※本記事は、株式会社イクヨ の有価証券報告書(第86期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. イクヨってどんな会社?
自動車用樹脂成型品の製造販売を主力とし、内装・外装部品等を大手自動車メーカー向けに提供する企業です。
■(1) 会社概要
1947年にイクヨ商会として設立され、1959年に樹脂成形品の生産を開始しました。1997年に東京証券取引所市場第二部(現スタンダード市場)へ上場を果たしています。海外展開としては2013年にインドネシア現地法人を設立し、グローバル体制を強化しました。近年では2024年にイクヨトレーディングを設立し、子会社化しています。
連結従業員数は189名、単体では169名体制です。筆頭株主はその他の関係会社である日東、第2位は個人株主です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日東 | 30.70% |
| 酒井 宏修 | 11.10% |
| サンライズオリエンタルキャピタル プライベート・リミテッド ディレクター ゴウ チュウ シン | 10.20% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.0%です。代表取締役社長は孫 峰氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 孫 峰 | 取締役社長(代表取締役) | IBS証券等を経て、アパテックジャパン、アパテックモーターズ、日東の各社代表取締役社長を歴任し現職。 |
| 松本 博 | 取締役 | 同社岡山工場入社後、岡山工場マネージャー、製造事業部厚木工場長、執行役員製造事業部長などを経て現職。 |
| 飯野 英明 | 取締役 | 三菱鉱業セメント(現三菱マテリアル)入社後、IBSコーポレーション等を経て、信栄保険サービス代表取締役社長より現職。 |
社外取締役は、二之湯 智(元国家公安委員会委員長)、雷 海涛(桜美林大学大学院長)、高橋 里沙(NR虎ノ門法律事務所代表弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「自動車部品」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 自動車部品事業
自動車用樹脂成型品の製造および販売を行っています。主な製品として、ドアトリム、フロアコンソール、ピラートリムなどの内装部品や、ラジエターグリル、バンパー、サイドガーニッシュなどの外装部品を提供しており、EV重機や建設機械向け部品も取り扱っています。
収益は、自動車メーカー等への製品販売代金から得ています。運営は主に同社が担っており、インドネシアにおいては現地子会社のPT.IKUYO INDONESIAが製造・販売を行っています。
■(2) その他事業
自動車部品以外の領域における事業を展開しています。具体的には、試作品の製作や自動車機能部品などを取り扱っており、市場ニーズに応じた製品提供を行っています。
収益は、顧客への製品販売等から得ています。運営は同社グループが連携して行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年3月期から2025年3月期までの5期間を見ると、売上高は105億円から177億円へと右肩上がりで成長しています。経常利益は2021年3月期に赤字でしたが、翌期以降黒字化し、2023年3月期と2024年3月期は7億円台で推移しました。直近の2025年3月期は売上高が増加したものの、利益面では減少傾向となっています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 105億円 | 132億円 | 146億円 | 174億円 | 177億円 |
| 経常利益 | -2.6億円 | 3.6億円 | 7.1億円 | 7.1億円 | 0.3億円 |
| 利益率(%) | -2.5% | 2.7% | 4.8% | 4.1% | 0.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -5.2億円 | 3.9億円 | 5.1億円 | 1.9億円 | 1.4億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高は増加していますが、売上総利益および営業利益は減少しています。売上総利益率は13.9%から11.3%へ低下し、営業利益も減少しました。売上拡大の一方で、原価率の上昇や販管費の増加が利益を圧迫している状況が見て取れます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 174億円 | 177億円 |
| 売上総利益 | 24億円 | 20億円 |
| 売上総利益率(%) | 13.9% | 11.3% |
| 営業利益 | 7.1億円 | 0.4億円 |
| 営業利益率(%) | 4.1% | 0.2% |
販売費及び一般管理費のうち、運賃が11億円(構成比58%)、従業員給料及び賞与が2億円(同12%)を占めています。売上原価は売上高の89%を占めています。
■(3) セグメント収益
自動車部品セグメントは売上高が増加しており、事業の柱として安定した規模を維持しています。一方、その他セグメントは小規模ながら売上が計上されています。全体としては自動車部品事業が連結売上の大部分を占める構造となっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 自動車部品 | 174億円 | 177億円 |
| その他 | - | 0.5億円 |
| 連結(合計) | 174億円 | 177億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 21億円 | 8億円 |
| 投資CF | -26億円 | -11億円 |
| 財務CF | 8億円 | 1億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は0.7%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も42.4%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「企業は世の中の幸福に貢献するために存在すべき」という信念のもと、「和して合理主義に徹し 社業の発展を通じ 社会に貢献する」を基本理念としています。長年培った技術と経験を活かし、顧客満足度の高い素材製品の提供を目指すとともに、ステークホルダーへの貢献を通じて企業価値の継続的な向上を図ることを基本方針としています。
■(2) 企業文化
「ステークホルダーの皆様や社会全体との共存共栄を図り、持続可能な社会の実現に積極的に取り組む」というサステナビリティ方針を掲げています。法令順守と誠実な企業活動を実践し、安全で高品質な製品提供に努めるとともに、働きがいと成長を感じられる職場環境の実現に向け、一人ひとりが能力を発揮できる風土づくりに取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
継続的な成長と安定した企業価値の増大を確保するため、客観的な経営指標として「売上高」および「営業利益」を重要視しています。将来にわたって安定的な収益を確保し、厳しい経営環境にも耐え得る筋肉質な経営基盤の構築を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
市場が成熟している自動車用樹脂成型品分野において、中長期的視点から企業価値増大を図るため、品質管理の徹底、海外事業の発展、新事業の創出などに注力しています。中国子会社の買収やインドネシア工場の安定稼働により海外売上を拡大させるほか、M&Aを活用して電動化や軽量化などの成長分野へ参入し、新たな収益源の確保を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
高付加価値製品の開発と安定供給を維持するため、技術力を支える人材の確保と育成を重視しています。若手や中堅社員のスキルアップ、管理職の再教育、ダイバーシティ推進などを通じて、多様性と専門性を兼ね備えた人材基盤の構築を進めています。また、中途採用も含めた幅広い人材の採用に取り組み、新たな価値を生み出す風土の醸成に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.6歳 | 16.5年 | 531万円 |
※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含めています。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定の取引先への依存
自動車部品の製造・販売を主力事業としていますが、主要販売先である三菱自動車工業への売上依存度が約3割となっています。納入先の多様化に努めているものの、同社との取引が大幅に減少した場合には、業績や財政状態に影響が及ぶ可能性があります。
■(2) 製品の原価変動の影響
原材料や半製品を国内外から調達しており、これらは市況変動の影響を受けます。原油関連製品価格の上昇等により仕入価格が高騰した場合、製造工程での原価低減努力にもかかわらず販売価格への転嫁が十分に進まなければ、業績や財政状態に影響を与える可能性があります。
■(3) 海外事業展開のリスク
インドネシアや中国など海外での事業展開を進めていますが、現地の法規制変更、政治・経済情勢の変化、労働争議、テロや戦争等の地政学リスク、感染症の流行などが内在しています。これらのリスクが顕在化した場合、生産活動に支障をきたし、業績等に影響を及ぼす可能性があります。



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