ファルテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ファルテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ファルテックは、東証スタンダード市場に上場し、自動車メーカー向けに自動車外装部品、純正用品、関連機器の製造・販売を主力事業とする企業です。直近の業績トレンドは、主要顧客の生産・販売台数減の影響により減収となっており、利益面でも減益および当期純損失を計上するなど厳しい状況にあります。


※本記事は、ファルテックの有価証券報告書(第22期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ファルテックってどんな会社?


ファルテックは、自動車外装部品や自動車純正用品等の開発・製造・販売をグローバルに展開する部品メーカーです。

(1) 会社概要


2004年にアルティアと橋本フォーミング工業が経営統合し、共同持株会社のファルテックを設立しました。2007年にアルティア橋本の自動車部品・用品事業を承継し事業持株会社へ移行しています。2013年に東京証券取引所へ上場し、その後は中国や北米等へのグローバル展開を進め、事業基盤を拡大しています。

現在、同社グループの従業員数は連結で1,764名、単体で816名です。筆頭株主は事業会社であるTPRで株式の55.53%を保有し親会社となっています。第2位はCITIC SECURITIES BROKERAGE(HK)LIMITED AC CLIENTです。

氏名 持株比率
TPR 55.53%
CITIC SECURITIES BROKERAGE (HK) LIMITED AC CLIENT 4.74%
SRG GLOBAL, LLC 4.03%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.0%です。代表取締役社長最高経営責任者は河井芳浩氏が務めています。社外取締役比率は8.3%です。

氏名 役職 主な経歴
河井芳浩 代表取締役社長最高経営責任者 1987年に日産自動車へ入社し、購買企画部主管や購買部長を歴任。2021年に同社常務執行役員に就任し、2022年より現職。
池畑慎二 代表取締役専務執行役員最高財務責任者 1987年に富士銀行へ入行し、2016年にTPRへ入社。海外事業第一部長を経て、2024年に同社常務執行役員に就任。2025年より現職。
天野豊彦 取締役常務執行役員 1984年に日産自動車へ入社。2011年に同社へ入社し、グローバル営業部長を歴任。2018年に常務執行役員に就任し、2022年より現職。
田中俊之 取締役常務執行役員 1986年に橋本フォーミング工業へ入社。同社企画室長や生産センター長等を歴任。2020年に取締役常務執行役員に就任し、2025年より現職。
藤城豪二 取締役会長 1987年に富士銀行へ入行し、みずほ銀行副頭取を歴任。2023年にTPR副社長に就任。2024年に同社取締役に就任し、2026年より現職。
末廣博 取締役 1981年に富士銀行へ入行し、みずほ銀行副頭取を歴任。2018年にTPRへ入社。2019年に同社取締役会長に就任し、2026年より現職。
矢野和美 取締役 1982年にTPRへ入社し、技術開発部長や長野工場長等を歴任。2021年に同社代表取締役社長に就任し、同年より現職。


社外取締役は、佐藤明典(元EY新日本有限責任監査法人代表社員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「アジア」「北米他」の報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 日本


同社グループは日本国内において、自動車メーカーを主な顧客とし、ラジエターグリルやミリ波レーダーカバーなどの自動車外装部品や、リモコンエンジンスターター等の自動車純正用品の開発・製造・販売を行っています。また、自動車検査・整備用機器等の自動車関連機器事業も展開しています。

収益源は、自動車メーカーや自動車ディーラー、整備工場などへの製品の販売および提供代金です。同セグメントにおける事業運営は、同社を中心に、テクノサッシュや北九州ファルテック、アルティアなどの国内子会社が担当しています。

(2) アジア


アジア地域においては、中国およびタイ市場を主なターゲットとして、自動車外装部品および自動車純正用品の製造と販売を展開しています。また、中国では自動車関連機器の取り扱いも行っており、現地のニーズに対応した製品提供を進めています。

収益源は、現地に進出している日系自動車メーカーなどへの部品や機器の販売代金です。運営主体としては、佛山発爾特克汽車零部件有限公司や湖北発爾特克汽車零部件有限公司、FALTEC SRG GLOBAL (THAILAND) CO.,LTD.などの海外子会社が中心となって事業を推進しています。

(3) 北米他


北米および欧州市場に向けて、ラジエターグリルやウィンドウモールといった自動車外装部品、およびイルミキッキングプレートなどの自動車純正用品の製造と販売を行っています。グローバルな自動車産業の需要に応えるため、各地域に製造拠点を配置しています。

