※本記事は、フクダ電子株式会社の有価証券報告書(第79期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. フクダ電子ってどんな会社?
同社は、心電計をはじめとする医用電子機器の製造・販売およびレンタル事業をグローバルに展開しています。
■(1) 会社概要
1939年に福田特殊医療電気製作所として創業し、1948年に設立されました。1969年に現在のフクダ電子へ商号を変更し、全国に販売子会社を展開してきました。2004年にジャスダック証券取引所へ上場し、2016年には現在のフクダコーリンを子会社化しています。2022年よりスタンダード市場に上場しています。
同社グループの従業員数は連結で3,497名、単体で786名です。大株主の状況について、筆頭株主は創業者一族の福田孝太郎氏で、第2位は日本生命保険、第3位は資産管理業務を行うみずほ信託銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 福田孝太郎 | 20.60% |
| 日本生命保険 | 5.50% |
| みずほ信託銀行 | 4.99% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性1名の計13名で構成され、女性役員比率は8.0%です。代表取締役社長は白井大治郎氏が務めています。社外取締役の比率は38.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 白井大治郎 | 代表取締役社長 | 1980年同社入社。西関東販売社長、執行役員、社長室経営企画部長などを経て、2012年より現職。 |
| 小川治男 | 常務取締役技術統括 | オリンパスで技術統括役員などを歴任。2020年同社入社、開発本部長などを経て、2023年より現職。 |
| 玄地一男 | 常務取締役営業本部長 | 1980年南東北販売入社。複数の販売子会社代表や営業本部副本部長などを経て、2023年より現職。 |
| 久野直樹 | 常務取締役社長室長 | 1998年同社入社。社長室経営企画部長、執行役員、社長室長などを経て、2023年より現職。 |
| 福田修一 | 取締役特命担当 | 1978年同社入社。社長室関連会社管理部長、四国販売社長、経理部長などを経て、2023年より現職。 |
社外取締役は、杉山昌明(公認会計士杉山昌明事務所代表)、古屋一樹(元セブン・イレブン・ジャパン社長)、伏黒久高(元三菱総研DCS常務)、阿部啓子(東京大学名誉教授)、福田雅(元みずほ証券・公認会計士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「生体検査装置部門」「生体情報モニター部門」「治療装置部門」「消耗品等部門」事業を展開しています。
■(1) 生体検査装置部門
心電計、超音波画像診断装置、自動血球計数測定装置などの製造および販売を行っています。医療機関等を顧客とし、生体の物理現象を電気信号に変換し測定・記録する機器を提供しています。
機器の販売代金を収益源としています。運営は同社のほか、フクダ電子ファインテック仙台、北京福田電子医療儀器有限公司などの製造子会社、および国内外の販売子会社が行っています。
■(2) 生体情報モニター部門
手術後の重症患者や急性心疾患の患者などの生体機能を長時間にわたり測定し、表示・記録する生体情報モニタなどの製造および販売を行っています。
機器の販売代金を収益源としています。運営は主に同社が製造を担い、販売は同社および国内外の販売子会社が分担して行っています。
■(3) 治療装置部門
心停止の蘇生や調律異常を治療する除細動器、ペースメーカ、人工呼吸器などの治療装置のほか、在宅酸素療法や睡眠時無呼吸症候群の治療向け機器の製造・販売およびレンタルを行っています。
機器の販売代金や在宅医療機器のレンタル料を収益源としています。運営は同社やフクダ電子ファインテック仙台が製造を担い、販売やレンタルは同社および国内の販売子会社が行っています。
■(4) 消耗品等部門
各部門の器械装置に使用する消耗品や、修理・保守サービスの提供、空気清浄除菌脱臭装置などの製造・販売を行っています。顧客に安全・安心な医療環境を提供するためのサポートを担います。
消耗品の販売代金や修理・保守サービス料を収益源としています。運営は同社やアトミック産業、フクダ電子ファインテック仙台が製造を行い、販売やサービスは同社と販売子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5年間の業績推移を見ると、売上高は安定して拡大傾向にあり、利益水準も着実に向上しています。医療環境の変化に対応し、在宅医療向けレンタル事業や消耗品事業などを成長させたことが、継続的な増収増益に寄与しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,321億円 | 1,346億円 | 1,403億円 | 1,390億円 | 1,397億円 |
| 経常利益 | 234億円 | 251億円 | 270億円 | 266億円 | 273億円 |
| 利益率(%) | 17.7% | 18.6% | 19.2% | 19.2% | 19.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 144億円 | 148億円 | 171億円 | 187億円 | 270億円 |
■(2) 損益計算書
売上高が堅調に推移するなか、売上総利益率および営業利益率ともに前年から上昇しています。生産能力の向上や部品の内製化といったコストダウンの取り組みが利益率の改善に寄与しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,390億円 | 1,397億円 |
