クリナップ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

クリナップ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場のクリナップは、システムキッチンやシステムバスルーム等の住宅設備機器を製造・販売する専業メーカーです。直近の2025年3月期は、主力商品の販売や価格改定効果に加え、販売費及び一般管理費の抑制等が寄与し、売上高1,300億円、経常利益26億円の増収増益を達成しています。


※本記事は、クリナップ株式会社 の有価証券報告書(第72期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. クリナップってどんな会社?


クリナップは、システムキッチン「セントロ」「ステディア」などを展開する住宅設備機器の大手専業メーカーです。

(1) 会社概要


1949年に井上登が座卓の製造販売を開始し、1960年にステンレス流し台の製造へ転換しました。1983年に現社名であるクリナップへ商号を変更し、全国的な販売網を整備しました。1990年に株式を店頭公開した後、1991年に東京証券取引所市場第一部に指定され、現在はプライム市場に上場しています。

同社グループの従業員数は連結で3,516名、単体で2,997名です。筆頭株主は株式会社井上で、第2位はクリナップ真栄会、第3位は日本マスタートラスト信託銀行です。

氏名 持株比率
井上 23.87%
クリナップ真栄会 6.69%
日本マスタートラスト信託銀行 6.55%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長執行役員は竹内宏氏が務めています。社外取締役比率は約18.2%です。

氏名 役職 主な経歴
竹内 宏 代表取締役 社長執行役員 1979年同社入社。営業本部の中部、関西支社長などを経て、2016年取締役就任。2018年4月より現職。
井上 強一 代表取締役会長 1974年同社入社。営業統轄本部長、代表取締役社長などを歴任。2017年1月より現職。
山田 雅二 取締役専務執行役員 1978年同社入社。生産本部長などを経て、2016年取締役就任。現在は購買部、CS推進部、品質環境保証部、開発部門、生産本部を管掌。
川田 和弘 取締役専務執行役員 1982年同社入社。経理部長などを経て、2018年取締役就任。現在は経営企画部、経理部、情報システム部を管掌。
井上 泰延 取締役専務執行役員 2014年同社入社。総務部担当などを経て、2020年取締役就任。現在は法務・監査部、総務部、人事部、海外事業推進部を管掌。


社外取締役は、川﨑享(エム・アイ・ピー代表取締役社長)、千代田有子(千代田法律事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「厨房部門」「浴槽・洗面部門」および「その他」事業を展開しています。

(1) 厨房部門


システムキッチンなどの厨房機器の製造・販売を行っています。主力の高級価格帯「セントロ」、中高級価格帯「ステディア」、普及価格帯「ラクエラ」などを展開し、ユーザーの多様なニーズに対応しています。

収益は主に製品の販売代金から得ています。運営は主に同社が行い、ステンレス素材の供給を井上興産、加工をクリナップステンレス加工センターが担うなど、グループ会社が連携して事業を行っています。

(2) 浴槽・洗面部門


システムバスルームや洗面化粧台などの製造・販売を行っています。システムバスルームでは「セレヴィア」「ラクヴィア」などのシリーズを展開し、快適な水回り空間を提案しています。

収益は製品の販売代金から得ています。運営は同社が主体となり、製造・販売を行っています。また、クリナップテクノサービスが製品の施工やアフターサービスを提供することで、顧客満足度の向上を図っています。

(3) その他部門


ステンレス素材の加工・販売、物流サービス、人材派遣、事務受託、ソフトウェア開発などを行っています。これらは主にグループ内の業務効率化やサービス向上を目的としていますが、外部へのサービス提供も行っています。