主な収益源は、現地の自動車メーカーや海外に進出している日系自動車メーカーへの製品販売による代金です。同セグメントの事業運営は、米国に拠点を置くFALTEC AMERICA, INC.や、英国に拠点を置くFALTEC EUROPE LIMITEDが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は800億円前後で推移していましたが、直近の第22期は主要顧客の生産・販売台数減の影響等により減収となりました。経常利益は黒字と赤字を繰り返す不安定な状況が続いており、第22期は減収の影響等で大幅な減益となっています。また、当期利益についても減損損失の計上等により赤字となる期が多くなっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 691億円 741億円 819億円 791億円 732億円
経常利益 18億円 -5億円 18億円 29億円 16億円
利益率(%) 2.5% -0.7% 2.2% 3.6% 2.2%
当期利益(親会社所有者帰属) -26億円 -14億円 -14億円 1億円 -17億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で減少しており、これに伴い売上総利益も減少しています。利益率もわずかに低下傾向にあります。営業利益についても売上高の減少が直接的に影響し、前期比で大幅な減益となっており、本業の収益力に課題が残る結果となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 791億円 732億円
売上総利益 125億円 114億円
売上総利益率(%) 15.8% 15.5%
営業利益 24億円 16億円
営業利益率(%) 3.0% 2.2%


販売費及び一般管理費のうち、物流費が14億円(構成比37%)、給料手当が10億円(同26%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力市場である日本では、顧客の生産・販売台数減の影響を受けて減収となりました。また、アジアでは日系自動車メーカーのシェア低下や販売不振が響き、北米他でも同様に需要減少の影響を受けたことで、全セグメントにおいて前期比で減収となる結果となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
日本 616億円 592億円
アジア 86億円 65億円
北米他 89億円 75億円
連結(合計) 791億円 732億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動によるキャッシュ・フローはプラス、投資活動および財務活動によるキャッシュ・フローはマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型のキャッシュ・フロー状態と言えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 47億円 38億円
投資CF -31億円 -28億円
財務CF -19億円 -1億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-4.4%で市場平均を下回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も29.0%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「時代をリードする価値ある商品・サービスを提供し、美しく豊かなクルマ社会の実現に貢献する」という経営理念を掲げています。自動車外装部品や純正用品を通じて、高い品質感と機能美を追い求め、全てのステークホルダーの声に耳を傾けながら持続可能な社会の発展に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、法令を遵守し公正かつ良識ある企業活動を展開のうえ、信頼されるパートナーとなることを重視しています。また、「ひとをつくり、ひとに学び、多様性のある豊かな職場の実現と地域コミュニティへの貢献」を掲げ、従業員の健康を重要な経営基盤と捉える健康経営の推進や、自律的に価値を創出できる人材育成に注力する文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、利益を伴う持続的成長を目指し、経営上の目標の達成状況を判断するための指標として、収益性判断の指標である「営業利益率」、財務安定性判断の指標である「自己資本比率」、効率性判断の指標である「ROE」を掲げています。中期的に借入金返済を進め、自己資本比率を向上させることで財務体質の強化を図る計画です。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、事業環境の厳しさに対応するため、「ものづくりコストの競争力向上」「主要顧客の再編に対応した生産体制の再構築」「中国市場における売上拡大」「英国事業の再建」を重要課題としています。これらの解決に向け、生産工程の自動化による原価低減や、脱炭素を意識した新商品・新技術の開発をスピーディーに推進する戦略を描いています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、製品の品質・供給を支えるには人材の力が不可欠であるとの認識のもと、「企業と個の価値向上の両立」を基本方針としています。自律的に価値を創出できる人材の育成を推進し、技能伝承の深化や開発・品質領域の専門人材を戦略的に育成するとともに、健康経営を通じて従業員エンゲージメントの向上を図る方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 45.4歳 17.9年 5,912,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.9%
男性育児休業取得率 70.0%
男女賃金差異(全労働者) 77.3%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 79.0%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 62.4%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国内外の自動車業界動向への依存リスク


同社グループは自動車メーカーを主な顧客としているため、国内および海外の自動車業界の動向に強く影響を受けます。成熟市場である国内の生産規模縮小や、海外での景気、為替、政治動向などによる需要変動が生じた場合、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 特定の取引先への依存リスク


同社グループは、日産自動車および同社と資本・取引関係を有する企業への売上依存度が比較的高い傾向にあります。グローバルな営業活動により依存度の低減に努めていますが、主要取引先の経営方針の変更や生産体制の再編等が生じた場合、事業に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 原材料・部品の調達および価格変動リスク


同社の製品製造において、外部から調達する原材料や部品の価格および需給バランスの影響を受けます。中東地域における地政学的リスクの高まり等により原材料価格が高騰した場合や、調達難による生産活動への支障が生じた場合、収益性に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。