| 売上総利益 | 738億円 | 765億円 |
| 売上総利益率(%) | 53.1% | 54.8% |
| 営業利益 | 259億円 | 266億円 |
| 営業利益率(%) | 18.6% | 19.0% |
販売費及び一般管理費のうち、役員従業員給料手当等が186億円(構成比37%)、賞与及び賞与引当金繰入額が51億円(同10%)を占めています。
■(3) セグメント収益
治療装置部門および消耗品等部門が増収となり、全体を牽引しています。特に治療装置部門は在宅医療向けレンタル事業の伸長が寄与しました。一方、生体検査装置部門と生体情報モニター部門は、需要の変化等もあり減収となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 生体検査装置部門 | 285億円 | 269億円 |
| 生体情報モニター部門 | 98億円 | 93億円 |
| 治療装置部門 | 620億円 | 637億円 |
| 消耗品等部門 | 387億円 | 398億円 |
| 連結(合計) | 1,390億円 | 1,397億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業(健全型)のキャッシュ・フロー状態となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 330億円 | 293億円 |
| 投資CF | -171億円 | -187億円 |
| 財務CF | -58億円 | -174億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は83.8%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「社会的使命に徹し、ME機器(医用電子機器)の開発を通じて、医学の進歩に寄与する」をはじめとする4つの項目を経営理念として掲げています。「医療機器で明日を創る」という言葉に込められているように、病気の診断や治療にとどまらず、予防や健康の維持管理にも貢献する医療機器の開発と普及を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、「安全・安心・快適」をコーポレートスローガンとして掲げ、提供する製品の品質向上に努めています。また、「お客様第一主義」の行動指針を踏まえて行動し、課題解決に貢献できる価値ある医療機器やサービスを提供することで、「お客様に信頼される企業」として社会からの期待に応える文化を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、経営環境の変化に左右されない持続的成長の実現を目指し、中期経営計画において定量的目標を掲げています。
* 売上高:1,500億円
* 営業利益:285億円
■(4) 成長戦略と重点施策
高齢化に伴う医療需要の増加や医療従事者不足といった課題に対し、同社は医療ICTを活用した業務負荷軽減や効率化に貢献するソリューションの提供に注力しています。また、「予防、検査、治療、経過観察、リハビリ、在宅、介護」というワンストップサービスによる一貫した医療環境を提供し、在宅医療分野での地域密着体制を強化していく方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、多様なバックグラウンドを持つ人材が能力を最大限に発揮できる組織づくりを推進しています。医療機器に関する専門知識やビジネススキル向上のため、eラーニングを活用した能動的な学習機会を提供し、次世代リーダーの育成に注力しています。また、テレワークや時短勤務の推進によりワークライフバランスの向上を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 44.4歳 | 15.1年 | 9,290,565円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 7.0% |
| 男性育児休業取得率 | 76.5% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 66.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 69.4% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 51.5% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、「働きがい」を感じる社員の比率(79.0%)、e-ラーニングを含めた研修の受講率(98.8%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 医療行政・制度改定による影響
国内の診療報酬、薬価、特定保険医療材料の公定償還価格が改定されるなど、医療行政の方針変更が行われた場合、企業間競争の激化や販売価格の低下を招き、同社グループの経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 特定の仕入先への高い依存
人工呼吸器、ペースメーカ、除細動器などを輸入・販売しており、取引における継続性の安定に支障が生じた際には事業に影響を及ぼす可能性があります。同社は特定企業への依存度が高くなりすぎないよう配慮して取引を行っています。
■(3) 海外事業および為替変動リスク
海外代理店向けの製品供給や海外に開発・生産拠点を持っているため、各国の法規制変更やテロ、自然災害等のカントリーリスクが存在します。また、外国企業からの調達において為替の急激な変動が生じた場合、収益を圧迫する可能性があります。



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