日本トリム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本トリム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場する、電解水素水整水器を中心としたウォーターヘルスケア事業と、再生医療等の医療関連事業を展開する企業です。2025年3月期は、主力製品やボトルドウォーターの販売増に加え、医療関連事業も伸長し、売上高・各利益段階ともに過去最高を更新する増収増益となりました。


※本記事は、株式会社日本トリム の有価証券報告書(第43期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本トリムってどんな会社?

電解水素水整水器の製造販売を行うウォーターヘルスケア事業と、電解水透析や細胞バンク等の医療関連事業を展開する企業です。

(1) 会社概要

1982年に電解水素水整水器の製造販売を目的に設立され、1990年に高知県に工場を開設しました。2000年に株式を店頭登録し、2004年には東証一部へ上場を果たしました。2012年にインドネシアのボトルドウォーター企業を子会社化、2013年には株式会社ステムセル研究所を子会社化するなど、事業領域を拡大しています。

同社の連結従業員数は735名、単体では342名です。筆頭株主は創業者で代表取締役会長兼CEOの森澤紳勝氏であり、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位には、ウォーターサーバー事業を展開する事業会社が名を連ねており、業界内での資本関係も見られます。

氏名 持株比率
森澤 紳勝(注1) 40.42%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口)(注2) 6.71%
プレミアムウォーターホールディングス 6.28%

(2) 経営陣

同社の役員は男性6名、女性2名(社外含む)の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は田原周夫氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
森澤  紳勝 代表取締役会長兼CEO 1982年6月日本トリム設立代表取締役社長。2022年6月より現職。
田原 周夫 代表取締役社長 2003年3月入社。経営企画部長、執行役員経営企画部長、取締役管理本部長兼経営企画部長、専務取締役管理本部長兼経営企画部長を経て2022年6月より現職。
西谷 由実 専務取締役営業本部長 1987年11月入社。取締役名古屋支社長、常務取締役営業本部長兼東京支社長、常務取締役営業副本部長兼DS事業部長などを経て2024年9月より現職。
亀井 美登里 取締役 1990年4月厚生省入省。医薬品食品局血液対策課長、大臣官房付審議官級などを歴任。2016年埼玉医科大学医学部社会医学教授。2019年6月より現職。
大仁 邦彌 取締役 1970年三菱重工業入社。元サッカー日本代表。日本サッカー協会会長、名誉会長等を歴任し、2020年同協会最高顧問。2021年6月より現職。


社外取締役は、亀井 美登里(元厚生労働省大臣官房付)、大仁 邦彌(元日本サッカー協会会長)です。

2. 事業内容

同社グループは、「ウォーターヘルスケア事業」および「医療関連事業」を展開しています。

(1) ウォーターヘルスケア事業

家庭用管理医療機器である電解水素水整水器や浄水カートリッジ、およびボトルドウォーターの製造・販売を行っています。主力の整水器は「胃腸症状の改善」に効果が認められており、企業や一般消費者を対象に販売しています。また、インドネシアではボトルドウォーター事業を展開しています。

収益は、整水器本体や関連商品の販売代金、消耗品である浄水カートリッジの継続的な販売代金などから得ています。運営は、国内では日本トリムが販売、株式会社トリムエレクトリックマシナリーが製造を担い、海外ではPT.SUPER WAHANA TEHNO等がボトルドウォーターの製造販売を行っています。

(2) 医療関連事業

電解水透析用機器の販売や、再生医療・細胞治療を目的とした「さい帯血」や「さい帯」等の細胞バンク事業を展開しています。電解水透析は透析患者のQOL向上を目指すものであり、細胞バンク事業では周産期組織由来の細胞の処理・保管サービスを提供しています。

収益は、医療機関への機器販売代金や、細胞保管サービスの契約者から受領する技術料・保管料などから得ています。運営は、細胞バンク事業を株式会社ステムセル研究所が、電解水透析関連を株式会社トリムメディカルインスティテュートなどが担っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に右肩上がりで推移しており、直近の2025年3月期には225億円に達しています。利益面でも、経常利益は20億円台前半から35億円まで拡大し、当期純利益も増加傾向にあります。利益率は12%〜15%台と高い水準を維持しており、安定的かつ成長性の高い収益構造が見て取れます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 149億円 163億円 180億円 204億円 225億円
経常利益 24億円 21億円 25億円 32億円 35億円
利益率(%) 15.8% 12.9% 14.0% 15.8% 15.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 10億円 12億円 11億円 16億円 16億円

