シチズン時計 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

シチズン時計 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

シチズン時計は東京証券取引所プライム市場に上場し、主に時計事業、工作機械事業、デバイス事業を展開しています。直近の業績では、時計事業における北米市場での販売拡大や、工作機械事業における海外市場の需要回復などが牽引し、増収増益を達成しました。ブランド価値の向上と高付加価値製品の展開を推進しています。


※本記事は、シチズン時計株式会社の有価証券報告書(第141期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. シチズン時計ってどんな会社?


時計や工作機械、デバイスの製造・販売をグローバルに展開する精密機器メーカーです。

(1) 会社概要


1930年に大日本時計として創立し、腕時計の製造・販売を開始したのちシチズン時計に改称しました。1949年に東京証券取引所へ上場し、その後、工作機械やデバイス事業などを開始して事業の多角化を進めました。近年ではスイスの時計メーカーを傘下に収めるなど、グローバル展開とブランド価値の向上を加速させています。

現在の従業員数は連結で12,147名、単体で770名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位も信託業務を行う日本カストディ銀行、第3位には事業会社である日本生命保険相互会社が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行 13.78%
日本カストディ銀行 9.15%
日本生命保険相互会社(常任代理人 日本マスタートラスト信託銀行) 4.88%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性3名の計10名で構成され、女性役員比率は30.0%です。代表取締役社長は大治良高氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
大治良高 代表取締役社長 1986年同社入社。時計事業統括本部マーケティング本部付などを経て、2022年より時計事業本部長。2025年4月より現職。
古川敏之 専務取締役経営企画部・デジタル統括センター担当、デバイス事業担当 1986年同社入社。経営企画部長や経理部・広報IR室担当などを歴任し、2025年4月より現職。
宮本佳明 常務取締役グループリスクマネジメント、人事部・総務部・CSR室担当 1990年同社入社。海外子会社の代表取締役社長や総務部長などを経て、2025年4月より現職。
小林啓一 取締役広報IR室・サステナビリティ推進部・研究開発部・知的財産部担当 1992年シチズン商事入社。海外子会社の代表取締役社長や経営企画部長を経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、窪木登志子(弁護士)、大澤善雄(SCSK元代表取締役社長)、吉田勝彦(花王元代表取締役専務執行役員)、石田八重子(弁護士)、山中典子(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「時計事業」「工作機械事業」「デバイス事業」を展開しています。

時計事業


ウオッチおよびムーブメントの製造・販売を行っており、一般消費者や時計メーカーが主な顧客です。「シチズン」をはじめ、「ブローバ」「フレデリック・コンスタント」などのブランドを展開し、部品製造から完成品の組み立て、販売までの一貫した事業体制を構築しています。
主な収益源は、時計製品やムーブメントの販売代金です。運営はシチズン時計を中心に、シチズン時計マニュファクチャリングなどの国内子会社や、アメリカ、ヨーロッパ、アジア地域にある多数の販売・製造子会社が担っています。

工作機械事業


CNC自動旋盤などの工作機械やその周辺装置の製造・販売を行っており、自動車、医療、IT、半導体など多様な製造業を顧客としています。主力ブランドとして「シンコム」や「ミヤノ」を展開し、生産性向上に貢献するソリューションを提供しています。
主な収益源は、工作機械の販売代金やソリューション提供に伴う対価です。運営は主にシチズンマシナリーが担い、タイ、フィリピン、ベトナム、中国などの製造拠点と、欧州や中国などの販売子会社を通じてグローバルに展開しています。

デバイス事業


自動車部品、水晶デバイス、セラミックス、小型モーター、プリンター、健康機器、LEDなどの製造・販売を行っており、自動車メーカーやスマートフォンメーカー、医療機器メーカーなどが顧客です。
主な収益源は、各種デバイスや電子機器の販売代金です。運営は主にシチズンファインデバイス、シチズン・システムズ、シチズン電子が担い、国内外の生産拠点およびアメリカやヨーロッパなどの販売子会社を通じて事業を展開しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は安定して成長を続けており、特に直近の事業年度においては大幅な増収を達成しています。経常利益も概ね堅調に推移し、直近では利益率が改善し高水準を記録するなど、収益力の向上が見られます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2,814億円 3,014億円 3,128億円 3,169億円 3,468億円
経常利益 273億円 291億円 308億円 230億円 385億円
利益率(%) 9.7% 9.7% 9.8% 7.3% 11.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 57億円 263億円 286億円 234億円 215億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益推移を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益も順調に拡大しており、売上総利益率も改善しています。これに加え、営業利益率も上昇しており、本業の収益性が高まっていることがうかがえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 3,169億円 3,468億円
売上総利益 1,346億円 1,495億円
売上総利益率(%) 42.5% 43.1%
営業利益 206億円 303億円
営業利益率(%) 6.5% 8.7%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が389億円(構成比33%)、広告宣伝費が244億円(同20%)を占めています。

