日本トリム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本トリム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライムに上場する日本トリムは、電解水素水整水器やボトルドウォーターを扱うウォーターヘルスケア事業と、細胞バンク等の医療関連事業を展開しています。直近の業績は、整水器販売や海外ボトルドウォーター事業の好調により売上高が堅調に推移し、増収を達成した一方で各利益は減益となりました。


※本記事は、株式会社日本トリムの有価証券報告書(第44期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. 日本トリムってどんな会社?


ウォーターヘルスケアを主軸とし、予防医療や再生医療を通じて人々の健康に貢献する企業です。

(1) 会社概要


1982年に電解水素水整水器の製造販売を目的として日本トリムが設立されました。2003年に東証二部へ上場し、翌2004年に東証一部へ指定替えとなりました。その後、2012年にインドネシアのボトルドウォーター事業会社を子会社化して海外へ進出し、2013年には細胞バンク事業を営むステムセル研究所を子会社化して再生医療分野へ参入するなど事業領域を拡大しています。

同社グループの従業員数は連結で777名、単体で349名です。筆頭株主は創業者の森澤紳勝氏であり、第2位および第3位には事業会社であるプレミアムウォーターホールディングスとその子会社が名を連ねています。

氏名 持株比率
森澤 紳勝 41.68%
プレミアムウォーターホールディングス 8.92%
プレミアムウォーター 7.74%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は田原周夫氏が務めており、社外取締役の比率は25.0%となっています。

氏名 役職 主な経歴
森澤 紳勝 代表取締役会長兼CEO 1982年6月同社設立 代表取締役社長。2022年6月より現職。
田原 周夫 代表取締役社長 2003年3月入社。経営企画部長、専務取締役管理本部長兼経営企画部長等を経て、2022年6月より現職。
西谷 由実 専務取締役営業本部長 1987年11月入社。取締役名古屋支社長、常務取締役等を経て、2024年9月より現職。


社外取締役は、亀井美登里(元厚生労働省成田空港検疫所所長)、大仁邦彌(元日本サッカー協会会長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ウォーターヘルスケア事業」および「医療関連事業」を展開しています。

ウォーターヘルスケア事業


一般家庭や企業向けに、胃腸症状の改善効果が認められた電解水素水整水器および浄水カートリッジの製造・販売と、インドネシアでのボトルドウォーターの製造・販売を行っています。健康経営の推進を背景に、企業への一括導入や職域販売に注力しています。

収益モデルは、整水器本体の販売収益と、消耗品である浄水カートリッジの継続的な販売による安定したストック収益が柱となっています。事業の運営は、主に日本トリムが整水器の販売を行い、製造をトリムエレクトリックマシナリーが担うほか、海外ではPT.SUPER WAHANA TEHNOがボトルドウォーター事業を展開しています。

医療関連事業


再生医療分野において、さい帯血やさい帯などの周産期組織由来の細胞を保管する細胞バンク事業を展開しています。また、次世代新規治療法として注目される電解水透析用機器の販売も行い、医療の質の向上と病院経営への寄与を目指しています。

収益源は、顧客からの細胞分離技術料および長期間にわたる細胞保管料や、医療機関への透析システムの販売代金です。運営主体として、細胞バンク事業をステムセル研究所が手掛け、透析用機器の販売をトリムメディカルインスティテュートが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績を見ると、健康志向の高まりを背景に売上高は一貫して右肩上がりで成長を続けています。経常利益は2025年3月期まで増加傾向にありましたが、直近は原材料価格の上昇や先行投資費用の増加等により減益となりました。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 162.8億円 179.5億円 204.1億円 224.6億円 241.6億円
経常利益 20.9億円 25.2億円 32.3億円 35.4億円 31.5億円
利益率(%) 12.9% 14.0% 15.8% 15.7% 13.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 12.3億円 11.4億円 16.0億円 15.9億円 25.5億円

(2) 損益計算書


売上高が増加した一方で、売上総利益率はわずかに低下しました。また、マーケティング強化や人員増による営業費用の増加が影響し、営業利益および営業利益率が前年を下回る結果となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 224.6億円 241.6億円
売上総利益 154.4億円 163.9億円
売上総利益率(%) 68.7% 67.8%
営業利益 32.9億円 29.4億円
営業利益率(%) 14.6% 12.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が26.0億円(構成比19.3%)、広告宣伝費が21.8億円(同16.2%)、販売手数料が12.0億円(同8.9%)を占めています。また、売上原価は77.7億円で、売上高に対する構成比は32.1%となっています。

