※本記事は、クリナップ株式会社 の有価証券報告書(2026年3月期、2025年4月1日 ~ 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. 企業概要:どんな会社?
クリナップグループは、住宅や店舗・事業所向けの設備機器関連事業を主軸としています。厨房機器、浴槽・洗面機器の製造・販売を手がけ、これに関連する物流やアフターサービスなどもグループ各社とともに展開しています。
単体従業員数は2,993名、連結従業員数は3,483名です。同社グループは単一セグメントで事業を展開しています。
主な国内グループ会社は、クリナップステンレス加工センター(その他)、井上興産(厨房)、クリナップテクノサービス(厨房、浴槽・洗面)などです。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
クリナップは、住宅設備業界において長年の実績を持つ企業です。同社グループでは、社員が健康的に安心して働き、多様な能力を発揮できる職場環境の実現を目指しています。人材育成やキャリア形成支援にも力を入れており、安定した環境でキャリアを築きたいと考える方にとって、働きがいのある環境が期待できるでしょう。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
同社では、比較的長く勤める社員が多く、安定したキャリア形成が可能な環境である傾向が見られます。平均年齢も中堅層が中心となっており、経験豊富な社員が活躍していることがうかがえます。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 5,572,064円 |
| 平均勤続年数 | 15.1年 |
| 平均年齢 | 41.1歳 |
| 単体従業員数 | 2,993人 |
| 連結従業員数 | 3,483人 |
| 単体のグループ内比率 | 85.9% |
同社グループは、従業員の退職給付に充てるため、給与や勤続年数に応じて給付額が決まる確定給付型制度と、会社が拠出した資金を従業員が運用する確定拠出型制度を採用しています。これらの制度は当社グループ全体に適用されています。
退職一時金制度がありますが、支給条件や金額の算定方法は有価証券報告書では確認できないため、就業規則や募集要項で確認する必要があります。なお、確定給付制度における退職給付債務は89.7億円、年金資産は111億円となっています。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
クリナップは、人的資本を最も重要な経営資源の一つと位置付け、付加価値創造を通じた持続的な企業価値向上を目指しています。社員が健康的に安心して働き、多様な能力を発揮できる職場環境と企業風土の実現を基本方針としています。
2026年4月からは新しい人事制度を導入し、従来の年功要素が強かった職能給を廃止し、役割給一本の給与体系へと変更しました。これにより、社員一人ひとりが発揮した能力を処遇に結びつけ、働きがいを高めるとともに、チャレンジする姿勢を強力に推進する方針です。
人材育成においては、全社員参画型の次世代リーダー育成プログラムを強化し、挑戦と変革を促す企業風土の醸成に取り組んでいます。具体的には、成長支援制度(通信教育奨学支援)、公的資格取得支援、階層別研修、部門別教育支援などを実施しています。
社内環境整備では、「Cleanup DEI Statement」に基づき、「建設的な対話」を起点とした新たな付加価値創造の仕組み構築を推進しています。女性をはじめとする多様な人材の管理職登用、公平性・透明性の高い評価プロセスの確立、柔軟な働き方(フレックス制度、在宅勤務制度など)の促進、育児・介護との両立支援にも力を入れています。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
提出会社単体の法定開示データです。男女賃金差異については、同じ役割・職種では男女同一賃金ですが、勤続年数が長い従業員の男性比率が高いことや、給与所得の高い職種の男性比率が高いことが要因として挙げられています。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理的地位にある労働者に占める女性労働者の割合 | 3.6% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 80.5% |
| 労働者の男女の賃金の額の差異(全労働者) | 68.0% |
| 労働者の男女の賃金の額の差異(正規雇用労働者) | 67.6% |
| 労働者の男女の賃金の額の差異(パート・有期労働者) | 78.5% |
多様性・登用
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理的地位にある労働者に占める女性労働者の割合 | 3.8% |
育児・介護支援
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 男性労働者の育児休業取得率 | 81.8% |
人材育成・エンゲージメント
本指標は、社員エンゲージメントサーベイ結果を踏まえ、社員の成長機会の拡充を目的として設定されており、e-ラーニング等のオンライン学習時間および通信教育による自己啓発の時間は含めていません。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 社員一人当たりの年間合計研修時間 | 16.9時間 |
| 有給休暇取得率 | 65.8% |
有報に開示される平均年収は全社平均です。職種・年次・職位ごとの実際の給与水準は、社員・OBOGの給与明細データで確認できます。
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
クリナップは、住宅及び店舗・事業所用設備機器関連事業を主な内容としています。同社グループは、この事業に関連する物流やサービスなどの事業活動も展開しています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
同社グループは、主に厨房機器、浴槽・洗面機器の製造と販売を手掛けています。収益は、顧客への商品や製品の引き渡し時点において認識されるものが主ですが、一部の請負契約においては、履行義務の充足に応じて一定の期間にわたり収益を認識するモデルも採用しています。
事業部門別に見ると、厨房部門が同社グループの売上高の大部分を占める主力事業となっています。この部門では、高級価格帯のシステムキッチン「CENTRO」や中高級価格帯の「STEDIA」などを市場に提供しています。浴槽・洗面部門では、システムバスルーム「SELEVIA」や「rakuvia」、洗面化粧台などを扱っています。その他部門では、ステンレス素材の加工・販売、物流サービス、人材派遣、有料老人ホーム・介護事業、事務受託、コンピュータソフトウェアの開発・販売・保守業務など、多岐にわたる事業を展開しています。
