ネポン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ネポン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ネポンは、東京証券取引所スタンダード市場および福岡証券取引所本則市場に上場する、熱機器や衛生機器の製造・販売を行う企業です。施設園芸用温風暖房機やヒートポンプなどの農業用機器を主力としています。直近の業績では、施設園芸向けの大口工事等の受注増により増収増益を達成し、収益性の改善が進んでいます。


※本記事は、ネポンの有価証券報告書(第79期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ネポンってどんな会社?


同社は、施設園芸用温風暖房機などの熱機器と簡易水洗便器などの衛生機器を製造・販売するメーカーです。

(1) 会社概要


同社は1948年に熱ポンプ工業として設立され、熱ポンプ設備を完成させました。1964年に農業用暖房機「ハウスカオンキ」を発売し、1969年に現在のネポンへ改称しています。1974年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、2025年には福岡証券取引所本則市場にも重複上場を果たしました。

現在の従業員数は連結で247名、単体で240名です。大株主の構成を見ると、筆頭株主は創業家出身で代表取締役社長を務める福田晴久氏であり、第2位には同社の主要取引先である佐藤商事が名を連ねています。また、第3位には取引先等の持ち株会であるネポン共栄会が名を連ねています。

氏名 持株比率
福田 晴久 12.61%
佐藤商事 12.53%
ネポン共栄会 8.39%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長兼CEOは福田晴久氏が務めており、社外取締役比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
福田 晴久 代表取締役社長CEO 1998年4月富士電機入社。2000年3月同社入社、取締役技術本部部長、専務等を経て2006年6月代表取締役社長。2023年6月より現職。
川本 武史 取締役副社長COO営業サービス本部長 1992年4月通商産業省入省。マッキンゼー等を経てボストン・コンサルティング・グループパートナー。2023年2月同社顧問となり2024年4月より現職。
堀 建二郎 取締役管理本部長 1991年4月住友銀行(現三井住友銀行)入行。日暮里支店長等を経て2023年1月同社顧問。2023年4月管理本部長となり同年6月より現職。
丹 恭一 取締役生産本部長 1985年4月同社入社。執行役員海外拠点準備室長、タイ子会社社長等を経て2024年4月生産本部長となり同年6月より現職。


社外取締役は、柳田隆治(佐藤商事常務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「熱機器事業」「衛生機器事業」および「その他事業」を展開しています。

(1) 熱機器事業


施設園芸用温風暖房機「ハウスカオンキ」やヒートポンプなどの農業用機器をはじめ、ビル・工場用温風暖房機などの汎用機器を製造・販売しています。また、農業ICTクラウドサービス「アグリネット」などを通じ、農業生産者向けの栽培環境制御システムも提供しています。

機器の販売代金や付帯する冷暖房・給湯工事の施工代金、クラウドサービスの利用料などを収益源としています。開発・製造・販売は主に同社が行い、海外子会社のNEPON(Thailand)Co.,Ltd.が一部製品の仕入および販売を担っています。

(2) 衛生機器事業


水洗化が困難な地域や施設向けに、少量の水で洗浄できる泡洗式簡易水洗便器「パールトイレ」や水洗式簡易水洗便器「プリティーナ」などを製造・販売しています。業務用トイレシステムや関連する衛生設備工事も取り扱っています。

便器や便座などの衛生機器の販売代金、専用の界面活性剤などの消耗品販売、および衛生設備工事の施工代金を主な収益源としています。当事業の企画から開発、製造、販売、アフターサービスに至るまで、同社が主体となって運営しています。