(2) 損益計算書

直近2期間の比較では、売上高が約20億円増加し、売上総利益も拡大しています。売上総利益率は約69%と非常に高い水準を維持していますが、前年比ではわずかに低下しました。営業利益率は約15%前後で推移しており、販売費及び一般管理費が増加する中でも、高い収益性を確保しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 204億円 225億円
売上総利益 142億円 154億円
売上総利益率(%) 69.7% 68.7%
営業利益 31億円 33億円
営業利益率(%) 15.1% 14.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が24億円(構成比19.7%)、広告宣伝費が17億円(同13.6%)を占めています。売上原価は70億円で、売上高に対する構成比は31.3%です。

(3) セグメント収益

両セグメントともに増収となりました。主力のウォーターヘルスケア事業は売上が約18億円増加し、利益も順調に伸長しました。医療関連事業も売上が増加しましたが、利益は横ばいとなっています。全体として、ウォーターヘルスケア事業が収益の柱として成長を牽引しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
ウォーターヘルスケア事業 178億円 196億円 27億円 29億円 14.8%
医療関連事業 26億円 29億円 4億円 4億円 13.5%
連結(合計) 204億円 225億円 31億円 33億円 14.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、営業活動で得た資金に加え、借入等による資金調達を行いながら投資活動を行っている「積極型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 30億円 27億円
投資CF -9億円 -19億円
財務CF -10億円 6億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は67.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社グループは、「快適で健康なヒューマンライフの創造に貢献する」という企業理念を掲げています。健康・医療をメインテーマに事業を展開し、グローバルなメディカルカンパニーへと飛躍することを目指しています。

(2) 企業文化

「社会は何時の時代も我々の製品を必要としている。」をスローガンとしています。ESG、SDGsを意識した経営を推進し、人々のWell-beingの実現やサステナブルな社会の創造に貢献していく姿勢を重視しています。また、科学的エビデンスによる裏付けを不可欠とし、長年にわたる産官学共同研究を実施する文化があります。

(3) 経営計画・目標

同社グループは、効率的で筋肉質な経営を目指し、2028年3月期を最終年度とする中期経営計画を策定しています。
* 2028年3月期 連結売上高 310億円
* ROE(自己資本利益率) 10%以上
* 連結売上高経常利益率 20%以上

(4) 成長戦略と重点施策

ウォーターヘルスケア事業では、整水器のユーザー数を300万件規模へ拡大し、消耗品のストック収益基盤を強化します。海外ではインドネシアでのボトルドウォーター事業のシェア拡大と新工場建設を進めます。医療関連事業では、電解水透析の普及拡大や、再生医療分野での海外進出(シンガポール等)を目指し、新たな収益の柱として育成します。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

持続的な成長のためには多様な人材の登用と育成が必要であると考え、性別・国籍・職歴に関わらず積極的に採用する方針です。特に女性の活躍を重視し、ダイバーシティ&インクルージョンを推進しています。また、社員の生産性向上や健全な労働環境づくりのため、「健康経営」を推進し、働き方改革にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.8歳 13.6年 7,110,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.2%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 62.0%
男女賃金差異(正規雇用) 62.7%
男女賃金差異(非正規雇用) 25.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、中期目標としての管理職に占める女性労働者の割合(8.0%)、平均勤続年数(15.00年)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 取扱製品の売上構成について

同社グループの売上は、電解水素水整水器およびその浄水カートリッジに大きく依存しています。これらが連結売上高の過半を占めるため、何らかの理由で整水器の営業活動に支障が生じた場合、グループ全体の業績に影響を及ぼす可能性があります。リスク軽減のため、ボトルドウォーター事業や医療関連事業の成長に取り組んでいます。

(2) 原材料及び部品の調達について

製品の原材料や部品を海外を含む多数の取引先から仕入れています。自然災害や市況変動、サプライヤーの事情等により部材の調達が困難になった場合、生産活動に支障をきたし、業績に影響を与える可能性があります。これに対し、複数購買の推進や国内調達体制の構築を進めています。

(3) 法的規制等への対応について

整水器関連事業は医薬品医療機器等法(薬機法)の規制を受け、医療機器製造販売認証や販売業の届出が必要です。また、細胞バンク事業は再生医療等安全性確保法の許可が必要です。関連法令の改正や新たな規制の導入、あるいは法令違反が発生した場合、事業活動が制限され業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。