※本記事は、株式会社ファルテック の有価証券報告書(第21期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ファルテックってどんな会社?
自動車メーカー向けの外装部品や純正用品、整備用機器などを開発・製造・販売するグローバルサプライヤーです。
■(1) 会社概要
同社は2004年、アルティアと橋本フォーミング工業の経営統合により設立されました。2013年に東京証券取引所第二部へ上場し、翌2014年には同市場第一部へ指定替えとなりました。2022年の市場区分見直しに伴い、スタンダード市場へ移行しています。国内外に製造拠点を持ち、自動車産業の一翼を担っています。
現在、連結従業員数は1,922名、単体では853名が在籍しています。大株主構成については、筆頭株主は同社の親会社である自動車部品メーカー(事業会社)です。第2位は顧客資産の分別管理等を行う金融機関(信託銀行常任代理人)、第3位は証券代行業務を行う金融機関が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| TPR | 55.53% |
| CITIC SECURITIES BROKERAGE (HK) LIMITED AC CLIENT | 4.74% |
| INTERACTIVE BROKERS LLC | 4.09% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性13名、女性0名の計13名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長最高経営責任者は河井芳浩氏が務めています。社外取締役比率は15.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 河井 芳浩 | 代表取締役社長最高経営責任者 | 日産自動車にて共同購買本部理事などを歴任し、2021年同社入社。2022年より現職。 |
| 篠田 好洋 | 代表取締役専務執行役員最高財務責任者 | みずほ銀行にて公務第三部長などを歴任し、2018年同社入社。2021年より現職。 |
| 天野 豊彦 | 取締役常務執行役員 | 日産自動車、日本電産トーソクを経て、2011年同社入社。セールス&マーケティングセンター長として2022年より現職。 |
| 末廣 博 | 取締役会長 | みずほ銀行副頭取執行役員などを経て、2019年同社取締役会長就任。TPR代表取締役会長兼CEOを兼務。2024年より現職。 |
| 矢野 和美 | 取締役 | TPRにて代表取締役社長兼COOなどを歴任。2021年より現職。 |
| 羽石 和弘 | 取締役 | TPRにて執行役員経営企画室長などを歴任。2022年より現職。 |
| 藤城 豪二 | 取締役 | みずほ銀行副頭取執行役員などを経て、TPR代表取締役副社長執行役員(海外事業部門担当)。2024年より現職。 |
社外取締役は、木村新(元ダイハツ工業取締役)、坂本剛(元損害保険ジャパン執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「アジア」および「北米他」の3つの報告セグメントで事業を展開しています。
■(1) 日本(Japan)
自動車外装部品(ラジエターグリル、ルーフレール等)、純正用品(電装品等)、自動車関連機器(車検機器等)の開発・製造・販売を行っています。主な顧客は国内自動車メーカーやディーラーです。
収益は、自動車メーカーへの部品・用品販売や、整備工場等への機器販売から得ています。運営は主にファルテック、および子会社のアルティア、テクノサッシュ、北九州ファルテックが行っています。
■(2) アジア(Asia)
中国やタイにおいて、ラジエターグリルやウィンドウモールなどの自動車外装部品、および一部純正用品や関連機器の製造・販売を行っています。現地の自動車メーカー拠点が主な顧客です。
収益は、現地自動車メーカー等への製品販売から得ています。運営は、中国の佛山発爾特克汽車零部件有限公司、湖北発爾特克汽車零部件有限公司、タイのFALTEC SRG GLOBAL (THAILAND) CO.,LTD.などが担当しています。
■(3) 北米他(North America & Others)
北米(米国)および欧州(英国)において、自動車外装部品(ラジエターグリル、モールディング等)や純正用品の開発・製造・販売を展開しています。各地域の自動車メーカーが主な顧客です。
収益は、自動車メーカー等への製品販売代金です。運営は、米国のFALTEC AMERICA, INC.および英国のFALTEC EUROPE LIMITEDが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は700億円から800億円台で推移していますが、当期は前期比で減少しました。利益面では、前期までの厳しい状況から回復傾向にあり、当期の経常利益は大幅に増加し、最終損益も黒字転換を果たしています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 698億円 | 691億円 | 741億円 | 819億円 | 791億円 |
| 経常利益 | 28億円 | 18億円 | -5億円 | 18億円 | 29億円 |
| 利益率(%) | 4.1% | 2.5% | -0.7% | 2.2% | 3.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 15億円 | -26億円 | -14億円 | -14億円 | 1億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は減少したものの、売上総利益および営業利益は増加しており、収益性が改善しています。コストコントロールや効率化が進んでいることがうかがえます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 819億円 | 791億円 |
| 売上総利益 | 123億円 | 125億円 |
| 売上総利益率(%) | 15.0% | 15.8% |
| 営業利益 | 21億円 | 24億円 |
| 営業利益率(%) | 2.6% | 3.0% |
