締役 大同特殊鋼入社、自動車ビジネスユニット長、代表取締役副社長などを経て2020年6月より現職。
刀根 清人 取締役(常勤監査等委員) 大同特殊鋼入社、同社海外事業本部長などを経て2020年6月より現職。
竹鶴 隆昭 取締役(監査等委員) 大同特殊鋼入社、常務執行役員などを経て2020年6月より現職。


社外取締役は、飯塚嘉津美(元静銀モーゲージサービス社長)、山田剛己(公認会計士)、川﨑健司(元FDK副社長CFO)、東島香織(しずぎんハートフル社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「自動車部品製造事業」および「その他」事業を展開しています。

**(1) 自動車部品製造事業**
主に自動車エンジン用のバルブ、バルブシート、コッタ、ローテータ、リテーナ等のエンジン部品や機械設備の製造・販売を行っています。自動車メーカー等を主要な顧客とし、環境対応や燃費向上に貢献する製品を提供しています。

製品の販売により収益を得ています。運営は主にフジオーゼックスが行い、海外では中国の富士气門(広東)有限公司、インドネシアのPT. FUJI OOZX INDONESIA、メキシコのFUJI OOZX MEXICO, S.A. DE C.V.などが製造・販売を担っています。

**(2) その他**
リチウムイオン電池等に使用されるセパレータフィルム製造装置用の金属ロールやシャフト、およびファクトリーオートメーション機器等の精密部品の製造・販売を行っています。半導体やEVバッテリー製造設備等のメーカーを顧客としています。

製品の販売により収益を得ています。運営は、セパレータフィルム関連部品等を製造するマルヨシ製作所、および精密部品を製造するピーアンドエムが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は概ね増加傾向にあります。利益面では、経常利益が変動しつつも黒字を維持しており、当期は前期を上回りました。自己資本比率は80%を超える高い水準で推移しており、財務基盤は安定しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 191億円 223億円 216億円 234億円 255億円
経常利益 8億円 18億円 11億円 19億円 23億円
利益率(%) 4.3% 8.0% 4.9% 8.2% 9.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 3億円 9億円 7億円 11億円 26億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、売上総利益および営業利益ともに増加しました。売上原価率は改善傾向にあり、利益率の向上に寄与しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 234億円 255億円
売上総利益 49億円 61億円
売上総利益率(%) 21.1% 23.9%
営業利益 16億円 26億円
営業利益率(%) 7.0% 10.2%

(3) セグメント収益


自動車部品製造事業は、国内での新規受注獲得や北米向け販売の増加により増収となりました。その他事業は、新たにピーアンドエムを連結範囲に含めたことにより、売上高が大幅に増加しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
自動車部品製造事業 231億円 247億円
その他 3億円 8億円
連結(合計) 234億円 255億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業(健全型)です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 42億円 29億円
投資CF -16億円 -27億円
財務CF -13億円 -8億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は82.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「技術を極め、顧客の高い満足と強い信頼を頂く商品を提供する」「地球環境を守り、企業責任を全うし、社業を通じて社会に貢献する」「世界を視野に高い目標に挑戦し、企業の発展と個人の成長を実現する」を経営理念として掲げています。

(2) 企業文化


ものづくりを本業とするメーカーとして、生産性、品質、価格、納期の「PQCD」について世界最高の体制構築を目指しています。また、2030年のあるべき姿として「The Best Survivor」をスローガンに掲げ、個人を尊重し、意欲・能力を最大限に発揮することで、世界に飛躍する製品・技術・人を創造することに挑戦する風土があります。

(3) 経営計画・目標


「2026中期経営計画」を策定しており、自動車部品事業の安定収益確保、新規事業領域の育成および拡大、効率経営推進による社会貢献を基本方針としています。2026年度の数値目標として以下を掲げています。
* 売上高:275億円
* 営業利益:27億円
* 売上高営業利益率:10%

(4) 成長戦略と重点施策


自動車部品事業では、国内及び海外拠点の生産体制を見直し、グローバルシェアを拡大させることで生き残りを図るとともに、高機能エンジンバルブの開発・製品化を進めます。新規事業においては、M&Aの活用や子会社での新事業展開により、売上高100億円体制の確立を目指しています。また、ESG経営の一環として、CO2排出量削減や人的資本経営にも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


多様な人材が能力を発揮できるよう、ダイバーシティ&インクルージョンの推進や健康的な職場環境の提供に取り組んでいます。人材育成においては、OJTやOFF-JTによる教育訓練に加え、グローバル人材育成のための海外語学留学制度や自己啓発支援を行っています。また、エンゲージメント向上に注力し、働きやすい環境づくりを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 39.7歳 15.7年 6,702,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
男性育児休業取得率 42.9%
男女賃金差異(全労働者) 60.8%
男女賃金差異(正規雇用) 71.2%
男女賃金差異(パート・有期) 84.0%


※管理職に占める女性労働者の割合については、公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、正社員女性比率(9.1%)、障害者雇用定着率(100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) エンジン車の減少リスク


電気自動車(EV)等の普及によりエンジン車の販売が減少し、主力製品であるエンジンバルブ等の売上が低下する可能性があります。同社は専門部署を設置して保有技術を活用した新規事業の模索や、M&Aを含む事業拡大を検討しています。

(2) 自然災害等のリスク


主要な国内生産拠点である静岡県西部は南海トラフ地震の防災対策強化地域にあり、大規模地震や気候変動による災害が発生した場合、生産活動が停止する可能性があります。BCPの見直しや防災訓練、自家発電設備の導入などの対策を講じています。

(3) グループ事業の失敗リスク


国内外の子会社において、設立や買収から日が浅く収支が安定していない拠点があり、経営上の問題が発生した場合にグループ全体へ影響を及ぼす可能性があります。定期的な報告会議や担当部署による収支・資金繰りの把握を通じて管理を強化しています。

(4) 原材料・エネルギー価格の高騰リスク


原材料である鋼材価格や電力等のエネルギー価格が高騰した場合、製品価格への転嫁が遅れることで業績に悪影響を及ぼす可能性があります。サーチャージ制度の導入や電力会社との個別契約、太陽光発電の活用などで対応しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。