※本記事は、ニフコの有価証券報告書(第74期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ニフコってどんな会社?
同社は工業用プラスチック・ファスナー等の合成樹脂成形品と、シモンズブランドのベッド・家具を製造販売しています。
■(1) 会社概要
1967年に日英物産と米国企業との合弁で設立され、1970年にニフコへ商号変更しました。1979年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、1984年に同市場第一部へ指定されています。1996年にはシモンズを子会社化し、ベッド・家具事業へ参入するなど、国内外で事業領域を拡大してきました。
現在の従業員数は連結で8886名、単体で1412名です。大株主の構成を見ると、筆頭株主は信託業務を行う信託銀行で、第2位は創業者ゆかりの記念財団、第3位は外資系金融機関となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 13.79% |
| 公益財団法人小笠原敏晶記念財団 | 11.07% |
| GOLDMAN, SACHS & CO. REG | 6.45% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長 兼CEOは柴尾雅春氏が務めています。社外取締役比率は62.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 柴尾雅春 | 代表取締役社長 兼CEO(最高経営責任者) | 1985年同社入社。独や米の現地法人社長、取締役常務執行役員などを経て、2023年より現職。 |
| 福尾道宏 | 取締役開発本部長 兼CTO(最高技術責任者) 兼製造本部長兼CPO(最高製造責任者) | 1994年同社入社。技術開発センター長や技術本部副本部長、執行役員などを経て、2025年より現職。 |
| 矢内俊樹 | 取締役(常勤監査等委員) | 1985年同社入社。経営企画部長、CFO(最高財務責任者)兼CSO(最高戦略責任者)などを経て、2025年より現職。 |
社外取締役は、野々垣好子(元ソニービジネス&プロフェッショナル事業本部企画マーケティング部門長)、米谷佳夫(元三井物産代表取締役副社長執行役員CDIO)、山畑聡(元ヤマハ常務執行役コーポレート本部長)、松本光博(フィンポート会計グループ代表)、林いづみ(桜坂法律事務所パートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「合成樹脂成形品事業」および「ベッド及び家具事業」を展開しています。
■合成樹脂成形品事業
自動車や家電業界向けに、工業用プラスチック・ファスナーおよびプラスチック精密成形部品、金型の製造と販売を行っています。軽量で錆びないエンジニアリングプラスチック製品を提供し、ものづくりの現場における作業負担の軽減や、自動車の軽量化による環境負荷低減に貢献しています。
顧客である日系・韓国系などの自動車メーカーや家電メーカーから製品の販売代金を受け取ります。運営は同社が行うほか、国内ではニフコ山形やニフコ熊本、海外ではNifco America Corporationなどの子会社が担っており、グローバルな生産・販売体制を構築しています。
■ベッド及び家具事業
量販店や専門店、百貨店、ホテルなどを顧客として、シモンズブランドの各種ベッドの製造・販売および寝装品・家具の輸入・販売を展開しています。科学的な分析と感覚を重視した商品開発により、健康で快適な睡眠と豊かなライフ空間を提案しています。
各販売チャネルの顧客から製品・商品の販売代金を受け取ります。運営は主にシモンズが行っており、海外市場においてはSimmons Bedding & Furniture (HK) Limitedなどの子会社が担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は増加傾向にありましたが、直近2期間は微減で推移しています。経常利益と利益率も高い水準を維持しつつ、直近は横ばいから微減の傾向です。当期利益は2024年3月期に一時的に落ち込んだものの、その後は回復し安定して推移しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2838億円 | 3218億円 | 3716億円 | 3530億円 | 3527億円 |
| 経常利益 | 336億円 | 379億円 | 497億円 | 521億円 | 513億円 |
| 利益率(%) | 11.8% | 11.8% | 13.4% | 14.8% | 14.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 166億円 | 187億円 | 26億円 | 284億円 | 285億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期と同水準を維持しており、売上総利益も微増して利益率は安定しています。一方で、販売費及び一般管理費等の増加により営業利益は微減となり、営業利益率もわずかに低下する結果となりました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 3530億円 | 3527億円 |
| 売上総利益 | 1072億円 | 1075億円 |
| 売上総利益率(%) | 30.4% | 30.5% |
| 営業利益 | 492億円 | 481億円 |
| 営業利益率(%) | 13.9% | 13.6% |
販売費及び一般管理費のうち、荷造運搬費が52億円(構成比約9%)、報酬及び給料手当が30億円(同約5%)を占めています。
