ミクニ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ミクニ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の燃料噴射システム等の自動車部品メーカーです。二輪・四輪向け製品やガス制御機器、福祉介護機器などを展開しています。直近の連結業績は、売上収益が1,014億円と増収を達成し、親会社株主に帰属する当期純利益も増益となりましたが、経常利益は減益となりました。


※本記事は、ミクニ の有価証券報告書(第103期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ミクニってどんな会社?


自動車やバイクのエンジン部品を主力とする独立系部品メーカーです。福祉介護機器や航空機部品の輸入なども手掛けています。

(1) 会社概要


同社は1923年、合資会社三國商店として創立され、自動車・自転車部品の輸入を開始しました。1936年に工場での生産を開始し、戦後の企業再編を経て1961年に東証二部に上場しました。1991年に現在の社名に変更し、2015年には東証一部へ指定されました。その後、市場区分の見直しに伴い、現在は東証スタンダード市場に上場しています。

2025年3月31日現在、同社グループの従業員数は連結で4,841名、単体で1,315名です。筆頭株主は従業員持株会で、第2位は大手損害保険会社、第3位は大手都市銀行となっており、従業員と安定的な事業パートナーが上位を占めています。

氏名 持株比率
風の会持株会 5.82%
あいおいニッセイ同和損害保険 5.61%
りそな銀行 4.93%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は生田 久貴氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
生田 久貴 代表取締役社長 三菱商事入社後、2001年に同社入社。経営企画・管理本部長などを経て2008年より現職。CEO、COOを兼務。
藤原 清志 取締役専務執行役員 マツダ代表取締役副社長などを経て2023年に同社社外取締役就任。2025年より現職。CIO(チーフイノベーションオフィサー)を兼務。
藤森 聰 取締役常務執行役員 1983年同社入社。米国現地法人社長、モビリティ事業本部長などを経て2019年常務執行役員。CSO(チーフストラテジーオフィサー)を兼務。
大石 敦彦 取締役常務執行役員 1984年同社入社。生産企画センター部長、品質保証本部長などを経て2025年より現職。CMZO、CQO、CDOを兼務。


社外取締役は、山田 秀雄(弁護士)、鈴木 孝男(元三菱ふそうトラック・バス取締役会長)、椎名 茂(マーヴェリック代表取締役)、白石 真澄(関西大学名誉教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「モビリティ事業」「ガステクノ事業」「商社事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) モビリティ事業


四輪車、二輪車、汎用エンジン向けの燃料噴射システム(スロットルボデー、センサ類)やポンプ類、補器類、気化器類などを提供しています。主な顧客は国内外の自動車・二輪車メーカーです。

製品の販売による代金を主な収益源としています。運営は同社およびミクニ アメリカン コーポレーション、ミクニ(タイランド)カンパニーリミテッドなどの海外子会社が行っています。

(2) ガステクノ事業


ガス用立ち消え安全装置、電磁弁、ガス用電動開閉弁などのガス制御機器類を提供しています。安全性が求められる家庭用ガス機器などが主な用途です。

製品の販売による代金を主な収益源としています。運営は同社およびミクニ アメリカン コーポレーション、浙江三国精密機電有限公司などのグループ会社が行っています。

(3) 商社事業


航空宇宙用機器・部品・材料の輸入販売や、ゴルフ場向けの芝刈機、ゴルフカートなどの芝管理機械類を取り扱っています。

商品の販売による代金を主な収益源としています。運営は株式会社ミクニエアロスペース、株式会社ミクニグリーンサービスなどが行っています。

(4) その他事業


業務用・携帯用加湿器や、介護・福祉機器(車椅子、リフト、運転補助装置等)の製造・販売、不動産賃貸業などを展開しています。

製品の販売代金や不動産賃貸料を収益源としています。運営は株式会社ミクニライフ&オートなどのグループ会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの5期間を見ると、売上高は870億円から1,014億円へと増加傾向にあります。経常利益は一時30億円台まで回復しましたが、直近では20億円台後半で推移しています。当期純利益については、2021年3月期は赤字でしたが、その後黒字化し、直近では大きく増加しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 870億円 808億円 938億円 999億円 1,014億円
経常利益 6億円 31億円 26億円 32億円 28億円
利益率(%) 0.7% 3.9% 2.8% 3.2% 2.8%
当期利益(親会社所有者帰属) -9億円 12億円 0億円 7億円 27億円

