ネポン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ネポン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の熱機器メーカー。施設園芸用温風暖房機「ハウスカオンキ」を主力とする熱機器事業と、簡易水洗便器などを扱う衛生機器事業を展開しています。2025年3月期は、主力事業における設備投資意欲の減退等が響き減収となり、最終損益は赤字に転落しました。


※本記事は、ネポン株式会社 の有価証券報告書(第78期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

ネポン転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

1. ネポンってどんな会社?


熱機器事業と衛生機器事業を柱に、農と住の環境創造に取り組む企業です。特に施設園芸用暖房機で高い実績を持ちます。

(1) 会社概要


1948年に熱ポンプ工業として設立され、1953年に熱風炉を完成させました。1964年に主力のハウスカオンキを発売し、1969年に現社名へ改称するとともにパールトイレを発売しました。1974年に東証二部に上場し、2022年の市場区分見直しに伴い東証スタンダード市場へ移行しました。

現在の従業員数は連結259名、単体252名です。筆頭株主は金属材料等の販売を行う佐藤商事で、第2位はネポン共栄会、第3位は代表取締役社長の福田晴久氏です。

氏名 持株比率
佐藤商事 12.53%
ネポン共栄会 8.41%
福田 晴久 7.14%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長CEOは福田 晴久氏です。社外取締役比率は12.5%です。

氏名 役職 主な経歴
福田 晴久 代表取締役社長CEO 富士電機を経て2000年入社。取締役技術本部部長、専務等を経て2006年社長就任。2023年より現職。
川本 武史 取締役副社長COO営業サービス本部長 通産省(現経産省)、マッキンゼー、BCGパートナー等を経て2023年入社。2024年より現職。
堀 建二郎 取締役管理本部長 住友銀行(現三井住友銀行)を経て2023年顧問就任。同月管理本部長となり、同年6月より現職。
丹 恭一 取締役生産本部長 1985年入社。執行役員海外事業本部長、生産本部部長を経て2024年4月生産本部長。同年6月より現職。


社外取締役は、柳田 隆治(佐藤商事上席執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「熱機器」「衛生機器」および「その他」事業を展開しています。

(1) 熱機器事業


施設園芸用温風暖房機(ハウスカオンキ)、ヒートポンプ、農業用ICTクラウドサービス(アグリネット)、ビル・工場用温風暖房機などの製造販売および付帯工事を行っています。主力製品は農業分野で広く利用されており、ハウス内の環境制御装置なども手掛けています。

製品の販売代金や設置工事費、クラウドサービスの利用料などが主な収益源です。運営は主に同社が行い、連結子会社のNEPON(Thailand) Co.,Ltd.も熱機器製品の仕入・販売に関与しています。

(2) 衛生機器事業


泡洗式簡易水洗便器(パールトイレ)、水洗式簡易水洗便器(プリティーナ)、業務用トイレシステムなどの製造販売および衛生工事を行っています。下水道未普及地域や特定の業務用需要に対応した製品を提供しています。

代理店や工務店、施主からの製品購入代金および設置工事費が収益源となります。運営は同社が行っています。

(3) その他事業


搬送機器サービス等を行っています。

サービスの提供による対価を収益源としています。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は70億円台で推移していますが、直近では減少傾向にあります。利益面では、2023年3月期までは一定の利益率を維持していましたが、2024年3月期に利益率が低下し、2025年3月期には最終損益が赤字に転落しました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 73億円 75億円 80億円 78億円 73億円
経常利益 2.6億円 2.7億円 4.0億円 0.8億円 0.8億円
利益率(%) 3.6% 3.6% 5.0% 1.1% 1.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.6億円 2.1億円 2.9億円 0.6億円 -2.9億円

