マックス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

マックス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するマックスは、ホッチキスなどのオフィス機器、釘打機などのインダストリアル機器、車いすなどのHCR機器の製造販売を主力事業としています。直近の業績は、売上高918億円、営業利益145億円と増収増益を達成しており、国内外での主力製品の販売好調により堅実な成長を続けています。


※本記事は、マックス株式会社の有価証券報告書(第94期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. マックスってどんな会社?


オフィス機器やインダストリアル機器、HCR機器の製造販売を展開し、独自の技術で市場をリードするメーカーです。

(1) 会社概要


1942年に設立され、1945年に事務器の生産を開始しました。1970年に東京証券取引所市場第二部に上場し、1975年に同市場第一部へ指定替えを果たしました。その後も国内外に生産・販売拠点を拡大し、2013年には車いすメーカーのカワムラサイクルを完全子会社化するなど、事業領域を広げています。

同社グループは、連結で2,458名、単体で952名の従業員を擁しています。筆頭株主は保険会社の第一生命保険で、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行、第3位も保険会社の日本生命保険となっており、金融機関が安定した株主基盤を構成しています。

氏名 持株比率
第一生命保険 9.32%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.48%
日本生命保険 8.19%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は小川辰志氏が務めています。取締役10名のうち社外取締役は4名であり、社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
小川辰志 代表取締役社長 1988年同社入社。開発本部での要職を経て、2017年に執行役員開発本部長に就任。その後、取締役上席執行役員、常務取締役上席執行役員生産本部長などを歴任し、2023年より現職。
角芳尋 専務取締役上席執行役員コーポレート本部長兼経営企画室長 1985年同社入社。経営企画室長や営業本部海外営業部長などを歴任し、2021年に取締役上席執行役員に就任。常務取締役を経て、2024年より現職。
山本将仁 専務取締役上席執行役員営業本部長 1987年同社入社。海外子会社社長や営業本部海外営業部長などを歴任し、2020年に取締役上席執行役員営業本部長に就任。常務取締役を経て、2025年より現職。
石井英之 常務取締役上席執行役員生産本部長 1989年同社入社。海外子会社社長や生産・物流システム部長などを歴任し、2023年に取締役執行役員生産本部長に就任。2025年より現職。
加藤浩二 常務取締役上席執行役員開発本部長 2004年同社入社。開発設計部の要職を経て、2021年に執行役員開発本部長に就任。2023年に取締役執行役員となり、2025年より現職。
中村智彦 取締役常勤監査等委員 1984年同社入社。営業本部や経営企画室での要職を経て、2022年より現職。


社外取締役は、倉澤佳子(元小松製作所CSR室長)、神田安積(弁護士)、木内昭二(弁護士)、矢島茉莉(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「オフィス機器」「インダストリアル機器」「HCR機器」の報告セグメントで事業を展開しています。

オフィス機器
ホッチキス、タイムレコーダ、文字表示機器、オートステープラ等を中心とした事務機械や文具関連製品を提供しており、国内外のオフィスや教育機関などが主な顧客です。
収益源はこれらの製品および消耗品の販売代金です。運営は同社のほか、海外子会社の美克司電子機械(深圳)などが製造を担い、同社が仕入れて販売するモデルも展開しています。

インダストリアル機器
釘打機、エアコンプレッサ、鉄筋結束機などの建築・建設用工具や、浴室暖房換気乾燥機、24時間換気システムなどの住宅設備機器を提供しています。
収益源は建築業者や住宅設備業者への製品および消耗品の販売代金です。運営は同社のほか、子会社のマックス常磐やマックス高崎、海外の製造子会社などが担っています。