(2) 損益計算書


直近2期間の業績を比較すると、売上高は増加しましたが、売上総利益は横ばいで推移し、利益率はわずかに低下しました。営業利益については金額、利益率ともに低下しており、コスト増などの影響がうかがえます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 999億円 1,014億円
売上総利益 157億円 157億円
売上総利益率(%) 15.7% 15.5%
営業利益 37億円 30億円
営業利益率(%) 3.7% 3.0%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当・賞与が42億円(構成比33%)、支払運賃が15億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


各セグメントの状況を見ると、主力のモビリティ事業は増収となったものの、利益は減少しました。ガステクノ事業は売上が微減し、赤字幅が拡大しています。一方、商社事業は売上・利益ともに増加し、好調に推移しました。その他事業は売上が減少しましたが、利益は増加しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
モビリティ事業 834億円 842億円 32億円 24億円 2.8%
ガステクノ事業 60億円 59億円 -5億円 -6億円 -10.0%
商社事業 81億円 90億円 9億円 12億円 12.8%
その他事業 24億円 24億円 1億円 1億円 4.6%
調整額 -億円 -億円 1億円 1億円 -%
連結(合計) 999億円 1,014億円 37億円 30億円 3.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 30億円 17億円
投資CF -51億円 -31億円
財務CF 13億円 -1億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.1%で市場平均(7.2%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は34.5%で市場平均(57.5%)を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「私たちは地球的視野にたち、人と技術を活かし豊かな社会づくりに貢献します」を企業理念として掲げています。創業以来、豊かな社会づくりへの貢献を究極の目標と位置付け、事業活動を通じてその実現を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、社会への貢献のあり方をブランドメッセージ「つくる まもる ひらく」に込めています。これは持続的成長の核となる普遍的な社会的価値を示すものであり、同社が果たすべき社会への約束として2023年に制定されました。

(3) 経営計画・目標


同社は、長期ビジョン「VISION 2033」および中期経営計画(2024年度~2027年度)を策定しています。これらの計画に基づきブランドパワーを高め、企業価値向上を目指しています。

* 2033年度:連結EBITDAマージン13%以上
* 2027年度:連結EBITDAマージン10%

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「競争力の強化」と「企業特性を活かせる成長分野への挑戦」を基本方針とし、カーボンニュートラルへの対応やグローバル市場での価値向上に取り組んでいます。具体的には、電動化対応製品の拡充、エンジニアリングサービスの拡大、生産体制の効率化などを推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、労働力人口の減少を見据え、「ミクニの人的資本経営推進の型」に基づいて人材戦略を進めています。IT活用やロボット導入による業務効率化に加え、エンゲージメント増強プログラムやリカレント教育の拡大により、従業員の生産性向上と離職率低減を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均(598万円)とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.8歳 19.5年 5,981,854円


※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.7%
男性育児休業取得率 66.7%
男女賃金差異(全労働者) 70.9%
男女賃金差異(正規雇用) 72.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 72.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員エンゲージメントスコア(36.6ポイント)、健康診断二次検査受診率(84.7%)、グローバル語学研修受講率(8.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) モビリティ事業の市場環境


同社グループの売上の大部分を占めるモビリティ事業は、販売先の経済状況の影響を強く受けます。主要市場である日本、中国、インド、北米等での景気後退や需要減少は、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、自動車業界における電動化や脱炭素化の急速な進展への対応も重要な課題です。

(2) 為替・金利変動の影響


グローバルに事業を展開しているため、各国の為替相場や金利の変動が業績に影響します。現地通貨での取引や、連結財務諸表作成時の円換算において、為替レートの変動が損益や財政状態に影響を与える可能性があります。

(3) 法令・規制の変更


事業展開国における自動車の排出ガス規制や燃費規制、環境規制などの変更は、製品開発や生産活動に影響を与えます。予期せぬ規制強化や変更があった場合、対応コストの増加や製品戦略の見直しが必要となり、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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