販売費及び一般管理費のうち、その他経費が39億円(構成比39%)、給料及び手当が33億円(同33%)を占めています。売上原価においては、原材料費や労務費などが含まれますが、全体に対する構成比は84%となっています。
■(3) セグメント収益
全セグメントで売上高は減少しましたが、日本とアジア、北米他の全てのセグメントで黒字を確保しました。特に北米他セグメントは前期の赤字から黒字転換を果たし、アジアセグメントも増益となりました。日本セグメントは減収に伴い減益となっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | 628億円 | 616億円 | 21億円 | 16億円 | 2.5% |
| アジア | 93億円 | 86億円 | 6億円 | 7億円 | 8.4% |
| 北米他 | 98億円 | 89億円 | -6億円 | 0億円 | 0.3% |
| 連結(合計) | 819億円 | 791億円 | 21億円 | 24億円 | 3.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFはプラスを維持し、借入金の返済などの財務活動に資金を充てつつ、投資活動も自己資金の範囲内で賄えていることから「健全型」と言えます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 66億円 | 47億円 |
| 投資CF | -38億円 | -31億円 |
| 財務CF | -1億円 | -19億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.9%で市場平均を下回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は27.8%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「時代をリードする価値ある商品・サービスを提供し、美しく豊かなクルマ社会の実現に貢献する」ことを経営理念として掲げています。自動車外装部品や自動車純正用品を通じて、高い品質感と機能美を追求し続けることを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、「美しく豊かな地球環境と共生できるものづくり」を通じて持続可能な社会の発展に貢献することを目指しています。また、独自の生産活動である「FPS(Faltec Production System)」を推進し、グローバルで効率的な生産方法を追求する文化があります。全てのステークホルダーの声に耳を傾ける姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、経営上の目標達成状況を判断する指標として、収益性(営業利益率)、財務安定性(自己資本比率)、効率性(ROE)を掲げています。中長期的には以下の数値目標の達成を目指して経営を行っています。
* 連結営業利益率:4%
* 自己資本比率:30%
* ROE:8%
■(4) 成長戦略と重点施策
最大の課題である「ものづくり力強化」を掲げ、国内をベースとした生産方式の再構築と海外展開を推進しています。また、脱炭素を意識した新商品開発のスピードアップや、英国事業の再建(固定費削減、品質向上)にも注力しています。
* 筋肉質な収益体質構築(ものづくり再構築、最高品質の追求)
* 新商品新技術の強化(脱炭素対応、電装新規ビジネス拡大)
* 経営基盤の充実(人的資本投資、財務健全化、カーボンニュートラル)
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「企業」と「個」の価値向上を目的に、自律的に活動する人材を育成する方針です。スキルアップ教育や人材情報基盤の整備を進めるとともに、健康経営として多様な働き方の確保や時間外労働の削減、有給休暇取得促進に取り組むことで、従業員エンゲージメントの向上を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 45.1歳 | 16.6年 | 5,883,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.2% |
| 男性育児休業取得率 | 30.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 77.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 78.5% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 65.2% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、人材育成投資(2019年度比200%)、年次有給休暇取得(全社員10日)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 国内自動車業界の動向
同社グループの主要顧客は国内自動車メーカーであり、国内自動車業界の動向に強く影響を受けます。市場の成熟化やメーカーの生産拠点再編、生産規模縮小などが進んだ場合、同社グループの事業や業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 海外事業展開に伴うリスク
グローバル化に対応するため英国、米国、中国、タイに進出していますが、各国の景気、政治動向、法規制、テロや戦争等の社会的混乱により、生産・販売が想定通りに進まない可能性があります。これにより事業計画や業績に影響が生じるリスクがあります。
■(3) 特定の取引先への依存
日産自動車およびその関係会社は同社グループの有力な取引先であり、売上の一定割合を占めています。取引先の多角化に努めていますが、同社の経営方針変更や購入量の増減、取引条件の変更等が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 親会社グループとの関係
親会社であるTPRは同社議決権の過半数を所有しています。両社は製品領域が異なり棲み分けがなされていますが、将来的に親会社の経営方針に変更が生じた場合、同社グループの事業活動や経営の独立性に影響を及ぼす可能性があります。



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