収益は、加工賃、運送・荷役料、人材派遣料、ソフトウェア開発費などから得ています。運営は、クリナップステンレス加工センター、クリナップロジスティクス、クリナップキャリアサービス、クリナップソリューションなどがそれぞれの専門分野を担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は1,000億円台前半から1,300億円規模へと緩やかに拡大傾向にあります。利益面では、原材料価格高騰などの影響を受けつつも、直近では価格改定効果等により回復基調にあります。当期利益は変動があるものの、黒字を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,042億円 1,133億円 1,240億円 1,280億円 1,300億円
経常利益 27億円 43億円 36億円 18億円 26億円
利益率(%) 2.6% 3.8% 2.9% 1.4% 2.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 15億円 29億円 23億円 13億円 15億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で微増となり、売上総利益も増加しました。営業利益率は1.6%と前期より改善しています。これは価格改定の浸透や原価低減活動の成果が現れていることを示唆しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,280億円 1,300億円
売上総利益 399億円 411億円
売上総利益率(%) 31.2% 31.6%
営業利益 13億円 21億円
営業利益率(%) 1.0% 1.6%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当・賞与が111億円(構成比28%)、運賃荷造費・倉庫料が77億円(同20%)を占めています。売上原価においては、材料費などが主要な構成要素となっています。

(3) セグメント収益


厨房部門が売上の大半を占めており、主力事業としての地位を確立しています。浴槽・洗面部門は横ばいで推移していますが、その他部門は増収となりました。全体として、主力の厨房部門の安定性が業績を支えています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
厨房部門 1,053億円 1,053億円
浴槽・洗面部門 148億円 148億円
その他 80億円 99億円
連結(合計) 1,280億円 1,300億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

クリナップのキャッシュ・フローの状況についてご説明します。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益や減価償却費の計上、売上債権の減少等により増加しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、生産設備への投資・改修や情報システム構築等により使用額が減少しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済や配当金の支払いがあったものの、長期借入れによる収入により、前連結会計年度の使用から獲得へと転じました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 24億円 43億円
投資CF -54億円 -45億円
財務CF -6億円 3億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


創業以来「五心」を経営の核とし、事業活動を通じて顧客の豊かな住まいづくりに貢献することを基本としています。企業理念として「家族の笑顔を創ります」を掲げ、新たな暮らし価値を創造・提案し続けることで、その実現に向けて邁進しています。

(2) 企業文化


顧客視点に立った開発姿勢と先進的な技術力を重視する文化があります。商品というハードと、メンテナンスや相談対応などのサービスというソフトを一つのパッケージとして提供することを基本方針とし、誠実な企業活動を通じて、顧客だけでなく自らの家族にも誇れる企業を創ることを目指しています。

(3) 経営計画・目標


「2024中期経営計画(2024-2026年度)」を推進しており、安定的かつ継続的に高収益をあげることを使命としています。システムキッチンやシステムバスルームなどの高付加価値商品の販売に注力し、専業メーカーとしてのブランド力を高めることで、営業利益率の向上を経営目標の一つに掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策


「ファン化促進」と「専業力強化」を柱に、持続的な成長と企業価値向上を目指しています。具体的には、2030年に向けた長期ビジョンのもと、既存事業の深化によるサステナブルな住まいと暮らしの提供や、新事業の探索による新たなライフスタイルの創出、海外市場の開拓などを重点施策として進めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「社員が健康的に安心して働くことができ、多様な人材が活躍できる職場環境や企業風土の実現」を掲げています。多様な社員が能力を最大限発揮できるよう、ワークライフバランスの推進やダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの取り組みを進めるとともに、自立的な能力開発とキャリア形成を支援しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.0歳 15.1年 5,378,121円


※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 3.1%
男性労働者の育児休業取得率 70.7%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 66.1%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 66.3%
労働者の男女の賃金の差異(非正規) 76.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職に占める女性労働者の割合(3.5%)、男性労働者の育児休業取得率(75.0%)、社員一人当たりの年間合計研修時間(20.0時間)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済状況の変動による需要減少


同社グループの売上の大部分は国内需要に依存しているため、国内景気の後退により新設住宅着工戸数やリフォーム需要が著しく減少した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、原材料費や物流コストの高騰も収益を圧迫する要因となります。

(2) 価格競争の激化


住宅設備機器業界では新設住宅着工の減少等により競争が厳しくなっています。同社は高品質・高付加価値商品で差別化を図っていますが、競合他社による類似商品の投入や低価格競争が激化した場合、シェアや収益性の低下を招き、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 人材確保および労働力不足


少子高齢化による労働人口の減少が進む中、優秀な人材の確保・育成が困難になるリスクがあります。人材獲得競争の激化や従業員の退職により十分な人員体制を維持できなくなった場合、事業運営に支障をきたし、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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