ユタカ技研 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ユタカ技研 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場し、ホンダグループの主要サプライヤーとして自動車用排気系・駆動系部品等を製造販売しています。第39期は、中国市場での販売減や北米での労務費増などが響き、連結売上収益は前期比減収、各段階利益も減益となりました。電動化対応や新製品開発への投資を加速させています。


※本記事は、株式会社ユタカ技研 の有価証券報告書(第39期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. ユタカ技研ってどんな会社?


同社は、ホンダグループに属する自動車部品メーカーです。排気システムやトルクコンバータなどの駆動系部品を主力とし、グローバルに事業を展開しています。

(1) 会社概要


1954年創業の高丘技研工業などが合併し、1986年にユタカ技研へ商号変更しました。1995年より米国、中国、アジアへ進出しグローバル体制を構築。2004年にJASDAQへ上場しました。近年は自動車の電動化に対応するため、モーター部品の生産を開始するなど、事業ポートフォリオの変革を進めています。

連結従業員数は4,726名、単体では835名です。筆頭株主は本田技研工業で約70%の株式を保有する親会社であり、第2位は資産管理業務を行う株式会社三菱UFJ銀行、第3位は明治安田生命保険相互会社(常任代理人 株式会社日本カストディ銀行)となっています。

氏名 持株比率
本田技研工業 69.66%
三菱UFJ銀行 1.90%
明治安田生命保険相互会社(常任代理人 日本カストディ銀行) 1.35%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は青島隆男氏です。社外取締役比率は18.2%です。

氏名 役職 主な経歴
青島 隆男 代表取締役社長 1984年プレス技研工業(現同社)入社。中国地域本部長、生産本部長などを経て、2022年6月より現職。
桐山 敏英 専務取締役 1986年プレス技研工業(現同社)入社。北米地域本部長、グローバル新機種統括などを経て、2025年4月より現職。
廣川 功 常務取締役 1987年同社入社。北米地域本部長、開発本部長などを経て、2025年4月より開発・技術統括 新事業・新商品担当として現職。
大間 孝 常務取締役 1993年同社入社。法務室長、事業管理本部長などを経て、2024年4月より事業管理統括 安全環境担当として現職。
鈴木 章平 取締役 1991年同社入社。武漢金豊汽配有限公司総経理、生産本部長などを経て、2024年4月より生産・品質統括 中国担当として現職。
藤田 伸弘 取締役 1998年同社入社。グローバル部品事業本部長を経て、2024年4月より営業・購買統括 アジア担当として現職。


社外取締役は、森田幸光(元静岡県警察刑事部長)、内田優子(税理士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「北米」「アジア」「中国」および「その他」事業を展開しています。

**(1) 日本**
同社および子会社の新日工業株式会社等が、自動車部品(四輪・二輪)および汎用部品を製造しています。四輪部品では排気系や駆動系、二輪部品ではブレーキディスクなどを手掛け、主に親会社およびそのグループ会社へ販売しています。
収益は主に親会社グループへの製品販売による対価です。運営は、同社、新日工業株式会社、株式会社スミレックスが行っています。

**(2) 北米**
海外子会社が自動車部品(四輪)を製造し、主に親会社のグループ会社へ販売しています。主力製品には排気系部品などが含まれます。
収益は親会社グループへの製品販売による対価です。運営は、カーディントン・ユタカ・テクノロジーズ・インコーポレーテッドおよびユタカ・テクノロジーズ・デ・メキシコ・エス・エー・デ・シー・ブイが行っています。

**(3) アジア**
フィリピン、インドネシア、タイ、インドの子会社が、自動車部品(四輪・二輪)を製造し、主に親会社のグループ会社へ販売しています。
収益は親会社グループへの製品販売による対価です。運営は、ピー・ティー・ユタカ・マニファクチャリング・インドネシア、ワイエス・テック(タイランド)カンパニー・リミテッドなどが行っています。

**(4) 中国**
中国の子会社が自動車部品(四輪)を製造し、主に親会社のグループ会社へ販売しています。排気系部品や駆動系部品が主力です。
収益は親会社グループへの製品販売による対価です。運営は、佛山市豊富汽配有限公司および武漢金豊汽配有限公司が行っています。

**(5) その他**
ブラジルの子会社が自動車部品(四輪)を製造し、主に親会社のグループ会社へ販売しています。
収益は親会社グループへの製品販売による対価です。運営は、ユタカ・ド・ブラジル・リミターダが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上収益は2022年3月期から2024年3月期にかけて2,100億円台で推移していましたが、当期は1,792億円へ減少しました。利益面でも、当期は減益となり、利益率は低下傾向にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 1,913億円 2,134億円 2,180億円 2,163億円 1,792億円
税引前利益 38億円 114億円 49億円 120億円 68億円
利益率(%) 2.0% 5.3% 2.3% 5.6% 3.8%
当期利益(親会社所有者帰属) -13億円 45億円 14億円 74億円 45億円