(3) セグメント収益


時計事業は北米市場での販売拡大や高付加価値製品の強化が奏功し増収となりました。工作機械事業も欧米やアジアでの需要が堅調に推移して収益を伸ばし、デバイス事業も選択と集中の効果で安定した売上を維持しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
時計事業 1,792億円 1,971億円
工作機械事業 743億円 863億円
デバイス事業 634億円 635億円
連結(合計) 3,169億円 3,468億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 358億円 388億円
投資CF -100億円 -155億円
財務CF -125億円 -177億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.3%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は62.6%となっており、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「市民に愛され市民に貢献する」という企業理念を基盤とし、地域社会および地球環境と調和した永続的な企業活動を通じて、社会への貢献と企業価値の向上に努めています。この理念のもと、世の中に安心と信頼、そして感動を届け、豊かな未来をつなぐ存在になることを目指しています。

(2) 企業文化


長期ビジョンの実現に向けて、「豊かな未来(とき)をつなぐ」、“Crafting a new tomorrow”というグループ中期経営ビジョンを掲げています。サステナブル社会やデジタル社会に対応し、成長できる企業グループへの変革を目指しており、新たな価値創造に挑戦し続ける文化を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


2025年度から2027年度までの3か年を対象とする「中期経営計画2027」において、以下の中長期的な数値目標を掲げています。

* 売上高 3,600億円
* 営業利益率 9.0%
* ROE 9.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


時計事業と工作機械事業を成長を牽引するコア事業と位置づけ、経営資源を戦略的に投資して更なる成長を目指します。デバイス事業は事業や製品の選択と集中を進めます。また、DX戦略の推進を通じて業務プロセスや製品・サービスの変革を図り、高収益体質への転換や新たなビジネスモデルの構築に取り組みます。

* 工作機械事業で売上高1,000億円の実現

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「社員一人一人が長期ビジョンの実現に貢献しシチズンで働くことへ誇りを感じていること」を人財ビジョンとして掲げています。「働きがいの向上」「人財の育成」「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン」を重点施策とし、従業員エンゲージメントの向上やキャリア自律の支援、変革を牽引する次世代リーダーの計画的な育成を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.9歳 17.4年 7,894,999円


※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.7%
男性育児休業取得率 125.0%
男女賃金差異(全労働者) 79.4%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 81.1%
男女賃金差異(非正規雇用労働者) 86.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、1人当たりの平均研修時間(15.1時間)、CO2排出量削減率(51.9%)、サステナブルプロダクツ売上比率(27.8%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 時計事業における市場縮小と競争激化


ファッションウオッチ市場の縮小やスマートウオッチ市場の拡大により、低価格帯を中心としたアナログクオーツ市場が減少傾向にあります。加えて、国内外の競合メーカーとの競争が激化しており、販売数量の減少やシェア低下が生じるリスクがあります。

(2) 地政学的リスクによるサプライチェーンへの影響


中東情勢の緊迫化などに伴うエネルギー価格の高騰や原材料費の上昇、または物流やサプライチェーンに支障が生じた場合、同社グループの生産活動や業績に大きな影響を与える可能性があります。

(3) 特定の地域における生産依存リスク


中国は同社グループの主要な生産拠点の一つです。同地域において何らかのトラブルによる生産支障が発生した場合や、生産に影響を及ぼすような法規制の実施、または為替の大幅な変動が生じた場合、業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。

(4) 情報セキュリティおよびサイバー攻撃のリスク


外部からのサイバー攻撃や不正なアクセスによって情報システムに支障が生じた場合、事業活動が停止する恐れがあります。また、保持している機密情報や個人情報が権限なく開示された場合、損害賠償や信用の低下を招き、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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