※本記事は、新家工業株式会社の有価証券報告書(第162期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 新家工業ってどんな会社?
鋼管関連製品の製造販売を主力とし、長年の歴史を持つ金属加工メーカーです。
■(1) 会社概要
1903年に自転車用木製リムの製造で創業し、1937年に新家工業へと商号を変更しました。1959年に鋼管製造を開始し、1961年に東証第一部に上場を果たしています。その後、国内外での生産・販売網を拡充してきましたが、事業ポートフォリオの見直しを進め、2025年12月には完成自転車の輸入販売事業から撤退しました。
現在の従業員数は連結501名、単体273名です。大株主の状況を見ると、筆頭株主は一般社団法人ツバメの会で、第2位および第3位には事業活動を支える金融機関が名を連ねており、安定した株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 一般社団法人ツバメの会 | 5.11% |
| 北國銀行 | 4.87% |
| りそな銀行 | 4.36% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表取締役社長は市川圭司氏が務めています。社外取締役は4名選任されています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 市川 圭司 | 取締役社長(代表取締役) | 1991年同社入社。関西工場管理部長、千葉工場長、製造本部長等を歴任し、2024年4月より現職。 |
| 胡居 典明 | 常務取締役(代表取締役)管理本部長兼管理本部 経営企画部長 | 2019年同社入社。アラヤ特殊金属経理部長、同社経営企画部長、財務部長等を歴任し、2026年4月より現職。 |
| 大槻 一 | 常務取締役事業本部長 | 1986年同社入社。大栄鋼業社長、同社山中工場長、製造本部長等を歴任し、2026年4月より現職。 |
| 浜田 哲洋 | 取締役 | 2013年同社入社。アラヤ特殊金属取締役、同社総務部長、代表取締役専務等を歴任し、2026年4月より現職。 |
| 松尾 政哉 | 取締役事業本部副本部長(営業・資材担当)(東日本駐在) | 1992年同社入社。東京営業所長、営業本部長兼鋼管営業部長等を歴任し、2026年4月より現職。 |
| 金井 秀人 | 取締役特命・関連会社担当 | 1993年同社入社。パブリックアラヤインドネシア社長、営業本部長等を歴任し、2026年4月より現職。 |
| 細野 豊 | 取締役(監査等委員)(常勤) | 1991年北國銀行入行。同社内部監査室担当部長を経て、2024年6月より現職。 |
社外取締役は、山中拓郎氏(元チェルシージャパン社長)、鳥木千鶴氏(朝日放送テレビ事業局リーダー)、西尾宇一郎氏(元監査法人トーマツ代表社員)、鈴木蔵人氏(弁護士法人色川法律事務所社員弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「鋼管関連」「自転車関連」「不動産等賃貸」および「その他」事業を展開しています。
■鋼管関連
普通鋼鋼管、ステンレス鋼鋼管、各種型鋼、精密加工品、自転車用リムなどの製造販売を行っています。自動車関連、建築関連、食品・医療分野など幅広い産業に向けて製品を供給しています。
製品の販売代金を収益源としています。事業の運営は同社のほか、子会社の大栄鋼業やステンレスパイプ工業、アラヤ特殊金属などが担い、海外ではインドネシアの現地法人が展開しています。
■自転車関連
完成自転車の輸入販売を行っていましたが、近年の市場動向および事業収益性を踏まえ、2025年12月末をもって当該事業から撤退しました。
現在は撤退後のアフターサービス対応等が中心となっています。当該事業の運営は主に同社が行っていました。
■不動産等賃貸
東京都大田区、江東区、大阪府茨木市などの地域において、自社保有の土地、建物、および倉庫などの不動産賃貸事業を展開しています。安定した業績基盤の構築に寄与しています。
事業用定期借地権設定契約等に基づくテナントからの地代収入や賃貸収入を収益源としています。事業の運営は主に同社および子会社のアラヤ特殊金属が行っています。
■その他
ディスクホイル、機械部品、福祉機器などの製造・販売を行っています。高齢者や障害者の安全・安心に役立つ商品開発などに取り組んでいます。
製品の販売代金を収益源としており、当該セグメントの運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は減少傾向にあるものの、不採算部門の見直し等により直近の経常利益は改善に転じています。原材料価格の高騰等の厳しい環境下において、利益確保に向けた取り組みが一定の成果を上げています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 408億円 | 464億円 | 446億円 | 428億円 | 404億円 |
| 経常利益 | 38億円 | 49億円 | 26億円 | 19億円 | 23億円 |
| 利益率(%) | 9.3% | 10.7% | 5.7% | 4.4% | 5.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 15億円 | 20億円 | 15億円 | 17億円 | 16億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は減少しましたが、売上総利益および営業利益は増加しており、収益性の改善が見られます。販売価格の見直しや生産性向上の取り組みが奏功し、売上総利益率は上昇しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 428億円 | 404億円 |
