※本記事は、株式会社イクヨの有価証券報告書(第87期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. イクヨってどんな会社?
■(1) 会社概要
1947年に自動車窓用ゴムの製造販売を目的として設立され、1959年に樹脂成形品の生産を開始しました。1997年には東京証券取引所市場第二部に上場を果たしています。近年では、2025年4月に中国の企業を連結子会社化したほか、2026年4月には会社分割により純粋持株会社体制への移行を実施しました。
現在の従業員数は連結で337名、単体で160名となっています。筆頭株主は有価証券の保有等を行う日東で、第2位および第3位の株主は海外の金融機関やファンド等の名義となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日東 | 42.77% |
| BNP PARIBAS SINGAPORE/2SVATE LIMITED(常任代理人 香港上海銀行東京支店) | 22.56% |
| DBS BANK LTD.7001(常任代理人 みずほ銀行決済営業部) | 3.42% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性5名の計11名で構成され、女性役員比率は45.0%です。代表取締役社長は孫峰氏が務めています。取締役8名のうち6名が社外取締役であり、社外取締役比率は75.0%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 孫峰 | 代表取締役社長 | 元アパテックモーターズ代表取締役社長。日東代表取締役。2024年3月より現職。 |
| 永久保真紀 | 取締役 | みずほ銀行等を経て、アパテックモーターズに入社。2026年6月より現職。 |
社外取締役は、高橋里沙(NR虎ノ門法律事務所代表弁護士)、塩見直子(パーソルデジタルベンチャーズ転籍)、坂田繁男(イクヨオートモーティブ取締役)、槙原寛己(東京レジデンシャルCCO)、水野梓(多摩大学大学院教授)、永岡悦美(Y.S LABO代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「自動車部品」および「その他」の事業を展開しています。
■自動車部品
自動車内装および外装の各種装備品、ならびにEV重機や建設機械向けの部品製造・加工・販売を展開しています。三菱自動車工業をはじめとする国内外の自動車メーカーを主要な顧客として製品を供給しています。
収益源は自動車メーカー等からの製品販売代金です。国内では持株会社体制のもとイクヨオートモーティブが中核を担い、海外では中国のKunshan VeriTech Automotive Systems Co.,LtdやインドネシアのPT.IKUYO INDONESIAなどの子会社が生産・販売を行っています。
■その他
Web3(暗号資産・決済プラットフォーム)やフィンテック領域における暗号資産マイニング事業のほか、EV重機事業や太陽光発電の導入を通じた環境貢献型事業など、新規成長領域におけるビジネスを展開しています。
主に暗号資産の運用やマイニングによる収益、ならびにリース取引を通じた賃貸収入などを得ています。事業の運営は同社および子会社のイクヨトレーディングなどが主体となって推進しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は着実に成長を続けており、特に直近の事業年度では大幅な増収を達成しています。利益面では一時期落ち込みが見られたものの、直近では当期純利益が大きく増加し、収益性の回復と成長の加速が確認できます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 132億円 | 146億円 | 174億円 | 177億円 | 301億円 |
| 経常利益 | 4億円 | 7億円 | 7億円 | 0.3億円 | 2億円 |
| 利益率(%) | 2.7% | 4.8% | 4.1% | 0.2% | 0.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 4億円 | 5億円 | 2億円 | 0.4億円 | 28億円 |
■(2) 損益計算書
直近の損益構成を見ると、大幅な増収に伴い売上総利益および営業利益が大きく伸びています。売上総利益率と営業利益率の双方で改善が見られ、本業の稼ぐ力が着実に強化されていることが伺えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 177億円 | 301億円 |
| 売上総利益 | 20億円 | 45億円 |
| 売上総利益率(%) | 11.3% | 14.8% |
| 営業利益 | 0.4億円 | 5億円 |
| 営業利益率(%) | 0.2% | 1.8% |
販売費及び一般管理費のうち、運賃が13億円(構成比34%)、従業員給料及び賞与が6億円(同14%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力事業である自動車部品セグメントにおいて、国内外での安定供給と競争力強化が進んだ結果、売上高が前期比で大幅に増加し、全体の業績を牽引する形となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 自動車部品 | 177億円 | 301億円 |
| その他 | 0.5億円 | 0.5億円 |
| 連結(合計) | 177億円 | 301億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は27.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は40.6%で市場平均を下回っています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 8億円 | 37億円 |
| 投資CF | -11億円 | -49億円 |
| 財務CF | 1億円 | 38億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「和して合理主義に徹し、社業の発展を通じ、社会に貢献する」を社是として掲げています。また、新たな経営指針(MVV)として、Mission(使命)に「確かな品質と技術力を磨き、社員の成長と挑戦を支え、社会に必要とされる価値を創造し続けます」と定め、ステークホルダーとの信頼関係を礎に企業価値の向上を目指しています。
■(2) 企業文化
Value(行動指針)として、「信頼を守り抜く」「変革を生み出す」「やり抜く組織」を共有しています。長年培った確かな品質と技術力という信頼を守り抜きながら、自ら変革を生み出し、社員一人ひとりの成長を支える実行力のある企業体質を築くことを重視して経営を行っています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、変化の激しい事業環境を好機と捉え、全社一丸となって持続的な企業価値の向上に邁進し、次世代産業を支えるグローバル企業となることを目指しています。短期的な目標として以下の数値を掲げています。
* 売上高:302億円
* 経常利益:8億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:33億円
* ROE(自己資本利益率):24.4%
■(4) 成長戦略と重点施策
既存事業の安定・深化と新規領域への挑戦を両立させる「両輪経営」を基本方針としています。主力事業である自動車部品の競争力強化に加え、暗号資産や決済プラットフォームといったWeb3領域、ロボット事業、水素ビジネスなどの新たな成長領域への挑戦を本格化させています。さらに、戦略的アライアンスやM&Aを重要な成長エンジンと位置付け、グローバルな事業拡大と技術獲得を推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「企業の成長は人の成長によって支えられる」との基本的な認識のもと、人材の育成と職場環境の整備を経営の最重要課題に位置付けています。「もっと良くできないか」と主体的に考えられる自律型の人材や、グローバル市場で成果を出し続ける人材の育成を推進しています。また、失敗を恐れずに挑戦できる健全な職場環境の構築や、M&A等で参画した多様な人材を尊重し、一体感を持って共に成長できる組織風土の醸成に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.2歳 | 16.8年 | 6,839,000円 |
※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含めております。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 国内外の経済情勢等の影響
主に国内で事業を展開していますが、関連市場の景気後退が業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、取引先やエンドユーザーの所在する国や地域における政治・経済情勢の変化、インフラの未整備、非常事態などが発生した場合、生産活動に支障を来すリスクがあります。
■(2) 特定の取引先への依存
三菱自動車工業に対する売上実績への依存度が約2割を占めています。製品の納入先の多様化に努めているものの、同社への依存度が高いため、取引が大幅に減少した場合には同社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 製品の原価変動
国内外の複数取引先から原材料や半製品を調達しており、これら購入価格は市況変動の影響を受けます。原油関連製品価格の上昇などに伴う仕入価格の上昇分を、製造工程での原価低減や製品の販売価格へ十分に反映できない場合、収益性に悪影響を及ぼすリスクがあります。



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