セイコーグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

セイコーグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する、時計・電子デバイス・システムソリューション事業を展開する企業グループです。主力のエモーショナルバリューソリューション事業(ウオッチ等)が好調に推移し、連結売上高は3,047億円(前期比10.1%増)、営業利益は212億円(同44.1%増)と増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社セイコーグループ の有価証券報告書(第164期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. セイコーグループってどんな会社?


腕時計「セイコー」ブランドを中心に、電子デバイスやシステムソリューションも展開する持株会社です。

(1) 会社概要


1881年の創業後、1892年に時計製造工場精工舎を設立し、1917年に株式会社服部時計店となりました。1969年には世界初のクオーツウオッチを発売し、時計史に名を残しています。2001年にウオッチ事業を分社化して持株会社体制へ移行し、2022年に現在の商号へ変更しました。近年は「グランドセイコー」の独立ブランド化や、システムソリューション事業の拡大を進めています。

連結従業員数は11,367名、単体従業員数は180名です。大株主は、資産管理を行う信託銀行のほか、不動産管理等を行う三光起業や創業家出身の服部悦子氏が名を連ねており、創業家との関係性が深い資本構成となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.50%
三光起業 10.70%
服部 悦子 8.70%

(2) 経営陣


同社の役員は男性14名、女性1名の計15名で構成され、女性役員比率は6.7%です。代表取締役社長は高橋修司氏です。取締役10名のうち社外取締役は4名で、その比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
服部 真二 代表取締役会長兼グループCEO兼グループCCO 1975年三菱商事入社。精工舎、セイコーウオッチ社長等を経て2010年同社社長。2012年会長兼グループCEO。2020年より現職。和光取締役会長も兼任。
高橋 修司 代表取締役社長 1980年同社入社。セイコーウオッチ執行役員、取締役、社長兼COO兼CMO等を歴任。2016年同社常務、2021年6月より現職。
内藤 昭男 取締役・専務執行役員 1984年同社入社。SEIKO Australia社長、同社法務部長、常務等を経て2021年セイコーウオッチ社長。2022年6月より現職。
関根 淳 取締役・専務執行役員 日本アイ・ビー・エム執行役員、SAPジャパンバイスプレジデント等を経て2015年セイコーソリューションズ入社。2017年同社社長。2022年6月より現職。
米山 拓 取締役・常務執行役員 1986年同社入社。経営企画部長、セイコーウオッチ専務執行役員等を経て2023年同社常務執行役員・経営管理本部長。2023年6月より現職。
遠藤 洋一 取締役・常務執行役員 1986年セイコー電子工業(現セイコーインスツル)入社。セイコーNPC社長を経て2024年4月同社常務執行役員、セイコーインスツル社長。2024年6月より現職。


社外取締役は、齊藤昇(BIPROGY社長)、小堀秀毅(日本経済団体連合会副会長・旭化成取締役会長)、魚谷雅彦(Accenture plc取締役・元資生堂会長CEO)、漆紫穂子(学校法人品川女子学院理事長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「エモーショナルバリューソリューション事業」、「デバイスソリューション事業」、「システムソリューション事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) エモーショナルバリューソリューション事業


ウオッチ(腕時計)の製造・卸売・小売、クロック(置時計・掛時計)の製造・販売、および高級宝飾・服飾・雑貨品の小売を行っています。「セイコー」「グランドセイコー」等のブランドを展開し、国内および海外市場へ製品を提供しています。

収益は、製品の販売対価や修理・アフターサービス料などから得ています。運営は、主にセイコーウオッチが卸売を、盛岡セイコー工業などが製造を担い、和光が高級品小売を、セイコータイムクリエーションがクロック事業を行っています。

(2) デバイスソリューション事業


電子デバイス(水晶振動子、マイクロ電池等)、精密デバイス、プリンティングデバイス等の製造・販売を行っています。自動車、家電、通信機器などのメーカーを主な顧客としています。

収益は、各種デバイス製品の販売により得ています。運営は、主にセイコーインスツルが担っており、国内外の製造・販売拠点で事業を展開しています。

(3) システムソリューション事業


システム関連(IT性能管理含む)、IoT関連、決済関連ビジネスに係る製品の開発・販売、保守サービス、ソフトウェアの受託開発を行っています。企業や官公庁などの法人顧客に対し、DX支援や決済インフラなどを提供しています。

収益は、製品販売、保守サービス料、ソフトウェア開発料などから得ています。また、保守サービスは契約期間にわたり収益を認識します。運営は、主にセイコーソリューションズが行っています。

