※本記事は、愛知時計電機株式会社の有価証券報告書(第103期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 愛知時計電機ってどんな会社?
ガスメーターや水道メーターなど計測器関連事業を主力とし、スマートメーターの展開も進める企業です。
■(1) 会社概要
1898年に各種時計の製造を目的として設立され、1927年に水道メーター、1950年にガスメーターの製造を開始しました。1949年に名証第一部、1961年に東証第一部に上場し、近年は中国やベトナム等の海外拠点拡大やデータ配信サービスを展開しています。
従業員数は連結1,719名、単体1,182名です。筆頭株主は香港上海銀行東京支店を通じて投資を行う外国法人等で、第2位および第3位は機関投資家や信託銀行等の金融機関となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| THE HONGKONG AND SHANGHAI BANKING CORPORATION LTD‐SINGAPORE BRANCH PRIVATE BANKING DIVISION CLIENTS A/C 8221‐623793(常任代理人 香港上海銀行東京支店) | 9.20% |
| 日本生命保険相互会社 | 7.50% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 7.00% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長 社長執行役員は國島賢治が務めています。社外取締役比率は30.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 星加俊之 | 取締役会長(代表取締役) | 1978年4月同社入社。2008年執行役員、2015年取締役上席執行役員等を経て、2017年より代表取締役社長・社長執行役員。2022年4月より現職。 |
| 國島賢治 | 取締役社長(代表取締役)社長執行役員 | 1986年4月同社入社。2013年執行役員、2020年取締役上席執行役員等を経て、2022年4月より現職。 |
| 吉田豊 | 取締役常務執行役員技術担当 | 1987年1月同社入社。2013年執行役員、2017年取締役上席執行役員等を経て、2023年4月より現職。 |
| 森和久 | 取締役常務執行役員営業本部長 | 1986年4月同社入社。2015年執行役員、2023年取締役上席執行役員等を経て、2026年4月より現職。 |
社外取締役は、岡田千絵(鹿倉法律事務所パートナー)、笠野雅嗣(岡谷鋼機顧問)、板倉麻子(オフィス板倉麻子開業)です。
2. 事業内容
同社グループは、「計測器関連事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 計測器関連事業
都市ガス・LPガス用のガスメーターや各種水道メーターの製造販売を中心に、工場向けの流量計や官公庁向け計測監視システムなどを提供しています。さらに、通信機能を持たせたスマートメーターと連動するデータ配信サービスも展開し、インフラ事業者や一般企業を主な顧客としています。
収益源は、メーター類やセンサー機器などの製品販売代金のほか、システム導入に関わる工事代金、およびデータ配信サービスの利用料から構成されています。事業の運営は主に同社が行うほか、製造の一部をアイセイテックや大連愛知時計科技有限公司などの子会社・関連会社が担っています。
■(2) その他
報告セグメントに含まれない事業として、特機事業を展開しています。具体的には、自社の生産基盤や技術力を活かして精密金型等の製造を行っています。
顧客からの精密金型等の製品販売代金や修理代金を主な収益源としています。当該事業の製造、修理、および販売はすべて同社が主体となって運営しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、インフラ関連の堅調な更新需要やスマートメーター化の進展に支えられ、継続的な増収傾向にあります。特に当期は経常利益や当期利益も過去最高を更新し、利益率も8.8%へと安定的に推移しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 465億円 | 502億円 | 512億円 | 543億円 | 591億円 |
| 経常利益 | 38億円 | 47億円 | 43億円 | 48億円 | 52億円 |
| 利益率(%) | 8.2% | 9.3% | 8.3% | 8.8% | 8.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 27億円 | 30億円 | 34億円 | 37億円 | 48億円 |
■(2) 損益計算書
インフラ向け機器等の需要増により売上高が増加したことで、売上総利益および営業利益ともに前期を上回る実績となりました。原価コントロールの効果もあり、営業利益率は8.0%に改善しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 543億円 | 591億円 |
| 売上総利益 | 124億円 | 147億円 |
