クボテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

クボテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

スタンダード市場に上場する画像処理機器メーカーです。独自の画像処理技術を核に、液晶パネル等の製造ライン向け外観検査装置や3D CADソフトウェアの開発・販売を行っています。直近の業績は、売上高が増加し増収となりましたが、利益面では営業損失および経常損失が継続しており、赤字が続いています。


※本記事は、クボテック株式会社 の有価証券報告書(第40期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. クボテックってどんな会社?


独自の画像処理技術「OPTICS」などを駆使した検査装置や、製造業向け3Dソフトウェアを展開する研究開発型企業です。

(1) 会社概要


同社は1979年に医療電子機器の研究開発を目的に創業し、1985年に法人設立されました。1987年に光学式外観検査機システムを開発、1993年には独自の画像処理技術を用いた検査機を開発し事業を拡大しました。2001年に東京証券取引所マザーズへ上場し、2003年には市場第一部へ変更しました。2003年には米国に子会社を設立し海外展開も進めています。2022年の市場区分見直しに伴い、スタンダード市場へ移行しました。

2025年3月31日現在の従業員数は連結71名、単体46名です。大株主構成を見ると、筆頭株主は創業者の久保哲夫氏で、第2位および第3位も創業者の親族等の個人が大半を占めており、オーナー色が強い株主構成となっています。

氏名 持株比率
久保哲夫 18.00%
久保美津子 10.17%
久保元 10.17%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性2名の計7名で構成され、女性役員比率は28.6%です。代表取締役社長は久保哲夫氏が務めています。社外取締役比率は14.3%(取締役4名中1名)です。

氏名 役職 主な経歴
久保哲夫 取締役社長代表取締役 1979年4月クボテック創業。1985年7月同社設立とともに代表取締役社長に就任し、現在に至る。エマージーおよびデザイン・クリエイションの代表取締役も兼任。
角張尚道 取締役 1979年大阪大学医学部内科医。1985年7月同社取締役。製造部長、事業本部長などを歴任し、2018年1月より開発担当取締役。
柿下尚武 取締役 1972年東京大学工学部助手。1988年同社入社。開発部長、管理部長を経て、2003年Kubotek USA, Inc. CEOに就任。2018年1月より同社取締役。


社外取締役は、木村文彦(東京大学名誉教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」および「米国」セグメントにおいて事業を展開しています。

(1) 日本(検査機・エンジニアリング・メディアネット)


日本セグメントでは、主に画像処理外観検査装置の開発・製造・販売を行う「検査機システム」、製造業向けシステム製品を扱う「創造エンジニアリング」、ネットワーク機器を扱う「メディアネット」の3つの事業を展開しています。主力製品は液晶パネルや有機EL等の製造工程で使用される外観検査装置で、FPD(フラットパネルディスプレイ)メーカー等が主な顧客です。また、3D CAD/CAMソフトや、映像配信システム等も提供しています。

収益は、検査装置やシステム製品の販売代金、およびソフトウェアの保守料やロイヤリティ収入等から得ています。FPDメーカーの設備投資需要に業績が大きく左右される特徴があります。運営は主にクボテック(親会社)が行っており、関連するCAD製品の販売等の一部を株式会社デザイン・クリエイションが行っています。

(2) 米国(創造エンジニアリング)


米国セグメントでは、主に「創造エンジニアリング」事業として、製造業向けのCAD/CAMソフトウェアや3D計測機能等を融合したシステム製品の開発・販売を行っています。独自の3次元モデリング技術を用いたソフトウェア製品を現地の製造業等に提供しています。

収益は、CAD/CAMソフトウェアのライセンス販売や保守サービス料等から得ています。円安の影響で円貨ベースの売上は増加傾向にありますが、現地通貨ベースでは伸び悩む場面も見られます。運営は連結子会社であるKubotek USA, Inc.が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は10億円台前半から16億円台へと増加傾向にあります。しかし、損益面では5期連続で経常損失および当期純損失を計上しており、赤字からの脱却が課題となっています。特に直近では売上が伸長したものの、依然として損失が続いています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 11億円 10億円 12億円 13億円 17億円
経常利益 -1.4億円 -1.7億円 -1.8億円 -2.2億円 -1.3億円
利益率(%) -13.0% -16.7% -14.7% -16.8% -7.6%
当期利益(親会社所有者帰属) -0.8億円 -1.1億円 -2.3億円 -3.0億円 -2.0億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は27.2%増加し、売上総利益率も改善傾向にあります。しかし、販売費及び一般管理費が売上総利益を上回る構造が続いており、営業損失および経常損失の計上となっています。売上規模の拡大に対し、コスト構造の改善が追いついていない状況が見て取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 13億円 17億円
売上総利益 5億円 7億円
売上総利益率(%) 41.0% 40.9%
営業利益 -2.2億円 -1.3億円
営業利益率(%) -16.6% -7.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が3.3億円(構成比40%)、支払手数料が1.2億円(同15%)を占めています。売上原価については、製品製造に関わる費用に加え、棚卸資産評価損等が計上される場合があります。

