東京計器 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京計器 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の東京計器は、船舶港湾機器や防衛・通信機器、油空圧機器などを製造・販売する精密機器メーカーです。2025年3月期の連結業績は、防衛予算の増加や新造船向け機器の好調、円安効果などが寄与し、売上高・各利益ともに前期を上回る増収増益となり、過去最高益を更新しました。


※本記事は、東京計器株式会社 の有価証券報告書(第94期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 東京計器ってどんな会社?


船舶や航空機、産業機械向けの計測・制御機器を手掛ける老舗メーカー。防衛・宇宙関連事業も展開しています。

(1) 会社概要


1896年に和田計器製作所として創業し、日本初の圧力計製造を開始しました。1949年に東京証券取引所へ上場し、2008年に現在の東京計器へ社名変更しました。2022年には東証の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しています。長い歴史の中で計測・認識・制御技術を核に多角化を進めてきました。

連結従業員数は1,720名、単体では1,367名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は取引銀行である三井住友銀行、第3位は日本カストディ銀行(信託口)です。金融機関や取引先が主要株主として名を連ねており、安定した資本構成となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.50%
三井住友銀行 3.98%
日本カストディ銀行(信託口) 2.80%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は17.0%です。代表取締役社長執行役員は安藤毅氏です。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
安藤 毅 代表取締役社長執行役員 1981年入社。社長室長や制御システム事業部を経て、2017年に常務取締役就任。2018年より現職。
鈴木 由起彦 取締役執行役員サステナビリティ推進担当兼サステナビリティ推進室長 1981年入社。法務室長や技術生産サービス室長などを歴任。2022年より現職。
鹿島 孝弘 取締役常勤監査等委員 1992年入社。管理部経理部長や財務経理部経理部長を経て、2019年より現職。


社外取締役は、泉本小夜子(元有限責任監査法人トーマツパートナー)、中村敬(元三菱UFJインフォメーションテクノロジー社長)、橋本昭彦(元au損害保険代表取締役副社長執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「船舶港湾機器事業」「油空圧機器事業」「流体機器事業」「防衛・通信機器事業」および「その他の事業」を展開しています。

(1) 船舶港湾機器事業


商船市場向けにジャイロコンパス、オートパイロット、電子海図情報表示装置などの航海計器や通信機器を製造・販売しています。また、船舶の安全運航や省エネに寄与する製品の開発も行っています。

製品の販売代金や修理・アフターサービス料が主な収益源です。運営は主に同社が行い、一部の保守管理等は株式会社モコス・ジャパン、中国での販売・サービスは東涇技器(上海)商貿有限公司が担当しています。

(2) 油空圧機器事業


プラスチック加工機械、工作機械、建設機械などの産業機械向けに、油圧機器や油圧応用装置、電子制御装置などを提供しています。省エネ性能に優れたポンプシステムやデジタル技術を活用した製品も展開しています。

製品やシステムの販売対価が収益源です。運営は同社が行うほか、油圧応用装置は東京計器パワーシステム株式会社、部品製造はTOKYO KEIKI PRECISION TECHNOLOGY CO., LTD.などが担当しています。

(3) 流体機器事業


上下水道、農業用水、プラント向けに超音波流量計や電波レベル計などの流体計測機器を、またトンネル等の消火設備機器を提供しています。防災向けの計測システムなども手掛けています。

機器の販売および設置・メンテナンスに伴う対価が収益となります。運営は主に同社が行っています。

(4) 防衛・通信機器事業


防衛省向けに航空機用電子機器、艦艇用航海機器、レーダー警戒装置などを、海上保安庁向けに海上交通システム関連機器を提供しています。民需向けには道路・トンネル計測機器やマイクロ波応用機器も展開しています。

防衛省や官公庁、民間企業からの製品納入および保守サービス等の対価が収益源です。運営は同社が行い、部品販売や修理の一部を東京計器アビエーション株式会社が担当しています。

(5) その他の事業


印刷物検査装置等の検査機器、鉄道保線用のレール探傷車や計測機器などを提供しています。また、グループ内の物流、情報処理サービスなども含まれます。

製品販売や検査業務の請負料などが収益源です。運営は同社のほか、鉄道関連は東京計器レールテクノ株式会社、物流は東京計器テクノポート株式会社、情報処理は東京計器インフォメーションシステム株式会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は増加傾向にあり、特に直近の2025年3月期は大きく伸長しています。利益面でも、経常利益と当期純利益が大幅に増加し、利益率も向上しています。自己資本比率は50%台を維持しており、安定した財務基盤のもとで成長が続いています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 421億円 415億円 443億円 472億円 577億円
経常利益 15億円 19億円 17億円 30億円 50億円
利益率(%) 3.5% 4.6% 3.8% 6.3% 8.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 9億円 15億円 9億円 23億円 37億円