同社グループの売上高は、本邦の外部顧客への売上高が連結損益計算書の90%を超えており、国内市場が主要な収益源となっています。厨房部門への収益集中が見られ、新築・リフォーム需要の動向や原材料価格、競合状況などが同社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。
| セグメント | 売上高(2025年3月期) | 売上高(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 厨房部門 | 1,053億円 | 1,090億円 |
| 浴槽・洗面部門 | 148億円 | 148億円 |
| その他 | 98.6億円 | 107億円 |
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
同社グループの直近5期間の業績推移を見ると、売上高は継続して増加傾向にあります。経常利益および親会社株主に帰属する当期純利益は、直近の当連結会計年度において大きく増加しました。これは、販売価格改定効果の顕在化や原価低減、販管費率の低下などが寄与しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,133億円 | 1,240億円 | 1,280億円 | 1,300億円 | 1,345億円 |
| 経常利益 | 42.6億円 | 35.6億円 | 18.1億円 | 26.2億円 | 44.5億円 |
| 経常利益率 | 3.8% | 2.9% | 1.4% | 2.0% | 3.3% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 31.6億円 | 25.2億円 | 14.7億円 | 17.2億円 | 34.8億円 |
| 1株当たり当期純利益(円) | 85.55 | 68.41 | 39.95 | 47.67 | 96.73 |
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
同社グループの従業員1人あたり売上高は、前期から増加しています。また、従業員1人あたり営業利益も前期に比べて大きく向上しており、同社グループ全体の生産性が改善している傾向が見られます。これらの指標の改善は、同社グループの収益体質の強化や組織効率化の進展を示しています。
| 指標 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 従業員1人あたり売上高(連結) | 37.0百万円 | 38.6百万円 |
| 従業員1人あたり営業利益(連結) | 0.6百万円 | 1.1百万円 |
業績データからは見えない「この会社で実際に働くとどうか」は、社員・OBOGの口コミで確認できます。
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
クリナップは、強固な財務基盤と安定したキャッシュフローを維持しており、事業の安定性がうかがえます。本業で着実に資金を生み出し、将来に向けた投資も継続しています。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
同社グループは、高い自己資本比率を維持しており、財務基盤の安定性を示しています。ROE(自己資本利益率)はプライム市場の平均を下回る水準ですが、前期からは改善傾向にあります。手元資金である現金及び預金も増加しており、不況時への耐性も備えていると考えられます。
| 指標 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 純資産 | 571億円 | 604億円 |
| 自己資本比率 | 63.1% | 64.7% |
| ROE(自己資本利益率) | 3.0% | 5.9% |
| 現金及び預金 | 188億円 | 194億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
同社グループの営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益や減価償却費があったものの、売上債権の増加や仕入債務の減少、法人税等の支払により、前期に比べて減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、生産設備への投資やショールーム改装、情報システム構築に伴う支出があったものの、前期に比べて使用した資金が減少しています。財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の純減や長期借入金の返済、配当金の支払があった一方、長期借入れによる収入があり、前期の資金獲得から資金使用に転じました。
これらの結果、フリーキャッシュ・フローは前期のマイナスから当期はプラスに転じており、本業で得た資金で投資を賄い、余剰資金を生み出している状況です。これは、事業の安定性と将来への投資余力を示しており、雇用や給与の安定性にもつながる傾向にあると言えます。
| 項目 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | 43.5億円 | 41.8億円 |
| 投資CF | △45.0億円 | △28.6億円 |
| 財務CF | 2.5億円 | △7.5億円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | △1.5億円 | 13.2億円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
継続企業の前提に関する特記事項はありません。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社グループの営業収入のほとんどは国内需要によるため、国内経済状況の動向に影響を受けます。特に、新設住宅着工戸数やリフォーム需要の減少、原材料費や物流コストの高騰は業績に影響を及ぼす可能性があります。また、住宅設備機器業界における価格競争の激化もリスクとして挙げられています。
③ 人材・組織に関するリスク
少子高齢化の進行による労働人口の減少が深刻化しており、企業間での人材獲得競争の激化や退職などにより、優秀な人材の確保と維持・育成が困難になる可能性があります。これに対応するため、同社グループでは多様な働き方の推進や人材育成、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンへの取り組みを進めています。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