■(3) セグメント収益
両セグメントともに売上高は前期とほぼ同水準で推移しています。主力である合成樹脂成形品事業が連結売上高の大半を占めており、安定した事業基盤を維持していることが伺えます。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 合成樹脂成形品事業 | 3159億円 | 3157億円 |
| ベッド及び家具事業 | 371億円 | 370億円 |
| 連結(合計) | 3530億円 | 3527億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業といえます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 542億円 | 472億円 |
| 投資CF | -239億円 | -181億円 |
| 財務CF | -352億円 | -314億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.9%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は75.3%であり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「小さな気づきと技術をつなぎ、心地よい生活と持続可能な社会を創造する」というPurpose(存在意義)のもと、「クリエイティブカンパニーとして感動を生み出す」というMission(使命)を掲げています。社会課題や顧客の困りごとをチャンスと捉え、持続可能な社会の実現を目指しています。
■(2) 企業文化
1967年の創業以来培ってきた「チャレンジ精神」と「創造性」を支柱とし、「変革のためのチャレンジ」「継続的なブレイクスルー」「自由なコミュニケーション」「創造的なコラボレーション」の4つをValues(価値観)として重視しています。既存の常識を打ち破り、多様な人材が協働する姿勢を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
2035年に向けた長期ビジョンとして「アイデアをカタチにする会社」を掲げ、バックキャスト型の固定型中期経営計画を策定しています。2028年度の到達目標として以下の数値を設定しています。
・売上高:4000億円
・営業利益:580億円
・営業利益率:14.5%
・当期純利益:400億円
・ROE:13.0%
■(4) 成長戦略と重点施策
既存のMobility事業の拡大を中核に、商品・顧客・地域の組み合わせを高度化することで量的拡大と収益性向上を図ります。環境・安全・快適といった普遍的価値商品や感性価値商品の投入で搭載金額を最大化するほか、中国での自律的な成長基盤確立やインド市場の強化、次世代高度整備事業などの新規事業育成を推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「アイデアをカタチにする」人材の創出を目指し、「多様な人材が持つ能力を最大限に開発し発揮させる、エンゲージメントの高い職場」の構築を掲げています。企業理念を土台とし、「人材育成」「多様性」「従業員エンゲージメント」の3つを重要な柱として、自律的なキャリア形成や柔軟な働き方を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.5歳 | 16.5年 | 7,463,337円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.7% |
| 男性育児休業取得率 | 70.6% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 58.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 65.7% |
| 男女賃金差異(パート・有期) | 45.4% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、正社員における女性比率(16.5%)、正社員における中途入社比率(39.7%)、持続可能なエンゲージメント指数(68%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 人材の流出リスク
雇用形態の多様化や従業員の不満対応の遅れ、若年層の製造業離れなどにより、高い専門性を持つ人材が不足・流出するリスクがあります。これが開発の遅延や品質悪化、外部委託コストの増加を招き、企業の収益を圧迫する可能性があります。
■(2) 情報セキュリティシステムの機能不全
サイバー攻撃やマルウェア感染などにより、社内外のITシステムが停止・機能不全に陥るリスクです。これにより業務や製品供給が停止し、顧客や取引先からの信頼を喪失するだけでなく、損害賠償などの重大な影響が生じる可能性があります。
■(3) 原材料などの調達に関わるリスク
気候変動や災害、社会情勢の不安に起因して、原材料や部品の調達が遅延・停止するリスクがあります。また、原材料価格の高騰が製造原価を押し上げ、利益低下を招く可能性や、環境負荷物質の含有により法令違反に問われる懸念もあります。
■(4) 競合先の増加によるリスク
異業種からの自動車市場への新規参入や、従来のビジネススタイルへの固執による差別化の失敗により、競合が激化するリスクです。価格競争の激化による受注価格の低下や失注案件の増加が、同社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。



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