(3) その他事業


熱機器事業や衛生機器事業に含まれない事業分野として、搬送機器に関連するサービス等を提供しています。

搬送機器に関連するサービスの提供による手数料などを主な収益源としています。この事業の運営は同社が単独で行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績を見ると、売上高は70億円台後半で推移していますが、原材料価格の高騰や農業分野の設備投資抑制などの影響により、利益面では一時的に赤字を計上する厳しい局面もありました。しかし、直近の事業年度では、工事の受注増や各種経費の削減策が奏功し、再び黒字転換を果たしており、収益基盤の立て直しが進んでいます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 74.9億円 79.9億円 77.7億円 72.8億円 74.2億円
経常利益 2.7億円 4.0億円 0.8億円 0.7億円 0.8億円
利益率(%) 3.6% 5.0% 1.1% 1.0% 1.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 2.2億円 2.9億円 0.6億円 -2.8億円 0.4億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で微増となり、売上総利益も増加しました。一方で、販売費及び一般管理費を前年並みに抑えたことで、営業利益は前期から倍増する結果となっています。在庫圧縮を目的とした仕入抑制や、全社的な経費削減の取り組みが利益率の改善に寄与しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 72.8億円 74.2億円
売上総利益 25.2億円 25.4億円
売上総利益率(%) 34.6% 34.2%
営業利益 0.4億円 0.7億円
営業利益率(%) 0.5% 0.9%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が8.2億円(構成比33%)、研究開発費が4.5億円(同18%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の熱機器事業は、気候災害に強い低コスト型園芸施設の大口工事やロードヒーティング設置工事などの受注が増加し、増収増益となりました。一方で、衛生機器事業は、前年にあった防災対策に伴う簡易水洗便器の受注が一巡した反動減により、減収減益となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
熱機器 67.7億円 69.5億円 10.2億円 10.6億円 15.2%
衛生機器 5.1億円 4.7億円 1.4億円 1.2億円 26.0%
その他事業 0.0億円 0.0億円 0.0億円 0.0億円 -
連結(合計) 72.8億円 74.2億円 0.4億円 0.7億円 0.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業(健全型)の傾向を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 1.7億円 3.9億円
投資CF -0.6億円 -1.2億円
財務CF -0.9億円 -1.9億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.6%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は41.5%であり、いずれも市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、創業者のモットーである「みんなが豊かな生活に」「世界に二つとない商品を開発しよう」を受け継ぎ、健全な事業活動を通じて人を大切にし、優れた製品と質の高いサービスで社会の発展に貢献することを企業理念としています。また、「お客様の声を起点に農と住の明日を創造する会社を目指す」ことを事業骨子として掲げています。

(2) 企業文化


同社は、「個」の成長が企業価値の向上に直結すると考え、社員の意識の高揚とスキルアップを重視する文化を持っています。また、総合力の向上を目指して業務の標準化やノウハウの共有化を推進し、部門間や個人間の連携を円滑かつスピーディーに行える組織づくりに努めており、社員が自律的にキャリア形成できる環境を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


同社は、目標とする経営指標として「売上高」「営業利益率」「自己資本比率」の向上を掲げ、資本・資産効率を意識した収益改善を進めています。また、サステナビリティの観点から気候変動対策の中期目標を設定し、化石燃料を使用する暖房機からヒートポンプへの転換を推進しています。
・ヒートポンプ国内販売台数増加率(2024年3月期比):61.4%
・CO2排出量削減率(2013年比):0.3%

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、長年培ってきた熱および流体制御技術を基盤に、農業分野におけるIoT化と脱炭素化を成長の柱に据えています。具体的には、栽培現場の省力化を実現する農業用ICTクラウド等の開発体制を強化し、他社サービスとのデータ連携を推進します。同時に、化石燃料と電気のハイブリッド暖房システムや、CO2排出量の少ない次世代エネルギーを活用した新製品の開発に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、「個」の成長が企業価値の向上に資するという考えのもと、社員が自律的にキャリア形成できる仕組みの構築を重視しています。能力と成果に応じた適正な評価・処遇を実現する透明性の高い制度を整備するとともに、技能継承に向けたマイスター制度やシニア社員制度を導入し、多様な人材が長期にわたって活躍できる職場環境の整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.6歳 14.3年 5,325,000円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(パート・有期) -


女性管理職比率および男女の賃金差異については、公表義務の対象ではないため有報には記載がありません。

また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(23.0%)、女性採用比率(17.0%)、障碍者雇用率(2.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) エネルギー情勢への依存リスク

主力の施設園芸用温風暖房機は燃料の大半を石油に依存しているため、原油価格の高騰が農業生産者の設備投資意欲を低下させるリスクがあります。同社は対策として、電気を動力とするヒートポンプの生産・販売を推進し、リスクの分散を図っています。

(2) 異業種参入に伴う価格競争激化

農業事業の規制緩和により、異業種からの新規参入が進んでいます。それに伴う施設園芸用暖房工事の価格競争が激化し、同社の収益を圧迫する可能性があります。同社はICTクラウドサービス等の推進により、特定事業に依存しない収益体制の構築を進めています。

(3) 農業人口減少等の社会情勢の変化

国内の農業人口の減少や高齢化、後継者不足により、新規設備投資が減少するリスクがあります。また、下水道の普及による簡易水洗便器市場の縮小も懸念されます。同社は、長年培った熱と流体を制御する技術を他業界へ転用する用途開発を進め、新たな基盤獲得を目指しています。

(4) CO2排出削減に対する環境対応要件

世界的な脱炭素化の潮流の中、化石燃料を使用する温風暖房機からのCO2排出量削減が使用者から強く求められることが予想されます。同社は、ヒートポンプの普及促進に加え、代替エネルギーを利用する次世代暖房機の開発を検討し、環境対応への備えを進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。