※本記事は、株式会社アルファ の有価証券報告書(第87期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アルファってどんな会社?
自動車用キーセットやドアハンドル、住宅用ロック、コインロッカーなどを手がける総合ロックメーカーです。
■(1) 会社概要
1938年に国産金属工業として設立され、1964年にコインロッカーの製造販売を開始しました。1990年に現社名へ変更し、2004年に東京証券取引所市場第二部へ上場、翌2005年には同市場第一部へ指定されました。近年では、2016年にASSA ABLOY AB傘下の子会社株式を取得するなど、海外事業の拡大を進めています。
現在の従業員数は連結で4,158名、単体で427名です。筆頭株主は同業で自動車部品メーカーのハイレックスコーポレーションで、第2位は取引先である日産東京販売ホールディングスです。主要な取引先や金融機関が上位株主となっており、安定的な株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ハイレックスコーポレーション | 17.82% |
| 日産東京販売ホールディングス | 3.95% |
| 三井住友銀行 | 2.89% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長執行役員は塚野哲幸氏が務めています。なお、社外取締役は2名選任されています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 塚野 哲幸 | 代表取締役社長執行役員環境最高責任者 | 1987年同社入社。自動車部品事業部設計部長、技術本部副本部長などを経て、2021年4月社長執行役員に就任。2021年6月より現職。 |
| 斉藤 雄一 | 取締役副社長執行役員最高財務責任者 | 1981年同社入社。常務執行役員管理本部本部長、経営企画本部本部長などを歴任。2021年4月副社長執行役員に就任。2023年4月より現職。 |
| 入澤 昭 | 取締役副社長執行役員経営企画本部 本部長 | 1985年日産自動車入社。2016年同社入社、常務執行役員業務本部本部長などを経て、2021年4月副社長執行役員に就任。2025年4月より現職。 |
| 山本 昌明 | 取締役専務執行役員自動車部品事業部事業部長 | 1985年同社入社。常務執行役員自動車部品事業部副事業部長、営業本部本部長などを経て、2025年4月より現職。 |
| 坂本 嘉章 | 取締役常務執行役員自動車部品事業部モノづくりセンター長 | 1981年同社入社。執行役員タイ現地法人社長、技術本部本部長などを経て、2025年4月より現職。 |
社外取締役は、上坂こずえ(弁護士)、磯貝和敏(公認会計士・税理士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「自動車部品事業」および「セキュリティ機器事業」を展開しています。
■(1) 自動車部品事業
ステアリングロック、キーシリンダー等のメカ部品と、キーレスエントリー等の電子部品で構成されるキーセット、およびアウトサイド・インサイドドアハンドル等を製造・販売しています。主な顧客は国内外の自動車メーカーです。
収益は、自動車メーカーへの製品販売から得ています。運営は、日本のアルファおよび九州アルファ、北米、アジア、欧州の各製造・販売子会社が行っています。各地域に拠点を持ち、グローバルな供給体制を構築しています。
■(2) セキュリティ機器事業
住宅用ロック(電気錠含む)、産業用ロック、コインロッカー、宅配ボックス等を製造・販売しています。住宅市場や駅・空港などの公共施設、ゴルフ場などが主な市場です。また、コインロッカーの保守管理業務も行っています。
収益は、製品の販売に加え、コインロッカーの賃貸・保守管理業務からも得ています。日本国内ではアルファおよびアルファロッカーシステムが、海外ではタイのALPHA HOUSING HARDWARE (THAILAND) CO.,LTD.などが運営を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は2024年3月期まで増加傾向にありましたが、当期は微減となりました。利益面では、2024年3月期に大きく伸長しましたが、当期は大幅な減益となり、当期純損失を計上しています。これは中国市場での販売不振や減損損失の計上などが影響しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 476億円 | 538億円 | 629億円 | 745億円 | 735億円 |
| 経常利益 | 11億円 | 10億円 | 13億円 | 31億円 | 6億円 |
| 利益率(%) | 2.2% | 1.9% | 2.1% | 4.1% | 0.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 5億円 | 11億円 | -7億円 | 14億円 | 13億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上高はほぼ横ばいながら、売上原価および販管費の増加により、各段階利益が減少しています。特に営業利益は前期比で半分以下に落ち込んでおり、収益性の低下が見られます。コストコントロールと売上回復が課題となっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 745億円 | 735億円 |
| 売上総利益 | 114億円 | 103億円 |
| 売上総利益率(%) | 15.3% | 14.0% |
| 営業利益 | 24億円 | 9億円 |
| 営業利益率(%) | 3.3% | 1.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び諸手当が33億円(構成比35%)、雑費が10億円(同10%)を占めています。
