マックス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

マックス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

マックスは、東京証券取引所プライム市場に上場するメーカーです。ホッチキス等のオフィス機器、釘打機や浴室暖房換気乾燥機等のインダストリアル機器、車いす等のHCR機器の製造販売を主力とします。コンクリート構造物向け工具の好調などにより、4期連続で過去最高の売上高と各利益を更新し増収増益となりました。


※本記事は、マックス株式会社 の有価証券報告書(第95期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. マックスってどんな会社?


ホッチキス等のオフィス機器と、建築用工具等のインダストリアル機器を中心に製造販売を展開するメーカーです。

(1) 会社概要


同社は1942年に山田航空工業として設立され、1945年に事務器の生産を開始しました。1964年に現在のマックスに商号を変更しています。1970年に東京証券取引所市場第二部へ上場を果たしました。近年では2013年に車いすを製造するカワムラサイクルを完全子会社化するなど、事業領域を拡大しています。

現在の従業員数は連結で2,470名、単体で977名です。株主構成については、筆頭株主が信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行であり、第2位に第一生命保険、第3位に日本生命保険が続いており、上位を金融機関が占めています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.65%
第一生命保険 8.58%
日本生命保険 8.37%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は小川辰志氏が務めており、社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
小川 辰志 代表取締役社長 1988年同社入社。開発設計部第1設計グループ部長、研究開発部長などを経て、2021年常務取締役。2023年より現職。
角 芳尋 専務取締役上席執行役員コーポレート本部長 1985年同社入社。経営企画室長、海外営業部長などを歴任。2024年専務取締役コーポレート本部長兼経営企画室長を経て、2026年より現職。
山本 将仁 専務取締役上席執行役員営業本部長 1987年同社入社。MAX USA CORP.社長、海外営業部長などを経て、2021年常務取締役。2025年より現職。
石井 英之 常務取締役上席執行役員生産本部長 1989年同社入社。MAX(THAILAND)社長などを経て、2023年取締役生産本部長。2025年より現職。
加藤 浩二 常務取締役上席執行役員開発本部長 2004年同社入社。開発設計部第3設計グループ部長などを経て、2023年取締役開発本部長。2025年より現職。
中村 智彦 取締役常勤監査等委員 1984年同社入社。機工品営業部マーケティンググループ部長代理、経営企画室部長などを経て、2022年より現職。


社外取締役は、倉澤佳子(元小松製作所CSR室長)、神田安積(御茶の水ひまわり法律事務所パートナー弁護士)、木内昭二(津の守坂法律事務所弁護士)、矢島茉莉(矢島茉莉公認会計士事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「オフィス機器」「インダストリアル機器」「HCR機器」の3つの報告セグメントで事業を展開しています。

オフィス機器

ホッチキス、タイムレコーダ、文字表示機器、オートステープラ等を中心とした事務機械・文具関連製品を製造販売しています。主に日本およびアジアの顧客に向けて製品を提供しています。

製品の販売を通じて顧客から収益を得ています。運営は同社が製造販売を行うほか、MAX(THAILAND)CO.,LTD.や美克司電子機械(深圳)有限公司などの子会社で製造し、同社が仕入れて販売する体制をとっています。

インダストリアル機器

釘打機、エアコンプレッサ、鉄筋結束機、充電工具などの建築用機械器具や、浴室暖房換気乾燥機、24時間換気システムなどの住宅設備機器を製造販売しています。主に日本、北米、ヨーロッパの顧客を対象としています。

製品の販売により収益を得ています。運営は同社が製造販売するほか、マックス常磐やマックス高崎、MAX(THAILAND)CO.,LTD.などの子会社で製造を行い、同社が仕入れて販売しています。

HCR機器

標準車いすや特殊車いすなどの介護・福祉機器の製造販売を行っています。主に日本の顧客に向けて、安全性を考慮した製品を提供しています。

製品の販売によって顧客から収益を得ています。この事業の運営は、主に子会社であるカワムラサイクルが製造および販売を担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は、売上高が右肩上がりで成長を続けており、それに伴い各段階利益も順調に拡大しています。経常利益率は11.2%から18.5%へと大幅に向上しており、収益性の高さと事業の力強い成長基調が伺えます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 740億円 843億円 866億円 918億円 996億円
経常利益 83億円 105億円 137億円 148億円 184億円
利益率(%) 11.2% 12.5% 15.8% 16.1% 18.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 39億円 65億円 85億円 93億円 111億円