(3) セグメント収益


日本セグメントは中国向けの画像処理外観検査装置の売上が伸びたことで増収となりましたが、経費増により損失が続いています。米国セグメントは円安効果で増収となったものの、損失幅は拡大しました。全セグメントで損失が発生しており、収益化が課題です。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
日本 8億円 11億円 -2.0億円 -1.3億円 -11.8%
米国 5億円 6億円 -0.3億円 -0.6億円 -9.9%
調整額 -2億円 -3億円 0.1億円 0.1億円 -
連結(合計) 13億円 17億円 -2.2億円 -1.3億円 -7.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業・投資・財務いずれもマイナスで資金繰りが危機的な「末期型」です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 4.6億円 -2.0億円
投資CF -2.3億円 -2.5億円
財務CF 0.8億円 -2.5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-63.0%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は11.7%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「技術は人のために」を標語として掲げ、あらゆるシステムの根幹に「人」を置き、人を真に豊かにする技術の発展に貢献することを事業理念としています。情報・制御・通信・機械の要素技術を軸に、独創的な新製品・新システムを開発し、高い技術力と収益性を確保することを目指しています。

(2) 企業文化


日常の企業活動において、「創意・工夫と不断の努力」を社訓としています。新鮮な発想と、それを具体化して粘り強く実証するという技術の基本常識を大切にする文化があります。技術者としての創造性や探究心を尊重し、顧客の潜在的ニーズを製品化して提案する市場創造型の企業風土を持っています。

(3) 経営計画・目標


厳しい競争環境下でも安定的な配当と機動的な投資を実現し、持続的に成長するために収益性を重視しており、「売上高経常利益率」を高水準に保つことを経営目標としています。具体的な数値目標等は明示されていませんが、製品開発力と営業力の強化により、独自の製品群を提供し収益の確保を図る方針です。

(4) 成長戦略と重点施策


独自の技術を組み合わせた「サイバネティック・テクノロジー」を基盤に、顧客の課題を解決するシステムを提供し続けます。具体的には、主力である検査機システム事業において、高機能フィルムや半導体、マイクロLED向けの検査装置の開発・製造を推進します。また、画像処理型検査エンジンの外販や、3Dフレームワークの開発、オーディオ事業、エネルギー事業など、新規事業の早期立ち上げにも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


性別や国籍など個人の属性に関係なく、多様な従業員が能力を最大限発揮できる職場環境を目指しています。現状は中途採用者が多く在籍しており、OJTを通じた業務経験を中心に、自ら考え行動する自律的で専門能力や技能に優れた人材の育成に努める方針です。業績悪化による採用難の状況下でも、事業発展のため継続的な人材確保と育成に取り組みます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 56.5歳 23.5年 6,167,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、残業時間(6時間)、有給休暇取得率(70%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 財政状態及び経営成績の異常な変動


主力の検査機システム事業は、FPD(フラットパネルディスプレイ)メーカーの設備投資動向に大きく依存しています。顧客の投資時期の変動や設備の設置延期、仕様変更などにより、売上計上時期がずれ込むことで期間損益に大きな変動が生じる可能性があります。また、開発費等の負担増による収益圧迫のリスクもあります。

(2) 特定の市場・顧客への依存


検査機システム事業の売上は、日本、韓国、台湾、中国の主要FPDメーカー向けが大部分を占めています。特定の市場や顧客の設備投資動向、あるいは国際紛争や輸出管理強化などの外的要因によって事業活動が制限され、財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、半導体やフィルム検査など市場の多様化を図っています。

(3) 競合について


独自技術による差別化を図っていますが、競合他社が画期的な新製品を開発した場合、技術的な優位性が失われる恐れがあります。また、価格競争に巻き込まれることで事業戦略や経営成績に悪影響が及ぶ可能性があります。安易な価格競争は行わない方針ですが、競争環境の変化には注意が必要です。

(4) 継続企業の前提に関する重要事象等について


同社グループは7期連続して営業損失を計上し、当期は営業キャッシュ・フローもマイナスとなりました。これにより継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象が存在しています。既存事業の販売拡大や新規事業の推進、組織改革等により収益力の向上と財務体質の強化を図り、この状況の解消に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。