リズム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

リズム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する同社は、精密部品と生活用品を主軸とするメーカーです。第5期連結会計年度は、精密部品事業における空調関連の好調や、生活用品事業での快適品の伸長により、売上高は327億円(前期比0.2%増)と微増し、営業利益は8.2億円(同11.9%増)の増益を達成しました。


※本記事は、リズム株式会社 の有価証券報告書(第5期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. リズムってどんな会社?


同社は、時計製造で培った精密加工技術を活かし、自動車や産業機器向けの「精密部品事業」と、クロックやファンなどの「生活用品事業」を展開する企業です。

(1) 会社概要


1950年にリズム時計工業として設立され、1963年に東証二部へ上場しました。その後、1972年に東証一部へ指定替えとなり、2020年には東北リズム、リズム協伸との三社合併を経て、現在の商号である「リズム」へ変更しました。2022年には東証プライム市場へ移行し、近年では2023年にリズム翔栄を新設して事業を譲受するなど、グループ再編を通じて体制強化を図っています。

同グループは連結従業員数2,449名、単体従業員数469名の体制で運営されています。主要株主の状況を見ると、筆頭株主は植島幹九郎氏(持株比率14.40%)、第2位は株式会社UESHIMA(12.00%)、第3位は株式会社DOE5パーセント(11.10%)となっています。

氏名 持株比率
植島 幹九郎 14.40%
UESHIMA 12.00%
DOE5パーセント 11.10%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は湯本武夫氏が務めています。社外取締役比率は36.4%です。

氏名 役職 主な経歴
湯本 武夫 代表取締役社長 1973年同社入社。香港や中国子会社の社長、東北リズム社長などを経て、プレシジョン事業担当や生産本部長を歴任。2023年4月より現職。
平田 博美 取締役会長 1978年協伸工業(現リズム)入社。同社社長を経て、リズム取締役常務執行役員、代表取締役社長を歴任。2023年4月より現職。
北嶋 芳一 取締役執行役員生産本部長 1984年協伸工業入社。技術部長やベトナム子会社役員等を歴任。2024年4月に同社執行役員生産本部長に就任し、2025年4月より現職。
相澤 竜也 取締役執行役員管理本部長 1990年協和銀行入行。りそなマーチャントバンクアジアCEO等を経て2019年同社入社。経営企画部長等を務め、2024年6月より現職。
山本 典久 取締役執行役員営業本部長 1989年協伸工業入社。営業部長や同社取締役を経て、2023年4月に同社執行役員営業本部長に就任。2024年6月より現職。
酒井 清貴 取締役(常勤監査等委員) 1983年同社入社。香港・中国子会社社長、時計事業部長、コンプライアンス推進室長などを経て、2020年7月より現職。


社外取締役は、鈴木欽哉(公認会計士)、内田ひとみ(株式会社HUGRES代表取締役)、吉田秀康(弁護士)、宮嶋孝(元りそなキャピタル社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「精密部品事業」、「生活用品事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 精密部品事業


このセグメントでは、自動車、産業機器、光学機器、事務・通信機、太陽光発電、家電などに使用される精密部品や高難度精密金型の製造販売を行っています。また、電子機器等のEMS(受託製造サービス)、情報関連機器、車載関連機器なども取り扱っており、BtoBビジネスが主体です。

収益は、自動車メーカーや機器メーカー等の顧客への製品販売によって得ています。運営は主にリズム、株式会社プリテック、リズム翔栄、および中国、ベトナム、インドネシアの海外製造子会社などが行っています。

(2) 生活用品事業


このセグメントでは、掛時計・置時計・目覚時計などのクロック製品に加え、防災行政ラジオ、加湿器、USBファン(モバイルファン)などの「快適品」の製造販売を行っています。一般消費者向けのBtoCビジネスが中心です。

収益は、卸売業者や小売店、ECを通じた製品販売によって得ています。運営については、製造をリズムや中国子会社が行い、販売をリズムおよび米国、香港の子会社などが担っています。

(3) その他


報告セグメントに含まれない事業として、物流事業等を行っています。

収益は、物流サービスの提供等により得ています。運営はリズムサービスなどのグループ会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