■(3) セグメント収益
セグメント別の売上動向を見ると、北米および欧州の自動車部品事業は増収となりましたが、日本およびアジアの自動車部品事業、セキュリティ機器事業は減収となりました。特にアジアにおける自動車部品事業の落ち込みが大きく、連結全体の減収要因となっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 自動車部品事業(日本) | 83億円 | 81億円 |
| 自動車部品事業(北米) | 169億円 | 178億円 |
| 自動車部品事業(アジア) | 159億円 | 145億円 |
| 自動車部品事業(欧州) | 159億円 | 169億円 |
| セキュリティ機器事業(日本) | 151億円 | 136億円 |
| セキュリティ機器事業(海外) | 24億円 | 26億円 |
| 連結(合計) | 745億円 | 735億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、運転資金を内部資金や借入金で調達する財務方針を採っています。
営業活動では、事業活動から得られた資金が前年と比較して減少しましたが、これは主に税金等調整前当期純利益の増加や、退職給付に係る資産の増加、売上債権や棚卸資産の増加等によるものです。
投資活動では、無形固定資産の取得による支出や、投資有価証券の償還による収入がありました。
財務活動では、短期借入金の純減少や、長期借入れによる収入と返済があり、使用した資金は前年より減少しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 71億円 | 59億円 |
| 投資CF | -33億円 | -39億円 |
| 財務CF | -11億円 | -19億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「個々の質を高め、お客様に喜ばれる価値を創造・提供します」を経営理念として掲げています。また、企業メッセージとして「Innovation for Access」を掲げ、人の暮らしに関わるアクセスをより安心で便利にすることを目指しています。
■(2) 企業文化
「ALPHA WAY」に掲げる経営理念をグループ全員で共有し実践することを重視しています。また、求める人材像として「CREATOR」を掲げ、チャレンジ精神や法令遵守、自己成長などを重視する価値観を持っています。
■(3) 経営計画・目標
2026年度を最終年度とする中期経営計画を遂行中です。2025年5月に修正された2026年度の目標値として以下を掲げています。
* 売上高:750億円
* 営業利益額(率):30億円(4.0%)
* 新商品売上高比率:30.0%以上
* 自己資本比率:50.0%
* ROIC:5.0%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「新事業・新商品開発」、「収益基盤の強化」、「サステナビリティ経営の推進」を基本方針としています。自動車部品事業ではあらゆるロスの削減や合理化活動、戦略的投資を実行し、セキュリティ機器事業では電気錠の新商品開発やロッカーシステムのキャッシュレス対応などを推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材理念として「自主自立の精神をもって自ら考え、行動し、仕事を通じて自己成長し続けます」を掲げ、求める人材像「CREATOR」を定義しています。人事制度改革やグローバル人材の育成、女性活躍推進などに注力し、社員一人ひとりが能力を発揮できる環境づくりを進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.4歳 | 16.2年 | 6,283,981円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでいます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 1.3% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 57.1% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 68.5% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 76.8% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) | 82.3% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒、中途採用者に占める女性比率(20.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 自動車部品事業の販売先依存
同社グループの連結売上高の約78%を自動車部品事業が占めており、特に特定の大手自動車メーカーグループへの販売比率が34%を超えています。主要販売先の生産動向や製品の装着率、納入価格の変動などが、同社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 海外事業展開
海外売上高比率が約7割を占めており、北米、アジア、欧州などで事業を展開しています。各地域の経済状況、政策金利の引き上げ、原材料価格の高止まり、地政学リスク、為替変動などが業績に影響を与える可能性があります。特に北米の通商政策や中国市場の動向が懸念要因です。
■(3) 原材料価格の上昇
製品製造に必要な原材料や部品を外部から調達しており、市況の変化による価格変動の影響を受けます。原材料価格やエネルギーコスト、輸送コストの上昇分を製品価格に十分に転嫁できない場合、収益性が低下する可能性があります。



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