※本記事は、新家工業株式会社 の有価証券報告書(第161期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 新家工業ってどんな会社?
1903年創業の老舗メーカーです。国内初の自転車用木製リム製造に成功し、現在は鋼管製造を主力としています。
■(1) 会社概要
同社は、1903年に石川県で日本初の自転車用木製リムの製造に成功し創業しました。1919年に株式会社組織へ改組し、1946年には「ツバメ号」完成自転車の生産を開始しました。1949年に大阪証券取引所へ上場し、1959年には鋼管製造設備を新設して事業を拡大しました。1961年には東京証券取引所市場第一部へ上場を果たしています。
2025年3月31日現在、連結従業員数は488名、単体では269名です。筆頭株主は地方銀行の北國銀行で、第2位は一般社団法人ツバメの会、第3位は都市銀行のりそな銀行となっており、金融機関や関連団体が上位を占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 北國銀行 | 5.39% |
| 一般社団法人ツバメの会 | 5.11% |
| りそな銀行 | 4.36% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名、計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表取締役社長は市川圭司氏です。社外取締役比率は36.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 市川圭司 | 取締役社長(代表取締役) | 1991年同社入社。関西工場管理部長、関西工場長、千葉工場長、製造本部長などを歴任し、2024年4月より現職。 |
| 浜田哲洋 | 専務取締役(代表取締役)管理本部長兼総務部長 | 2013年同社入社。アラヤ特殊金属取締役、同社管理本部総務部長、常務取締役管理本部長などを経て、2024年4月より現職。 |
| 松尾政哉 | 取締役鋼管営業部長(東日本駐在) | 1992年同社入社。鋼管営業部東京営業所長、鋼管営業統括部長、常務取締役営業本部長などを経て、2024年4月より現職。 |
| 金井秀人 | 取締役営業本部長兼海外事業部長 | 1993年同社入社。インドネシア現地法人社長、営業本部資材部長、執行役員などを歴任し、2025年4月より現職。 |
| 胡居典明 | 取締役財務担当兼経営企画部長 | 2019年同社入社。アラヤ特殊金属経理部長、同社経営企画部長、執行役員を経て、2024年11月より現職。 |
| 大槻一 | 取締役製造本部長兼山中工場長 | 1986年同社入社。関西工場製造部長、大栄鋼業社長、山中工場長、執行役員などを経て、2024年6月より現職。 |
| 細野豊 | 取締役(監査等委員)(常勤) | 1991年北國銀行入行。同行本店営業部部長、常務執行役員などを経て、2024年4月同社入社。2024年6月より現職。 |
社外取締役は、山中拓郎(元三菱地所リテールマネジメント社長)、鳥木千鶴(朝日放送テレビ事業局リーダー)、西尾宇一郎(公認会計士・税理士)、鈴木蔵人(弁護士法人色川法律事務所社員弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「鋼管関連」「自転車関連」「不動産等賃貸」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 鋼管関連
普通鋼鋼管、ステンレス鋼鋼管、各種型鋼、精密加工品等の製造販売を行っています。建築関連、物流関連、自動車関連、食品・医薬品向けなど幅広い分野に製品を供給しています。
製品の製造は同社、大栄鋼業、ステンレスパイプ工業、およびインドネシアの現地法人が行っています。販売は同社、アラヤ特殊金属、ステンレスパイプ工業、およびインドネシア現地法人が担当しており、製品販売による対価を収益源としています。
■(2) 自転車関連
自転車用リムの製造販売および完成自転車の販売を行っています。「アラヤ」および「ラレー」ブランドのスポーツ用自転車などを取り扱っています。
完成自転車は海外メーカーに製造を委託し、同社が販売を行っています。自転車用リムは同社が製造および販売を行っています。顧客への製品販売による対価が主な収益源です。
■(3) 不動産等賃貸
保有する土地、建物および倉庫等の不動産を外部に賃貸しています。東京都大田区や大阪府茨木市の地代収入、東京都江東区の自社ビル賃貸収入などが含まれます。
同社およびアラヤ特殊金属が事業を行っており、賃借人からの賃料収入を収益源としています。
■(4) その他
機械部品や福祉機器の製造および販売を行っています。
同社が事業を行っており、製品販売による対価を収益源としています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は2023年3月期をピークに減少傾向にあります。経常利益も同様に2023年3月期に最高益を記録した後、2期連続で減少しています。一方で、当期純利益は2024年3月期に落ち込みましたが、当期は回復しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 365億円 | 408億円 | 464億円 | 446億円 | 428億円 |
| 経常利益 | 10億円 | 38億円 | 49億円 | 26億円 | 19億円 |
| 利益率(%) | 2.6% | 9.3% | 10.7% | 5.7% | 4.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 9億円 | 15億円 | 20億円 | 15億円 | 17億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で減少しており、それに伴い売上総利益、営業利益ともに減少しています。特に営業利益の減少幅が大きく、営業利益率は低下しています。コスト面での負担増が利益を圧迫している様子がうかがえます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 446億円 | 428億円 |
| 売上総利益 | 78億円 | 77億円 |
| 売上総利益率(%) | 17.5% | 18.0% |
| 営業利益 | 21億円 | 16億円 |