第1期から第5期までの業績を見ると、売上高は273億円から327億円へと着実に拡大しています。利益面では、第1期に損失を計上していましたが、第2期以降は黒字化し、経常利益は12億円前後で安定的に推移しています。当期純利益についても第1期の赤字から回復し、第5期には11億円の利益を確保するなど、収益性の改善傾向が見られます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 273億円 300億円 312億円 326億円 327億円
経常利益 6億円 13億円 12億円 13億円 12億円
利益率(%) 2.2% 4.3% 4.0% 3.9% 3.6%
当期利益(親会社所有者帰属) -13億円 10億円 8億円 5億円 8億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高は微増し、売上総利益率はほぼ横ばいで推移しています。営業利益は前期の7億円から8億円へと増加し、営業利益率も2.2%から2.5%へと改善しました。全体として、コストコントロールを進めつつ利益を確保する体質への転換が進んでいることがうかがえます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 326億円 327億円
売上総利益 67億円 66億円
売上総利益率(%) 20.5% 20.2%
営業利益 7億円 8億円
営業利益率(%) 2.2% 2.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料が15億円(構成比26%)、運送費・梱包費が7億円(同12%)を占めています。

(3) セグメント収益


精密部品事業は車載・組立関連の受注停滞で減収となりましたが、生活用品事業は快適品の好調により増収となりました。利益面では、精密部品事業が増益となった一方、生活用品事業は円安の影響等により損失幅が拡大しました。全体としては、精密部品事業が利益を牽引する構造となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
精密部品事業 252億円 248億円 18億円 21億円 8.3%
生活用品事業 70億円 74億円 -7億円 -8億円 -10.3%
その他 4億円 4億円 1億円 1億円 14.8%
調整額 - - -5億円 -6億円 -
連結(合計) 326億円 327億円 7億円 8億円 2.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のCFパターンは、営業キャッシュ・フローがプラス、投資キャッシュ・フローがマイナス、財務キャッシュ・フローがプラスであることから、営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う「積極型」と判定されます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 25億円 24億円
投資CF -21億円 -15億円
財務CF 2億円 13億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は69.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「たゆみない創造と革新を続け、豊かで楽しい安全な社会づくりに貢献する」という経営理念を掲げています。この理念のもと、「人々に喜ばれる製品・サービスを創造する」「世界の国々における取引を通じ関係者の繁栄を図る」「活力ある企業風土を築く」という企業像を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「社訓(リズムスピリット)」として、行動規範を定めています。「質実剛健の精神」「科学性(合理性)に徹する精神」「明朗協調(和)の精神」の3つを掲げ、これらを基盤とした活力ある企業風土の構築を目指しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2026年3月期から2028年3月期までを対象とする「中期経営計画2027」を策定しています。最終年度である2028年3月期の経営目標として以下の数値を掲げています。

* 売上高:400億円
* 営業利益:25億円
* 経常利益:28億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:21億円
* 営業利益率:6.3%
* ROE:6.0%

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「中期経営計画2027」において、「事業モデル確立による新たな成長の実現」をテーマに掲げています。精密部品事業では、モビリティ分野を最重要とし、電装品やADAS部品に注力するとともに、オリジナル部品の開発と汎用化を推進します。生活用品事業では、快適品分野の販路拡大や新製品開発により、次なるヒット商品の創出と早期収益化を目指します。また、財務戦略として成長投資と資本効率の向上を進め、M&A投資も重要な戦略の一つとしています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人材を重要な経営資源と位置づけ、「リズムDEIビジョン」や「人財育成方針」「社内環境整備方針」を策定しています。多様性を重視し、様々な価値観を認め合う風土の醸成や、従業員のキャリア形成支援、多様な働き方を可能にする制度整備を推進しています。特に「多様な人財が能力を発揮できる職場づくり」と「女性の活躍」を重要課題として取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.9歳 15.2年 4,875,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.2%
男性育児休業取得率 44.4%
男女賃金差異(全労働者) 74.4%
男女賃金差異(正規雇用) 78.9%
男女賃金差異(非正規) 77.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員比率(34.0%)、障がい者雇用率(2.2%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 為替変動のリスク


海外拠点における事業活動の拡大に伴い、外貨建取引や外貨建債権債務が増加しており、為替レートの変動の影響を受けやすくなっています。為替予約等によるリスクヘッジを行っていますが、急激な変動があった場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) M&A及び業務提携等に関するリスク


事業強化のためにM&Aや業務提携を推進していますが、事前の調査や検討にもかかわらず、事業展開が計画通りに進まない場合、のれんの減損処理などを含め、経営成績や財政状態に悪影響を与える可能性があります。

(3) 地震等の自然災害や感染症等によるリスク


世界各地の生産・販売拠点において大規模な自然災害が発生した場合、生産活動や商品供給に支障をきたし、復旧費用等が発生する可能性があります。また、感染症のパンデミック等が世界経済に影響を及ぼす場合、同社グループの業績にも悪影響を与える可能性があります。

(4) 原材料や部品の調達に関するリスク


製品製造に必要な原材料や部品を外部から調達しており、市況変化による価格高騰や品不足、供給元の事故等により調達難が生じた場合、製造原価の上昇や生産停止による売上減少を招き、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。