(2) 損益計算書


当期は売上高が大幅に増加し、それに伴い売上総利益、営業利益ともに大きく伸長しました。売上高営業利益率は前期間と比較して改善しており、収益性が高まっています。増収効果に加え、円安の影響なども利益を押し上げる要因となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 472億円 577億円
売上総利益 130億円 158億円
売上総利益率(%) 27.6% 27.5%
営業利益 28億円 49億円
営業利益率(%) 5.9% 8.4%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が27億円(構成比25%)、給料及び賃金が27億円(同24%)を占めています。

(3) セグメント収益


全セグメントで黒字を確保しています。特に防衛・通信機器事業は防衛予算の拡大を背景に大幅な増収増益となり、全社の利益成長を牽引しました。船舶港湾機器事業も新造船向け需要や円安効果で好調でした。一方、油空圧機器事業は市場環境の影響で減収減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
船舶港湾機器事業 110億円 125億円 10億円 16億円 12.4%
油空圧機器事業 117億円 115億円 3億円 2億円 1.7%
流体機器事業 48億円 50億円 7億円 8億円 15.7%
防衛・通信機器事業 162億円 244億円 4億円 16億円 6.7%
その他 35億円 42億円 5億円 8億円 17.8%
調整額 - - -1億円 -1億円 -
連結(合計) 472億円 577億円 28億円 49億円 8.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業は黒字ですが運転資金の増加等により営業CFがマイナスとなっており、借入によって投資を継続する「勝負型(事業拡大に伴う運転資金増)」です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -28億円 -5億円
投資CF -24億円 -40億円
財務CF 43億円 42億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は52.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「計測、認識、制御といった人間の感覚の働きをエレクトロニクスをはじめとする先端技術で商品化していく事業を核として、社会に貢献すること」を経営理念として掲げています。

(2) 企業文化


同社は、「常に技術を磨き、世界をリードする商品を開発する」「市場の変化を先取りして、新たな価値を創造する」といった7つの項目からなる経営理念に基づき行動しています。品質第一による顧客信頼の獲得、人材育成、公正な企業活動、環境保護などを重視する文化があります。

(3) 経営計画・目標


長期ビジョン「東京計器ビジョン2030」において、2030年度(2031年3月期)に向けた経営目標を設定しています。
* 連結売上高:1,000億円以上
* 連結営業利益:100億円以上
* 連結営業利益率:10%以上
* 自己資本利益率(ROE):10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


2030年のビジョン実現に向け、AIやIoT、宇宙ビジネス等の成長領域へ注力し、「グローバルニッチトップ事業」の創出を目指しています。中期経営計画では、「収益力の向上」「事業領域の拡大」「経営基盤の強化」を基本方針とし、M&Aやオープンイノベーションも活用しながら持続的な成長を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「自律型成長人材の育成」を基本方針とし、従業員が自ら考え行動し、変化に対応できる人材への成長を支援しています。自律的なキャリア形成のための研修や社内公募制度、資格取得支援を推進するとともに、挑戦を促す評価制度の導入や多様な働き方の実現に向けた環境整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.8歳 15.8年 6,573,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.8%
男性育児休業取得率 69.5%
男女賃金差異(全労働者) 64.9%
男女賃金差異(正規雇用) 68.7%
男女賃金差異(非正規雇用) 64.1%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 内外経済の変動リスク


国内外の経済状況の変化が事業に影響を与える可能性があります。船舶港湾機器事業では海運市況や新造船計画の変更、油空圧機器事業では産業機械や建設機械の需要変動が業績に影響します。特に地政学的リスクの高まりや米国の政策変更等が景気悪化を招き、需要低迷を引き起こすリスクがあります。

(2) 自然災害・疫病リスク


本社のある首都圏での巨大地震や、生産拠点のある栃木県等での風水害、未知の感染症の発生等が事業継続に影響を及ぼす可能性があります。これらによりインフラ寸断や物流停滞が生じた場合、業績や財務状況に悪影響を与えるリスクがあります。同社は危機管理マニュアルの整備やデータセンターの活用等の対策を講じています。

(3) 新商品の開発リスク


技術革新や市場ニーズの変化、規制の変更等に対し、新製品の開発や市場投入が遅れた場合、競争力の低下や機会損失を招く可能性があります。これは将来の成長や収益性を鈍化させ、経営目標の達成に影響を与えるリスクとなります。同社は開発委員会等を通じて技術戦略を推進し、リスクの早期把握に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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