※本記事は、株式会社東京計器の有価証券報告書(第95期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 東京計器ってどんな会社?
船舶や航空機、社会インフラなどを支える計測・認識・制御機器の製造・販売を展開する精密機器メーカーです。
■(1) 会社概要
同社は1896年に和田計器製作所として創立され、日本で初めて圧力計の製造を開始しました。1949年には東京証券取引所に株式を上場しました。1990年にトキメック、2008年に東京計器へ社名変更を行っています。2016年には監査等委員会設置会社へ移行し、2026年に本社を羽田空港へ移転しました。
現在の従業員数は連結で1,768名、単体で1,420名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は金融機関の三井住友銀行、第3位は資産管理業務を行う日本カストディ銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 11.20% |
| 三井住友銀行 | 3.98% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 2.98% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は17.0%です。代表取締役社長執行役員は安藤毅が務め、社外取締役比率は50.0%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 安藤毅 | 代表取締役社長執行役員 | 1981年同社入社。制御システム事業部コンバーティングプロジェクト長などを経て、2008年取締役執行役員に就任。その後、常務取締役、取締役社長を歴任し、2021年より現職。 |
| 吉村靖 | 取締役執行役員サステナビリティ推進担当兼サステナビリティ推進室長兼財務企画部長 | 1992年さくら銀行(現三井住友銀行)入行。同行浜松法人営業部長、人材開発部長などを経て、2025年同社執行役員に就任。2026年より現職。 |
| 鹿島孝弘 | 取締役常勤監査等委員 | 1992年同社入社。管理部経理部会計課長、同経理部長などを経て、2017年財務経理部経理部長に就任。2019年より現職。 |
社外取締役は、泉本小夜子(元監査法人トーマツパートナー)、橋本昭彦(元au損害保険代表取締役副社長執行役員)、黒田大(元アコム常務執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「船舶港湾機器事業」「油空圧機器事業」「流体機器事業」「防衛・通信機器事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 船舶港湾機器事業
ジャイロコンパスやオートパイロット、電子海図情報表示装置などの舶用機器を製造・販売し、修理などの保守サービスを提供しています。主に一般商船等の海運業界を顧客としています。
顧客への機器・部品の販売や修理などのアフターサービスから収益を得ています。運営は同社が行うほか、モコス・ジャパンが通信料金精算や保守管理を、東涇技器(上海)商貿有限公司が海外販売を担っています。
■(2) 油空圧機器事業
建設機械や工作機械などの産業機械メーカー向けに、各種ポンプや制御弁、油圧システム製品、電子制御装置などの油空圧機器・油圧応用装置の製造・販売・修理を行っています。
建設機械市場や工作機械市場などの顧客に対する製品の販売や修理代金から収益を得ています。運営は同社が行うほか、東京計器パワーシステムやTOKYO KEIKI PRECISION TECHNOLOGYなどが製造や販売を担っています。
■(3) 流体機器事業
上下水道や農業用水、発電所、プラントなどの社会インフラ分野向けに、超音波流量計や電波レベル計などの流体管理用計測器や立体駐車場向け消火設備の製造・販売・修理を行っています。
官公庁を中心とする顧客への製品・システムの販売および修理・保守サービスから収益を得ています。本事業の運営は同社が単独で行っています。
■(4) 防衛・通信機器事業
防衛省や海上保安庁などの官公庁向けに、航空機・艦艇搭載機器や海上交通システム関連機器を提供するほか、民需市場向けに通信機器やセンサー機器などの製造・販売・修理を行っています。
防衛関連機器などの製品納入や修理・役務の提供により収益を得ています。運営は主に同社が行い、部品販売や修理の一部を東京計器アビエーションが担当しています。
■(5) その他の事業
印刷関連産業向けの検査機器や、鉄道保線用の軌道検測装置などの鉄道機器の製造・販売・修理を行っています。また、物流や情報処理サービスなどの事業活動も展開しています。
製品の販売および修理代金のほか、荷造・梱包、ソフトウエア開発、ファクタリング業務などから収益を得ています。運営は同社や東京計器レールテクノ、東京計器インフォメーションシステムなどが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5年間の業績推移を見ると、売上高は継続的な成長を続けています。特に直近2期は防衛・通信機器事業の好調などを背景に売上高が大きく伸長しました。経常利益と利益率についても改善傾向が続いており、安定した収益基盤を確立しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 415億円 | 443億円 | 472億円 | 577億円 | 612億円 |
| 経常利益 | 19億円 | 17億円 | 30億円 | 50億円 | 55億円 |
| 利益率(%) | 4.6% | 3.8% | 6.3% | 8.7% | 9.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 13億円 | 5億円 | 23億円 | 37億円 | 35億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに前期を上回る結果となりました。高付加価値製品の販売強化や販売価格の適正化が進んだことで、売上総利益率および営業利益率も改善を見せています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 577億円 | 612億円 |
| 売上総利益 | 158億円 | 173億円 |
| 売上総利益率(%) | 27.5% | 28.2% |
| 営業利益 | 49億円 | 54億円 |