(2) 損益計算書


売上高の減少に伴い売上総利益が減少しています。営業利益は前年比で微増しましたが、営業利益率は低い水準に留まっています。販管費は抑制傾向にあるものの、収益性の改善が課題となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 78億円 73億円
売上総利益 28億円 25億円
売上総利益率(%) 35.9% 34.7%
営業利益 0.3億円 0.4億円
営業利益率(%) 0.4% 0.5%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が8.0億円(構成比32%)、研究開発費が5.0億円(同20%)を占めています。売上原価においては、材料費が24億円(構成比61%)、外注加工費が7.2億円(同18%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の熱機器事業は、農業生産者の設備投資意欲減退により減収減益となりました。一方、衛生機器事業は簡易水洗便器の需要増により増収増益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
熱機器 73億円 68億円 13億円 10億円 15.1%
衛生機器 5億円 5億円 1億円 1億円 27.4%
その他 0.3億円 0.0億円 -0.4億円 0.0億円 34.9%
調整額 - - -14億円 -11億円 -
連結(合計) 78億円 73億円 0.3億円 0.4億円 0.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、短期借入を活用した資金調達と借入金の返済により、財務活動によるキャッシュ・フローをマイナスとしています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、売上債権の減少によりプラスとなりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産や無形固定資産の取得、定期預金の払い戻し等によりマイナスとなりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 2.2億円 1.7億円
投資CF -0.2億円 -0.6億円
財務CF -2.0億円 -0.9億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


創業者の「みんなが豊かな生活に」「世界に二つとない商品を開発しよう」をモットーとし、健全な事業活動を通して人を大切にし、優れた製品の提供と質の高いサービスを通じて社会の発展に貢献することを企業理念としています。

(2) 企業文化


顧客志向を第一に考え、「お客様が求める環境作りのために私たちは(社員)はお客様の声を起点に農と住の明日を創造する会社を目指します。」を事業骨子として位置付けています。ステークホルダーにとって価値ある存在となるべく、経営の効率化と収益性向上を目指す姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標


売上高、営業利益率、自己資本比率を目標とする経営指標として位置付けています。また、農林水産省の「みどりの食糧システム戦略」に対応し、2030年までに施設園芸用ヒートポンプの販売台数増加やCO2排出量削減などのKPI達成を目指しています。

* 2030年目標:2013年比CO2削減率(農水省目標に準拠)
* 2028年3月期目標:ヒートポンプ販売台数増加率 384.0%(2024年3月期比)

(4) 成長戦略と重点施策


施設園芸業界の変化に対応するため、IoT製品開発体制の強化、脱炭素に向けた暖房機等の開発、および人財育成を優先課題としています。特に、農業ICTクラウドサービスへの積極投資や、化石燃料以外のエネルギーを使用する暖房機器の開発に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


多様性と自律性を備えた「個」の成長が企業価値を高めると考え、女性活躍推進や育児休業取得率向上などの数値目標を設定しています。また、マイスター制度やシニア社員制度などの人事制度改革、働き方改革を通じ、社員エンゲージメントの向上と人的資本の拡充に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.9歳 15.4年 5,316,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
男性育児休業取得率 28.0%


※「管理職に占める女性労働者の割合」及び「労働者の男女の賃金の差異」について、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律の規定による公表義務の対象ではないため、記載を省略しております。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性採用比率(21%)、女性社員比率(24%)、障碍者雇用率(2.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) エネルギー情勢への依存度


熱機器事業の施設園芸用温風暖房機は、燃料の大半を石油に依存しており、原油価格の動向が生産者の設備投資意欲に影響を及ぼす可能性があります。対策として、電気を動力とする施設園芸用ヒートポンプの生産・販売を推進し、リスク分散を図っています。

(2) 競争激化による価格競争


熱機器事業の施設園芸用暖房工事において、農業事業の規制緩和による異業種参入に伴い価格競争が激化し、収益に影響を及ぼす可能性があります。対策として、アグリネット(農業用ICTクラウドサービス)の推進などを進め、特定の事業収益に頼らない体制構築を目指しています。

(3) 国内農業の社会情勢変化


熱機器事業では、農業人口の減少、高齢化、後継者不足による設備投資減少や、自然災害による施設撤退が業績に影響する可能性があります。また衛生機器事業では下水道普及による市場縮小が懸念されます。対策として、保有技術を異なる業界へ転用する用途開発を進め、新たな事業基盤の獲得を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。