田中精密工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

田中精密工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

田中精密工業は、東京証券取引所スタンダード市場に上場する自動車部品メーカーです。本田技研工業向けを中心としたエンジン・ミッション部品等の製造を主力とし、FA設備等のソリューション事業やホンダ車の販売も展開しています。当期の業績は、売上高405億円で前期比減収、当期純利益18億円で減益となりました。


※本記事は、田中精密工業株式会社 の有価証券報告書(第74期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 田中精密工業ってどんな会社?


本田技研工業を主要顧客とし、自動車エンジン部品等の製造販売を主力とする、富山県拠点の部品メーカーです。

(1) 会社概要


1948年に創業し、1957年に設立されました。1994年に米国子会社を設立して海外展開を加速し、1996年にはタイに関連会社を設立しました。2004年にジャスダック証券取引所(現スタンダード市場)へ上場を果たしています。近年では2025年に金型製造を行う米谷製作所を完全子会社化するなど、事業基盤の強化を進めています。

2025年3月31日現在、連結従業員数は1,444名、単体従業員数は436名です。大株主は、主要取引先である自動車メーカー、従業員持株会、投資育成会社で構成されています。

氏名 持株比率
本田技研工業 24.53%
田中共進会持株会 12.63%
名古屋中小企業投資育成 5.45%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名(※)の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役 社長執行役員は田中 英一郎氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。
※有価証券報告書提出日(2025年6月24日)時点では女性取締役の就任が予定されていますが、当期末時点の情報に基づきます。

氏名 役職 主な経歴
田中 英一郎 代表取締役 社長執行役員 2003年同社入社。タナカエンジニアリング社長、同社専務執行役員などを経て2022年4月より現職。
山田 勝也 取締役 執行役員 1990年同社入社。営業企画部長、常務執行役員部品製造事業部長などを経て2025年4月より現職。
沖 健司 取締役 執行役員 1994年同社入社。管理部長、リワードグロース社長などを経て2023年4月管理本部長、2025年4月よりモビリティ事業部長も兼務。


社外取締役は、今村 元(弁護士)、高木 悦郎(TSK代表取締役会長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「部品製造事業」、「ソリューション事業」、「モビリティ事業」を展開しています。

(1) 部品製造事業


自動車のエンジン、トランスミッション、シャーシ、電動機部品などの製造販売を行っています。主な製品にはロッカーアーム、ピストンピン、インバーターフレームなどがあり、主要顧客である本田技研工業をはじめとする自動車メーカーへ供給しています。

収益は、自動車メーカー等への製品販売による対価が柱です。運営は、同社および米国、タイ、ベトナムの海外連結子会社、米谷製作所などが担っています。

(2) ソリューション事業


工場自動化(FA)のためのAGV、組立・検査・洗浄装置の開発製造や、モーター製造技術、航空宇宙向け部品などを扱っています。自動車部品製造で培った技術を応用し、モノづくり現場の課題解決や生産性向上に貢献する事業です。

収益は、設備や装置の販売、IoTシステム等の提供による対価から得ています。運営は、主にタナカエンジニアリングが担当しています。

(3) モビリティ事業


ホンダ製品(四輪・二輪・パワープロダクツ)の販売や整備、レンタルサービスなどを展開しています。富山県内を中心に店舗網を持ち、地域に密着したBtoCビジネスを行っています。

収益は、車両販売、アフターサービス、レンタル料などから得ています。運営は、ホンダ自販タナカ、西川自販が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は300億円前後から400億円台へと拡大傾向にあります。利益面では、2021年3月期は損失を計上していましたが、翌期以降は黒字化し、経常利益30億〜40億円規模で推移しています。当期は前期に比べ減収減益となりましたが、一定の利益水準を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 260億円 297億円 342億円 425億円 405億円
経常利益 -2億円 13億円 28億円 40億円 31億円
利益率(%) -0.8% 4.4% 8.3% 9.3% 7.7%
当期利益(親会社所有者帰属) -6億円 4億円 10億円 22億円 18億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は減少しており、それに伴い売上総利益および営業利益も減少しました。利益率は低下傾向にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 425億円 405億円
売上総利益 77億円 74億円
売上総利益率(%) 18.1% 18.4%
営業利益 37億円 27億円
営業利益率(%) 8.6% 6.7%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給与・賞与が14億円(構成比29%)、研究開発費が5億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の部品製造事業は、海外での売上構成変化等の影響により減収減益となりました。一方、ソリューション事業はFA関連設備の販売増などで大幅な増収増益を達成しました。モビリティ事業も四輪車販売の増加により増収増益となり、堅調に推移しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
部品製造事業 338億円 303億円 32億円 21億円 6.8%
ソリューション事業 9億円 14億円 1億円 3億円 20.4%
モビリティ事業 79億円 88億円 3億円 3億円 4.0%
調整額 -5億円 -6億円 0億円 0億円 -
連結(合計) 425億円 405億円 37億円 27億円 6.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