| 売上総利益率(%) | 22.8% | 24.9% |
| 営業利益 | 39億円 | 47億円 |
| 営業利益率(%) | 7.3% | 8.0% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が35億円(構成比35%)、製品保証引当金繰入額が14億円(同14%)、運賃及び荷造費が10億円(同10%)を占めています。売上原価のベースとなる製造費用の内訳としては、材料費が347億円(構成比74%)、経費が73億円(同16%)、労務費が48億円(同10%)を占めています。
■(3) セグメント収益
計測器関連事業は、国内外でのメーター需要やスマート化関連製品の販売増により増収となりました。一方で特機事業などのその他セグメントは微減となっています。全社的に計測器関連事業が業績を牽引しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 計測器関連事業 | 542億円 | 591億円 |
| その他 | 0.6億円 | 0.5億円 |
| 連結(合計) | 543億円 | 591億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も74.8%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「信頼・創造・奉仕」を企業理念に掲げています。センサーを核としてシステムやサービスを顧客に提供することで社会生活や産業の発展に貢献し、顧客や社会の信頼を得て永続的に発展することを目指しています。中長期のミッションとしては「人と地球にやさしい明日をつくる」を定めています。
■(2) 企業文化
激しく変化する事業環境を勝ち抜くため、自社の強みであるコア技術を進化させるだけでなく、絶えず自らを振り返り、リファインされた姿で顧客と向き合うことを重視しています。全部門が顧客の課題を共有し、全社一丸となって課題解決に取り組む姿勢が企業文化として根付いています。
■(3) 経営計画・目標
2024年度から2026年度までを対象とする「中期経営計画2026」を策定し、「はかる技術とつなぐ技術でサステナブルな社会づくりに貢献する」というビジョンのもと、持続的な成長を目指しています。
・2027年3月期 売上高 600億円
・2027年3月期 経常利益 50億円
・2027年3月期 当期純利益 37億円
・2027年3月期 ROE 8.0%
■(4) 成長戦略と重点施策
「市場、事業領域の拡大」「基盤事業の競争力強化」「企業価値の向上」の3点を基本戦略としています。具体的には、データ配信サービスの連携拡大やAI技術の活用、脱炭素社会に向けた水素計測技術の進化を進めるほか、生産設備の自動化や省人化、全社でのDX推進による業務改革に取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「信頼・創造・奉仕」の企業理念を実現できる人材を育成するため、失敗を恐れず課題に自ら積極的に取り組める人材や、多様な人々の力を引き出し協同できる人材の育成を方針としています。また、人的資本経営をサステナビリティ戦略の柱に据え、エンゲージメントの向上や多様な人材の活躍を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 45.2歳 | 17.5年 | 6,089,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 1.4% |
| 男性育児休業取得率 | 92.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 58.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 59.1% |
| 男女賃金差異(非正規雇用労働者) | 53.7% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員エンゲージメント診断結果(3.39)、総合職研修時間(年間15.1時間)、新卒採用(総合職)に占める女性割合(28.8%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市場環境リスク
国内外の市場におけるニーズの変化、競争環境、法規制等の改定、通信インフラの動向に迅速に対応できない場合、業績に悪影響が及ぶ可能性があります。また、銅やアルミニウム等の原材料価格が高騰した場合も収益を圧迫するリスクがあります。
■(2) 海外事業リスク
アジア諸国等に生産拠点を展開しているため、予期しない法規制の変更や政治変動、戦争・テロなどの不可避なリスクが内在しており、これらが発生した場合は事業遂行に支障が生じる可能性があります。
■(3) 情報通信リスク
事業活動を通じて個人情報や技術・契約等の機密情報を保有しているため、サイバー攻撃等による不正アクセスや情報の破壊・漏洩が発生した場合、事業継続に支障が生じ、社会的信用の失墜につながるリスクがあります。



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