※本記事は、MUTOHホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第76期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. MUTOHホールディングスってどんな会社?
大判インクジェットプリンタやプロッタなどの情報画像関連機器を主力とし、設計計測機器や情報サービスも展開する企業です。
■(1) 会社概要
1952年に株式会社武藤目盛彫刻として設立され、翌年には設計製図機械「ドラフター」を開発しました。1985年に東証一部へ指定替えとなり、2007年には持株会社体制へ移行して現在の商号に変更しました。2022年の東証市場区分見直しによりスタンダード市場へ移行し、直近では2024年にニッポーを完全子会社化するなど、事業基盤の強化を進めています。
連結従業員数は595名、単体では27名が在籍しています。大株主の構成については、筆頭株主は投資事業有限責任組合で、第2位、第3位も投資組合(リミテッド・パートナーシップ)です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| TCS-2投資事業有限責任組合 | 16.20% |
| TCS-4 L.P. | 9.46% |
| TCS-3 L.P. | 8.93% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名、計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役取締役社長は礒邊 泰彦氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 礒邊 泰彦 | 代表取締役取締役社長 | 九州松下電器(現パナソニックコネクト)出身。武藤工業開発・生産本部長等を経て、2020年6月より現職。 |
| 鴨居 和之 | 取締役 | 松下電器産業(現パナソニックHD)出身。三井住友トラスト・パナソニックファイナンス副社長等を経て、2016年6月より現職。 |
| 世羅 政則 | 取締役 | 松下電器産業(現パナソニックHD)出身。パナソニックCSセンター長等を経て、2019年6月より現職。 |
| 山崎 浩太郎 | 取締役 | 東京芝浦電気(現東芝)出身。東芝デジタルソリューションズ監査役等を経て、2024年6月より現職。 |
| 近縄 一成 | 取締役 | 九州松下電器(現パナソニックコネクト)出身。武藤工業LFP事業部開発センター長等を経て、2025年6月より現職。 |
| 髙山 芳之 | 取締役 | 東京コンピュータサービス(現TCSホールディングス)取締役等を経て、2008年6月より現職。 |
社外取締役は、坂本 弘子(元朝日新聞社常勤監査役)、大坪 和敏(日商岩井紙パルプ社外監査役)、黒井 義博(元三菱自動車工業専務執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「情報画像関連機器(アジア)」「情報画像関連機器(北アメリカ)」「情報画像関連機器(ヨーロッパ)」「情報サービス」「設計計測機器」「不動産賃貸」報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。
■(1) 情報画像関連機器
グラフィックアーツ用大判プリンタ、CAD図面出力用プロッタ、3Dプリンタ、および関連サプライ品の開発・製造・販売を行っています。地域別にアジア、北アメリカ、ヨーロッパの3つのセグメントに区分され、世界中の市場に製品を提供しています。
製品の販売代金および保守メンテナンスサービス料を顧客から受領します。運営は、国内では武藤工業、ニッポーが担い、海外ではムトーアメリカ社、ムトーヨーロッパ社などの現地法人が販売を行っています。
■(2) 情報サービス
CADおよび関連ソフトウェアの開発・販売、システムインテグレーション、ソフトウェア開発を行っています。顧客の設計や事務作業の効率化を支援するソリューションを提供しています。
ソフトウェアのライセンス料やシステム開発・導入費用、保守料を顧客から受領します。運営は、武藤工業およびムトーアイテックスが行っています。
■(3) 設計計測機器
設計製図機器、光学式計測器、事務機器の製造・販売を行っています。長年の実績を持つドラフター(設計製図機械)をはじめとした製品を提供し、安定した収益確保を目指しています。
製品の販売代金を顧客から受領します。運営は、武藤工業およびニッポーが行っています。
■(4) 不動産賃貸
保有する不動産の賃貸事業を行っています。資産の効率的運用を目的とし、安定収益源としての基盤強化を図っています。
賃借人からの賃貸料を収益として受領します。運営は、同社およびムトーエンタープライズが行っています。
■(5) その他
上記セグメントに含まれない事業として、スポーツケア用品等の販売を行っています。
商品の販売代金を顧客から受領します。運営は、主にムトーエンタープライズが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は直近5期間で増加傾向にあり、142億円から181億円へと拡大しています。経常利益も回復基調で推移し、直近では13億円まで増加しました。利益率も改善傾向にあり、当期利益は変動があるものの、直近では14億円の黒字を計上しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 142億円 | 158億円 | 168億円 | 175億円 | 181億円 |
| 経常利益 | -3億円 | 7億円 | 10億円 | 12億円 | 13億円 |
| 利益率(%) | -2.1% | 4.7% | 5.8% | 6.7% | 7.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -4億円 | 7億円 | -2億円 | 7億円 | 14億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い売上総利益も増加し、売上総利益率は42.0%まで向上しました。営業利益も増加して13億円となり、営業利益率は7.3%を維持しています。収益性の改善が進んでいることが読み取れます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 175億円 | 181億円 |