(3) セグメント収益


ウォーターヘルスケア事業は、主力の整水器販売が堅調に推移したことに加え、インドネシアでのボトルドウォーター事業が大幅に伸長したことで増収となりました。医療関連事業も、細胞バンク事業における新規プランの導入等が寄与して総保管数が伸び、増収を確保しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
ウォーターヘルスケア事業 195.7億円 211.4億円
医療関連事業 29.0億円 30.2億円
連結(合計) 224.6億円 241.6億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業の営業活動で安定的に資金を獲得し、その資金を設備投資や事業拡大に充てるとともに、自己株式の取得や配当、借入金の返済にも回していることから、健全型のキャッシュ・フロー状況と言えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 26.8億円 28.5億円
投資CF -18.9億円 -20.7億円
財務CF 5.5億円 -24.1億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は65.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


“快適で健康なヒューマンライフの創造に貢献する”という企業理念のもと、健康・医療をメインテーマに事業を展開し、グローバルなメディカルカンパニーへと飛躍することを目指しています。「社会は何時の時代も我々の製品を必要としている。」をスローガンに、ESGやSDGsを意識した経営を推進しています。

(2) 企業文化


事業活動を通じた社会課題の解決に取り組み、サステナブルな社会の創造に貢献する文化を重視しています。人種、性別、職歴にとらわれない多様な人材の登用を推進するダイバーシティ&インクルージョンを掲げ、従業員自身が健康経営を実践しながら、意欲的に業務に取り組む挑戦的な姿勢を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


「資本効率性」「株主還元」「財務健全性」をバランス良く実現し、株主価値の持続的な向上を図ることを基本方針としています。中長期的な企業価値向上のため、積極的な人的投資や研究開発活動を行っています。
・ROE 10%以上
・連結売上高経常利益率 20%以上
・2028年3月期連結売上高 310億円

(4) 成長戦略と重点施策


ウォーターヘルスケア事業では、整水器のアクティブユーザー数を現在の約85万件から200万件規模へ拡大し、消耗品である浄水カートリッジの販売によるストックビジネス基盤を強固にします。医療関連事業では、次世代の治療法である電解水透析の普及促進や、細胞バンク事業における東南アジアへの海外展開を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続的な成長を実現するためには多様な人材の登用と育成が不可欠であるとし、性別や国籍、職歴にこだわらない採用を推進しています。株式給付信託(J-ESOP)などの報酬制度を通じて従業員の財産形成とモチベーションの向上を図り、資格取得奨励金やE-Learning等を提供して自主的なスキルアップを支援する環境を整備しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.2歳 14.0年 7,233,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.2%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 61.5%
男女賃金差異(正規雇用) 61.5%
男女賃金差異(非正規雇用) 33.1%


また、同社は「従業員の状況」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、連結子会社の女性管理職比率(40.0%)、連結子会社の男性育児休業取得率(100.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 主力事業への依存リスク


同社グループは、電解水素水整水器および浄水カートリッジの販売が連結売上高の大きな割合を占めています。何らかの理由で整水器関連の営業活動に支障が出た場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。対策として、ボトルドウォーター事業や医療関連事業の成長による収益基盤の多様化を推進しています。

(2) 対面営業に依存した販売チャネル


職域販売や店頭催事など、対面による説明販売が整水器売上の大半を占めています。感染症拡大などで人との対面機会が制限される事態が発生した場合、営業機会が減少し業績に影響する可能性があります。そのため、リモート営業やWEBマーケティングなど、対面によらない販売チャネルの構築にも注力しています。

(3) 部材調達の遅延とコスト上昇


海外を含め多数の取引先から原材料や部品を仕入れていますが、地政学リスク等に伴う物流停滞や原材料価格の高騰が生じた場合、事業に影響を及ぼす懸念があります。同一部品の複数調達先の確保や国内調達体制の強化により、サステナブルかつ安定的なサプライチェーンの構築を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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