| 営業利益率(%) | 4.6% | 3.8% |
販売費及び一般管理費のうち、発送配達費が21億円(構成比35%)、従業員給料手当が11億円(同18%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力である鋼管関連事業は売上高が減少し、利益は微増となりました。自転車関連事業は売上高が減少し、赤字幅が拡大しています。不動産等賃貸事業は安定的に収益を上げていますが、売上高・利益ともに横ばいから微減の状況です。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 鋼管関連 | 436億円 | 419億円 | 14億円 | 15億円 | 3.5% |
| 自転車関連 | 3億円 | 3億円 | -0.6億円 | -3億円 | -102.9% |
| 不動産等賃貸 | 6億円 | 6億円 | 5億円 | 5億円 | 86.0% |
| その他 | 0.2億円 | 0.2億円 | 0.0億円 | 0.1億円 | 52.4% |
| 調整額 | - | - | 1億円 | -0.4億円 | - |
| 連結(合計) | 446億円 | 428億円 | 21億円 | 16億円 | 3.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
新家工業は、営業活動で資金を創出し、投資活動で資産を運用し、財務活動で資金調達や株主還元を行っています。営業活動によるキャッシュ・フローは、売上債権の増加などにより、安定的に資金を生み出しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却収入が主な要因となり、資金増加に貢献しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払いと自己株式の取得が主な支出となり、資金減少となりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 29億円 | 27億円 |
| 投資CF | -7億円 | 6億円 |
| 財務CF | -10億円 | -61億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、事業活動を通じて優れた品質の製品を提供することで、各種ステークホルダーとの相互繁栄を図り、公正かつ誠実な企業運営をもって社会の発展に貢献することを経営の基本方針としています。
■(2) 企業文化
「モノづくりへのこだわりで世の中の課題をカタチに変える」をテーマに掲げ、長期ビジョン2033を策定しています。ソリューション製造業としての地位確立を目指し、サステナビリティ(ESG)の観点からも、環境への配慮や人的資本経営の推進、ガバナンス強化に取り組む姿勢を持っています。
■(3) 経営計画・目標
「中期経営計画2026」において、2027年3月期までの定量目標を定めています。経営基盤強化と成長戦略の基盤構築を進め、最終年度には以下の数値達成を目指しています。
* 売上高:467億円
* 営業利益:35億円
* 経常利益:37億円
* 当期純利益:26億円
* ROE:7.7%
* PBR:1.0倍
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画では、「経営基盤強化」と「成長戦略の基盤構築」を基本方針としています。鋼管事業では営業エリア拡大やグループ連携強化、自転車事業では新商品投入とコスト削減による黒字転換を図ります。また、将来を見据えた工場刷新や不動産事業の収益性改善、DX推進にも取り組みます。成長戦略としては、M&Aの検討やインドネシア拠点を起点としたASEAN市場開拓、研究開発部門の新設による技術革新を推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
経営理念の実現と持続的成長のため、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)を重視しています。多様な価値観を持つ人材を受け入れ、個々の能力を最大限に発揮できる組織文化の醸成を目指しています。また、中核人材の登用においては、年齢や性別に関わらず、公正な評価に基づき多様な人材を登用する方針です。女性活躍推進や高齢者活用、柔軟な働き方の整備にも取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.0歳 | 17.3年 | 5,797,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | -% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 87.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 85.2% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | -% |
※女性管理職比率および非正規雇用の男女賃金差異については、有価証券報告書の提出会社情報において該当データなし(「-」表記)となっています。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、グループにおける女性管理職比率(6.0%)、男性育児休業取得率(66.7%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 業界動向等
鋼管関連事業では、国際的な業界再編や商社の合併等により、材料調達や販売ルートが不安定になる可能性があります。また、自転車関連事業は輸入品が多く、為替変動によるコスト上昇や利益率低下のリスクがあります。
■(2) 材料の市況変動の影響
鋼管関連事業で使用する普通鋼やステンレス鋼の市場価格は、世界的な需給バランスや原料価格により変動します。材料価格の高騰時に販売価格への転嫁が遅れると収益が圧迫され、逆に価格下落時には在庫評価損が発生する恐れがあります。
■(3) 自然災害による影響
大規模な地震や台風などの自然災害が発生した場合、生産活動の停止や設備の損害により販売量が減少し、災害損失の計上などによって業績に悪影響を及ぼす可能性があります。



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