(4) その他


上記セグメントに含まれない事業として、主に不動産賃貸事業などを行っています。

収益は、保有する不動産の賃貸料などから得ています。運営は、主に京橋起業が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は直近5期間で増加傾向にあり、特に直近の2025年3月期は3,000億円台に到達しました。利益面でも、経常利益および当期純利益ともに拡大基調が続いており、収益性が向上しています。当期純利益は連続して増益となっており、業績は堅調に推移しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2,027億円 2,374億円 2,605億円 2,768億円 3,047億円
経常利益 6億円 99億円 112億円 159億円 208億円
利益率(%) 0.3% 4.2% 4.3% 5.7% 6.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 16億円 33億円 26億円 36億円 45億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益も増加しています。売上総利益率は前年よりも改善しており、収益性が高まっています。営業利益も増益となり、営業利益率も上昇しました。全体として、増収効果と利益率の改善により、収益構造が強化されていることが読み取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2,768億円 3,047億円
売上総利益 1,227億円 1,371億円
売上総利益率(%) 44.3% 45.0%
営業利益 147億円 212億円
営業利益率(%) 5.3% 7.0%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が409億円(構成比35.3%)、広告宣伝販促費が226億円(同19.5%)を占めています。

(3) セグメント収益


全セグメントで増収増益となりました。主力のエモーショナルバリューソリューション事業は売上・利益ともに最大で、全社業績を牽引しています。デバイスソリューション事業とシステムソリューション事業も増収増益となり、特にシステムソリューション事業は高い利益率を維持しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
エモーショナルバリューソリューション事業 1,854億円 2,012億円 173億円 224億円 11.1%
デバイスソリューション事業 532億円 574億円 21億円 29億円 5.1%
システムソリューション事業 373億円 452億円 47億円 51億円 11.2%
その他 4億円 4億円 2億円 2億円 47.7%
調整額 5億円 5億円 -96億円 -93億円 -
連結(合計) 2,768億円 3,047億円 147億円 212億円 7.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動によるキャッシュ・フローがプラスで、投資活動および財務活動によるキャッシュ・フローがマイナスであることから、本業で創出した現金を投資や借入金の返済に充当している「健全型」と言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 327億円 326億円
投資CF -151億円 -91億円
財務CF -230億円 -165億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.7%でプライム市場の平均(9.4%)を下回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は42.2%でプライム市場(製造業)の平均(46.8%)を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「革新へのあくなき挑戦で、人々と社会に信頼と感動をもたらし、世界中が笑顔であふれる未来を創ります」というパーパスを掲げています。すべての活動はこのパーパスを原点とし、「社会に信頼される会社であること」という企業理念のもとに行われています。

(2) 企業文化


同社は「匠・小・省」と「デジタル」の融合を重視し、技術を進化させ新たな価値を創造する姿勢を持っています。また、サステナビリティ方針として「WITH」(Well-being、Inclusion、Trust、Harmony)を掲げ、グループの成長とともに持続可能な社会発展に貢献することを目指しています。

(3) 経営計画・目標


2026年度を最終年度とする第8次中期経営計画「SMILE145」を推進しています。2026年度の目標として、連結営業利益250億円、連結ROIC 6.5%超、ROE 9%超などを掲げ、高付加価値・高収益な製品・サービスを提供するソリューションカンパニーへの変革を目指しています。

* 連結営業利益:250億円
* 連結GP率:46.8%
* 連結ROIC:6.5%超
* ROE:9%超

(4) 成長戦略と重点施策


「MVP戦略(Moving, Valuable, Profitable)」を基本方針とし、3つの戦略ドメイン(エモーショナルバリュー、デバイス、システム)での成長を目指しています。特にウオッチ事業の海外での売上拡大、システムソリューション事業のサービス・顧客拡大を中核とし、M&AやDX、人材への投資を強化する方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材育成、ダイバーシティ推進、組織風土づくりを重点テーマとしています。次世代経営リーダーやミドルマネジメント層の育成、女性活躍推進や男性育休取得の促進、副業・兼業など柔軟な働き方の整備に取り組んでいます。また、「個」の強みを活かし、イノベーションを創出する風土醸成に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.8歳 16.4年 8,774,771円


※平均年間給与は、賞与及び時間外手当が含まれております。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 24.1%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 78.6%
男女賃金差異(正規雇用) 77.5%
男女賃金差異(非正規雇用) 55.8%


※同社(提出会社)における男性労働者の育児休業取得率は、対象となる従業員がいなかったため記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 景気変動等のリスク


ウオッチや電子部品など個人消費に関連する製品を扱っているため、国内外の景気動向や個人消費の影響を受けます。世界130以上の国・地域で販売しており、常に何らかの影響を受ける可能性がある一方、リスク分散も図られています。

(2) 特定の調達先への依存


ウオッチ事業において、特定の取引先への調達依存度が高くなっています。そのため、エモーショナルバリューソリューション事業の業績は、当該取引先との取引条件等の変更によって大きな影響を受ける可能性があります。

(3) デバイスソリューション事業の経営環境


電子デバイス事業は技術革新や量産化の速度が速く、価格競争も激しい環境にあります。市場環境の変化への対応が遅れた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。高付加価値・高収益製品へのシフトを進めることで対応を図っています。

(4) 海外製造拠点のカントリーリスク


シンガポール、マレーシア、タイ、中国などに製造拠点を有しており、現地の政治・経済・社会情勢の変動が生産活動に影響を与える可能性があります。製造ラインを複数の地域で稼働させるなどのリスク低減策を講じています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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