(2) 損益計算書


売上高の拡大に伴い、売上総利益も増加しています。売上総利益率および営業利益率ともに前年を上回る水準となっており、コストコントロールや高付加価値製品の販売増による収益性の改善が進んでいることが読み取れます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 918億円 996億円
売上総利益 439億円 491億円
売上総利益率(%) 47.8% 49.3%
営業利益 145億円 176億円
営業利益率(%) 15.8% 17.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料が71億円(構成比23%)、荷造発送費が41億円(同13%)、賞与引当金繰入額が19億円(同6%)を占めています。

(3) セグメント収益


インダストリアル機器部門は、コンクリート構造物向け工具の好調などにより大幅な増収増益となり、全体の業績を牽引しています。一方、オフィス機器部門やHCR機器部門は市況の低迷や製品不具合の影響で減収減益または赤字継続となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
オフィス機器 219億円 214億円 45億円 36億円 16.7%
インダストリアル機器 667億円 752億円 146億円 190億円 25.2%
HCR機器 33億円 30億円 -0.8億円 -0.4億円 -1.4%
調整額 - - -45億円 -49億円 -
連結(合計) 918億円 996億円 145億円 176億円 17.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業であると判定できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 146億円 148億円
投資CF -18億円 -34億円
財務CF -76億円 -112億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も83.6%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


社是として「一、良い製品を責任をもって供給する」「一、全従業員の生活の向上と人材の養成に努める」「一、社会に奉仕し、文化に貢献する堅実な前進を期する」を掲げています。持てる能力や技術を最大限発揮し、顧客や社会が求める良い製品を創り出し継続的に供給することを使命とし、社会の持続性への貢献と堅実な企業の実現を目指しています。

(2) 企業文化


人が尊重され、人が成長することにより会社も成長するという考えのもと、「いきいきと楽しく力を合わせ、皆揃って成長していく集団を目指す」という経営基本姿勢を掲げています。その実践として、「ガラス張りの経営」「全員参画の経営」「成果配分の経営」に徹することを重視しています。

(3) 経営計画・目標


「未来を創る」をテーマとした中期経営計画を前倒しで達成し、次期事業計画として2027年3月期の数値を上方修正しています。事業戦略や経営基盤強化戦略を実践し、同社初の売上高1,000億円超えを目指します。

・売上高:1,055億円
・営業利益:188億円
・経常利益:191億円
・ROE:12.3%

(4) 成長戦略と重点施策


海外事業では鉄筋結束機を中心としたコンクリート構造物向け工具で成長を牽引します。国内事業では住環境機器事業のストックビジネス拡大やオフィス事業の文字表示機器の拡販などビジネスモデルの変革を推進します。また、工具のサブスクリプション・レンタルサービスなど新規事業の事業化にも注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人を活かす企業の実現」を重要課題に設定し、「失敗を恐れず挑戦し続け、共に学び、成長を目指す人」を目指す人材像として掲げています。多様な人材の活躍を推進し、ワークライフバランスの実現に向けた環境整備や、結果だけでなくプロセスも評価に加味する公正な評価・処遇制度を運用しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.3歳 16.5年 10,002,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.6%
男性育児休業取得率 86.4%
男女賃金差異(全労働者) 49.6%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 75.0%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 43.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、単独新卒採用女性比率(37.0%)、セルフチェック回答率(95.2%)、有給休暇取得率(69.2%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 住宅市場縮小とペーパーレス化の進展

インダストリアル機器部門は新設住宅着工戸数の影響を受けやすく、オフィス機器部門はオフィスでの紙の消費と関連しています。少子高齢化やペーパーレス化が想定を上回るスピードで進展した場合、主要製品の需要が減退し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 海外取引における為替変動リスク

同社グループは海外への売上や海外からの調達において、米ドルやユーロ、人民元などの外貨建取引を含んでいます。急激な為替レートの変動が生じた場合、売上高や売上原価、純資産などに影響を与え、経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 海外事業における政治・規制リスク

調達、生産、販売活動の多くを海外で展開しているため、各国の経済安全保障政策や通商政策の変化、予期しない法規制の変更、あるいは国際関係の悪化などが生じた場合、海外での事業活動に支障が生じ、同社グループの業績や将来の計画に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


関連記事

マックスの転職研究 2026年3月期3Q決算に見るキャリア機会

マックスの2026年3月期3Q決算は、鉄筋結束機の好調により売上・利益ともに過去最高を更新。建設現場の人手不足を解決する「機械化」の需要を捉え、海外市場で爆発的な成長を見せています。「なぜ今マックスなのか?」、1対4の株式分割や成長戦略を踏まえ、転職者が担える役割を整理します。