※本記事は、愛知時計電機株式会社の有価証券報告書(第102期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 愛知時計電機ってどんな会社?
創業120年を超える老舗メーカーで、ガス・水道メーター等の流体計測機器を主力とし、センサーとIoT技術で社会インフラを支えています。
■(1) 会社概要
1898年に時計製造を目的として設立され、1927年に水道メーター、1950年にガスメーターの製造を開始しました。1961年には東証一部へ上場を果たし、長きにわたり計測技術を磨いています。2022年の市場区分見直しにより、現在は東証プライム市場および名証プレミア市場へ移行しています。
連結従業員数は1,704名、単体では1,177名体制です。筆頭株主は外資系金融機関の常任代理人である香港上海銀行で、第2位は日本生命保険相互会社、第3位は資産管理を行う日本マスタートラスト信託銀行です。上位株主は金融機関や機関投資家が中心となっており、安定的な資本構成が見られます。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| THE HONGKONG AND SHANGHAI BANKING CORPORATION LTD‐SINGAPORE BRANCH PRIVATE BANKING DIVISION CLIENTS A/C 8221‐623793(常任代理人 香港上海銀行東京支店) | 8.60% |
| 日本生命保険相互会社 | 7.50% |
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 7.40% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長には國島賢治氏が就任しています。社外取締役比率は27.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 國島 賢治 | 取締役社長(代表取締役)社長執行役員 | 1986年入社。管理統括本部総務人事本部長、営業統括本部東京支店長、生産本部長などを経て2022年4月より現職。 |
| 星加 俊之 | 取締役会長(代表取締役) | 1978年入社。営業統括本部公共SS営業本部長、生産本部長、代表取締役社長などを経て2022年4月より現職。 |
| 吉田 豊 | 取締役常務執行役員技術担当R&D本部長 | 1987年入社。営業統括本部国際営業本部長、R&D本部長、技術担当などを経て2025年4月より現職。 |
| 安井 博司 | 取締役 | 1985年入社。営業統括本部産業システム営業本部長、営業本部長などを経て2025年4月より現職。 |
| 森 和久 | 取締役上席執行役員営業本部長 | 1986年入社。R&D本部長、営業本部国際営業部長などを経て2025年4月より現職。 |
社外取締役は、岡田千絵(弁護士)、笠野雅嗣(岡谷鋼機取締役)、板倉麻子(元名古屋テレビ放送執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「計測器関連事業」および「その他」事業を展開しています。
■計測器関連事業(ガス関連機器)
都市ガス用メーター、LPガス用メーター、工業用ガスメーターなどのガス計測機器や、圧力機器、ガス用検針システム等を提供しています。主な顧客はガス事業者です。
収益は、これらの機器販売やシステム提供から得ています。製造・販売は同社が行うほか、一部製造をアイセイテック等の子会社へ委託し、海外では関連会社等が製造・販売を行っています。
■計測器関連事業(水道関連機器)
各種上水道用メーター、工業用水・下水道用メーター、水道用検針システムなどを提供しています。地方自治体などの水道事業体が主な顧客です。
収益は、メーター等の製品販売や検針システムの提供から得ています。同社が製造・販売を行うほか、一部製造を連結子会社等に委託しています。
■計測器関連事業(民需センサー・システム)
工場民需市場向けに、各種流量計や機器組込用流量センサー等を提供しています。工場の省エネ管理や環境対策などを行う民間企業が顧客となります。
収益は、センサーや流量計の製品販売から得ています。製造・販売は同社が行っており、一部はアイテックス等の子会社が行っています。
■計測器関連事業(計装)
官需市場向けに、各種流量計ならびに計測・監視・制御システム等を提供しています。農業用水や河川管理などに関わる官公庁や公共団体が主な顧客です。
収益は、計測機器の販売やシステムの構築・提供から得ています。製造・販売は同社が主体となって行っています。
■その他(特機)
精密金型等の製造・販売を行っています。
収益は、金型製品の販売や修理から得ています。同社が製造、修理および販売を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は第98期の462億円から第102期の543億円へと着実に成長しています。経常利益も33億円から48億円へと増加傾向にあり、利益率は概ね7~9%台で推移し、安定した収益性を維持しています。当期は売上高、経常利益ともに過去最高を更新しました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 462億円 | 465億円 | 502億円 | 512億円 | 543億円 |
| 経常利益 | 33億円 | 38億円 | 47億円 | 43億円 | 48億円 |
| 利益率(%) | 7.1% | 8.2% | 9.3% | 8.3% | 8.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 27億円 | 27億円 | 30億円 | 34億円 | 37億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに増加しています。売上総利益率は約23%台で安定的に推移しており、営業利益率は7.1%から7.3%へと改善が見られます。原材料価格の上昇等はありましたが、増収効果により吸収し、増益を確保しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 512億円 | 543億円 |