| 売上総利益 | 71億円 | 76億円 |
| 売上総利益率(%) | 40.7% | 42.0% |
| 営業利益 | 12億円 | 13億円 |
| 営業利益率(%) | 7.1% | 7.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が21億円(構成比32.9%)、研究開発費が8億円(同13.0%)を占めています。
■(3) セグメント収益
情報画像関連機器事業では、アジア地域が好調に推移した一方、北アメリカやヨーロッパ地域では現地通貨ベースでの販売減少等が見られました。設計計測機器事業はニッポーの子会社化や価格改定により大幅な増収増益となりました。不動産賃貸事業も通年寄与により増収増益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 情報画像関連機器(アジア) | 36億円 | 45億円 |
| 情報画像関連機器(北アメリカ) | 40億円 | 37億円 |
| 情報画像関連機器(ヨーロッパ) | 56億円 | 54億円 |
| 情報サービス | 23億円 | 23億円 |
| 設計計測機器 | 14億円 | 17億円 |
| 不動産賃貸 | 3億円 | 4億円 |
| その他 | 2億円 | 2億円 |
| 調整額 | -44億円 | -42億円 |
| 連結(合計) | 175億円 | 181億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 11億円 | 13億円 |
| 投資CF | -18億円 | 3億円 |
| 財務CF | -5億円 | -5億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は79.0%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、国内外の法令や社会倫理を遵守し、良識ある企業活動を心がけることを基本としています。グループ事業の価値向上とMUTOHブランドの恒久的維持・拡大を図り、さらには社会の健全な発展に努めることを経営理念として掲げています。
■(2) 企業文化
同社グループは、「常に革新し 挑戦を続け 社会に貢献する」をグループ経営の基本方針としています。この方針のもと、市場環境の変化に迅速に対応し、顧客に最適な提案と最高の価値を提供することを目指す企業文化を醸成しています。
■(3) 経営計画・目標
持続的な増収を基調とした安定収益基盤の確立による通期営業損益の向上を最重要課題としています。また、資本コストを意識した経営に取り組み、ROE(自己資本利益率)とPBR(株価純資産倍率)を重要な指標と位置づけ、中長期的な企業価値向上を目指しています。現在、具体的な数値目標を含む新中期経営計画を策定中です。
■(4) 成長戦略と重点施策
主力である情報画像関連機器事業において、高付加価値製品の市場投入や3Dプリンタ事業の拡大による収益構造の改善を図っています。また、資本効率の向上と経営戦略の明確化を通じ、投資家からの評価を高めることに注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
国内でのモノづくり継続と中堅層強化のため、性別や国籍を問わない優秀な人材の採用と、次世代幹部候補の選抜教育を進めています。また、社員が自らスキルを習得できる環境整備や、女性社員のキャリアアップ支援、健康経営の推進を通じて、社員の幸福度向上と多様な人材が活躍できる風土づくりに取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 44.7歳 | 10.9年 | 5,812,045円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 27.3% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 63.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 65.9% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
※男性育児休業取得率、男女賃金差異(非正規雇用)は、対象者がいないため算出していません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性比率(採用)(18.2%)、連結売上高に対する教育訓練の費用の比率(0.20%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 国際的活動及び海外進出に潜在するリスク
同社グループは欧米やアジアなど日本国外で広く販売活動を行っています。予期しない法規制の変更、不利な政治・経済要因、テロや戦争による社会的混乱などが、業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。海外子会社等と連携し、政治経済動向の把握に努めています。
■(2) 外部環境に関するリスク
サプライチェーンをグローバルに展開しているため、各国・地域の物流問題や紛争による供給遅延、輸送費高騰のリスクがあります。特に中東情勢によるスエズ運河の利用制限などは輸送期間長期化やコスト増の要因となります。物流ルートの柔軟な変更やフォワーダーの見直し等で対応しています。
■(3) 感染症に関連するリスク
役員・従業員の罹患による事業活動の遅延・停止や、販売対象国での感染拡大による需要縮小、取引先の信用悪化などが業績に影響を与える可能性があります。在宅勤務や消毒の実施等の感染拡大防止策に加え、需要変動への対応や信用調査の強化等を進めています。



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