| 売上総利益 | 77億円 | 83億円 |
| 売上総利益率(%) | 18.0% | 20.6% |
| 営業利益 | 16億円 | 19億円 |
| 営業利益率(%) | 3.8% | 4.7% |
販売費及び一般管理費のうち、発送配達費が22億円(構成比35%)、従業員給料手当が12億円(同18%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の鋼管関連は需要低迷により減収となりました。一方、不動産等賃貸は地代収入や賃貸料の値上げが寄与して増収となり、全社の利益を支える安定した収益源として機能しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 鋼管関連 | 419億円 | 396億円 |
| 自転車関連 | 2.4億円 | 1.2億円 |
| 不動産等賃貸 | 6.1億円 | 6.9億円 |
| その他 | 0.5億円 | 0.4億円 |
| 連結(合計) | 428億円 | 404億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
積極型(営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態)
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 27億円 | 34億円 |
| 投資CF | 6億円 | -19億円 |
| 財務CF | -61億円 | 6億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は57.8%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「常に技術と品質の向上に努め創造と革新に挑戦する」「公正かつ誠実に企業運営し社会の発展に貢献する」などを経営理念に掲げています。事業活動を通じて優れた品質の製品を提供し、ステークホルダーとの相互繁栄を図りながら社会の発展に貢献することを基本としています。
■(2) 企業文化
同社は、「モノづくりへのこだわりで世の中の課題をカタチに変える」というテーマを掲げ、技術と品質の向上に挑み続ける文化を重視しています。また、自然と調和し国際社会と共生することや、従業員の福祉向上を目指す価値観も持ち合わせており、多様性を受容し社会的責任を果たす姿勢が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
「中期経営計画(2026)」および「長期ビジョン2033」を策定し、ソリューション製造業としての地位確立を目指しています。重要な経営指標としてROEとPBRを掲げ、2027年3月期に向けて以下の定量目標を設定しています。
* 売上高:467億円
* 営業利益:35億円
* 経常利益:37億円
* 当期純利益:26億円
* ROE:7.7%
* PBR:1.0倍
■(4) 成長戦略と重点施策
経営基盤強化と成長戦略の基盤構築を基本方針としています。鋼管関連では営業エリア拡大やグループ連携強化、自転車関連では不採算事業からの撤退を進めました。さらに、不動産専門部署の新設による資産効率改善や、ASEAN市場の開拓、研究開発機能の強化などの成長戦略を推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、経営理念を実現し持続的に成長するためには、多様な価値観を持つ人材を受け入れ、個々が自分らしく能力を発揮できる組織風土の醸成が重要と考えています。公正・公明な評価制度に基づく中核人材への登用や、従業員のエンゲージメント向上を目的とした給与水準の見直し、ベースアップ等の処遇改善を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 39.4歳 | 16.3年 | 5,813,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.1% |
| 男性育児休業取得率 | 85.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 86.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 84.7% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 106.1% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 鉄鋼業界の再編・動向による影響
鋼管関連事業において、国際的な規模での再編成や取引先の囲い込みが発生した場合、材料調達や販売ルートに影響が及ぶ可能性があります。また、商社の合併等による取引先の変更や、為替変動に伴う各種コスト上昇のリスクが存在します。
■(2) 材料の市況変動の影響
鋼管・型鋼の材料である普通鋼およびステンレス鋼の薄板市場価格は、世界的な需給バランスやメーカー主導で変動します。材料価格が大幅に高騰した際、販売価格への転嫁が遅れると収益が圧迫され、下落時には在庫評価損などの影響を受けるおそれがあります。
■(3) 貸倒引当金と信用リスク
景気後退や需要低迷に伴い、鉄鋼業界において不良債権発生の危険度が高まることが予想されます。顧客の財政状態が悪化し支払い能力が低下した場合、受取手形や売掛金等の債権に対する貸倒引当金の追加計上が必要となるリスクがあります。



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