HCR機器
標準車いすや特殊車いすを中心とした介護・福祉機器を提供しており、高齢者や障がい者、医療・介護施設などが主な顧客となります。
収益源は車いすなどの製品販売代金です。同事業の運営は、主に子会社のカワムラサイクルが製造販売を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績を見ると、売上高は着実に成長を続けており、経常利益も右肩上がりで拡大しています。利益率も改善傾向にあり、堅実な収益基盤が確立されていることがうかがえます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 640億円 740億円 843億円 866億円 918億円
経常利益 68億円 83億円 105億円 137億円 148億円
利益率(%) 10.7% 11.2% 12.5% 15.8% 16.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 26億円 39億円 65億円 85億円 93億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに堅調に推移しています。利益率も改善しており、効率的な事業運営が行われています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 866億円 918億円
売上総利益 399億円 439億円
売上総利益率(%) 46.0% 47.8%
営業利益 126億円 145億円
営業利益率(%) 14.5% 15.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料が66億円(構成比22%)、荷造発送費が41億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


各セグメントともに堅調な売上推移を示しており、特に主力であるインダストリアル機器が全体の成長を強力に牽引しています。オフィス機器やHCR機器も安定した推移を見せています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
オフィス機器 210億円 219億円
インダストリアル機器 624億円 667億円
HCR機器 32億円 33億円
連結(合計) 866億円 918億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 121億円 146億円
投資CF -37億円 -18億円
財務CF -72億円 -76億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は83.7%で市場平均を上回っています。いずれも市場平均を上回る優れた水準を維持しています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「一、良い製品を責任をもって供給する」「一、全従業員の生活の向上と人材の養成に努める」「一、社会に奉仕し、文化に貢献する堅実な前進を期する」という社是を掲げています。持てる能力や技術を最大限発揮し、顧客や社会が求める良い製品を創り出し、社会の持続性への貢献を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、「人が尊重され、人が成長することにより、会社も成長する」という考えのもと、「いきいきと楽しく力を合わせ、皆揃って成長していく集団を目指す」ことを経営基本姿勢としています。また、「ガラス張りの経営」「全員参画の経営」「成果配分の経営」に徹する文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は中長期的な成長に向けて、以下の具体的な数値目標を掲げています。
・2030年度売上高:1,100億円超
・2030年度営業利益:200億円超
・2030年度ROE:12%超
・2030年度PBR:2倍超
・2030年度海外売上高比率:55%超

(4) 成長戦略と重点施策


海外事業では主力市場である欧米での販路拡大や新規市場開拓を進め、国内事業ではビジネスモデルの変革を推進しています。また、新規事業の創出やサステナビリティ経営、DXの推進を通じて競争優位性の確立を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人を活かす企業の実現」をマテリアリティのひとつに設定し、「人を信じ、活かす経営」を基本ポリシーとしています。「失敗を恐れず挑戦し続け、共に学び、成長を目指す人」を目指す人材像に掲げ、すべての人が個々の能力を最大限発揮し、意欲とやりがいを持って働くことができる環境整備を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.3歳 16.3年 9,339,000円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.9%
男性育児休業取得率 81.3%
男女賃金差異(全労働者) 47.4%
男女賃金差異(正規雇用) 73.0%
男女賃金差異(非正規雇用) 43.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(65.6%)、平均残業時間(年間)(160.6時間)、離職率(0.8%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 新設住宅着工戸数・紙の消費の減少リスク

インダストリアル機器部門は国内の新設住宅着工戸数の影響を受けやすく、少子高齢化等により想定以上に減少が進んだ場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、オフィス機器部門もペーパーレス化の進展等により需要が減少するリスクを抱えています。

(2) 外貨建取引による為替変動リスク

同社グループは海外への売上や調達において米ドルやユーロなどの外貨建取引を行っています。為替レートの急激な変動は、売上高や売上原価、純資産等に直接的な影響を与え、経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 鉄筋結束機等の技術的優位性の喪失リスク

コンクリート構造物向け工具の主力である鉄筋結束機等は知的財産権による優位性を有していますが、技術的優位性の喪失や代替手段の登場、工法の変化等が生じた場合、需要が減退し事業計画に悪影響を与えるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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