| 売上総利益 | 120億円 | 124億円 |
| 売上総利益率(%) | 23.4% | 22.8% |
| 営業利益 | 36億円 | 39億円 |
| 営業利益率(%) | 7.1% | 7.3% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が34億円(構成比40.1%)、運賃及び荷造費が9億円(同10.9%)を占めています。
■(3) セグメント収益
各セグメントの売上高を見ると、主力のガス関連機器と水道関連機器が増収となり全体を牽引しています。特にガス関連機器は国内でのスマートメーターへの切り替えが進んだことで増加しました。一方、民需センサー・システムは海外向けが減少し減収となりました。なお、同社は全セグメントに占める計測器関連事業の割合が高いため、セグメント利益の記載は省略されています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| ガス関連機器 | 244億円 | 265億円 |
| 水道関連機器 | 177億円 | 189億円 |
| 民需センサー・システム | 31億円 | 26億円 |
| 計装 | 60億円 | 63億円 |
| その他 | 0.5億円 | 0.6億円 |
| 連結(合計) | 512億円 | 543億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFはプラス、投資CFもプラス、財務CFはマイナスとなっており、改善型(営業利益+資産売却で借入返済を進める改善局面)に該当します。なお、投資CFのプラスは、定期預金の解約や投資有価証券の売却による収入があったことによるものです。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 17億円 | 19億円 |
| 投資CF | -11億円 | 7億円 |
| 財務CF | -12億円 | -13億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は74.6%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「信頼・創造・奉仕」を企業理念として掲げています。センサーを核としたシステムやサービスを提供することで、社会生活や産業の発展に貢献し、顧客や社会からの信頼を得て永続的な発展を目指しています。
■(2) 企業文化
「人と地球にやさしい明日をつくる」というミッションと、「はかる技術とつなぐ技術でサステナブルな社会づくりに貢献する」というビジョンを掲げています。全部門が顧客の課題を共有し、全社一丸となって課題解決に取り組む姿勢や、自らを絶えずリファインして顧客に向き合うことを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
「中期経営計画2026」において、2027年3月期を最終年度とする数値目標を設定しています。
* 売上高:600億円
* 経常利益:50億円
* 当期純利益:37億円
* ROE:8.0%
■(4) 成長戦略と重点施策
市場・事業領域の拡大、基盤事業の競争力強化、企業価値の向上を基本戦略としています。計測分野では、データ配信サービスにおけるAI活用や付帯サービス連携、水素計測技術の進化、リユース・リサイクル促進に取り組みます。また、グローバル展開の加速や、生産設備の自動化・省人化、DX推進による業務改革にも注力する方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「信頼・創造・奉仕」の企業理念を実現するため、自律的に課題に取り組み、多様な人々と協働できる人材の育成を目指しています。階層別研修や女性活躍推進研修、DX推進研修などを実施し、教育機会を拡充しています。また、健康経営や多様な働き方の環境整備を通じて、人材の確保とエンゲージメント向上を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 45.0歳 | 17.3年 | 5,855,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 1.3% |
| 男性育児休業取得率 | 65.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 55.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 56.6% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 51.3% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員エンゲージメント診断結果(3.33/5)、総合職研修時間(13.1時間/人)、新卒採用(総合職)に占める女性割合(25.1%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 品質リスク
国際的な品質マネジメントシステムに従い製造していますが、製品に欠陥が生じた場合、リコール等の対応が必要となり、業績や社会的信用に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 市場環境リスク
国内外の市場におけるニーズの変化、競争激化、法規制の変更等に対応する必要があります。また、主要原材料である銅、アルミニウム、石油化学製品等の国際市況高騰がコストダウンで吸収しきれない場合、業績に悪影響が及ぶ可能性があります。
■(3) 海外事業リスク
アジア諸国に生産拠点を展開しており、予期せぬ法規制の変更、政治変動、戦争・テロ等のリスクが顕在化した場合、事業遂行に支障が生じ、業績に悪影響を与える可能性があります。
■(4) 財務リスク
時価のある有価証券や退職給付信託資産を保有しており、株価の急激な下落などの経済情勢悪化により評価損失が発生した場合、自己資本比率の低下や退職給付費用の増加など、業績および財政状態に悪影響が及ぶ可能性があります。



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