財務指標だけでは分からない、実際の残業の実態や職場環境は、社員の声から確認できます。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
クリナップは、創業以来「五心」を経営の核とし、お客様の豊かな住まいづくりに貢献することを目指しています。商品とサービスを一体として提供し、「家族の笑顔を創ります」という企業理念の実現に向けて事業を展開しています。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
同社グループは、創業以来「五心」を経営の核とし、事業活動を通じてお客様の豊かな住まいづくりに貢献してきました。企業理念として「家族の笑顔を創ります」を掲げています。
システムキッチンやシステムバスルームなどの住宅設備機器の製造・販売を通じて、「新たな暮らし価値」を創造・提案し続けることを目指しています。長期ビジョンには「人と暮らしの未来を拓く」を掲げ、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指す方針です。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
同社グループは、常にユーザーの立場に立った開発姿勢と先進的な技術力で提案し続けることを重視しています。商品というハードとサービスというソフトを一つのパッケージとして提供することを経営の基本方針としています。
人的資本を最も重要な経営資源の一つと位置づけ、「社員が健康的に安心して働くことができ、多様な人材が能力を発揮できる職場環境や企業風土の実現」を基本方針としています。Cleanup DEI Statementに基づき、「クリナップグループ全社員の笑顔に満ちた毎日を創る」というミッションのもと、「個々の違いをチームの力にし、多様な一人ひとりが輝く」組織の実現を目指しています。
「建設的な対話」を起点とした新たな付加価値創造の仕組み構築を経営の重要な基盤としています。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
同社グループを取り巻く経営環境は、原材料やエネルギーの供給不安が懸念され、先行き不透明な状況で推移すると見込んでいます。このような中、長期ビジョン「人と暮らしの未来を拓く」の実現を目指して、「ファン化促進」と「専業力強化」を推進しています。
高品質、高付加価値の革新的な商品を開発し、先行優位と競争優位を維持するため、商品の機能強化と差別化に努めています。商品開発期間の短縮も行い、付加価値の高い商品を開発し業績に繋げていくことを今後の重点テーマとしています。
気候変動への対応も経営上の重要課題の一つであり、「クリナップグループ環境ビジョン2050(CEV50)」を策定し、2050年にカーボンニュートラル達成を掲げています。人的資本においては、多様な人材の管理職登用を推進し、新人事制度により公平性・透明性の高い評価プロセスの確立を図る方針です。柔軟な働き方促進や育児・介護との両立支援、長時間労働の是正、上司と部下の継続的な対話機会の確保、管理職の対話力及びマネジメントの強化も推進しています。
会社が掲げる価値観と現場の実態が一致しているかどうかは、社員・OBOGの口コミが参考になります。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
クリナップは、取締役会、監査役会、および複数の諮問委員会を設置し、執行役員制度を導入することで、迅速な意思決定と業務執行、そして経営監視の強化を図っています。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
株式会社井上が筆頭株主であり、同社グループの関連団体や社員持株会も上位株主に名を連ねています。この資本構成は、同社グループの創業家や内部関係者が経営に一定の影響力を持つことを示唆しています。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| 井上 | 24.41% |
| 日本マスタートラスト信託銀行 | 7.00% |
| クリナップ真栄会 | 6.82% |
| クリナップ共進会 | 6.45% |
| タカヤス | 5.34% |
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
同社の役員は11名(男性10名・女性1名)で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役は竹内宏氏が務めています。社外取締役比率は28.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 井上 強一 | 代表取締役会長 | 1971年松下電工(現パナソニックホールディングス)入社。1974年同社入社後、1978年取締役、1987年代表取締役社長を経て、2017年より現職。 |
| 竹内 宏 | 代表取締役 | - |
| 川田 和弘 | 取締役 経営企画部、経理部、 情報システム部、購買部管掌 | - |
| 山田 雅二 | 取締役 | - |
社外取締役は、川﨑享氏(㈱エム・アイ・ピー代表取締役)、千代田有子氏(千代田法律事務所代表)です。
同社は監査役会設置会社であり、社外取締役2名と社外監査役2名が経営の監督と助言、および監査を実施しています。これにより、外部からの客観的な視点を取り入れたガバナンス体制を構築しています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
同社は、役員の報酬について、金銭による固定報酬を基本としています。報酬額は、会社の業績や社会情勢に加え、個人の業績貢献度や役割遂行度、インセンティブを総合的に考慮して決定されます。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 取締役(社外除く) | 5名 | 2.1億円 | 42.4百万円 |
| 監査役(社外除く) | 2名 | 30百万円 | 15.0百万円 |
| 社外役員 | 4名 | 28百万円 | 7.0百万円 |
役員報酬の総額は2億70百万円であり、対象となる役員は合計11名です。
※本記事は、有価証券報告書などの公開情報から、転職・就職活動に役立つ情報をまとめたものです。内容の充実に努めていますが、掲載時点の情報であることをご留意ください。気になる点やご指摘があればお気軽にお知らせください。
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