クボテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

クボテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

クボテックは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、画像処理外観検査装置を中心とした検査機システム、3Dソリューションシステムなどの創造エンジニアリング、メディアネット機器の開発・製造・販売を展開しています。直近の業績は増収となったものの、事業環境の厳しさから赤字が継続している状況にあります。


※本記事は、クボテック株式会社の有価証券報告書(第41期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月29日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. クボテックってどんな会社?


同社は画像処理技術を活用した外観検査装置や3Dソリューションシステム、ネットワーク機器の開発・製造・販売を行う企業です。

(1) 会社概要


同社は1979年に医療電子機器の研究開発を目的に創業され、1985年に法人化しました。1987年に光学式外観検査機システムを開発し、翌1988年には創造エンジニアリング事業を開始しました。2001年に東証マザーズへ上場し、2003年には海外展開を強化すべく米国に子会社を設立しています。

現在の従業員数は連結で64名、単体で40名体制となっています。筆頭株主は創業者の久保哲夫氏であり、第2位および第3位にも同氏の親族とみられる個人株主が名を連ねています。

氏名 持株比率
久保哲夫 18.00%
久保美津子 10.17%
久保元 10.17%

(2) 経営陣


同社の役員は男性4名、女性3名の計7名で構成され、女性役員比率は42.9%です。代表取締役社長は前田忠和氏が務めており、全取締役4名のうち社外取締役の比率は25.0%となっています。

氏名 役職 主な経歴
前田忠和 取締役社長代表取締役 1985年同社入社。2003年開発部長等を経て2026年6月より現職。
仲本庸子 取締役 1991年同社入社。2017年米国子会社CEO等を経て2026年6月より現職。
角張尚道 取締役 1979年大阪大学医学部内科医。1985年同社取締役等を経て2018年1月より現職。


社外取締役は、木村文彦(東京大学名誉教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」および「米国」の報告セグメントにおいて事業を展開しています。

(1) 日本


画像処理型外観検査装置の開発・製造・販売(検査機システム事業)、3DCAD/CAMソフトを中心とした創造エンジニアリング製品、映像配信・受信システムなどのメディアネット機器を開発・販売し、主に国内およびアジア市場の顧客に提供しています。

検査対象物の欠陥を検出する装置の販売代金や、ソフトウェアのライセンス・保守費用から収益を得ています。日本セグメントの事業運営は主にクボテックが行っています。

(2) 米国


クボテックが開発した3Dソリューションシステム(創造エンジニアリング事業の製品)を中心に取り扱い、米国市場における新規顧客の開拓や既存顧客への販売、ソフトウェアの受託開発を行っています。

自社開発のカーネルを採用したソフトウェア製品の販売代金や、第三者への技術提供によるロイヤリティ収入から収益を獲得しています。米国セグメントの事業運営は連結子会社のKubotek USA, Inc.が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


ここ5期間の売上高は増加傾向にあり、直近では21.0億円に達しています。一方で、経常利益および当期利益は一貫して赤字が続いており、依然として厳しい収益状況が継続しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 10.2億円 12.2億円 13.1億円 16.6億円 21.0億円
経常利益 -1.7億円 -1.8億円 -2.2億円 -1.3億円 -1.1億円
利益率(%) -16.7% -14.7% -16.8% -7.6% -5.4%
当期利益(親会社所有者帰属) -1.1億円 -2.3億円 -3.0億円 -2.0億円 -1.8億円

(2) 損益計算書


売上高は大幅に増加したものの、売上総利益はほぼ横ばいにとどまり、売上総利益率は低下しています。営業赤字の幅は縮小しましたが、引き続き赤字を計上しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 16.6億円 21.0億円
売上総利益 6.8億円 6.8億円
売上総利益率(%) 40.9% 32.4%
営業利益 -1.3億円 -1.1億円
営業利益率(%) -7.5% -5.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が3.5億円(構成比44%)、支払手数料が1.1億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


日本セグメントは、主に画像処理外観検査装置の売上が伸長し、大幅な増収を達成しました。一方、米国セグメントでは3Dソリューションシステム製品の売上が横ばいで推移し、前年と同水準にとどまっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
日本 10.9億円 15.3億円
米国 5.7億円 5.7億円
連結(合計) 16.6億円 21.0億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業は赤字ですが、将来の成長や事業維持のために借入などで資金調達を行い、投資を継続している状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -2.0億円 -0.3億円
投資CF -2.5億円 -3.0億円
財務CF -2.5億円 0.1億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-120.9%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は7.0%であり、いずれも市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「技術は人のために」を標語として、あらゆるシステムの根幹に「人」を置き、人を真に豊かにする技術の発展に貢献することを事業の理念として掲げています。

(2) 企業文化


日常の企業活動において「創意・工夫と不断の努力」を社訓とし、新鮮な発想と、それを具体化して粘り強く実証するという技術の基本常識を大切にする文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


厳しい競争の中においても安定的な配当と機動的な投資を実現し持続的に成長し続けるために、収益性を重視しており、売上高経常利益率を高水準に保つことを経営目標としています。

(4) 成長戦略と重点施策


既存事業の競争力維持と新規事業の創出を図り、収益基盤の強化を目指しています。画像処理外観検査装置における新規市場開拓や、3Dソリューションシステム製品の販売拡大を推進するほか、エネルギー事業などの推進にも取り組む方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


個人の属性に関係なく多様な従業員が仕事に取り組める職場環境を目指し、能力を最大限発揮できる体制の整備を推進しています。OJTを通じた業務経験を中心に、自律的で専門能力や技能に優れた人材の育成に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 55.8歳 22.5年 5,883,000円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は常時雇用する労働者が300人以下である等の理由により公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、残業時間(一人当たり月平均)(3時間)、有給休暇取得率(78%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 財政状態および業績の変動


主力である検査機システム事業の業績はFPDメーカーの設備投資動向に大きく依存しています。顧客の設備投資時期の変動や納期の延期、開発費の負担増などが同社グループの財政状態および期間損益に影響を与える可能性があります。

(2) 特定の市場・顧客への依存


現時点でFPD製造は日本、韓国、台湾、中国の主要メーカーに集中しており、一部の大手メーカーへの集約も進んでいます。これら特定顧客からの受注動向や国際情勢の変化が、同社の事業活動や業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 上場廃止に伴う影響


同社株式は2026年4月に整理銘柄に指定され、同年10月に上場廃止となる予定です。これにより株式の流動性が低下するほか、社会的信用や資金調達環境、取引先との関係等に影響を及ぼし、事業運営に不確実性をもたらす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。