(2) 損益計算書


前期と比較して、売上収益および売上総利益ともに減少しました。営業利益率は5.1%から3.5%へと低下しており、収益性の低下が見られます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 2,163億円 1,792億円
売上総利益 268億円 237億円
売上総利益率(%) 12.4% 13.2%
営業利益 111億円 63億円
営業利益率(%) 5.1% 3.5%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が80億円(構成比46%)、研究開発費が26億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


中国セグメントにおいて、主要顧客からの受注減などにより売上が半減し、大幅な減益となりました。北米は為替効果もあり増収でしたが、労務費増や引当金計上で減益となりました。日本は増収増益を確保しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
日本 421億円 423億円 10億円 14億円 3.2%
北米 652億円 704億円 16億円 12億円 1.7%
アジア 359億円 349億円 33億円 26億円 7.4%
中国 884億円 456億円 50億円 9億円 1.9%
その他 15億円 14億円 4億円 2億円 16.4%
調整額 -168億円 -154億円 -2億円 1億円 -
連結(合計) 2,163億円 1,792億円 111億円 63億円 3.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

ユタカ技研は、地球環境を最優先に配慮した豊かなクルマ社会の創造を目指し、魅力ある商品を的確かつタイミング良く提供することを基本方針としています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前利益や減価償却費及び償却費、営業債権及びその他の債権の減少額による収入が、営業債務及びその他の債務の減少額や預り金の減少及び法人所得税等の支払額による支出を上回ったことにより、減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、新機種投資等に伴う有形固定資産の取得による支出により、増加しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済や配当金の支払により、減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 224億円 38億円
投資CF -31億円 -35億円
財務CF -66億円 -65億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは基本理念の「人間尊重」に基づき、「私たちは、世界的視野に立ち、豊かな創造力で、常にお客様に満足して頂ける魅力ある商品を供給することに全力を尽くす」という社是を実践することにより、社会への貢献を目指しています。

(2) 企業文化


「Clean for the Future」をカンパニースローガンに掲げています。また、Yutakaフィロソフィーに基づき、「社会から信頼され、存在を期待される企業になる」ことを目指し、CSRの取り組みを推進しています。

(3) 経営計画・目標


2030年ビジョンとして「独自技術を強化拡大し、新しい時代に期待される企業となる。」を掲げています。経営上の目標達成状況を判断する重要な指標として、営業利益額を位置付けています。

(4) 成長戦略と重点施策


第15次中期事業計画では、「電動化時代をリードできる柱の創造」「新価値商品の創造」「主幹部品の収益性追求と販路拡大」等を戦略テーマとしています。特に、電動化の基盤確立と新価値商品の仕込み、既存の排気・制動部品事業の収益極大化に注力しています。また、個別優先課題として、主幹部品とモーター部品の販路拡大、海外子会社の体質強化、SDGs対応に取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


2030年ビジョン達成に向け、「“活き活き”と日々行動し、チャレンジを楽しむ人財」をありたい人財像と定義しています。キャリアパス制度の導入や教育制度の刷新などを通じ、従業員のエンゲージメント強化と自己実現の支援を進めています。また、「Yutaka健康宣言」に基づき、従業員の健康づくりやメンタルヘルス対策にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.6歳 19.4年 6,307,410円


※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -%
男性育児休業取得率 43.8%
男女賃金差異(全労働者) 67.4%
男女賃金差異(正規雇用) 71.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 87.9%


※女性管理職比率について、同社(提出会社)は「-」と開示しています(連結子会社の新日工業株式会社は3.6%)。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員採用率(14.3%)、従業員活性度測定(3.22)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場環境の変化


世界各国での景気後退や消費者の価値観の変化に伴う四輪・二輪車需要の減少、電気自動車の台頭による内燃機関車の減少が業績に影響を及ぼす可能性があります。また、売上の多くを依存する本田技研工業グループの販売状況の変化も大きな影響要因となります。

(2) 製品の価格変動


独自の技術による高付加価値製品の開発・生産に努めていますが、国内外の市場における競合他社との競争激化や、強い価格変動圧力等が、同社グループの業績および財務状況に影響を与える可能性があります。

(3) 為替の変動


世界各国で事業を展開し、拠点間で部品を輸出入しているため、為替レートの変動が業績に影響を及ぼす可能性があります。製品価格や原材料費、海外子会社の財務諸表の円換算などにおいて、為替変動が業績や財務状況に影響を与えるリスクがあります。

(4) 貿易リスク


世界各国で生産・販売活動を行い、製品・部品を輸出入しているため、関税率の変動や新たな輸出入規制、規制対象の変更などが生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。現地調達化の促進などでリスク軽減を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。