| 営業利益率(%) | 8.4% | 8.8% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が29億円(構成比24.2%)、給料及び賃金が28億円(同23.2%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の防衛・通信機器事業が防衛予算の増加を背景に好調に推移し、全体の売上高を牽引しました。また、船舶港湾機器事業においても保守サービス需要が高水準で推移し、油空圧機器事業や流体機器事業も堅調な推移を見せ、全報告セグメントで増収となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 船舶港湾機器事業 | 125億円 | 137億円 |
| 油空圧機器事業 | 115億円 | 118億円 |
| 流体機器事業 | 50億円 | 54億円 |
| 防衛・通信機器事業 | 244億円 | 260億円 |
| その他の事業 | 42億円 | 42億円 |
| 調整額 | - | - |
| 連結(合計) | 577億円 | 612億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、本業は赤字だが、将来成長のため借入で投資を継続する「勝負型」の傾向を示しています。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は53.7%で市場平均を上回っています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -5億円 | -2億円 |
| 投資CF | -40億円 | -52億円 |
| 財務CF | 42億円 | 17億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
経営理念として「計測、認識、制御といった人間の感覚の働きをエレクトロニクスをはじめとする先端技術で商品化していく事業を核として、社会に貢献すること」を掲げています。技術を磨き世界をリードする商品を開発し、品質を第一として顧客の信頼に応えながら、自然環境を保護し、社会に広く貢献する企業を目指しています。
■(2) 企業文化
同社グループは、多様な人材が個々の力を発揮して成長できる企業風土の醸成に取り組んでいます。従業員一人ひとりが個性や能力を最大限に発揮し、「果敢に挑戦する人」を求める人材像として定義しています。挑戦し、失敗から学び、成功体験を積むことを推奨する「挑戦風土の醸成」を重視し、自律的に成長する組織を目指しています。
■(3) 経営計画・目標
長期ビジョン「東京計器ビジョン2030」において、2030年度(2031年3月期)までに達成すべき経営目標を掲げています。持続的な成長と中長期的な企業価値向上を図るため、以下の数値を目標として設定しています。
* 売上高1,000億円
* 営業利益100億円
* 連結営業利益率10%以上
* 自己資本利益率(ROE)10%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画では、目標達成に向けて「収益力の向上」「事業領域の拡大」「経営基盤の強化」を重点施策としています。社会課題の解決に貢献する特定市場向けの新製品や新事業を創出する「ニッチトップ戦略」を推進し、事業領域の拡大に挑戦します。また、人的資本の強化やDXの推進、M&Aの活用により経営基盤を強固なものとします。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人的資本の強化」を人材戦略の基本方針とし、自律型成長人材の育成と多様な人材の活躍推進に取り組んでいます。従業員一人ひとりが自ら考え行動できるよう、キャリア形成支援や公的資格取得支援制度を整備しています。また、適材適所の配置を行い、性別や国籍などによらない採用・登用を通じて、働きがいと挑戦意欲あふれる風土の創出を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.0歳 | 15.2年 | 6,934,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 1.7% |
| 男性育児休業取得率 | 80.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 66.4% |
| 男女賃金差異(正規労働者) | 70.7% |
| 男女賃金差異(非正規労働者) | 67.8% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、キャリア採用比率(44.9%)、女性比率(17.7%)、外国籍比率(1.3%)、ストレスチェック受検率(96.3%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 内外経済の変動について
同社は国内外の様々な地域に商品を提供しているため、経済状況の変化や為替レートの変動による影響を受けます。海運市況の悪化による造船計画の変更や、産業機械メーカーの生産計画の変更などにより、需要が増減して収益性が低下し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 自然災害・疫病について
本社や主要な生産拠点が被災することで、事業継続に支障をきたすリスクがあります。巨大地震や気候変動に起因する大規模な風水害による社会インフラの寸断、未知の感染症による従業員の集団感染などが発生した場合、経営活動全般に影響を与え、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 新商品の開発について
同社は高付加価値商品やサービスの開発を継続的に行っていますが、革新的な新技術の台頭や市場要求の急速な変化を正確に予測できないリスクがあります。技術開発や商品化に遅れが生じた場合、競合商品に対抗できずに市場シェアが低下し、将来の成長や収益性に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 商品の品質について
顧客の信頼と満足を目指し品質管理に努めていますが、全ての商品に欠陥が発生しない保証はありません。大規模な商品改修やリコール、製造物責任賠償に繋がるような欠陥が発生した場合、同社の信用失墜や多額のコスト負担を招き、業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。