田中精密工業は、モビリティ事業における販売台数・店舗数の増加により、売上高を伸長させました。営業活動による資金は、税金等調整前当期純利益や減価償却費が主な要因となり、一定の資金を生み出しています。投資活動では、有形固定資産の取得に多額の資金を使用しました。財務活動では、配当金の支払いによる資金流出が見られます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 74億円 44億円
投資CF -28億円 -31億円
財務CF -37億円 -21億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「社員が自身の夢実現に向けて努力できる会社にする」「お客様に対して優秀品を最も良心的に提供する会社にする」「社会一般からも信頼される会社にする」という3つの経営理念を掲げています。これに基づき、働く者全員が夢と情熱を持って努力し、ステークホルダーの期待を超える価値を提供し続ける企業を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、「Tanaka Corporate Governance 私たちの行動規範」を行動指針と位置づけ、グループ全体のコンプライアンス意識の向上を図っています。また、多様な人材の活躍がイノベーション創出や企業価値向上につながると考え、人種、国籍、年齢、性別などお互いを尊重し受け入れる文化の醸成を目指しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2030年ビジョンの達成に向けた中期経営計画(2023年3月期~2027年3月期)を推進しています。脱炭素化によるエンジン部品需要の減少など市場環境の変化に対応しつつ、以下の数値目標を掲げています。

* 2027年3月期 連結売上高:340億円
* 2027年3月期 営業利益率:5%

(4) 成長戦略と重点施策


「部品製造事業部」「ソリューション事業部」「モビリティ事業部」の3事業部制へ移行し、既存事業の深化と新規事業の探索を両立させる戦略をとっています。部品製造では電動車向け製品の強化や生産性向上、ソリューションでは自動化設備やモーター関連技術の拡大、モビリティでは販売・サービスの強化や新移動手段の提案などを重点施策としています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社はビジョン実現のため、個人の専門性を活かすコース別人材マネジメントを導入しています。専門教育の充実や自己成長機会の創出など教育制度を刷新し、従業員の意欲向上と組織活性化を図っています。また、ソリューション事業部などでは外部人材の採用や海外子会社との人材交流を進め、多様性に富んだ組織づくりを目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.5歳 19.3年 5,420,081円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.3%
男性育児休業取得率 25.0%
男女賃金差異(全労働者) 66.7%
男女賃金差異(正規雇用) 78.9%
男女賃金差異(非正規) 105.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、CO2排出量削減実績(45%削減)、人材配置KPI進捗(累計71名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 自動車業界の環境変化


自動車業界は電動化やCASE、MaaSといった大変革期にあります。特に脱炭素化により、同社の主力であるエンジン部品の長期的需要低下が見込まれており、本田技研工業が掲げるエンジン搭載車販売ゼロ目標などの影響を受ける可能性があります。

(2) 特定取引先への依存


主要販売先である本田技研工業グループへの売上比率が高く(当期66.1%)、同グループの販売状況により業績が大きく影響を受ける可能性があります。同社は顧客の課題解決に応えることで、顧客拡大に努めています。

(3) 特定製品への依存


連結売上高に占める四輪エンジン部品(ロッカーアームAssy)の割合が高く(当期54.6%)、新機構や新動力源への移行、競合との競争などにより受注を失った場合、業績に大きな影響を与える可能性があります。

(4) 経済状況と海外展開リスク


日本、米国、タイ、ベトナムで事業展開しており、各国の経済状況、為替変動、地政学的リスク(災害、戦争、テロ等)の影響を受ける可能性があります。特に海外子会社の業績換算や直接取引における為替リスクが存在します。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。